自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結 作:ケツアゴ
レイナーレは拠点にしている廃教会の地下聖堂で北叟笑んでいた。目の前の十字架にはアーシアが縛り付けられており、今夜彼女から神器『
「……トイレに行きましょ」
尿意を催したレイナーレは階段を上がる。すると部下であるはぐれエクソシスト達が一同に揃って踊っていた。そしてその中心にはアンノウンの姿があった。アンノウンを挟む形でマグロのキグルミと黒子がドラムを叩いており、アンノウンは手を腰に当てながら腰を左右に激しく振って歌っている。
「はい! はい! はいはいはい!」
『はい! はい! はいはいはい!』
「……なんなのよ、コレは……」
この場に居ないフリードと堕天使以外の部下達もアンノウンに続くように一糸の乱れもない動きで踊り歌っている光景にレイナーレは完全に固まってしまった。
「一+一っを~、子供が2だと答えたら~?」
『田んぼの田! 田んぼの田! 引っ掛けだっと、馬鹿にする~!』
「それではそれでは、田んぼの田だと答えたら~?」
『2に決まっているってお仕置きだ~!』
「はい! はい! はいはいはい! う~ん!! ふぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
『フォォォォォォォォォォッ!!』
その場に居るレイナーレ以外の全員が右腕を上に振る上げた時、突如教会を揺れが襲い、階段に立っていたレイナーレを残して宙へと舞い上がっていった。やがて堕天使の視力でも見えなくなるほど高く舞い上がった教会は何処かに消えて行き、レイナーレはその場に立ち尽くす。
「わけ分からんわ~!!!」
キャラ崩壊して叫ぶレイナーレは地団駄を踏み鳴らし、ヒラヒラと舞い降りる紙に気付く。其処にはこう書かれていた。
『諦めて帰りなよ。アーちゃんはお気に入りだから……何かしたらお仕置きするよ? ×××』
その文章に寒気を感じるレイナーレだが、自尊心の高さがそれを打ち消す。堕天使こそが至高。その考えがアダをなすとは。、この時の彼女には知る由もなかった……。
「部長お願いします! アーシアを助けに行かせてください!」
アンノウンを探してグレイフィアがあの場を去った後、アーシアはレイナーレによって連れ去られた。その際にレイナーレが言っていた『儀式』という単語に言い表せぬ不安を覚えた一誠は救出の許可を嘆いでるもリアスは首を横に振った。
「前に言ったでしょ、イッセー。三すくみの関係はギリギリ拮抗してるの。貴方の軽はずみな行動が戦争を引き起こすかも知れないのよ。私は公爵家の次期当主としてそれを許可する訳にはいかないの」
「だったら! だったら俺を眷属から外してください! 俺は一人ででもアーシアを助けに行きます!」
リアスは一誠の必死の訴えに耳を貸さず、一誠は熱くなるばかり。話は平行線を辿り前に進もうとしなかった。その時、室内にグレイフィアが出現する。
「グレイフィア!?」
「お嬢様、少しお話したい事が。……教会が何処かに消えました。火を吹き出して消えていったようです」
「……はいっ!?」
「おそらく奴の仕業かと。では私は今から私は犯人の搜索に出ますので……さて、お嬢様に興味を持ったようですし、私への被害は減れば良いのですが」
「あの~、最後とんでもない事言わなかったかしら?」
「失礼、噛みました」
「いや、さっきのは……」
「カニタマだ」
「……もう、良いわ。イッセー、私は出かけるけど最後に言っておくわ。貴方の駒である『兵士』は敵陣へ行くことで『王』を除く他の駒になれる。それと神器を使う際は自分を信じなさい」
「イメージするのは常に最強の自分だよ」
「そうそう、常に最強の……」
リアスは背後から聞こえてきた声に振り返り、グレイフィアはアンノウンの姿を確認するなり襲い掛かる。しかしグレイフィアの拳が届く前にアンノウンは彼女の背後に回り、
「足カックン」
そのまま悪戯だけして窓を突き破って逃げていく。グレイフィアが屈辱で震えていると深夜だというのに校内放送が流れ出した。
『恋はメロメロ……』
「……さて、殺そう」
グレイフィアは放送室がある辺りを魔力で吹き飛ばすと逃げていたアンノウンを殺すべく窓から飛び立っていく。残されたリアスは暫し固まり、動き出したのは数分後だった。
「あはははは! リーアたんも甘いね。アレって遠まわしに許可してるよ。グレちゃんはどう思う?」
「グレちゃん言うなっ!」
「じゃあ、メロリン・クィーン?」
それはグレイフィアの黒歴史時代のペンネーム。この時、グレイフィアは怒りによってサーゼクスを凌駕する魔力を発していた。
そして数時間後、手下のはぐれエクソシストがいないレイナーレは神器を覚醒させた一誠に敗れ去った。全力で殴り飛ばされたレイナーレは教会の敷地内の森で呻いていた。そして彼女に視界の先には近付いてくる小猫の姿。そして宙に立つアンノウンの姿があった。
「……パンダさん」
「やあ、先程ぶり。……ねぇ、其処の堕天使譲ってくれない?」
「っ!」
小猫はアンノウンから発せられた威圧に生物的な恐怖を覚え膝を崩す。体が小刻みに震え地面に水溜りが出来ていた。
「忠告したよね。アーちゃんに何かしたらお仕置きするってさ」
アンノウンに見下ろされたレイナーレも小猫同様にガタガタ震えながら逃げようとするも体が動かない。まるで蛇に睨まれたカエル……いや、ミドガルズオルムに睨まれたカエルになった気分だ。アンノウンは手提げ袋から大きなキノコを取り出す。その時になって駆け付けていたリアス達もやって来た。
「小猫、見付けたようね。……って、またあのキグルミっ!」
「部長、あのキノコは……」
祐斗はアンノウンが手に持った巨大なキノコを見て驚く。一誠や朱乃もそれが何か気付いたようだ。そしてアンノウンがキグルミの口を開いてキノコを押し込むと、アンノウンが巨大化した。
「……なる程、ジャイアントパンダだった訳ですね」
小猫が呟く。しかし横に立っていた祐斗が首を振って否定する。
「いや、小猫ちゃん、違うよ」
「……やっと、やっと眷属がマトモな反応を……」
リアスは感極まって涙を流し、
「あのキノコはスーパーキノコ。それを食べて大きくなったんだからスーパーパンダだよっ!」
「まさか本当に存在するとは思いませんでした……」
「……不覚です。最近、土管工のゲームはやってないから」
「葉っぱか羽を手に入れれば俺でも空を食べるんだろうか……」
そしてあっさり裏切られた。仕方なくレイナーレを尋問しようとした時、レイナーレは透明の球体に閉じ込められ、アンノウンは巨大なゴルフクラブを構えていた。
「チャ~、シュ~、ドンブリ!!」
「メ~ン、じゃないのっ!? って、きゃぁぁああああああっ!?」
レイナーレは遥か遠くに飛んで行き、リアス達はそれを暫く見詰めていた。
「って、アイツに奪われたアーシアの神器っ!」
一誠が目的を思い出した時、聞き覚えのある音楽が聞こえてきた。
「さあ、今日もやって来ましたアンノウンショッピング~! 司会進行は私、アンノウンと……」
「我、オーフィス。アンノウン、今日の目玉、何?」
「今日の目玉商品は悪魔さえ回復できる『聖母の微笑』! 更に今日は絶対に切れ味の落ちない高枝切鋏と研ぎい石三百年分!」
「我、それだけあると高いと思う」
「そうでしょ、そうでしょ? でも、今日だけの特別価格! 五万九千八百円! 五万九千八百円です! しかも送料手数料は此方が支払いますっ! 今ならお得な十回分割払いも実地しています。さあ、限定一品限り! 限定一品限りのご奉仕です!」
「わー、我も欲しい」
最初から最後まで棒読みでセリフを言い終えたオーフィスは渡されたチョコ菓子を貪り口や手が溶けたチョコでベタベタになっていた。
「……買うわ。カード一括で」
リアスは財布からカードを取り出す。次の瞬間、カードはオーフィスの手に握られていた。
「アンノウン。我、ラーメンを所望する」
「じゃあ、このカードで好きなだけ食べよう」
二人は風のように居なくなり、アーシアの神器だけが残された。
「あ痛たたたたたっ。糞っ! あの糞パンダ……」
遠く離れた山中で透明の球体から脱出したレイナーレは悪態をつきながら立ち上がる。その時、背後から獣の息遣いを感じて振り返る。彼女の目の前の空間が歪み、中から巨大な獣の口が突き出していた。
「うふふふふ。言ったでしょ? お仕置きするってさ」
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