自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結   作:ケツアゴ

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第十九話

 とある荒野でセラフォルーは膝を付いていた。その可愛らしい顔や服は土埃で汚れ、何時も被っている帽子は少し離れた場所に落ちている。そしてその帽子を踏み躙る者が居た。

 

「くくく、愚かですね。私を信用するからこの様な事になるのですよ」

 

「くっ! この卑怯者っ!! 私は、正義は貴方のような卑劣な子なんかに負けたりしないんだからっ!!」

 

 足の主であるユークリットはマントで口元を隠しながら高らかに笑う。セラフォルーが必死に叫ぶもその体から魔力が放出される事はなかった。ユークリットは肩を竦め嘲笑を浮かべながら一歩、また一歩と近付いて行く。その手に持った剣からは黒い炎が吹き出していた。

 

「さて、そろそろトドメと行きましょう。もはや魔力も付き戦う力も残っていない貴女を倒すなど赤子の手を捻るようなもの。は~っはっはっはっはっはっ!! パンダ将軍(ジェネラル)様もさぞお喜びになるでしょうね」

 

ユークリットは顔を片手で覆ってまさに悪役といった感じの笑い方をすると剣を振り上げた。

 

 

「「させないっ!」」

 

「なぁっ!?」

 

 だが、凶刃がセラフォルーにとどこうとしたまさにその時、後方から放たれた魔力が両者の間を通過する、咄嗟に飛び退いたユークリットの剣は半場から刃が消失しており、向けた視線の先には二人の女性が立っていた。

 

 

「何度悪が栄えても」

 

 一人はソーナ。学園の制服を纏い、その手には星型の装飾がされたステッキを持っている。

 

「その度正義が打ち倒す」

 

 そしてもう一人はグレイフィア。彼女は何時ものメイド姿でステッキの装飾はハート型だ。

 

「魔法少女シトリー只今参上!」

 

「魔法メイド少女ルキフグス参上しました」

 

 ソーナはステッキを構えて高々に名乗り、グレイフィアは丁寧にお辞儀をする。そして二人はセラフォルーの両側に立つとそっと手を握った。

 

「「マジカルパワーレボリューションチャージアップ!!」」

 

 二人の体が光り輝き、変身シーンでお馴染みの謎空間で光に包まれた状態で全裸になりるが勿論体の線しか分からない状態なのでお子様でも安心だ。そしてなんとも可愛らしい効果音と共に腕、足、胴体、頭、スカート、胴体、といった順番にしゃぼん玉に包まれたかと思うとフリフリの衣装に様変わりした。

 

 

「二人共、待ってたよ!」

 

 セラフォルーの言葉に視線で二人は視線で返し、三人同時に頷く。その時、ユークリットから禍々しいオーラが立ち上った。

 

「くそ! 貴方達は私の策略に嵌って仲違いしたはず! なのに何故っ!?」

 

 ユークリットは明らかに狼狽し、発するオーラは強力だが何処か不安定だ。そして冷静な顔のグレイフィアがそっと進み出た。

 

「簡単な話ですよ。お気に入りの店の餃子が三人で分けられないのなら、三皿注文すれば良かっただけです」

 

「なん…だと……!?」

 

「私達を引き離すために中華料理チェーンの株を買い占めるなんて卑怯な真似をするとは。……お仕置きしちゃうですからっ!」

 

 膝から崩れ落ちたユークリットにソーナが叫ぶと同時に三人は三角系の頂点に立つように囲む。そしてステッキを横に構えると両端から伸びた光の帯が結び合い、三角系を作り出した。

 

 

「「「トライアングルマジカルシンフォニー!!!」」」

 

「ぐ、ぐぁぁああああああああっ!!!」

 

 ユークリットを三角系の魔力が包み込み、大爆発した。

 

「やった!」

 

 セラフォルーは歓声を上げる。しかしモクモクと上がる煙が突風で消えた時、其処にはユークリットの姿はなかった。

 

 

 

 

「はーっはっはっはっはっはっ! 私は此処です!」

 

 崖の上に移動していたユークリットは高笑いを上げてマントを翻す。するとマントが地に落ち、彼の姿は消え去っていた。

 

 

「……また会いましょう、姉さん」

 

 風の音に紛れてユークリットの声が響く。グレイフィアの焦燥した顔がドアップになった。

 

 

 

 

 

 

「はい、お疲れ様でーす!」

 

 魔法少女レヴィアたんの監督がいい笑顔でセットに入っていく。だが、その足は直ぐに止まった。

 

 

「ええ、大変でしたね」

 

「想像以上でしたね」

 

 ソーナとグレイフィアは笑顔を浮かべているが目は笑っておらず、オーラは禍々しい。監督も笑い顔のままだが明らかに引き吊っていた。

 

 

 

「姉さん、お疲れ様でした。いやぁ、なかなかお見事ぉっ!?」

 

 笑いながらグレイフィアに近付いていったユークリットの頭部に鈍器のような物が振り下ろされ、そのまま銀髪でメイド服を着た何処かの誰かに引き摺られて何処かに連れて行かれる。数分後、水音が聞こえてきた様な気がしたが命が惜しいスタッフ達は偶々一時的な難聴と盲目になったせいで気付かなかった。

 

 

 

「グレイフィアさん、頬が汚れていますよ」

 

「これはいけませんね。トマトジュースでしょうか」

 

「そうですね。……少なくても私達をこの番組に出演させる事を政治的取引の条件にした何処かの誰かの返り血な訳が有りませんしね」

 

「「おほほほほほほ!」」

 

 

 なお、アンノウンは撮影中ずっと二人を指差していた……。

 

 

 

 

 

 

「っという訳で、私の弟のユークリットです」

 

「よろしく願いしますね。この街でお仕事をしますので色々とお世話になると思います」

 

「え、ええ、よろしく頼むわ」

 

 夏休みが始まってから数日後、リアスの下にユークリットを連れたグレイフィアがやって来た。一応スーツを着せているが、うっすらとアニメキャラのプリントが見えているのをリアスは見なかった事にしていた。そのほうが胃に優しいと直感で感じたからだ。

 

「それでお仕事は? レヴィアタン様の眷属になったって聞いたけど」

 

「駒王学園の事務の仕事を任されまして。まあ、裏の仕事として学園の護衛も任されているんですよ。ちなみに家は秋葉原が良かったのですが、家賃も考えると用意されたマンションの方が無難で。……限定版とかオークションで競り落とすのって結構かかりますよね」

 

「……馬鹿ですが仕事は出来るので安心して下さい。出来れば姉弟の縁どころか関わった事さえ無かった事にしたい程ですが」

 

 心なしかグレイフィアは心労から窶れている様に見えた……。

 

 

 

 

 

「所でミリキャス君には何時頃合わせてもらえます? 甥っ子に会ってみたいのですが」

 

「出来れば一生合わせたくないのですが。アンノウン諸共死んでくれないかしら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冥界に帰るわよ!」

 

 それは夏休みが始まてから数日後のこと、リアスの発言に一誠はショックを受ける。自分を置いてリアスが帰ってしまうのではないかと思ったのだ。

 

「わあ、ついにお別れか。短い付き合いだったよ。一誠君可哀想だね。捨てられたんだ」

 

「あら、安心しなさい一誠。……出来れば貴方とはお別れしたいわよ、アンノウン。っていうか、何時帰って来たのよ……」

 

「さっき。リーアたんのカードで遊び尽くしたからグレちゃんとソーちゃん弄てたんだけど、そろそろ君達()遊びたくなってさ」

 

「……気のせいかしら。非常に嫌な気がしたんだけど」

 

 リアスは頭痛と胃痛が増すのを感じていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか。サーゼクス様の妹の眷属を鍛えて欲しいんだな。……そしてアンノウン()も一緒か。良いだろう。あの時の恨みを晴らさせて貰う」

 

 だがこの時、彼は気付いていなかった。その発言はフラグであると……。




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