自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結   作:ケツアゴ

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第五話

 悪魔へと転生したアーシアは一誠の家に居候する事になり、リアスの説得(洗脳)もあって受け入れた両親は彼女を息子である一誠より可愛がった。

 

「イッセー…さん?」

 

 そして今、一誠は同居物で有りがちなラッキースケベイベントの定番”お風呂場でバッタリ遭遇 ~脱いだ服に何故気づかない?~”を体験していた。慌てて一誠が出ていこうとしたその時、丁度切れていたシャンプーを渡そうと第三者が入ってきた

 

「アーちゃん、シャンプー……ごっめ~ん」

 

 一誠とアーシアが全裸で風呂場にいる所を目撃したアンノウンはそっとドアを閉めたかと思うと隙間から一誠に何かを差し出す。避妊具だった。

 

「ほら、まだ学生だし」

 

「誤解だっ! てかっ、なんでお前が居るんだよ!?」

 

「あっ、聞いてない? 今日からこの家に済ませて貰う事になったから。ワシントン条約は大丈夫だよ」

 

 アンノウンの胸の名札には『飼っても法的に問題のないパンダ』と書かれていた。

 

「……なら、大丈夫なのか?」

 

「わあ! パンダちゃんと一緒に暮らせるんですね」

 

 一誠は名札を見て納得し、アーシアは嬉しそうな顔をする。アンノウンはそっと名刺を差し出した。

 

「名前はアンノウンだよ。宜しくね、アーちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

「……そう。なら、妙な動きをしたら報告してね」

 

 一誠からアンノウンに関する報告を受けたリアスは疲れた表情でそう告げる。ハッキリ言ってこの地を任された責任とか貴族の誇りとかよりもアンノウンにあまり関わりたくない、そういう気持ちが強かったのだ。

 

 

 

 

 

 

「それでは本日の赤龍帝レポート! 昨晩、主に夜這いを掛けられたけどギリギリでグレちゃんに邪魔されましたぁ!」

 

 ”ちょっと散歩に行ってくるね”、そう言って兵藤家から出て行ったアンノウンは同じようにグルゴリの本部を抜け出したヴァーリと合流してアジトで報告会を開いていた。

 

「にゃははは! 童貞卒業失敗って訳ね」

 

「そう言ってやるな、黒歌。……初めてが邪魔されたらショックだろうさ。俺も戦いが全てってフリして格好つけてたら何時の間にか誰も寄って来なくなってね。……今更抱きたいとか言えないし」

 

「私も家が家なんでそういった本すら満足に買えなくって……」

 

 丁度ルフェイと美猴は買い出しに行っているのでアーサーは普段は口に出せない事を平気で言っている。勿論、アンノウンがボイスレコーダーを持っている事には気付かずにだ。

 

「なら、私と子作りしない? 強い男の子供が欲しいし、ヴァーリなら丁度良いにゃん」

 

 黒歌はヴァーリにしな垂れ掛かると胸元を広げ耳に吐息をかける。しかしヴァーリは寸の間迷った後でそれを振り払った。

 

「断る。非常にお願いしたいが……何か負けな気がするからね。ほら、童貞特有の行為に対する夢とかの関係でさ」

 

「”そう言いながら前かがみになっているヴァーリであった…”、と。さて、今日の日記はこの辺にしておこう。……な~~んか面白そうな事が起こっている気がするからさ」

 

「アンノウン。我も行って良い?」

 

「オッケーオッケー!」

 

 先程『オーフィスの蛇 泰山特製の激辛麻婆豆腐風味』を作る為に入った鍋から出てきたオーフィスは首からタオルを掛けただけの姿でアンノウンの頭に飛び乗る。アーサーはその姿をジッと見つめていた。

 

「……無表情っ子が甘えてくる、そう言うシチュエーションも良いですね。しかしオーフィス。出掛けるなら何か着て行きなさい。全裸にニーソックスとか、裸エプロンとか……」

 

「アーサーが変態になったっ!? ……前からか」

 

 アーサーが真面目な顔で語っている間、黒歌は呆れ顔になり、ちょうど帰ってきたルフェイはスーパーの袋を床に落としてしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

「弱いな、お前」

 

 その頃、オカルト研究部の部室ではリアスの婚約者であるライザー・フェニックスが一誠を見下していた。眷属達でハーレムを形成するライザーを嫌うリアスは急に早まった婚約を拒否。その結果、レーティング・ゲームで決着をと両家の当主の意向を伝えたのだが、一誠がライザーに嫉妬して一人で倒すと殴りかかり、あっさりと負けたのだ。

 

「お前を倒したミラは俺の眷属の中で最弱……」

 

「愛しのエリーへ。今日は俺の気持ちを伝えようと思う。俺は君が好きだ。……わ~、ストレートだね」

 

「なっ!? パンダが喋っただとっ!? し、しかも其の手紙は……」

 

 ライザーはアンノウンの手の中にある手紙を必死に奪い取ろうとするも頭を押さえられ体格差によって奪い取る事が出来ない。その間もアンノウンは手紙を読み続ける。それはライザーが少年時代に初恋の相手に書いた手紙であり、彼が純情で一途な心の持ち主であった事を示していた。

 

 

「……グレイフィア。アンノウンを殺したがってたんじゃ……」

 

「しっ! どうせ無理ですし、下手に止めれば此方に被害が出ます」

 

 

「おい! いい加減にしろ!」

 

「……うん、流石に質が悪すぎたね。反省反省」

 

「アンノウン、反省した? 何故?」

 

 素直に手紙を返すアンノウンの頭の上に乗っかったオーフィスは何時ものドレス姿で首を傾げた。

 

「ほら、他人の失恋を馬鹿にするのって良くないよ。このエリーさんはね、ライザー君がよく通った公園に良きく来てた人でさ、華奢で優しい人だったんだ。だから彼も恋したの」

 

「おい!」

 

「分かった分かった。これ以上は言わないよ。綺麗なお姉さんかと思ったら綺麗なお兄さんだったなんて言わないし、しかもそれが分かった次の日に家庭教師として再会した、な~んて口が裂けても言わないからさ」

 

 アンノウンが全部言い切ると眷属の誰かがうっかり吹き出す。それにつられる様にリアス達も吹き出してしまった。ライザーはもはや怒りを通り越してトラウマにジョロキアペーストを塗りこまれた気分で、部屋の隅で膝を抱えてしくしくと泣き出している。

 

「……うう、皆馬鹿にしやがって。俺だってな、男だと分かっていたら告白なんてしなかったさ。……おい、パンダ。もう取り返しがつかねぇぞ。お前もゲームに出ろ。頭の上の小娘もだ」

 

「あっ、地雷踏んだ。……どうする? オーフィス」

 

「我、小腹が減った。焼き鳥食べたい」

 

 オーフィスはマイペースに答えるとこの前リアスから奪ったキャッシュカードを取り出す。何故か解約できないようになっており、請求は全てリアスに来るようになっているカードだ。

 

「貴方達、流石にそれは無理よ。眷属以外はゲームに出れないし、そもそも戦えるの?」

 

「いやいや、戦えるよ。まぁ、オーフィスや僕を眷属にするなんてサーゼクスが変異の駒の女王を使っても絶対に無理だけどさ。……グレちゃん。両家の当主の許可さえ取れば出れるよね?」

 

「はい、その通りです。答えたお礼に死んでくれませんか?」

 

「や・だ・ぜ! なら、グレモリーの当主には”書斎に飾っている大きなツボの二重底の中”、フェニックスの当主には”自室に飾っている家族の肖像画裏の隠し金庫”って伝えてくれれば許可してくれるよ。……ちなみにサーゼクスは君が興味を持たない怪獣大百科の中を刳り貫いて隠しているよ」

 

「……情報感謝致します。では、そのように」

 

 グレイフィアはそのまま帰って行き、ライザーも眷属を連れて帰っていく。その時、金髪ロールの少女が立ち止まってアンノウンの方を向いた。

 

「久しぶりですわね、アンノウン。何時以来でしょうか?」

 

「え~と、ミルたんの誕生日を祝った時以来だから三か月前以来だね」

 

「ふふふ、そうでしたわね。……それでは失礼致しますわ」

 

 少女はペコリと頭を下げると転移して行く。リアス達はアンノウンをジッと見詰めていた。

 

 

「あら、知り合いなの?」

 

「うん、そうだよ。彼女達と出会ったのは忘れもしない……何時だったっけ?」

 

「忘れてるんじゃないのっ! それとカード返しなさい!」

 

「じゃあ、今度のゲームで僕達二人が活躍したらカード頂戴」

 

「なら、活躍できなかったら?」

 

「その時はそうだね。オーフィスに好きなだけカードを使わせて貰おう」

 

「いや、同じじゃないかい?」

 

 二人の会話を聞いていた祐斗は呆れ顔で口を挟む。するとアンノウンはアカラサマにガッカリした。どうやらリアスを騙せると思っていたようだ。

 

「……っち、騙せるかと思ったのに。まさか三巻でいい雰囲気になって、それまでも長年の付き合いから連携が取れていた後輩キャラを五巻でアッサリと奪われそうな顔した君に指摘されるなんてさ……。君なんてとりあえずモテるって設定だからロクに挿絵も用意されていないキャラを適当に宛てがわれとけば良いんだ」

 

「どんな顔っ!? てか、意味が分からないよっ!?」

 

「アンノウン、メタ発言禁止」

 

 オーフィスは冷凍庫から勝手に取り出したアイスキャンデーを口に食わながらアンノウンの頭をペチペチ叩く。ライザーが放った炎の熱のせいでアイスは溶け掛けており、オーフィスの口もアンノウンのキグルミの頭も汚れてしまっていた。

 

 

「……所でその子は?」

 

「この子? 僕の友達で、今この世界に居る存在で二番目の実力者」

 

「我、オーフィス。無限の龍。……アンノウン、早く焼き鳥食べたい」

 

「はいはい、じゃあリーアたんのカードで食べに行こうか。君達も来るなら奢るけど?」

 

「だから、それは私のカードでしょ!!」

 

 リアスはキリキリ痛む胃を押さえながら叫ぶ。あまりのストレスにグレイフィア共々重要な発言に気付かないでいた……。




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