自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結 作:ケツアゴ
にしても数倍の価格で売ってるのがいるのは酷い
日本の地方都市『冬木』に突如出現した特異点。其れを解明する為に集められたマスター候補達がレイシフトの準備に入る中、カルデアの廊下をポテポテと歩くパンダの姿があった。
名前をアンノウン。カルデアの創設時から住み着いている二足歩行のパンダで言葉を話すのだが、『封印指定永久対象外』とされており、尚且つパンダなので誰も追い出そうとせず、時に医療分門トップのロマンのお菓子を盗み食いしたり、時にダ・ヴィンチの絵のモデルとなってモデル料を所長であるオルガマリーに請求したり、カルデアスの上でタップダンスを踊るなどするいたって人畜有害な存在だ。
「フォーウ…フォッ!?」
もう一体カルデアには謎の生物が住み着いている。フォウと呼ばれるリスの様な生物で、マシュ・キリエライトの前くらいにしか姿を現さない。そんなフォウは背後からムーンウォークで尾行してくるアンノウンに気付いて立ち止まった。
「やあ、フォウ君。久しぶりだね」
「フォーウ!!」
話しかけられるなり全速力で逃げ出すフォウ。アンノウンはゆっくりとした動きでムーンウォークを続け、途中でロマンの秘蔵のお酒を飲みに姿を消した。
其れから何だかんだあって一時間後、爆破によって一般枠の藤丸立花以外のマスター候補が重傷を負い、マシュが気になって彼女のもとに向かった為に冬木市にレイシフトしてしまった彼がデミ・サーヴァントになったマシュと炎上する市内を探索する中、アンノウンも勝手に冬木に来ており、鼻歌交じりに懐から宝石のような物を取り出した。
「黄金の力守りし勇者よ、今こそ甦り我が前に現れ出でよ!!」
其の宝石の名前はパワーストーン。世界各地に散らばる勇者が封印された石で、黄金郷レジェンドラへと向かう為の石である。
「まあ、巨大ロボットは世界観を壊すから別のが来るんだけどね」
「サーヴァント、ルーラー。召還に応じ……おや、貴方は」
お供が居ない同士で合体する余り物ズの代わりに召還されたのは旗を持った金髪の少女、名をジャンヌ・ダルク。彼女は自分を召還したアンノウンを見るなり嬉しそうに微笑んだ。
「久しぶりですね、アンノウン」
「うん! ジャンちゃん、お久ー!」
「既にある程度の状況は把握しています。早速向かいましょう」
「うん! 期間限定メニューを食べに行くんだね!」
「調査です、調査!! ……まったく、貴方は少しも変わっていませんね」
「もー! 相変わらず乗りが悪いなぁ。火炙りにされそうな君を1/1ボストロール人形と入れ替えて助けてあげたのにさ」
「ええ、助けて頂きましたとも。其れについては感謝しています。……ですが、あのチョイスには幾ばくかの悪意を感じます」
ジャンヌが思い出すのは3Dテレビを通して火炙りにされるボストロール人形と、其れを彼女だと信じて疑わない民衆や敵国の者達。乙女心が少し傷付いたらしい。
「幾ばくかの悪意? 違う違う」
「そ、そうなのですか!? 其れは申し訳ありま…」
「混じりっけ無しの悪意だよ」
「やっぱり!!」
「……えー、分かってて言ったの? 面倒くさいなぁ。そういう所、良くないから直しなよ。軍人なら社会人でしょ?」
(怒っちゃ駄目です、ジャンヌ! これには口では勝てません)
ジャンヌがキリキリ痛み出した胃を押さえつつ涙目になってきた時、寺がある方から戦闘音が聞こえてきた。
「……ほぅ。興味深いサーヴァントが居るな」
この特異点の大本である大聖杯。そこで待ちかまえていた黒く染まった騎士王と藤丸とマシュとフォウ、ついでにオルガマリーは対峙する。其の威圧感にマシュがひるむ中、騎士王の剣から莫大な魔力が迸った。
「
「君の心の三遊間を抜ける打法!!」
放たれた聖剣のオーラ。其れは突如現れたドアから飛び出したアンノウンのバッドによってはじき返される。其の姿にその場の全てが唖然とする中、最初に我に返ったのは一周して逆に冷静になったオルガマリーであった。
「ちょっとアンノウン! どうして貴方が此所にいるの!?」
「どこでもドアを使ったから」
「じゃなくて! どうして冬木に貴方が居るのよっ!」
「ほら、ケーキ屋とかに行ったら可愛い陶器に入ったプリンとか売ってるでしょ? アレって何かに使えるかもって取っておくんだけど、結局使わないで埃を被るんだよね。だから今度からは捨てようって思ってたんだけど、また買った時に容器を捨てれなかったんだ」
「なるほど! そう言うことだったんですね!」
「マシュ!? 全然答えになってないよね!?」
「……なるほど、全ての謎が解けたわね。それなら貴方が此所にいる理由になるわ」
「でしょー?」
「所長!? ……これが魔術師の世界の普通なのか?」
藤丸の肩に優しく手が置かれる。振り向くと全てを悟った顔のジャンヌが唯静かに頷いていた。
「お前達、私を前に無駄話とは随分と余裕だな」
その言葉にハッとした藤丸は騎士王の方を向く。剣を包むオーラは先程までとは比べものに成らないほどに膨れ上がり、今まさに放たれようとしていた。
「そうだ! さっきみたいに打ち返せばっ!」
「さっきのバッド? あれチョコレートだから話してる内に手の熱が伝わって溶けちゃったよ?」
「じゃあ、何でそんなので打ち返せたのっ!?」
「冷やして固めていたから」
再び彼の肩にジャンヌの手が置かれる。最早ツッコミを放棄した彼女は聖女に相応しい顔を向けていた。
「今度こそ消えろ……この腐れ珍獣がぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「アンノウン、貴方何をしたの?」
「えー! フォウ君の事かもしれないじゃーん。僕は聖剣を抜く時に柄に強力な接着剤を塗っていたり、玉座にブーブークッションを置いたり、円卓の騎士全員の鼻毛を伸ばしたり、キャメロットの形をパンダ型に改築した程度しかしてないもん!」
「十分すぎるでしょうがぁぁぁぁぁ!!」
「フォウ、フォーウ!!」
一行目掛けて放たれる騎士王の宝具。それに対しジャンヌもまた己の宝具を発動させるべく旗を構える。
「主よ! 我が同胞を守りたまえ!」
「
ジャンヌの宝具が発動するより前にアンノウンの伏せカードが発動し、騎士王の宝具を跳ね返した。
「馬鹿なぁぁぁぁぁぁっ!! ……次は殺す! 絶対殺す! 其処の珍獣は絶対に殺す!!」
「だってさ、フォウ君」
「フォウ!?」
この後、色々あって七つの特異点を修正して回る旅が始まる。そのメンバーにはアンノウンの姿もあった。
「そうそう、ジャンちゃん。僕とフォウ君って今回の黒幕と同じ、人類の自滅機構、人類悪の体現であるビーストなんだ」
「……はぁ。貴方がその程度で安心しました。もっと邪悪な何かかと思っていましたから。それで、どうして人類史を修復するのに協力を?」
「食べ物は美味しい、娯楽は楽しい。何より悪戯は最高! 滅ぼす理由がないじゃない。あっ、一緒の部屋だけど、僕はベッドで我慢するからジャンちゃんは床で寝ていいよ」
「そんな悪いですよ……って危なっ! 危うく騙される所でした!」
意見 感想 誤字指摘お待ちしています
次回予告
邪ンヌ 「ねぇ、お願い、誰か私の頭に水をかけてちょうだい。まずいの。ヤバイの。本気でおかしくなりそうなの」
アンノウン「放水開始ー!」
邪ンヌ「ぷぎゃっ!?」
次回掲載時期は未定