自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結 作:ケツアゴ
ミノタウロス、人身牛面の化け物で神話ではゼウスの息子のミノス王がポセイドンの怒りを買ったことによって王妃と牛の間に生まれたとされている。この世界にはゼウスとか居るのに何でダンジョンに出現する? 等とは突っ込んではいけないだろうが、そのミノタウロスは中層あたりから出現する凶暴なモンスターでレベル一の冒険者などが到底適う相手ではない。
もっとも、よほどのことがない限り上層部で合うことなど無いのだが・・・・・。
「ひぇぇぇぇぇぇっ!?」
そして此所に其の余程のことが有って七階層でミノタウロスと遭遇したベルの姿があった。荒い鼻息に築いて振り返った瞬間に横から殴り飛ばされ壁に激突した。それでも怪我一つ無いのはアンノウンから渡されれた防具のおかげだろう。金獅子ラージャン、国一つ滅ぼしたことさえある古龍と呼ばれるドラゴンさえ避けて通ると言われる凶暴なモンスター、その中でも上位の素材が彼の防具には使われているのだ。
だが、どれほど優れた装備をしていてもダンジョンに入ったばかりの素人がミノタウロスに襲われて落ち着いていられるだろうか? いや、持ち付けるはずがない。ベルは今までの人生で出した速度などはるかに追い抜く速さで駆け出した、ミノタウロスはその姿を追い掛けるも直ぐに見失ってしまった。
「はぁはぁ、此処まで来れば……あれ?」
ミノタウロスなどとっくに置き去りにした事など気付いていないベルはいつの間にか見慣れない袋小路に迷い込んでしまった事に気付いた。何とか装備は落としていないが必死に書いた地図も落としている。簡単に言うと迷子だ。
『グルルルルルル』
そして、袋小路から出る道の向こうからミノタウロス三体の鳴き声が聞こえてきた……。
「いらっしゃ~い! トライヘキサ・フェミリア新人出発記念だよ~!」
ここは都市の中央広場。そこにアンノウンと彼が開いた催し物目的でやってきた冒険者や商人の姿があった。出来たばかりで信用もないフェミリアのイベントに何故此処まで人が集まるのか? その答えは予めまかれたチラシにあった。
『大福引き大会! 一回百万ヴァリスで魔道書が”必ず”当たる! お一人様三回まで』
魔道書は魔法を覚えるために必要で使用できるのは一人の上に兎に角高い。冒険者の憧れであるヘファイストス・ファミリアの一級品装備よりも更に高いのだ。ちなみに一級品装備は三千万以上する物も多く、それが多々t百万で手に入るのだからと挙って参加しているのだ。
「順番にお並びくださ~い! なお、魔道書の中には”なんじゃこりゃっ!?”って内容の魔法もございますが苦情は受け付けませんよ~!」
店員として雇われたソーマ・ファミリアのリリルカはひっきり無しにやって来る客の相手を必死にこなす。気性が荒い者も多い冒険者にも関わらず並んだ途端に妙に大人しくなるのだが、まさかそれが玉乗りをしつつお手玉をしている雇い主が放つプレッシャーの仕業とは知る由もないだろう。
(お給料は時給三万ヴァリスに+出来高。売上VIPは無料で一回引ける。これだけのお金があれば……)
隣で妙に客を集めているロリ巨乳の神に負けじと必死で接客を行うリリルカ。まだまだ客の切れ目は見えず、終了時刻はまだまだやって来ない、疲労に負けないように気を引き締めるリリルカであった。
「あれ? 店長、さっき隣にいた子供はどうしたんだい?」
「あの子? ヒマそうだったからベルっちの様子を見に行って貰ったよ」
「ええ!? 危ないよ!?」
「大丈夫大丈夫。あの子、ダンジョンの奥にいるドラゴンより強いから」
アンノウンは一輪車で綱渡りをしつつ水芸をしながらアッケラカンと答えた。
「……こっちから悲鳴とミノタウロス数体の声が」
ロキ・ファミリアのアイズは焦っていた。遠征に帰りに集団で襲ってきたミノタウロス。あっけなく撃退するも何体か上層に逃げ出してしまった。レベルの低い冒険者が勝てる相手ではなく、声のした方に急いで走り出す。悲鳴の主の無事を願いながら……。
「ひっ!」
襲いかかってきたミノタウロス達に恐怖して足が竦んで動けないベル。振り下ろされた手に思わず目を閉じた時、聞いた事のない声が聞こえてきた。
「我、お腹減った。ミノタウロス、食べたい」
(……子供?)
聞こえてきたのは幼い少女の声。そっと目を開けた時、彼の視界には肉片と化したミノタウロス達とその血や内蔵を浴びてトマトの様になった女冒険者、そして無表情の美幼女の姿。彼女の姿を見た時、ベルの胸は高鳴った。
「……消えた。我、外で何か食べる」
「待って! 君は一体……」
「我、オーフィス」
ダンジョンのモンスターは死ねば消える。ミノタウロスの死体が消えたのを見て不満そうにしながら一瞬で姿を消した。
「……え~と、大丈夫か?」
「あ、はい」
口の中に入ったミノタウロスの血を吐きだしたアイズは尻餅をついたベルに手を差し出し、ベルは彼女に”親切な人だな”程度の印象しか持たずにその手を取った……。
「やっほ~、お帰りベルっち! どしたの? まるで初めて出会ったばかりの女の子に助けられてハートを奪われたみたいな顔してさ」
「どうして分かったんですか!? あの、オーフィスって子なんですけど」
「いや、その子僕の友達だし、君の事頼んだの僕だし。そんな事よりステイタスの更新しよ~よ。ほら、ベットに寝っころがって」
「あの、あの子は今何処に……」
「良いから良いから。これが終わったら打ち上げいくんだから急いで急いで」
オーフィスの事を知りたがるベルを急かしてベットに寝かせるアンノウン。彼の背中に刻まれたステイタスを見たアンノウンは少しだけ反応した。
「あ、レベルアップしてる。スキルも出てるよ」
「……え~と、マジですか。どうせ”嘘だよ~ん。ってか、こんな早くレベルアップすると思うだなんて自惚れ屋さん”とか言いません?」
今のところの最速記録が一年くらいなので一日目のベルがレベルアップするなどありえない。目の前のキグルミなら平然と嘘を吐くと信じて止まないベルは疑うがアンノウンは心外だとばかりに不機嫌そうだ。
「……オーフィス紹介しないよ? 今日の打ち上げに参加してるんだけど、君は連れてってあげないからね」
「じょ、冗談ですよっ! それでスキルってどんなのが……」
念願のスキルを気にして起き上がるベルだが、見せられたステイタスを見て固まった。
Lv.2
力:I0 耐久:I0 器用:I0 敏捷:I0 魔力:I0
此処までは良い。レベルアップしたらステータスの数値の表示はゼロからやり直すからだ。問題はスキルにある
【
早熟
ステータス補正
アンノウンに仕えている間は時間や世界の壁を無視して呼び出される事が出来る
アンノウンの言動に胃痛を覚えたり慣れたりツッコミを入れたりする度に効果向上
胃薬の効き目がアップ
【
早熟
ステータス補正
幼い少女、もしくは見た目が幼い少女から向けられる、または向ける好意が増えれば効果向上
年上の女性への恋愛的好意を感じにくくなり、魅了の類も無効。ただし年下からの魅了には弱くなる
通報されにくくなる
「……うん、これは流石の僕でも引くわ~」
必死に笑いを堪えるアンノウン。成長促進スキルが二つも付いて喜ぶべきか内容に落ち込むべきか悩むベルであった。
「……所で言っていたハズレの魔道書ってどんな魔法なんですか?」
「相手に絶対当たる”
「あ、普通にすごい」
「他には世界一つ吹き飛ばせる威力の
「そんな危険な物まで用意しないでください!」
ベルのステイタスが上昇した……。
なお、レベルが上がる条件は殻を破る事だが、年上好きから年下好きになったのが理由である。
って訳で色々フラグが折れまくりました
意見 感想 誤字指摘お待ちしています
実はベル君って何度も本編に登場してたんだ~(棒読み)