自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結   作:ケツアゴ

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番外編 結局大熊猫鵜飼 既知との遭遇

「釣れぬでござるなぁ……」

 

「ははははは! フィィィィィシュ!!」

 

「てか、何で釣りなんかしてるんだよ!!」

 

 雲一つない空の下、サングラスを掛けたハシビロコウ(キグルミ)の操縦するクルーザーに乗ったカルデア所属のサーヴァント(男のみ)は釣りをしていた。

 

 自分が生きていた時代のリードもないような釣竿を使って頬杖をついているのは小次郎。投影で出した最高級釣竿で入れ食いなのはエミヤ、新しく召喚され、年の泉ロープで直様若い姿に替えられたロードエルメロイ二世ことウェイバー・ベルベットは真っ先に正気に戻って叫んだ。

 

「暇なのだから仕方なかろう」

 

「カルデアの物資補給の為だ。このクーラーボックスに入れた魚は加工された状態で送られるとアンノウンが言っていただろう」

 

「何でそんなの持ってるんだよ、あのパンダっ!」

 

 ウェイバーの叫びは青空に吸い込まれ、誰も答えない。ただ彼も答えは分かっていた。

 

 

 

 

 

 

「アンノウン殿だからでござろう」

 

「アンノウンだからだろう」

 

「……だよなぁ」

 

 レイシフト中に発生した謎の異変によって藤丸と新しいサーヴァントと女性陣全員はアンノウンと此処に居る男性陣-1とは別の場所に飛ばされており、座標が遠く離れている。だから心労は一方的に彼らに降りかかっていた。

 

 

 

 

 

 

「……あのパンダ、人に迷惑かけて……掛けてるな、絶対」

 

「掛けないはずがなかろう」

 

「むしろ何故掛けていないと思う?」

 

 釣竿を握りながら青空を見上げる三人。アンノウンは偵察に行ってくると大量の風船にぶら下がって飛んで行き、風に煽られて何処に行ったかさえ分からない。だから三人は心配していた。

 

 

 

 敵だとしても他人の胃に穴が空かないかと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、昼食の激辛麻婆豆腐丼辛さ増し増しの完成だ。彼らを呼ぶとしよう」

 

 ……胃に穴が開くのは三人かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃藤丸達は……。

 

 

「きゃっ! せ、先輩!?」

 

「ご、ごめん、マシュっ!」

 

 なんかラッキースケベとかラブコメやってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルゴー船、ギリシャ神話に登場する英雄の集った船。今その船を支配しているのはイアソン。個人の能力は低いが英雄を集める才能と自分の命を諦めた時は評価される男である。

 

「ふはははははは! もう直ぐヘクトールが聖杯を持ってきてくれる。そうすればどうなるんだい? メディア」

 

「はい。イアソン様の望む世界がやって来ます」

 

 その横に居るのはメディア。裏切りの魔女と呼ばれるイアソンの妻で、彼に裏切られたコルキスの王女……の若い頃の姿。言うならばメディア・リリィで、偽りの恋心を植え付けられる前の姿。ただ、英霊ならば裏切られたことの記憶もあるはずなのだが……。

 

「そうだろ、そうだろ。やはり全てはこの私の……へぶぅ!?」

 

 そのイアソンの上にパンダが降ってきた。ベチャ! という聞こえてはならない音が響きイアソンは顔面から床に倒れこむ。

 

「イアソン様っ!?」

 

 心配したようなメディアだが、その手はグッと握り締められていた。

 

 

 

 

「あっ、メディちゃんお久ー! イア君も元気だったー?」

 

「アンノウン!? もー! 一体何処に行ったんですかっ!? アルゴー船から姿を消してから顔を見せないし、皆心配してたんですよ! ……誰かに迷惑掛けていないか」

 

「ど、退け……」

 

「大丈夫大丈夫。僕が誰かに迷惑かけると思う? 明らかに秩序・善の僕だよ? それにしても懐かしいねー!」

 

 メディアの手を取って跳ね回るアンノウン。なお、イアソンは踏まれたままである。

 

 

 

 

 

 

「■■■■!」

 

「おい、コラ、いい加減に……」

 

「あっ、ヘラちゃんもお久しぶり!」

 

 今度はアンノウンを見るなり寄ってきたヘラクレスに手を振り、腰を掴むと上に投げてはキャッチを繰り返す。尚、イアソンは踏まれたままである。アンノウン+ヘラクレスで更に嫌な音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にしろ、この馬鹿パンダァァァァァ!!」

 

 ……にも関わらず平然と立ち上がるイアソン。どうやら慣れているようだ……。

 

 

 

 

 それから暫く経ち、漸くカルデアの面々は合流、ソロモンの用意した物とは違う聖杯を持つフランシス・ドレイクと共に旅をしていた一行は黒ヒゲと交戦、色々あって撃破するも黒ヒゲの船にいたヘクトールによって聖杯が奪われてしまった。

 

 

 

「……さてさて、逃げ切れるかねぇ。無理だな、こりゃ」

 

「ああ、無理だな」

 

「諦めて下さい」

 

 ヘクトールの乗る小舟はメディアの魔術で速度が高い。だが、それでも最新鋭のクルーザーに乗ったエミヤと藤丸が新たに召喚したサーヴァントであるケイローンから逃げ切れそうになかった。そう。奇跡でも起きない限りは……。

 

 

 だが、この時奇跡が起きる。遠くから何かが海面を跳ねながら飛んできたのだ。

 

 

 

 

「だーれーかーとーめーてー!」

 

「アンノウン!? ざまぁ!」

 

 まるで平たい石を水面に投げた時のように海面を跳ねるアンノウンに向けて親指を立てるジャンヌ。そしてアンノウンとヘクトールが激突し聖杯が宙を舞う。

 

「アホー! アホー!」

 

 アホウドリが聖杯を咥え、そのまま何処かに飛んでいった…。なお、ヘクトールは海の藻屑である。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー! 参った参った。ヘラちゃんを怒らせちゃってさ。思いっきり投げられちゃった」

 

「どうせ貴方が完全に悪いのでしょう」

 

「うん!」

 

 ドレイクの船に上がったアンノウンはパンダということで最高の待遇を受けながら何が起きたかを語る。どうやら顔見知りだったらしいケイローンを含む全員が胃の辺りを押さえていた。

 

「……それでどうするのかね? イアソン達も聖杯を狙っているのであろう? それにエウリュリアレも探しているとか……」

 

「ステンノさんの妹ですよね? ……あれ? 彼女、アンノウンさんを飼っていたとおっしゃってましたが」

 

「貴方を飼うとは剛毅な事ですね……」

 

 一行は呆れるやら驚くやら様々。そんな時、船に振動が走る。外から攻撃を受けたのだ。

 

 

 

 

 

「まさかヘクトールがやられるとは。……あの役立たずめ!」

 

(イアソン様の方が役立たずですよね……)

 

「■■■」

 

 どうやら藤丸達が聖杯を持っていると思っているのか攻撃を続ける一行。ヘラクレスは船の乗っているケイローンの気配を感じたのか少し大人しい。だがイアソンの命令があれば直ぐに動き出すだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えずアルゴー船の竜骨に爆弾仕掛けておいたから爆破するね」

 

 だが、動き出す前にあるごー船が沈んだのでこれ幸いとヘラクレスは大人しく海底に沈んでいった。

 

 

 

「容赦ないな、貴様」

 

「ほら、僕って今はカルデアの一員だし、その気になれば英霊の座に会いに行けるから仕事はしないと」

 

「「「「マジっ!?」」」」

 

 その場にいたウェイバーとマシュを除くサーヴァントに寒気が走る。全部終わってもアンノウンから解放されないのかと、友人であるジャンヌやエミヤさえも頭を抱え込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと、聖杯は僕の部下が操縦するヘリが回収したって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……む。折角呼ばれたのに解決したのか。……いや、何故かホッとしている」

 

「なーんか碌でもない奴に会わなくてホッとしたような残念なような」

 

「いーじゃない、ダーリン。きっとマスコットの座を守る為に……」

 

「守る為にっ!? 俺、一体どうなってたの!?」

 

 どうなっていたのだろうか……。




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