自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結   作:ケツアゴ

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何とか書けた!


二十一話

『ブログ』、それは簡単に言ってしまえばネット上に公開している日記の様な物だ。そして冥界や一部の神話体系、そして裏の世界の住民のみ閲覧可能なブログが存在した。

 

 

「……パンダのパンダな旅日記? な~んか嫌な予感がするにゃん」

 

 その日、偶々パソコンを弄っていた黒歌は妙にアクセス数が伸びているブログを発見する。一糸纏わぬ姿で別途から半身を起こした彼女はノートパソコンを操作してそのブログを開くと直様額に手をやって天を仰ぐ。トップページの写真にはよく知ったキグルミ(アンノウン)が写っていた。

 

「何々? 『今日は三すくみの会談に出席。今代の赤龍帝が僕が意味もなく出動させた巨大ロボの格納庫に落ちたけど、テロとかで忙しくって忘れられてた。なお、意識を失いながらも嘔吐しつつ戦っていた騎士(ナイト)にはAuto(嘔吐)戦士って異名が付けられた。ピコ受ける』……相変わらず自由な奴」

 

「……他には『次元の挾間に行ったらグレートレッドが昼寝ぶっこいてたので起こさないように眉毛書いてやった。帰った後で思ったが鼻毛も書くべきだった』。……この写真は確かに奴だ。しかし、これは酷いな」

 

 再び襲われたヴァーリも体を起こしてパソコン画面を覗き込む。その目元には若干涙の跡が残っているが、『早過ぎ』とか『根性無し』とか言われた事が原因だとかは彼の名誉の為に明記しないでおこう。取り敢えず回数はこなせたらしい。

 

「……うわっ! 最後に堕天使総督の厨二時代のレポートが載ってるわ。……此奴って白音達の監督役になったらしいし、早めに迎えに行かないといけないわね」

 

 妹に悪影響が出る前に攫いに行くと決意を固める黒歌。その時、アルビオンの声が響いた。

 

『止めろ! ヴァーリに”アンタばっかし気持ちよくなっても、コッチは中途半端な状態で中々達しない”とか言うなっ!』

 

「いや、別の話よ? ……あ~あ、落ち込んじゃった」

 

 ヴァーリは全裸のまま部屋の隅っこで落ち込んでおり、アルビオンに非難するような視線を送った黒歌はそっと近付くと抱き寄せた。

 

「ほらほら、元気出して。少しずつだけど持つようになって来たし。物自体は悪くないにゃん。……今度は優しく抱いてあげるわ」

 

「……すまない」

 

 ヴァーリは謝りながらも誘われるままベットに向かう。その時、寝室の扉が開いたかと思うとアンノウンの手下のキグルミ達が雪崩込んで来た。

 

「……あっ、自分女っすからお気にせずに」

 

 カバのキグルミはそう言うと部屋の隅のソファーに堂々と座る。その横ではライオンやウサギ、マグロやハシビロコウのキグルミが居づらそうにしていた。

 

「……おい、お前が言えよ」

 

「煩いわね、この駄ウサギ。あんたはいいわよね、そうやって面倒な事全部押し付けて子供の人気は頂いて。私だって、私だって普通のカバじゃなくってムー○ンだったらウサギなんか目じゃないのよ! なんで○ーミンじゃなくて普通のカバなのよっ!? うわーん!!」

 

 カバのキグルミは床に突っ伏すとオイオイと泣き出す。先程まで口論しそうになっていたウサギや遠巻きに見ているだけだった他のキグルミは慰める様に彼女の肩を叩いた。

 

「元気出せ! 何時かは普通のカバでもムーミ○に匹敵できるさ。なんなら今からキグルミの改造をしてム○ミンモドキにでも……」

 

「……皆、有難う」

 

 カバは他のキグルミ達に抱きつき、彼らも抱き返す。ヴァーリと黒歌は同コメントして良いのか分からずクチをポカンと開けて固まっていた。

 

『いや、○ー○○はそもそもカバじゃないからな?』

 

 意を決したアルビオンがずれた事を言ったその瞬間、キグルミ達は横一列に並ぶとガシッっとを繋いだ。

 

 

『ラ~ラララ♫ ラ~ララララ♫ ラ~ラ~ラララララ♫』

 

 そしてリズムを口ずさみながら前後にステップを踏むと徐々に後退しながら部屋から出ていく。後には一枚のメモだけが残っていた。

 

 

『そろそろテロリストってバラすから勝手に言わないでね。 PSヴァーリの筆跡真似して『冷やし中……テロリスト始めました』って中途半端なギャグ書き置き残してきました』

 

「……アイツは本当に自由だな」

 

『まったくだ! 奴の相手をしていると赤いのとの決闘の原因になったあの事件を思い出す! 奴がとても臭い屁をこいたのに俺がこいたと言い張りやがって!』

 

 ちなみにその臭い屁については別の誰か、具体的に言うと魔王より強いパンダの悪戯が原因なのだが、この場にいる者が知っているわけはなく、

 

 

「「……其れで良いのか、二天龍、屁が原因で決闘って……」」

 

 ただアルビオンとドライグに対する評価が下がっただけだった。もっとも、ドライグへの評価は別の理由で地に落ちるが、その理由は原作を読んだ人ならお分かりだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰り、ソーナちゃん!」

 

「お、お姉様っ!?」

 

 ソーナがユークリットを置き去りにしたいが魔王の眷属を置き去りにする訳にも行かず馬車の中で数時間待ちぼうけて帰宅した時、セラフォルーがソーナの顔を見るなり抱き着いて来た。そのままソーナを押し倒したセラフォルーは激しく頬擦りをし続ける。その間、眷属達はどうして良いか分からず固まっていた。

 

 

 

「元気だしなよ、ユー君。ププッ! た、偶々、グレちゃんのグッズだけ手に入らなかっただけでさ。しかも、今月の給料全部使っちゃったんでしょ? そして買った『魔法少女レヴィアたん』関連のお菓子のオマケも全部自分のばっかりだったし」

 

「……ミニフィギュアも全部私と君のでした」

 

 

 

 

「……お姉様、眷属の手前早く離れてください。そう言えばユークリットさん。貴方の駒は何ですか?」

 

「はっはっはっ。馬鹿ですねぇ。原作でセラフォルー様の余った駒が何か分かってないのに何の駒なんて話せる訳ないじゃないですか。ほら、分かった後で修正するのとか面倒臭いし。……あれ?」

 

 ソーナは胸に手を当てて倒れていた。

 

 

 死因・此奴にだけは馬鹿と言われたくない奴に馬鹿と言われた事に因るショック死。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、折角冥界に来たのですから修行先や指導相手を決めませんと」

 

 ソーナはさっき死んだ事などなかったかの様に思案し出す。やはり一流の指導者を決めなくてはならないので中々見付からないのだ。

 

「会長、さっき死んでいませんでした?」

 

「サジ、いい加減学びなさい。ギャグ小説のギャグシーンで死んだからって本当に死ぬ分けないじゃないですか。カテレアとか(やられ役)以外」

 

「今日は妙にメタですねっ!?」

 

「そんな日もありますよ。……おや、これは面白そうですね」

 

 ソーナは机の上に置かれていたチラシを見て笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

『アンノウンとは関係ない一流の指導者パンダの戦闘合宿。~死んだら天国、生きてりゃ地獄 あっ、此処地獄で悪魔は天国には基本的に行けなかった編~』

 

「これですねっ!」

 

「嫌な予感しかしねぇっ! てか、本当にどうしちまったんすか、会長っ!?」

 

「ギャグ小説ですから仕方ないですよ」

 

 その時のソーナが親指を立てながら浮かべた笑みは腹が立つほど爽やかだった……。

 




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