自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結   作:ケツアゴ

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最終回!

 その姿を見た瞬間、会場の殆どの者が絶望の底に叩き落された。黙示録の獣666(トライヘキサ)。オーフィスさえ凌ぐグレートレッドと同格と呼ばれる最強最悪の魔獣。それがリゼヴィムに従うかのように表れたのだから……。

 

「うひゃひゃひゃっ! 死なば諸共って感じに仕掛けた術式が上手く行くとは思わなかったぜっ!」

 

 確立にして億分の一以下、されど事実としてリゼヴィムの背後で待機する黙示録の獣は一歩も動かず、指令を待つかのように待機している。その様な中、この場で唯一対抗できるかもしれないオーフィスはリゼヴィムの真正面で黙示録の獣をジッと見ていた。

 

「どーしたよ、オーフィスちゃん? 君、グレートレッド倒すのに興味失くしたみたいだし用はないんだぜ?」

 

 リゼヴィムの言葉など聞こえないようにオーフィスはジッと黙示録の獣を見続けている。いや、正確には黙示録の体の表面に表面と同じ色の布を被って張り付いているアンノウンの部下達が、皮を剥いて黙示録の獣の口に放り投げているバナナを眺めていた。

 

 

「なあ、アザゼル。彼らって……」

 

「だよな。って、おい。黙示録の獣の背後見てみろ」

 

 視線を不審に思ったリゼヴィムが振り返ると再び布を被ってキグルミ達は隠れ、今度はリンゴを剥いて口に投げ込んでいく。そしてアザゼルが指さす場所にあったのは大きなプラカード。

 

『ドッキリ大成功!!』

 

 

 

「おぃいいいいいいいいっ!?、何やってんだ、あのくそパンダっ!!」

 

 アザゼルが叫んだ頃、遠く離れたピザの斜塔の頂上ではボールみたいに丸くなったアンノウンの上に乗る別のアンノウンが見事な曲芸を披露して次回のアカデミー賞はミルたんに決定したとネットで噂になっていた。

 

 

「そろそろこの世界も終わりかなぁ、僕」

 

「そうだね、僕。次は久しぶりにギルギル達が居た世界に行こうか? それともベルっちの世界は……僕が既に戻ってるね」

 

「なんか面白そうなVMMORPGが出来る末期な世界が有るみたいなんだ。『主人公』になりそうな子を見つけて遊ぼうよ。終わりかけている世界といえばギルギル達の世界の平行世界にも僕の同類が滅ぼそうとしている世界が有るみたい」

 

 アンノウンの最大の趣味、それは『主人公』となる資格の持ち主の周囲をウロチョロして遊ぶ事だ。世の中には物語の主人公のように多くの人生に影響するような運命を持つ者がいる。どうなるかは本人次第だが、結果がどうなろうと気にせずにアンノウンは介入する。ただ楽しむだけの為に。

 

 

 

 

「んじゃ、そろそろ行こうか。フェンちゃんっ!」

 

『ガウッ!』

 

 アンノウンが指笛を鳴らすと地面が割れ、サーゼクスのヘソクリをつぎ込んで作った格納庫の中で寛いでいたフェンリルが姿を現す。その背にアンノウンが乗り込むとフェンリルは夕日に向かって走り出し、急ブレーキをかけたので慣性の法則に従ってアンノウンは宇宙の彼方へと飛んで行った。

 

 

『ガフッ』

 

 満足そうに吠えたフェンリルは格納庫へと戻り、中で息子達の毛づくろいを始める。二匹の毛には何時の間にか青汁が塗られていた。

 

 

 

 

 

「おいおい、怖くて声も出ねぇってか? そりゃ黙示録の獣だもんなぁっ! うひゃひゃひゃひゃっ!!」

 

 アンノウンの被害者一同が胃痛によって動けない中、リゼヴィムの笑い声が響く。そして特等席で破壊と殺戮を見物しようと頭の一つの上に飛び乗った瞬間、足場が爆発して何処かに飛んで行った。何処かは何処かだから何処かは分からない。兎に角何処かに飛んで行ったリゼヴィムは何処か何処か分からないので帰り道が分からず、仕方がないのでトランポリンの行商を開始。巨万の富を稼いだとか稼がないとか、何処かが何処か分からないので調べようがなかった。

 

 

 

「燃える炎は熱血の赤っ! 悪戯担当アンノウン!」

 

 リゼヴィムの足場の爆発の爆炎の色は赤。それをバックにアンノウンが光の巨人のポーズをとる。

 

「全てを凍らせる氷の青っ! 悪戯担当アンノウン!」

 

 次に青い爆炎の前でアンノウンがⅯ75星雲出身のポーズをとる。

 

「全てが痺れる雷の黄色っ! 悪戯担当のアンノウン!」

 

 黄色い爆炎の前でアンノウンが脱走した怪獣を追跡中にハヤト隊員と事故を起こした宇宙人のポーズをとる。

 

 

『僕達五体揃って666(トライヘキサ)!!』

 

 あと、四体のアンノウンが胸のカラータイマーが弱点の宇宙人のポーズをとる。その光景に多くの観客が目を奪われ、次の主演男優賞が誰か決定した瞬間、グレイフィアが飛び出した。

 

 

 

「皆さんっ! 奴を仕留める好機ですっ!!」

 

「えー! グレちゃん酷いっ! 僕と君の仲じゃないか」

 

 アンノウンとグレイフィアの関係は長い。大戦前にグレイフィアの黒歴史を手に入れたアンノウンが大勢にそれをばらまき、黒歴史ポエムを放送で流し、勝手にアイドルデビューさせて黒歴史ポエムを歌わせた。そんな良好極まる仲なのに攻撃するなど下種の極み。世界中のアライグマのファンが一斉にストライキを決行して世界経済が上向きになるレベルだ。

 

 

 だが、世の中は理不尽だ。一部の者が富を独占し、貧しいものはずっと貧しいままのようにままならない。グレイフィアの号令の瞬間、今までアンノウンに胃痛が重症化するレベルで悪戯をされてきた者達が一斉に攻撃を仕掛ける。何たる理不尽、何たる悪行。微塵も正当性のない攻撃に晒されたアンノウンとその本体は立ち上る煙に覆われて姿を完全に隠すも攻撃は止まない。

 

 今まで財産と胃袋と運命と世間体に多大なダメージを負わせたというだけで攻撃されたアンノウンがどうなったのか、それは誰も知らない。何せ居た場所に存在したのは緑の巨体を持つ醜悪なモンスターのリアルスケールフィギュア。竜の探求の三番目で王様に化けていたモンスターの人形だ。

 

 それを見た瞬間、ミカエルの顔が蒼白になる。何せ彼はそれが何か知っていたからだ。

 

 

「ジャンヌダルク!? 何故あの少女がっ!?」

 

「おいおい、なんでジャンヌが居るんだっ!?」

 

「……まさかアンノウンはジャンヌの復讐心が生み出した怪物だったのか!?」

 

 この場にいる誰しもが目の前のフィギュアをフランスのために人生を捧げた少女だと信じて疑わない。この日、悲劇の少女のために盛大な鎮魂の儀式が執り行われ、リアスとサイラオーグの戦いの結果は誰の頭からも消え失せた。

 

 

 

 

 

 そしてこれがアンノウンがこの世界から姿を消し、二度と現れなくなった日である……。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、普通に戻って来るんだけどね」

 

 その頃、アザゼルとミカエルの全財産を持ち出したアンノウンはそのお金で買い求めた妹物のエロ漫画にサーゼクスの名前を書き、リビングのソファーの下に隠しておいた。それを一誠が発見し、リアスに誤解されるのはまた別の話。

 

 

 

 

 アンノウンが居たから楽しかった。悪戯好きで明るいアンノウンが皆(を弄るのが)大好きだった。そんな自由大熊猫UNKNOWNの世界はこれでお終い!

 

「じゃあねっ! バイバーイ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、作者の作品には頻繁に姿を見せるし、別の世界で多分活躍するのだが……。




感想お待ちしています またほかの世界で好き放題するアンノウンをお楽しみください


























某聖処女 解せぬ・・・・









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