自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結   作:ケツアゴ

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第六話

 ライザー・フェニックスとのゲームが決まった翌日、与えられた十日の訓練期間を有効に使うべくリアスは山篭りを提案した。

 

「ぶ、部長~」

 

「急ぎなさい、イッセー。遅れているわよ」

 

 大きな荷物を背負ったイッセーは死にそうな顔で険しい山道を歩く。

 

「部長、山菜を採りましたので夕食に使いましょう」

 

「イッセーも頑張りなさい。そうすれば何時か同じ様に出来るわ。・・・・・・アレは無理だけど」

 

その視線の先では祐斗が余裕の表情で山菜採りをしつつ山を登っていた。しかも、一誠よりも多くの荷物を背負ってだ。そしてグレイフィアを通じてアンノウンとオーフィスの参加を申し込まれた両家の当主はアンノウンが言い当てた隠し場所を聞くなり慌てて其れを許可した。

 

「何時もより多めに回しているよ~」

 

「我、何時もより回っている」

 

 アンノウンは小さなリュックしか背負っていないのだが登る方法は一輪車。しかも番傘を掲げその上に載せた薬缶とオーフィスをクルクル回しながらだ。その横を歩くアーシアはそれを目を輝かせながら歩いていた。

 

「アンノウンちゃん、凄いです!」

 

「アーちゃんも努力すればこの位楽にできるようになるよ。まあ、その為には心眼を手に入れなきゃならないけどね」

 

「心眼、ですか? どうすれば手に入るのでしょう?」

 

「はい、コレ」

 

 純粋なアーシアはアンノウンの言葉を微塵も疑うことなく信じ、差し出された目玉模様のスーパーボールをマジマジと見つめた。

 

「僕から七千円で買ったら手に入るよ。リーアたんにでも買って貰えば?」

 

 なお、フリーマーケットで一山百円で買った品である。期待する眼差しで見詰めてくるアーシアにリアスは胃がキリキリ痛むのを感じていた。

 

「……イッセー、悪いけど先に行くわね。なんか頭痛がして来たから早く休みたいの」

 

 リアスはそのまま山頂を目指して行き、アーシアは更に一輪車の下に丸い大岩を置いてなお登る早さが変わらないアンノウンに視線が釘付けだ。だた一人、一誠だけがその場に残された

 

 

「どチクショォォオオオオオオッ!!」

 

 忘れ去られた事に気付いた一誠は泣きながら山道を駆け上がる、しかし、上から大岩が転がってきた。

 

「ごっめ~ん! 落としちゃったから気を付けて~」

 

「アホかぁぁぁぁぁっ!!」

 

 岩から逃げる為に全力で山を駆け下りる一誠。横に飛び退いたり段差をよじ登って逃げるも岩はまるで意思を持つかのように一誠を追い続ける。逃げ切った時、気が付けば其処は山の麓で、大岩かと思いきや塗装した発泡スチロールだった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、着替えたら訓練開始よ」

 

「じゃあ、僕も着替えてくるよ。……イッセー君、覗かないでね」

 

「誰が覗くかっ!」

 

「でもさ、祐斗君って人気だから、着替えを盗撮すれば女子に高く売れるんじゃない? もしかしたら少しエッチな対価でも買ってくれるかもよ」

 

 そっと囁き小さいカメラを渡すアンノウン。イッセーは学園の女子に祐斗の着替え写真の代償にエッチなお願いをする事を妄想して鼻の下を伸ばすと盗撮を開始した。

 

 

 

 

「さて、これで腐女子に高く売れるね」

 

 そしてアンノウンは一誠が祐斗の着替えを盗撮する姿を盗撮する。後日、木場×兵藤の噂を流す女子の財布から万札が数枚消え去る事となるが彼女は幸せそうだった。

 

 

 

 

 

 特訓其の一・祐斗との剣術訓練

 

「そうじゃないよ! 相手だけじゃなくて剣や周囲の状況もちゃんと見るんだ!」

 

 剣術初心者の一誠では祐斗の相手など出来ず、力任せに振り回す剣はアッサリと跳ね飛ばされる。

 

 

 その間のアンノウンとオーフィスはと言うと、

 

「我、ドロー4」

 

「じゃあ、僕も~」

 

「更に二枚」

 

「計十六枚…だと……?」

 

 UNOをしていた。

 

 

 

 

 特訓その二・小猫との体術訓練

 

「おごっ!」

 

「……弱すぎです」

 

 小猫は一撃で一誠を吹き飛ばすと呆れたように溜息を吐く。喧嘩もろくにした事のない一誠では正中線とか体幹とか言われても分かるはずがなく、先程からマトモに戦えもしないでいた。

 

 その間のアンノウンとオーフィスはと言うと、

 

「必殺! 一本足打法!」

 

「我、消える魔球投げる」

 

「しかも直前で燃えたっ!? でも、消えるから意味無いしっ!」

 

 野球をしていた。

 

 

 特訓その三・朱乃との魔力修行

 

「あらあら、アーシアちゃんは素質がありますわね」

 

 朱乃の指導のもと、アーシアは様々な属性の魔力を作り出し、一誠は米粒大の魔力を作り出すのがやっとだ。

 

 その頃のアンノウンとオーフィスはと言うと、

 

「カバディカバディカバディ!」

 

「かばでぃかばでぃかばでぃ」

 

 カバディをしていた。

 

 

 

 

「美味い! 美味いっすよ!」

 

「あらあら、食欲旺盛ですわね」

 

 特訓もひと段落つき、夕食時。一誠は運動したからか何時もより多く食べていた。

 

「我、もう少し辛いほうが好み」

 

「まあまあ、皆で食べるものだから仕方ないよ」

 

 オーフィスは五杯目の大盛りカレーを食べながら呟き、アンノウンはキグルミの口を少しだけ開けてカレー皿を傾けて流し込む。リアスが顔を見ようと覗き込むが中は伺えなかった。

 

「……貴方達は遊んでばかりだったわね」

 

「ほら、パンダって居るだけで癒しじゃん? 其れが幼女と遊んでいるんだよ? 皆に癒しを振りまくのが僕の役目って事で」

 

「我、二天龍より強い」

 

 非難するもアンノウンとオーフィスはマイペースに返す。リアスの胃痛が更に増した。

 

「……そう。所で貴方ってパンダなんだったら笹食べたら?」

 

「僕の友達にヤサグレてる奴が居るけどさ、彼曰く”笹なんて食べていられない”、だってさ」

 

「あっ! やっと部長がアンノウンをパンダって認めたっ!」

 

「あらあら、やっと素直になりましたわね」

 

「きっと意地になっていたんですね」

 

「……良かったです」

 

「素直が一番だからね」

 

 会心の一撃! リアスの胃に7974のダメージを与えた。

 

 

 

 

 

 その日の夜、オーフィスと徹ババ抜きをしていたアンノウンが摘み食いをする為に一回に降りると明かりが付いていた。気になって覗いてみるとリアスがメガネを掛けて何やらやっている。

 

「何してんの?」

 

「あら、まだ起きてたの。明日も特訓なんだから……貴方は遊んでいるから関係なかったわね。レーティング・ゲームの戦術を確認し直してたのよ。でも、こんなのあまり意味がないわ」

 

「フェニックスの特性? でもさ、僕やオーフィスなら一撃で殺せるよ?」

 

 フェニックスの特性である”不死”。何度やられても復活するその姿は正しく不死鳥の名に相応しく、倒す為には魔王級の一撃か精神を削りきるまで攻撃を続けるしかない。そしてオーフィスが魔王クラスさえ舐めプ出来る実力である事は調べが付いていた。

 

「……それじゃあ意味がないの。せめてライザーは私と私の眷属で倒さなきゃ気が済まないわ」

 

「でさ、なんでライザー君との結婚が嫌なの? 所で目悪かったっけ?」

 

「……急に話が変わったわね。眼鏡は気分の問題よ。集中できるの。……私はリアス・グレモリーなのよ」

 

「うん、知ってる。あっ、もう部屋に帰るね」

 

「……勝手にしなさい」

 

 自分を自分としてみてくれる人と結婚したい、とか語るつもりだったリアスは頭痛を感じて頭を押さえる。そして部屋に帰ろうとしたアンノウンは途中で立ち止まった。

 

「皆立ち場に縛られて”何かの誰某って仮面を被るけどさ、やっぱり素顔が一番だよね。僕も素顔でいるのが好きだもん」

 

 キグルミ姿のアンノウンはそのまま部屋に戻っていく。リアスが作業に戻ると今度は入れ違いに一誠が入って来た。

 

「部長、まだ起きて……部長、何ですかそれ?」

 

「あら、イッセーも……」

 

 リアスは違和感を感じて鏡で自分の顔を見る。眼鏡が何時の間にか鼻眼鏡に変わっていた……。

 

 

 

「ア~ン~ノ~ウ~ン~!!」

 

 

 

 

 

 

 その頃、グレモリー宅ではサーゼクスが正座させられていた。それを見下ろすグレイフィアの瞳は絶対零度の冷たさだ。

 

 

「”鉄仮面メイドの調教日誌 ご主人様、許してください。ついついしちゃうWピ-ス”、ですか。……何か言い訳はありますか?」

 

「……いえ、有りません。あの、明日は朝からミリキャスと遊ぶ約束が有るから……」

 

「では、私が代わりに遊びますのでサーゼクス様は其処で正座していてください。私が良いと言うまでずっとです」

 

 秘蔵のエロ本を見つけられたサーゼクスは冷や汗をダラダラ流しながら次の日の昼まで正座を続けた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうやら貴方とは気が合いそうにありませんね」

 

「それはこっちの台詞だ」

 

 アーサーとヴァーリは睨み合い火花を散らしていた。

 

 

 

 

「真面目な純情少女の”や、優しくしてください”や”手順は勉強して来ましたので……ご奉仕します……”ってシチュエーションこそが最高だ!」

 

「貴方もマダマダですね。何も分かっていない。”私、お兄ちゃんが実のお兄ちゃんなのが少し悲しい”とか”お兄ちゃん大好き! 私が大人になったら結婚して!”って実の妹に言われるのこそ至高です!」

 

「……馬鹿ばっかだにゃ。ルフェイは呆れて部屋に篭ってるし……。美猴、何やってるの?」

 

「アンノウンの頼みでメロリンパフェ・ロックバージョンの作曲をしてるんだぜぃ」

 

 この時、グレイフィアは寒気を感じた……。

 

 




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