自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結   作:ケツアゴ

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第三話

 リアス・グレモリーはこの時、軽く混乱していた。眷属になったばかりの一誠がはぐれエクソシスト(協会をつ放された悪魔祓い)に襲われている事を察知して来てみれば、部屋の中にパンダのキグルミが居たからだ。

 

「……部長、疲れているのでしょうか? どう見ても喋れるだけのパンダですわよね」

 

「何か気苦労を感じる原因でも有るのかな?」

 

「変た……兵藤先輩じゃないですか?」

 

「……そっか。契約で失敗だらけだもんな」

 

 このようにキグルミをキグルミだと言ったら眷属に可哀想なものを見る目で見られる。そして状況確認の為にはぐれエクソシストらしき少年とシスターの少女の姿を確認し注意しながら部屋を確認する。不自然に隙間の空いた本棚やCDラック、コントローラーのないゲーム機に大きく抉れた壁。血飛沫が見えるが部屋の所有者の姿は何処にも見えなかった。

 

「……此処の住人は何処に消えたのかしら?」

 

「あん? 決まってるっしょ。俺っちが……あれ? どうしたんだっけ……?」

 

「そ、そういえば何かあったような……」

 

 一誠達はまるで数分前の記憶がゴッソリと抜け落ちた様な感覚に陥る。寸の間硬直していた三人だが、フリードはふと思い出したかのように光の剣を抜いてリアスに斬りかかった。

 

「どうでも良いや、お命頂戴!」

 

「……させません」

 

 しかし横から小猫がソファーを投げつけてそれを妨害する。フリードは壁とソファーに挟まれて気を失った。

 

「……さて、次は貴方の番よ」

 

「そろそろ塾の時間だから帰るね」

 

 アンノウンはゲームの限定版やラノベ、DVDなどでパンパンになった手提げ袋を抱えつつ部屋から出ていく。しかしその手を小猫が掴んだ。

 

「待って下さい」

 

「よくやったわ、小猫!」

 

 リアスは小猫が捕まえている内に尋問しようと駆け寄る。

 

「……写真お願いします。抱っこの写真を希望します」

 

「じゃあ、千五百円ね。消費税別」

 

 そして転んで顔面スライディングした。

 

 

 

 

「部長、堕天使が近付いて来ているから撤退しませんと……」

 

「……小猫、行くわよ」

 

「はぁい……」

 

 小猫は渋々といった様子でアンノウンの腕から飛び降り魔法陣へと向かう。祐斗に支えられながら魔法陣に入った一誠の目にアーシアが映った。

 

「部長! あの子も連れて行って下さい! あんなヤバイ奴と一緒には……」

 

「無理よ。この魔法陣は眷属以外には反応しないの。それに、あの子は堕天使の仲間よ」

 

 そのまま一誠達は転移して部屋から消え、部屋の中にはアーシアとフリードだけが残された……。

 

 

 

 

 

 

「……それで、なんで貴方が着いて来ているのかしら? と言うよりも、どうやって着いて来たのかしら?」

 

 部室まで転移すると其処に居たのはアンノウン。彼も魔法陣で転移していた。

 

「千五百円まだ貰ってないから駆け込み乗車で飛び乗った」

 

「だから、どうして貴方に魔法陣が反応したのかって聞いているのよ!」

 

「パンダは皆の人気者だからさ。動物界の花形でしょ?」

 

 アンノウンは小猫からお金を受け取りつつ平然と答える。リアス以外の者達は納得したとばかりに頷いていた。

 

「パンダだから仕方ないですわね」

 

「パンダじゃしょうがないですよ」

 

「……パンダは凄いですから」

 

「流石パンダ。……アーシア」

 

「もう嫌……」

 

 リアスは項垂れ溜息を吐く。顔を上げると何時の間にかアンノウンの姿が消えていた。

 

「……部長、不審大熊猫という事で記念写真代、経費で落ちますか?」

 

「領収書は期日までに出してね……」

 

 小猫が出した領収書にはアンノウンに持ち帰られたお菓子の代金が『茶菓代』として付け加えられていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、もう終わったのかよ。相変わらず早いぜぃ」

 

 美猴は禍の団にスカウトする目的で堕天使組織『神の子を見張る者(グ リ ゴ リ)』のメンバーであり、二天龍の片割れを宿す神器『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』の持ち主であるヴァーリに会いに行ったのだが、美猴が到着する前にアンノウンが終わらせていた。

 

「……負けたよ。まさか三回裏送りバンドから残り時間五秒でショットガンフォーメーションでのタッチダウン狙い。最後にスーパーのクイズ懸賞で大型テレビを当選させるとはね。……大食い界の歴史に残る良い戦いだったよ」

 

「いやいや、フランダースの犬を三分で読み尽くして説明するとは。NGシーンの時間が本編より多かった時には負けを確信したよ。でも、最後のモミジ饅頭がチョコ味だったのは下策だったね。彼処はスタンダードなアンコにするべきだった」

 

「……そうか。じゃあ今からリタマラして天鱗を手に入れないといけないね。じゃないと君の華麗なトリプルアクセルには敵わない」

 

「どういう戦いだったのっ!?」

 

『素晴らしい……戦いだった……』

 

 この後、ヴァーリはスカウトを受け入れる事にした。なお、アルビオンは感極まって涙している。どうやら彼もアンノウンの同類のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうですか。()がお嬢様の所に……」

 

 リアスから報告を受けたグレイフィアは受話器を握り潰すと部屋に戻って荷物を纏めだした。

 

「母様、何処かに行くのですか?」

 

「ミリキャス様、今は母様と呼ばないように何度も言ったはずですよ。それと私は暫く気に入らない奴を殺す為にお嬢様の所に行きますのでサーゼクス様にはそうおつたえください」

 

 一時間後、サーゼクスの必死の説得で翌日顔を出すだけに止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に私と友達になってくれるんですか?」

 

 翌日、フリードから受けたダメージが回復しきってない一誠はリアスの指示で学校を休み、出歩いた先でアーシアと再会した。二人仲良く遊んだ後、彼女の経歴を聞いた一誠は欲しがっていた友人になると言い、アーシアは涙を浮かべながら聞き返す。

 

 

 

「うん! 君は結構弄りがいが有りそうだし、友達になろうよ!」

 

「パンダちゃん!?」

 

 アンノウンはアーシアの手を取ると握手を交わす。モフモフの感触にアーシアが驚いた時、側面から放たれた魔力がアンノウンを吹き飛ばした。二人が放たれた方向をみると其処にいたのは銀髪メイドのグレイフィアだ。

 

「っち、しとめ損ないましたか」

 

 忌々しそうに舌打ちした彼女の視線の先には後ろ足で立つレッサーパンダのヌイグルミ。グレイフィアは二人に一礼するとその場を立ち去っていく。そしてそれを見計らうかのように一誠を殺そうとした堕天使レイナーレが降り立った。       

 

「探したわよ、アーシア」




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