自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結   作:ケツアゴ

8 / 49
お気に入りと評価上がって意欲アップ!


第七話

 ”超回復”、筋肉トレーニングをした時、筋肉の繊維がボロボロの状態から戻る際に元の状態よりも強くなる現象だ。なお、筋肉の成長の為には筋トレ後に二十四時間の休憩が必要だと言われている。

 

 

「だからさ~、この現象を利用して一誠君を強化しようって思うんだ! でも時間が足りないからさ……二徹で四日分のトレーニングをして、一日休もうよ」

 

「いや、俺死ぬぞ!?」

 

「大丈夫大丈夫。日本人のブラック企業に勤めている人はか~っなりキッツイ勤務でも何とか生きてるし、元日本人で悪魔の体を持つ君なら大丈~夫!」

 

「出来ねぇよっ!」

 

 一誠が命の危険を感じて叫んだ時、アンノウンは五円玉に通した紐をリアスの目の前で振っていた。

 

「一誠君なら大丈~夫! 一誠君なら大丈~夫!」

 

「……そうね! 頑張りましょ、イッセー!」

 

 名札に『催眠術ができるパンダ』と書かれているので催眠術を使える事に疑問を抱かない一誠だったが、アンノウンの催眠内容に命の危機を感じる一誠であった……。

 

 

 

「ほんと、一誠君は駄目だなぁ。仕方ない、一日半で三日分修行続けて一日休もう」

 

 某猫型ロボットの様な口調でアンノウンから告げられた言葉に一誠は安堵した。

 

「た、助かった~」

 

 だが、どちらにしろきついので別に助かってなどいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 修行が終われば汗だくで、疲れと汚れを流したくなる。それにはお風呂が一番だ、という事で今からお風呂に入る事になった。

 

「イッセー、一緒に入る?」

 

「マジっすかっ!?」

 

 リアスの言葉に反応した一誠は瞬く間にスケベ顔で鼻息を荒くする。一方、紳士だからかどうかは知らないが、この手の話を振られない祐斗はキョロキョロと辺りを見渡していた。

 

「あれ? そういえばアンノウンとオーフィスは?」

 

 先程まで(リアスのカード払い)廃課金しているゲームに夢中だった二人だが、何時の間にか姿を消している。

 

「……お風呂は後よ」

 

 また何かするのではないかと不安になったリアスは入浴を後回しにして二人の捜索を決める。一誠は明らかに気落ちし、拒否するつもりだった小猫は安堵の表情だ。

 

 

 

 

 

「あ~、良いお湯」

 

「我、泳ぐ」

 

 そして当の本人達は一足先に風呂に入っていた。オーフィスは服を脱ぎ捨てて風呂の中で泳ぎ回り、今は背泳ぎに夢中だ。アンノウンはキグルミ姿のまま入浴していた。

 

「説明しよう! このキグルミは風呂に入ると自動でお湯を取り込み体を洗浄し、風呂から出ると自動的に全て排出して即座に乾くんだ」

 

「アンノウン、誰に話してる?」

 

「読者」

 

「?」

 

 メタな発言など理解できるはずもないオーフィスは今度は平泳ぎに夢中になり、アンノウンはゆったりとお湯に浸かる。数分程そうしていると背中にぶつかったオーフィスが立ち上がてアンノウンを見上げてきた。

 

「アンノウン、まだグレートレッド倒す協力してくれない? アンノウンと我が居ればきっと倒せる」

 

「言ったでしょ? 倒せるだけの戦力を集めたら協力するって。それまでは倒す協力もしないし、正体も教えないよ。……でも、ヒントなら出してあげる。”大地のへそを見つめている”、これ以上は駄目だからね」

 

「……難しい。我、分からない」

 

 オーフィスは僅かに眉間に皺を寄せて考えるも思い当たらないようだ。走行している内にアンノウンは風呂から上がってしまった。

 

 

 

 

 

 

「あれ? 修行はもう終わったんじゃなかったの?」

 

「貴方、一体何処に居たのよ……」

 

 数時間後、マッサージ機を使っているアンノウンの前にリアス達がヨレヨレの状態で戻ってきた。

 

「何処って、お風呂。……あっ、小猫ちゃん。オーフィスに服貸して。アーサーが用意してくれた着替えにロクなのがないんだ。ハッピとサラシと褌とか、白スクや旧スク水とか、トイレの花子さんが着てそうな幼児服とか、魔法少女が着そうなフリフリの衣装とか」

 

「別に良いですが、誰なんですか? その変態(アーサーって人)は」

 

「かの有名なエクスカリバーの使い手だったアーサー王の末裔で、最強の聖剣であるコールブラントの適合者。……あれ? 祐斗君、どうかした?」

 

 アンノウンが部屋の隅に視線を送ると祐斗が蹲ってブツブツ呟いていた。

 

「そんな変態に負けた、そんな変態には出来たのに。……変態だったら適合できたのかな? あはははははははははは! きっとイッセー君なら全ての聖剣を使う事が出来るんだろうなぁ……」

 

「えいやっ!」

 

 明らかに病んだ目で笑いだした祐斗の胴体にアンノウンが一撃を入れると気絶したのかその場に倒れ込む。アンノウンはひと仕事終えて汗を拭うかのように額に手を当てていた。

 

「さっきの記憶は消したよ。まあ、他の何かも消えてるかもしれないけど」

 

「何かって何っ!?」

 

「何かは何かだよ。じゃ、僕は全ダンジョンマッピングと全仲魔収集というメガテニストの義務を遂行しなきゃならないから」

 

「……どんな義務よ」

 

「……ふぅ。全ダンジョンマッピングと全仲魔収集……」

 

「ダメ人間に言い聞かせるような態度は止めなさいっ!」

 

 今日もキリキリと痛むリアスの胃。果たしてレーティングゲームまで持つのだろうか。それは神のみぞ知る……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなこんな有りましていよいよゲーム当日がやって来たよ」

 

「アンノウン、今度も誰に言っている?」

 

「だってさ、一誠君が自信をつける場面の後でオーフィスが空気読まずに空の雲全て吹き飛ばしたり、僕がアーちゃんを騙して気合を入れる掛け声として”女舐めたらあかんぜよ!”や”頭かち割って脳みそすすったろか!”、とか叫ばせてリーアたんの胃を深刻なまでに追い詰めるしか思いつかなかったんだから仕方ないじゃない」

 

「我、納得」

 

 開始時刻は夜の十二時。オカルト研究部の部室に集まった一行は時間まで暇を潰していた。

 

 

『お待たせしました。それではリアス・グレモリー様とライザー・フェニックス様のゲームを開始致します』

 

「あっ! 今回のアナウンスはメロリン・クイーンのグレちゃんなんだ」

 

『なお私の独断で付けた新ルールとして、今度メロリン・クイーンと呼んだ場合、問答無用でコキュートスに転送します』

 

「はーい。ハーデス君、死神退散の呪文を広めた事で僕の事嫌ってるからそれは嫌だなぁ。サマちゃんに会えるのは嬉しいけどさ……」

 

 空間が歪んだかと思うとアンノウン達が居たのはオカルト研究部の部室。一誠などは転移失敗かと思っていた。

 

『今回のゲームは駒王学園を舞台にしており、リアス・グレモリー様の陣地は旧校舎のオカルト研究部部室。ライザー・フェニックス様の陣地は新校舎の生徒会室となっております』

 

 

 

「ああ、今回のゲームはリーアたんに有利になる様に駒王学園を模したフィールドにしたんだね。じゃあ、僕達は開始までゲームするから、始まったら声を掛けてね」

 

 アンノウンとオーフィスは返事を聞く前にゲーム機と集中する為のイヤホンを取り出した。

 

「アンノウン、今度は負けない。我のギャラドス、最強」

 

「ふふふ、僕のライコウこそ無敵なのさ!」

 

「……皆、作戦の説明に入るわよ」

 

 もうスルーするのが一番だと悟ったリアスは何も言わない事にした。人は間違いを犯すが学び成長する生き物だ。それは悪魔も同じで、リアスは将来役に立たないスキルを成長させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、僕が先に入って隙を作るから一誠君と小猫ちゃんは裏から入って」

 

 作戦も立て終わり準備時間も終わっていよいよゲーム開始。フィールドの中心地点にある体育館を影から見つめているのはアンノウンと一誠と小猫。オーフィスは遊撃手で祐斗は別方向から新校舎を目指している。

 

「……大丈夫ですか?」

 

「大丈夫! 僕は剣道・柔道・合気道・空手・カポエラ・テコンドー・居合・キックボクシング・ガンカタ・銃剣術・カンフー・軍事格闘技・火縄銃・大砲・迫撃砲・大筒・算盤・手裏剣・鎖鎌・ライフル・拳銃・バルカン砲・ガトリング砲・ミサイルランチャー・ロケット砲・波動砲・クレイモア・レイピア・バスタードソード・ブーメランサー・ハルバート・ランス・ジャベリン・トライデント・ダガー・小太刀・日本刀・薙刀・仕込み杖……その他諸々の達人だよ」

 

「……途中変な物が混ざっていたような」

 

「気にしな~い、気にしな~い」

 

 アンノウンは鼻歌を歌いながら正面から突入する。中には既にライザーの眷属四人が待ち構えていた。

 

「パンダ!」

 

「パンダだ!」

 

「……一足先に触れますね」

 

「……モフモフ、させて下さい」

 

 アンノウンの姿を見るなり四人の目の色が変わる。アンノウンは皆に愛されるパンダであり、更には大きめのタイヤを持って入ってきた。入るなりタイヤで戯れ出すアンノウン。無邪気に戯れているパンダに見蕩れぬ者など居るだろうか。いや、居ない。

 

「……パンダ」

 

 そして一誠を一撃で倒したミラが意を決してそっと手を伸ばす。アンノウンはその手をモッフモフの手で掴んだ。そのまま抱き抱えられるミラを見た三人は羨ましそうな顔になり、そのままミラは高く放り投げられる。

 

「四十七の殺人技……」

 

 アンノウンは跳躍して上下逆さまになったミラの頭を肩に置き、両足を掴んで力強く着地する。

 

「パンダバスター!!!!」

 

『ライザー・フェニックス様の『兵士』一名リタイア』

 

「なっ!」

 

 最弱とは言え眷属の一人が一撃でやられた事に三人の顔色が変わる。すぐさま武器や拳を構えた三人がアンノウンを睨んだ時、ウルウルした瞳が見えて戦意が削がれる。その時、裏から入った二人が攻撃を仕掛けようとする。

 

「二人共、脱出するよ!」

 

 だが、アンノウンは二人を担ぎ上げると壁を蹴破り外に飛び出る。その時、オーフィスがサングラスを掛けて運転するバギーが接近し、三人はそれに飛び乗る。三人が離れた時、体育館が内部から爆発した。

 

『ライザー・フェニックス様の『戦車』一名 『兵士』二名 リタイア』

 

 オーフィスは右手でハンドルを握ったまま左手でサングラスを上げて後ろの三人に顔を向ける。

 

「我、アンノウンと居ると退屈しない」

 

「でしょ?」

 

 そのまま四人は新校舎へと向かって行く。作戦で敵ごと体育館を破壊する予定だった朱乃や油断した所を襲うつもりだったライザー眷属のユーベルーナは互いに気付くと気不味そうに会釈を交わした。

 

 

((……なんで爆発したんでしょうか?))

 

 その答えは誰も知らない……。




次回予告

見せてあげるよ。僕のとっておきの技をね……

思い出しますわ。アレは忘れもしない……

ピンチだによ!



意見 感想 誤字指摘お待ちしています

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。