自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結 作:ケツアゴ
若手悪魔の顔合わせ、そのような重大な催し物がある事をソーナが思い出したのは前日の夕暮れの時だった。
「……まさか此処まで遅くなるとは」
「いや、だってさ、どうせ買い物に行ったとか一人だけレッスン受けてたりとか書き様が無いもん。じゃあ、シトリー領まで送ってあげるね」
『ガウ!』
アンノウンが口笛を吹くと手綱を付けたフェンリルが現れる。この時になってソーナはフェンリルがどういう存在だったか思い出した。というより、今まで展開の都合により思い出せないでいた。
「……あの、フェンリルって北欧の魔獣では?」
「うん! 二天龍と同格の魔獣でロキ君の子供だよ。でさ、僕の友達でもあるんだ」
アンノウンの背後でフェンリルは首を激しく横に振っている。
「じゃあ、どれだけ仲良いか見せてあげるね。お手!」
フェンリルの右前足がアンノウンに振り下ろされる。アンノウンは下半身を地面に減り込ませた。
「お代わり!」
今度は左前足が叩き付けられる。地中三メートルの深さまで減り込んだ。
「お回り!」
フェンリルはその場で回転し、地中から這い出して来たアンノウンに回転の勢いを込めた尻尾を叩きつけるそのままアンノウンは星になった。
「あーれー!」
「……随分と余裕がありそうですね。では、行きましょう」
『アウ!』
素直に背中に乗せてくれるフェンリルの目は”お互い苦労するな”、と語っていた。
「ソーナ! 随分心配したのよっ!」
「……ええ、ちょっと修行に夢中になっていまして」
「匙、どうしたんだよ随分と逞しくなって……」
そして翌日、顔合わせの会場でソーナはリアス達に再会した。リアスの背後の一誠は匙の姿を見るなり近付いて行く。匙はこの数日の間にミルたん並みの筋肉を身に付けており、一誠が親しみを込めて肩を叩いた瞬間、
「オレサマ、オマエマルカジリ! オレサマ、オマエマルカジリ!」
「ぎゃぁぁぁぁっ!?」
「イッセー!?」
噛み付いた。匙の瞳は理性を失っており、リアス達は必死に引き離そうとするが離れない。その時、ソーナは懐からフライドチキンを取り出して匙の目の前に放り投げる。すると匙は一誠ヲ離してフライドチキンにかぶりついた。
「ニク、ニク、アオーン!! ……はっ!? 俺は何を?」
「いえ、何もありません。そういう事にしておいて下さい。……主に私の精神衛生上の為に」
「は、はぁ……」
そして顔合わせの開始時間、冥界の未来を担う次期当主達は魔王や冥界の上層部の前で夢を語る事になった。
「では、最初にサイラオーグ・バアル君。君から聞こうじゃないか」
「はい! 私の夢は……」
「A『たこ焼き屋』 B『金持ちニート』 C『魔王』 D『新世界の神』、さあ! どれ?」
「……C」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー! ……あの、所で目の前のパンダは一体?」
サイラオーグがアンノウンに気付いた瞬間、入り口の戸を蹴破って黒子やキグルミ達が飛び込んでくる。彼らはその手に包丁を持っていた。
「粒餡派は居ねぇかぁ! あの歯ごたえが良いとかいう愚か者は居ねぇかぁっ!」
「なんだ貴様ら! 無礼であるぞ!!」
上層部の一人が怒って立ち上がる。当然だろう。
「粒餡こそ最高に決まっているだろう! 粒餡を馬鹿にするでないっ!」
「巫山戯るなっ!」
彼は粒餡派なのだから。すると隣に居た老人が顔を真っ赤にして立ち上がった
「漉し餡こそ至高に決まっているだろう! くだらん意見で場を乱すなっ!」
「何だと貴様っ!」
「粒餡だっ!」
「いや、漉し餡だっ!」
いい年した大人、それも政治の中核を担う者達が餡子の種類でもめて取っ組み合いの喧嘩を始める。
「……少々黙ってくれ」
その時、サーゼクスの静かな声が響く。体から滲み出る滅びの魔力は凄まじく彼が本気で怒っている事を表し、リアスは兄の発言に期待した。
「鶯餡以外は認めないよ!」
そして、直ぐに絶望した。その後、顔合わせはグダグダに終わり、なんか若手同士でレーティングゲームをする事になった。グレモリー邸で露天風呂の準備をしていたり、風呂に入りたがらないギャスパーを一誠が投げ入れたり、投げ入れる為に掴んだ瞬間を謎の大熊猫がカメラで激写してその写真が夏休み明けの学園を賑わせることになるがそれはまた別の話である。
そして、小猫はとある結論に至った。
「……仙術とか止めて地道に強くなりましょう。皆みたいに禁手やら何やら普通のやり方じゃない方法で強くなっても変態になりそうで嫌ですし。そのほうが部長の胃袋にも優しいですよね。……とりあえず癒しポジションは確約されますし」
結構腹黒い結論だったが、無茶して倒れる事はなかった……。
そして数日後、タンニーンとの修業中に姿を現したアンノウンによって怒ったタンニーンのブレスに巻き込まれて一誠が死んだお婆ちゃんに”帰りなさい”と川を渡らせて貰えなかったり、子供の頃に飼っていた懷きまくりの犬が牙を剥き出しにして吠えかかり川を渡らせてくれなかったりしたが特に問題なく修行は続いた。
そして修行の合間に行われた魔王主催のパーティの時、彼は現れた。
「でひゃひゃひゃ! 久しぶりだね、サーゼクスちゃん」
「リゼヴィム……」
彼の名前はリゼヴィム・ヴァン・ルシファー。前ルシファーの息子である。サーゼクスはパーティ会場に突如現れた彼を警戒し、会場周辺の空を見て固まる。空には無数のドラゴンが飛び交っていた。それも、邪龍と呼ばれる者達だ……。
「……君もテロリストに入ったのかい?」
リゼヴィムの返答次第では真の姿を現す、その覚悟を決めたサーゼクスに対し、リゼヴィムはニヤニヤしながら首を横に振った。
「いんや? オレッチの目的は別にある。……異世界だよ! あのパンダから異世界の存在を知らされてから興味を持ってねっ! だからさ……黙示録の獣を復活させようと思うんだよね~。それで邪魔なグレートレッドを倒すのさ。今日はそれだけ言いに来た。じゃあ、バイチャ!」
それだけ言うとリゼヴィムは消えていく。後には呆然とするサーゼクス達だけが残された……。
《ファファファ、久しぶりじゃな。あの時の屈辱を……》
「アチャラカモクレンキューライステケレッツのパッ!」
サーゼクス達が招待した他の神話の神々と話す中、冥界の森でフェンリルと遊んでいたアンノウンの背後に冥府の王であるハーデスが現れ、直ぐに消えた。
「……ふぅ。ハーデス君てしつこいなぁ……」
アンノウンは心底ウンザリといった口調で言うが、多くの者が此奴にだけは言われてくないと思うだろう。その時、地面に下半身を減り込ませていたファンリルが軽く唸る。すると木の陰から一人の老人が出てきた。
「あれれ~? 会談中じゃなかったの? 聞いたよ。グレートレッドと同格の黙示録の獣を復活させるんだって? 僕の所にも黙示録の獣復活の協力要請が来たよ。……絶対に無理なのにね」
「少々面倒臭くて抜け出して来たわい。……しかし、笑いを堪えるのに必死じゃったぞ。全ての心配は無駄だというのにのぅ。さて、お主は最終的にはどうする気かの?
なあ、黙示録の獣・
「う~ん。一応最終回だけどFATE編や他の異世界に行った時の話もしたいし、アニメを借りつつ問題児が~編も書きたいかな? お気に入りがあまり減らなくて展開が浮かべば続きも書くかも」
「誰がメタな返答をしろと……。どう行動する気かと聞いておるのじゃ」
「も~! それならそうと言ってよ」
アンノウンはプリプリ怒りながらフェンリルを地面から引っこ抜き、背中に飛び乗るとオーディンの方を振り向いた。
「好き勝手に生きる、ただそれだけだよ」
そう言うなりフェンリルはアンノウンを乗せて何処かへと走り去っていった……。
完?
~オマケ~
「ヴァーリ、リゼヴィムの所に行かなくて良いの?」
「……ああ、それよりも無茶をするな。もうお前一人の体じゃないんだからな」
盛大に爆発して欲しい。
これまで出したヒント
オーディンとグレートレッドと666だけが正体を知っている
自分の正体を自分が知っているのは当たり前
大地のへそを見ている
エアーズロックを目視 → 目視エアーズロック → 目視ロック → 黙示録
お気に入りの増減次第で続きや番外編を……
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