自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結   作:ケツアゴ

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お久しぶりです 


第三十三話

  其の存在が生まれたのは真っ白な世界だった。体位雨も月も星も植物も岩も水も空気も闇すらない真っ白な世界。勿論、他の生物も存在しない。

 

 其の存在は自分がどの様な存在か、何が出来るかを知っていて、自分が何時も感じている物が何か知っていた。

 

 退屈、其れが自分が何時も感じて居るもので、意志を持った頃から感じているので退屈でない時など知らない。寂しい、という言葉も知っていたが、自分以外の存在など最初から居ないので寂しいと感じた事はなかったし、感じても其れが寂しさだと分かるはずがない。

 

 

「……おい、其処の。其れを食うな」

 

 初めて別の世界に行って、初めて出会ったのは蛇と人が合わさたような姿をした神の下僕。創造主が大切のしている木の実を全て食べ尽くした其の存在を咎め、何度か話す事で仲良くなった。

 

 これがその存在の初めての『友達』だった。

 

 

「ほほぅ。貴様、我が飼ってやろう」

 

 次の友達は金色の王。誰もが望んだ理想の名君ではなく、誰もが恐れる絶対的な暴君。襲って来たので返り討ちにして、その内仲良くなった。

 

 そして友人が殺されて『怒り』を知った。『殺意』を感じて暴れまわった。

 

 

 

 怪物と仲良くなって、殺されたから殺した奴に国を滅ぼした。別の世界で悪魔と仲良くなって世界を回った。暴君と仲良くなって最期を看取った。征服者と仲良くなって船に悪戯をした。

 

 無限を司る存在と仲良くなった。夢幻を司る存在と仲良くなった。神を殺す魔獣と仲良くなった。分身を色々な世界に送った。焼きそばを頭に乗せた英雄と不死鳥の令嬢と異世界に喚ばれて好き放題暴れまわった。

 

 ニュース番組を放送した。神々がいる町で好き放題した。現実になったゲームの存在と異世界で好き放題した。

 

 

 ずっとずっと。その存在は存在し続ける。友達が死んで、気にいった世界が終わって、終わらないはずの存在が終わる程時間が経っても其の存在は存在を続ける。

 

 其の存在は自由だが、生まれた時ほど自由ではない。孤独という名の鎖に雁字搦めにされているから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……でさ、これが僕の話だって何人が思ったかな、サマちゃん?」

 

『地の文を使ってボケるな、アンノウン。後サマちゃんって呼ぶな』

 

 生まれた頃よりも自由かも知れない……。

 

 

 

 

 

 サクサクサクとスナック菓子を食べる音が控え室に響く。サイラオーグとリアスの試合当日、小猫はリアスから貰った臨時の小遣いで売店のスナック菓子『パンダ烏賊せん(アンノウン製菓)』を食べ進める。

 

「小猫、そろそろ止めておいたら? 食べ過ぎたら試合に響くわよ」

 

「止めません、止められません」

 

「……セーフ、よね? 特定の企業を前面に押し出す内容に当たらないわよね?」

 

 最近胃薬の量が増えたリアスは更にストレスが増えるのを嫌い、其れがストレスになって胃炎が悪化していた。

 

 

「皆様、そろそろお時間です」

 

「……やっとね。皆、今度こそ勝つわよ!!」

 

 任務などで手柄を上げているリアス達であるがソーナに負けた時のようにゲームの評価は悪く、今回もサイラオーグが勝つという意見が多かった。

 

 ……ぶっちゃけリアスも負けるかもって思ってる。

 

(祐斗は嘔吐しながら戦うし、ギャスパーは手遅れだし、他のは天然だし脳筋だし……いや、眷属は愛しているけど)

 

 なお、リアスも十分脳筋である。自然薯のキグルミに案内されてリアス達は陣地となる部屋に向かう。事前の話で既に代表選手を戦闘フィールドに送って戦わせると聞いており、幾つかあるルールの中からどれが来るかと戦略を練るリアスだが、嫌な予感と共に胃が痛みだした。

 

 そして、その予感は当たっていた。

 

 

 

『レディース&ジェントルメン!』

 

『あとおじいちゃんおばあちゃんおじょうちゃんおぼっちゃん』

 

 試合開始のブザーと共に会場は闇に包まれる。闇を見通す力の有るリアス達でさえ一寸先も見えない闇の中、不フィールドの中央にスポットライトが当たり、呑気そうな声と棒読みの声が聞こえて来た。

 

「がっふっ!」

 

「あっ、部長がまた血を吐いた」

 

「あらあら、仕方ありませんわね。ほら、お薬です」

 

 もはや部員も慣れたもので冷静に対処する中、闇が消えて立体映像でフィールドに居る二人が映し出された。

 

 

「今回のゲームの審判はレーティング・ゲームの審判歴一兆年(嘘)のアンノウンと!」

 

「我がする。ぎゃらは課金しやすいようにカードが良い」

 

 禍の団の首領と副首領の二人が其処に居て、その姿を見た観客達は大声を上げる。

 

 

 

『パンダ! パンダだ!』

 

『ロリ! ロリ!』

 

「うんうん、いい反応だね。ってな訳で、今回のルールは……パンダルーレット!!」

 

 説明しよう。パンダルーレットとはレーティング・ゲームの数あるルールの中でも異色を放つもので、話す事の出来るパンダが適当に勝負内容と代表選手を決めるというもの。一切の戦略が通用しない試合内容となり、あらゆる状況に対応する力が求められる。(アンノウン出版『レーティング・ゲームのあれやこれとか適当に解説』 アノパン・ダトライヘキサ著 より)

 

 

 

 

 

「アザゼル、この試合だけど……」

 

「リアス達には悪いが放っておけ。客は盛り上がってるし、関わりたくねぇ……」

 

 来るだろうと予想していたサーゼクスとアザゼルは諦めていた。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、皆。あの二人ってテロリストのボス達なのよね? 皆、何で普通に受け入れてるのかしら?」

 

「部長、諦めが必要です」

 

 小猫がリアスを諭す中、フィールドでは観客の歓声を浴びながらアンノウンのダンスが行われていた。

 

 

「何にするかな? 誰にするかな? 全ては僕の気分次第!」

 

「はぁ、よいよい」

 

「アレに決めた! あの子に決めた! パンパン、パンダのパンダのルーレット!」

 

「はーどっこい。……金色!! ……また、すまないさん」

 

 アンノウンは腰に手を当てて尻尾を振りながら飛び跳ね、オーフィスはスマホ片手に適当な合いの手を入れる。

 

 

「ってな訳で! 第一競技は『肉マン一万食べつくせ!』に決定! え? もはやチェストは無関係? 今更じゃーん。あっ、選手は小猫ちゃんとクイーシャちゃんね。十分以内により多く食べたほうの勝ち!」

 

「……アレがアンノウンか。折角王者の指導を受けたのに……あとメタ会話禁止」

 

「まぁ作戦らしい作戦は一騎打ちの状況でしか使えない公開ストリップだけな上に、脱いだ後はどうすんのってレベルなんだから良いじゃーん」

 

「会話しているっ!? 何故此処の会話が聞こえるんだっ!?」

 

 慣れていないサイラオーグは戸惑う。リアスは勘で其れを感じ取って同情する。そんな中、肉マンの準備が始められていた。

 

「アレでもない、コレでもない。えーっと、何処だっけ?」

 

 映画版青狸の様に四次元空間に繋がったポケットから古びたランプやマヌケな顔がついた壺や薬缶や打出の小槌や泥で汚染された聖杯や猿の手や青狸型のケースに入った薬品を散らかしながら目当ての物を探す。

 

「あった!」

 

 目当ての物以外はキグルミ集団が回収し、星が入っている珠を七つ並べたアンノウンは天を見上げた。

 

「出てよ、神龍(シ○ンロン)。そして願いを叶えたまえ〜!」

 

 天が急に暗くなり、珠全てが光って光は空へと登っていく。そして、巨大な龍が現れた。

 

 

 

 

『よくぞドラゴ○ボールを集めた。願いを言え。どんな願いでも一つだけ叶えてやる』

 

「僕が用意した肉マンのカロリーを三十倍にして。脂質が九割でお願い」

 

『容易い事……え? そんなので良いの? ……願いは叶えた。さらばだ! ……次はマトモな願いにしてくれ。っていうか、お前は呼ぶな』

 

 キグルミ集団が用意した肉マンは龍から放たれた光に包まれる。其の儘龍の姿が消えると珠は七つとも天高く浮かび上がり、四散して遥か彼方へと……。

 

 

 

 

 

 

「……○条さん。我、野球選手にはなれなかった。でも、我……アメリカンフットボールでヒーローになる」

 

 飛んで行く前に全てオーフィスがキャッチした。

 

 

 

 

 

 

「……えっと、よろしくお願いします」

 

「ええ、良い勝負をしましょう。……カロリー三十倍かぁ」

 

 フィールドに転移してから放ったらかしのクイーシャは嫌がりながらも肉マンに手を付ける、だが其の横では途轍もない速度で食べていく。

 

 

 

 

 

「……失敗しました」

 

 だが、十個目を完食した所で小猫の手が止まった。

 

 

 

「お菓子食べ過ぎて満腹です」

 

 この後、クイーシャが十一個食べて第一試合に勝利するも、後日体重計に乗った彼女は悲鳴を上げる事になる。

 

 

 

 




最近 執筆使いさんとコラボしています 悪魔の店っていうホラーです

活動報告でキャラ募集中なのでお願いします

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