自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結 作:ケツアゴ
姐さんの方、アレな感想が来て少々落ち込み気味 せめてログインしてからコメントしてよ。ログインと違って罰則条件が余程でないと適応されなさそうな非ログインで送ってくるとか
つまらん! とかなら兎も角、書かなくて良い、書かないで、とか。別に私が書いてもその人のお気に入りが更新されないとかじゃないんだしさ。邪魔になるわけでもないんだし、わざわざ書いてくる必要って有る?
「漸く起きたか」
「あっ、お早う御座います」
その日、ベルが目覚めると其処はダンジョンの中だった。いつの間にかベットごと運び込まれており、枕元にはアンノウンがくれたヘファイストス・ファミリアの一級品のナイフ二本と”ffⅦう゛ぁーじょんのふぁいなるうぇぽん”と水性マジックで書かれた大剣。そしてハシビロコウを挟んだ先には担当のエイナから聞いた事のある中層のモンスターの群れが正座していた。
「え~と、どういう状況でしょうか?」
「お前が既に楽に倒せるミノタウロスを未だ怖がっているからな。さっさと倒せ」
「説明になってませんよねっ!?」
ツッコミを入れながらも慌ててナイフを手に取るベル。それと同時にハシビロコウは後方に飛び退き、それを待っていたとばかりにモンスター達が一斉に襲いかかって来た。
「わっ!?」
まず最初に襲いかかって来たのは石斧を手にした大型の兎”アルミラージ”、その後方ではヘルハウンドが今にも炎を吐きかけようとしていた。
「とりあえず君達から……」
『ギィッ!?』
ヘルハウンドの炎を飛んで避けたベルはアルミラージの頭を掴むとそのまま壁に叩きつけ、アルミラージを抱えたまま壁を蹴って再び炎を吐こうとしていたヘルハウンドの頭を踏み付ける。ヘルハウンドは口を無理やり閉じられたまま地面で顎を強打し、そのまま頭に叩き付けられたアルミラージごと脳天を串刺しにされた。
「……後は」
最後に残ったのはミノタウロス三匹。数日前に死にかけた状況と同じだが、今のベルは少しも恐れを感じていなかった。
「何でだろうね? こうやって会ってみたら不思議と怖くないや……」
『ヴァアアアアアアア!!!』
唸り声をあげながら拳を突き出すミノタウロス。ベルはその場から一歩も動かず体を斜めにズラすだけで避けるとナイフをまっすぐ突き出しミノタウロスの喉元を抉った。その場で膝をついて魔石を残して消え去るミノタウロス。だが残りの二匹が両側から迫って来ていた。
「わっと……」
咄嗟に右側のミノタウロスに飛び掛ったベルはそのまま肩に飛び乗ると眉間にナイフを深く突き刺す。そのまま足場にしたミノタウロスが消え去る前に蹴り付け、向かって来た残りの一体を飛び越すと上下逆さまに落下しながら後ろ首を切り裂いた。
「……まだまだ甘いな。おい、もっと奥に行くぞ」
「はい!」
全身に浴びたモンスターの返り血を気にせずにダンジョンの奥へと向かうベル。ハシビロコウの後を追うように飛び込んだ縦穴の先にはモンスターの餌場があった。
「全部倒せ!」
「はい!」
もう色々と染まったベルであった。それからの闘いはまさに狂戦士の如し。相手の攻撃を防ごうともせず一歩間違えれば直撃の危険を冒してまで相手の懐に潜り込んで首や胸を突き刺し、時に相手に掴みかかり、身の丈数倍の相手に殴りかかって血塗れになりながら次々に倒していった。
「第ン千回神会ー!」
本当は三ヶ月に一回行われる神同士の情報交換や雑談会だが、この日は少し早めに行われた。その理由は異例のレベルアップを果たしたベルの存在。そして彼が所属するファミリアの主神であるアンノウンはというと。
「……むにゃむにゃ、もうお腹いっぱい」
持ち込んだ羽毛布団一式に包まりナイトキャップと寝巻きを着込んで鼻ちょうちんを出しながら眠っていた。一緒に来たヘスティアは見ないふりをし、アンノウンに弱みを握られている神は何も言えないでいる。
「おい、どチビ。其処のパンダどうにかせぇや」
「僕には無理だよ。……あとベル君がどうやって一日でレベルアップしたのか知らないよ。全部彼が何かしたらしいからさ」
その精神的に疲れきった表情に悪乗りばかりの神々も今度ばかりは何も言えず其の儘別の話題にになる。だが、ベルに関する資料をジッと見ている神が二人居た。一人はフレイヤ。もう一人は……。
「……実に興味深いな。彼がどうしても欲しい……」
其の名はアポロン。欲しい物を手にする為には手段を選ばない事で有名な神だ。
「あっ! この道具でベル君の闘いを見れるって」
思い出したようにヘスティアが取り出した道具が壁に映像を映し出す。其所には血塗れになって戦い続けるベルの姿が映っていた。
「……おい、ドチビ。パンダの所の眷属って可愛らしい奴ちゃうかったんかい……」
「うん、そのはずだったんだけど。ずいぶんと強くなったみたいだね!」
アンノウンの浸食はヘスティアにまで及んでおり神々の殆どがドン引きする中、彼女の瞳は輝いていた……。
「
「うん! アポ何とかとかいう神が君の事を欲しがってさ、しつこく頼んでくるから引き受けちゃった」
ダンジョンから帰って一休みしていたベルはホームの横でサーカスの準備をしていたアンノウンから
「え~と、どうするんですか? 流石に百名以上を相手にするのはちょっと……」
「うん! だからさ、僕の個人的な部下を全部眷属にしようと思うんだ! ……な~んか君に興味を持ってる奴は多いしさ、此処で見せしめしとかないと面白くない事になりそうだからね。僕、面白くない事とイシュタルとディルムッドとグラニアが同じくらい嫌いなんだ」
「は、はぁ。取り敢えずステイタスの更新をお願いします」
最後にアンノウンの声色が変わった事に少しの怯えを感じながらもベルはホームに戻っていった。
もう、マトモで純粋な頃には戻れない……。
「ふふふふ、君も大した度胸だね。たった一人の眷属を賭けて戦うなんてさ」
戦争遊戯当日、酒場でワイングラスを傾けながら洗浄を打ちしだす鏡を眺めるアポロンは隣でじゃが丸君を頬張るアンノウンンに笑い掛ける。
「フルハウス!」
「我、ロイヤルストレートフラッシュ」
「……負けた」
「いや、無視しないでくれるかい? まぁ、新しく眷属を登録したという話は聞いたが、どうも誤報が出回っているみたいだしね」
所詮はレベル2一人。自分の抱えるレベル3を筆頭とした百人以上のメンバーには敵わない。その自信からか余裕綽々な様子のアポロンは今度はヘスティアに顔を向けた。
「そうだ! ベル君のついでに君もウチのファミリアに来ないかい? ……ヘスティア?」
「……アポロン。僕は君に同情するよ」
その言葉の真意を尋ねる前にゲームが開始される。ルールは三日間の間にアポロン側のリーダーであるヒュアキントスを倒せないかベルが負ければアポロン側の勝利。討ち取ればアンノウン側の勝ちだ。もちろん今回の試合は賭けの対象となっており、優勢だと思われるアポロン側に賭けが集中している。
「……何だアレは」
そして開始直後にアポロンは絶句した、画面に映るのは城を取り囲む無数のキグルミ達。その数はざっと数えただけでも数十万に及ぶだろう。
「……だから言っただろう、アポロン。僕は君に同情するって。あれ全てがアンノウンの新しい眷属さ」
ヘスティアは結果が分かりきったゲームに興味がないのか注文した料理に視線を向け、アンノウンは七並べの用意をしだした。
「あのね、教えてあげる。この世すべての面白いものは全部僕が面白可笑しく弄る為に存在しているんだよ? だからさ、僕が気に入った物に手を出す子にはお仕置きしてるんだ」
「だ、だからってあの数はないだろうっ!?」
画面には圧倒的多数で押し寄せる軍勢に為すすべもなく侵入され、ピコピコハンマーやハリセン、金ダライや釘バットで蹂躙されるアポロンの眷属の様子が映し出されていた、その光景に涙目になるアポロン。それに対し油を口に含んで火吹き芸を始めたアンノウンがメモを差し出した。
『眷属を集める努力を怠った君が悪い』
それは奇しくもアンノウンがこの世界に来なかった時にアポロンがヘスティアに向かって放った言葉と同じ内容。
そして最後にはヒュアキントスがベルに一騎打ちを挑んで負け、開始から一時間足らずでアンノウンの勝利で幕を閉じた。
「……あ、あの、それで君は僕に何を請求する気だい……?」
「えっとね、ファミリア解散と元眷属との故意の接触永久不可と財産の没収と鼻毛以外の永久脱毛と鼻毛を整える事の禁止と時給じゃが丸君一個でウチの掃除係ね。あと語尾に『~ざぁます』って必ず付けること! ……僕に喧嘩売るってこういう事だよ?」
可愛らしい声で首を傾げながら告げるアンノウンに対しその場に崩れ落ちるアポロン。その頃、フレイヤの元に一通の手紙が送られていた。
『知ってる? キスをすると物凄い数の雑菌が口の中を行ったり来たりしてるんだ』
「……」
そして最後、珍しく微笑んでいる者が居た。
「我、賭けで大儲け。都市中のじゃが丸君買える」
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