自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結 作:ケツアゴ
アニメ13話くらいまでには終わる予定
「魔導書が欲しい? まあ、別に良いけどさ。次のイベントに出す賞品以外でベル君でも使える物といえば……」
それはアンノウンが魔剣を創る為に人参や玉葱を煮込んでいた時の事、ベルに何か余っている魔導書と言われたので自然薯の皮を剥かずに鍋に投入するアンノウン。暫く迷っていたが何かを思い出したようにポンと手を叩いた。
「鍋敷きに使ってる魔導書なんだけど、それあげるよ。なんか読んだ子が欲っした魔法を与えてくれるってレアな奴」
鍋にワサビとシュノーケルを投入するアンノウン。やがて蕎麦の良い匂いが部屋に充満し、完成した魔剣がプカプカと浮いてきた。
「何で魔剣が浮くんですかっ!? てか何でそんな方法で魔剣が作れるのっ!?」
「僕だから!」
鍛冶を生業とするファミリアを経営しているヘファイトス等が知ったら理不尽さに怒る様な光景を目にしたベルだが最後の言葉に納得し、得られた魔導書を手に鼻歌交じりに部屋から出ていった。
「はい! ステイタス更新終~わり!」
ステイタスはいくら経験を積んでも更新しなければ意味がない。今日もハシビロコウとの特訓やダンジョンで頑張ったベルのステイタスは上昇していた。
「おめでとう! スキルが出てるよ。しかもアビリティも!」
アビリティ、それはステイタスの様に能力が上がっていく物である。喜んだベルはステイタスを移した髪を見るが直ぐに固まってしまう。何やらおかしい物が書かれていた。
Lv.2
力:I0→78 耐久:I0→F302 器用:I0→G230 敏捷:I0→H190 魔力:I0 ツッコミ:I
【
早熟
ステータス補正
アンノウンに仕えている間は時間や世界の壁を無視して呼び出される事が出来る
アンノウンの言動に胃痛を覚えたり慣れたりツッコミを入れたりする度に効果向上
胃薬の効き目がアップ
【
早熟
ステータス補正
幼い少女、もしくは見た目が幼い少女から向けられる、または向ける好意が増えれば効果向上
年上の女性への恋愛的好意を感じにくくなり、魅了の類も無効。ただし年下からの魅了には弱くなる
通報されにくくなる
【
早熟
アンノウンに面白がられるほど効果上昇
能力限界突破
アンノウンに飽きられたらこのスキルは消滅する
「あ~、ハシビロコウの戦闘スタイルはテクニックタイプだから力はあまり伸びないね」
「問題は其処ですかっ!?」
「ヘファイストス、僕もう疲れちゃったよ……」
「そりゃグータラなアンタが住み込みで家政婦なんか始めたら疲れるでしょ。犬と一緒に天に召される前に貸したお金は返してね」
ある日の夜、友神であるヘファイストスと酒を飲みに来たヘスティアは疲れきった顔で酒をあおる。幼女と少女の境目くらいの見た目のかmの除が酒を飲むのは倫理的にアウトに思えるが神なのでオッケーだ。
「そりゃ給料は良いよ? じゃが丸君の屋台のバイトが賠償の影響で時給三十ヴァリスで今の日給が一日八時間で三万ヴァリス。ていうか魔石の欠片三つで千二百は貰えるのを考えると皆冒険者になる訳だよ」
「それはそうと無茶苦茶な奴なんだって? 宴の時も少し見てたけど自由過ぎるでしょ……」
「うん……。でっかい狼の魔獣の体を洗ったりするんだけど神殺しの牙と爪を持ってるって後から教えられたりしてるよ。しかも今度は
「それて牛筋煮込みなんじゃない?」
「なんだってっ!? アムリタって牛筋煮込みの事だったのかいっ!?」
「……相変わらずアホね。……そういえばベルだったっけ? アンノウンの唯一の眷属って」
「うん! ベル君はとっても良い子だぜ! 僕の眷属に欲しかったくらいさ」
どうもベルの事が気に入ったらしく目を輝かせて語りだすヘスティア。あまりに長い話にへファイトスは辟易し始めた。
「はいはい、ご馳走様。アンノウンもその子は大切にしてるんでしょ?」
「……どうだろう。確かに良い装備を与えたり指導者を宛てがったり待遇は良いよ? でもさ、アンノウンは美の神神以上に気まぐれで持つ力は強力だ。……それに、何でベルくんを眷属にしたのか聞いたのさ。そうしたらさ、”運命の光が強かったから”、って言ってたよ。そういう子はまるで英雄譚お主人公のように様々な事に関わり時には世界すら救える可能性があるんだって」
「……そりゃ凄いわね」
「でも、あくまでそういう運命のもとに生まれただけで切り抜けられる才能を持ってるかは別らしくって、兎に角そういう子に関わって事態を引っ掻き回すのが楽しいって言ってたよ。それでもし全てが駄目になっても、それはそれで面白いってね……」
「全て、ね……。その全てってのはその子の全てなのか、その子が救えるはずだった全てなのか、どっちでしょうね……」
「ふっ!」
ハシビロコウのナイフがベルの首元を掠め塗られた墨が黒い線を引く。最程から何度斬りかかってもベルンナイフは全て躱され防がれ、反対にベルの体には黒い線がどんどん出来上がる。その全てが急所。模擬戦用のゴムナイフでなければ既にベルは三十回は死んでいるだろう。
「動きが甘い判断が遅い。以下に此方は無傷で相手を殺せるか、それだけを考えろ。……少し休憩だ」
ハシビロコウはバベルから向けられる無遠慮な視線に舌打ちしながら座り込む。ベルは既に息が上がっており立ち上がれそうになかった。
「しかし貴様はイマイチ気迫が足らんな。強くなったらこうしたいああしたいという願いはないのか? 例えばオーフィス様とどうにかなる、とか」
まあ、無理だろがな、そう思いながらも口に出さないハシビロコウに対し、上半身だけ起こしたベルは真剣な眼差しを向けて拳を握り締めた。
「いえ、それは出来ません! YESロリータNOタッチ! それが紳士というものです!」
変態が頭に付くだろうが紳士には変わりないだろう。栗饅頭や苺大福が饅頭や大福には変わりない様に。
もっとも、その両方とも栗や苺の方がメインなのだが。その理論で言うと変態と紳士の何方がメインかを考えると……。
「う~ん、とりあえずミノタウロスと戦わせようか。トラウマ払拭させたいし」
とりあえずベルに試練が降り掛かる日は近かった。
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