自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結   作:ケツアゴ

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二十六話

 ディオドラに対するホモ疑惑は瞬く間に冥界中を駆け巡り、果や天界や他神話にまで広まった。主に広めたのはマスコミ最大大手の”パンダコーポレーション”だ。ディオドラの過去の女性関係から眷属達との写真まで流出した。アスタロト家のもみ消し作業も通用せず、部屋に閉じこもってしまったディオドラ、

 

 だが、この日は連日連夜屋敷を囲んでいたマスコミの姿が見えず、怪訝に思いながらテレビを付けた彼の目に信じられない光景が映し出された。

 

「なっ!? どうして僕がもう一人いるんだっ!?」

 

 放送されているのは緊急記者会見。カメラを向けられているのは金髪のヅラを被り『でぃおどら』と欠かれた名札を付けたパンダのキグルミであった……。

 

 

 

 

「ディオドラ様! 此度の疑惑ですが本当の所はどうなのですかっ!?」

 

「実は同性愛者で女性が殆どを占める眷属構成はそれを隠すフェイクなのですかっ!?」

 

 カメラのフラッシュを焚きながらアンノウンに詰め寄る記者達だが、ガードマン替わりのベル・クラネル(黒子)元はぐれ悪魔祓い(他のキグルミ)によって止められる。そして視聴率が八十%を超える記者会見を悪魔堕天使天使他神話の住民が見守る中、アンノウンは静かに口を開いた。

 

 

「教会の女の子を誘惑して眷属にしたり、妾にしてるけど、男の子も大好きなんだ~。でも、悪魔は欲望に忠実だから別に良いよね? だから、どうしても欲しいアーシアちゃんを手に入れる為に禍の団(カオス・ブリゲート)と手を組んで……あっ、これ秘密だった。……どこでも襖~」

 

 アンノウンは机の引き出しから取り出したフスマを壁に立て掛け、コキュートスに入っていく。ベル達も頭から布を被り、手品の様に消え去った。

 

 

 

「なんで僕が全部暴露しているんだっ!? ……逃げなきゃ」

 

 その後、彼の姿を見た者は居ない……。

 

 

 

 

 

「ねぇ、イッセー。あれってアンノウンじゃない?」

 

「どうしたんですか? どう見てもディオドラの奴でしょ。名札にそう書いてあったじゃないっすか。……疲れてるなら休んだらどうです?」

 

「……私は貴方達に疲れたわ」

 

 何を言ってるんですか、というような顔を向ける眷属達に頭痛を覚えるリアス。オーフィスはベル(黒子)の膝の中に収まりながらホラー映画にチャンネルを切り替えた。

 

「……テレビって凄いなぁ」

 

「キモグロ映画、面白い。ベル、我はホルモン炒め、食べたい」

 

「ハラワタ出る映画見てよく食べれるねっ!? ……今直ぐ作るよ」

 

 

 

 

 

 

《……奴が侵入した?》

 

 ここは冥府、冥王ハーデスが統治する世界。玉座に座ったハーデスはアンノウン侵入の報告を『さいじょうきゅうしにがみ』と書いた名札を付けたアンノウンから受けるなり立ち上がる。

 

「でね、アンノウンを倒すのにサマちゃんが必要なんだ。だからさ、英雄派に早めにサマエルを貸すから封印解除の道具使用の許可書欲しいなぁ」

 

《……良いだろう。今すぐ用意する》

 

 ハーデスから許可書を受け取るとアンノウンを倒してくると言いながら大喜びで去っていくアンノウンをじっと見ながらハーデスは首を捻る。

 

《あんな毛がフサフサの死神、居たかのぅ》

 

 数十分後、失敗したから戻しておくね、と書かれた報告書が送られ、サマエルが封印されてた場所には『サマちゃん』と書かれた名札を付けた腰振るパンダ人形が入っていた。

 

 

 

 

 

 

「てな訳で、サマちゃん復活パーティだよ! ……あれぇ? 黒歌とヴァーリは?」

 

「黒歌さんなら産婦人科も出来る闇医者の所に行きましたよ? ヴァーリさんは付き添いです。あっ、よろしくお願いしますサマエルさん。私、ルフェイと申します」

 

「私はアーサーです。どうぞよろしく」

 

『サマエルだ』

 

「いやいやいやいやっ!? なんでサマエル(最強の龍殺し)が居るんだよっ!? 色々おかしいだろっ!?」

 

 平然と挨拶するペンドラゴン兄妹に対し美猴だけはマトモな感性を運悪く残していた為に受け入れる事が出来ない。その言葉に振り返ったアーサー達は無言で彼に近付くとその両肩に手を置いた。

 

「受け入れなさい。楽になりますよ」

 

「悩むだけ損です。アンノウンさんはああいう存在ですから」

 

『やれやれ、騒がしい猿だ。おい、トライヘキサ。もう料理を食べて良いのか? 私は腹が減ったぞ』

 

「あっ、良いよ。その前に龍殺しのオーラを抑えるペンダントが有るから付けてね。ヴァーリやお腹の子が死んだら玩具が減……可哀想でしょ」

 

『相変わらずだな、貴様は。まぁ、良い。私は助けろなど言っておらんから礼は言わんぞ』

 

「あははっ! サマちゃんは相変わらずだね。じゃあ、ご飯にしようか」

 

 

 

 

 

 

「なぁなぁ、さっきアンノウンの事をトライヘキサって呼んでなかったかぃ?」

 

「しっ! 深く関わらないのが得策でしょう。もぅ! 内臓抉り出しますよ?」

 

「好奇心は猫をも殺すと言いますが、私まで巻き込むのならコールブラントの錆にしますからねっ!」

 

「この兄妹怖っ!?」

 

 

 

 

 

 

「ディオドラの野郎が失踪したから今度のゲームは中止だ。……恐らく生きちゃいねぇだろうがな」

 

 アザゼルから報告を受けたリアス達も会見を観ていたので特に思うことなく、オーフィスはアンノウンにテレビ局に送るように言われていた天使時代のアザゼルの天界での作文発表会のビデオを送る準備をしながらスナック菓子を摘む。

 

 なぜか世界中のテレビのチャンネルが何者か(アンノウン)に操作され、アザゼルの大戦中のアダ名が広まることになるのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

「……なんだ、この書類は。アザゼルの名前変更届け?」

 

「どうかしたか? シェムハザ」

 

「いや、誰からか送られてきたアザゼルの名前を『閃光と暗黒の(ブレイザー・シャイニング)龍絶剣(・オア・ダークネス・ブレード)』に変更する書類だ。……このパンダのスタンプを見ていたらどうしても承認しなきゃいけない気がしてきた」

 

「まぁ仕事をサボって酒を飲んでいた罰だ。一ヶ……半年位は再変更出来ないようにしておこう」

 

 

 

 

 

 閃光と暗黒の龍絶剣に不幸が降り掛かる中、リゼヴィムの目の前には十本の角と七つの頭を持つ巨大な獣の姿があった。

 

「ひゃっはっはっはっはっはっはっ! ついに見つけたぜ愛しのトライヘキサちゃ~ん! しかも封印が殆ど解けてやがる。……後は上手く動かせるように……」

 

 これから起こす予定の惨劇と破壊を想像しながら北叟笑むリゼヴィムの顔はまさに悪魔そのもの。悪意の体現者たる彼は己の目標達成に向けて第一歩を踏み出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、後ろのトライヘキサが僅かに笑い、更には己以上に性格が悪いなどとは知る由もなかったが……。




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