自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結 作:ケツアゴ
ギャスパー・ウラディが気弱な性格
「
そしてその身に宿した神器こそが彼を引き籠もりにさせた原因だ。視界に収めた対象の時間を停める、という強力な効果は周囲に彼への恐怖心を与え、さらに年々高まる魔力でさらに強力になって制御不能にまで陥ってしまう。悪魔としての仕事はネットですませ、趣味の女装は自分一人で完結している事もあって彼の引き籠もりは悪化の一歩を辿るだけであった……のだが、
「明るい! なんて世界は明るいんだぁっ!! そしてやはり素晴らしいのはピラミッドパワァァァァッ!!」
「……本当なら僧侶一個で足りる子じゃないんだけど、十人に一人が持っている『
「部長、現実逃避は良くありません。……気持ちは分かりますが」
ギャスパーは指で三角系を作って頭上で掲げながら夜の校庭を走り回る。会って早々に脳筋呼ばわりされたゼノヴィアがデュランダルを振り上げて追いかけるもあれほど怖がっていた神器の力を完全にコントロールして逃げおおせたのだ。……なお、ゼノヴィアは神の死を電話で告げたら追放されたからとあっさり悪魔に転生したり、考えが一昔前のスポコン物だったりと脳筋を否定できないだろう。
リアスはそんな彼を視界に入れないようにしながら話をしていた。
「やっぱりアンノウンさんは素晴らしいパンダですぅぅぅぅぅっ!! あの人……人? から教わったこの力、やっぱり僕一人が使うのは勿体ないから皆に教えて……」
「……うん。神器がコントロールできる様になって、更に引き籠もりが治ったのは嬉しいわ。でも、それだけはやめて頂戴、ギャスパー!」
「ピラァミットォパゥワァァァァァァァッ!!!」
ギャスパーの耳にリアスの嘆き声など届いていない。なんかピラミッドの上に座ったパンダみたいな神の幻覚からお告げっぽい何かを受けているからだ。
『饅頭は粒餡こそが最高。漉し餡食いたきゃ煮小豆食っとけ、分かった?』
「了解しました、神様! 漉し餡など邪道! 粒餡とピラミッドパワーこそが全てなんですねっ! 漉し餡派は煮小豆食って満足してろ! ピラミットパワァァァァッ!!」
なお、作者はどっちも好きである。なので漉し餡派の方は誤解の無いように。そして叫び続けるギャスパーの背後に小猫が迫っていた。
「……そんな脳内神捨てて、ギャー君」
「ガーリックッ!? ピ、ピラミットパワァ……」
「……煩い」
「ぐふっ」
振り向きざまに
「漉し餡を馬鹿にする者に滅びあれ……」
たけのこVSきのこ然り、イヌ派VSネコ派然り、対立する相手には容赦がないのが好みというものだ。そのあまりの気迫にリアス達は何も言えなかった。
「……ちなみにイッセーはどっち派かしら? 私は漉し餡」
「俺はどちらかと言うと粒餡っすかね」
この時、リアスと一誠の間で火花が散る。二人の絆に僅かながらヒビが入った瞬間だった。
『パンダ
「……なんでしょうか、これは」
セラフォルーに呼び出されたソーナは突然見せられたソーナは嫌な予感を感じて今すぐ帰りたかった。何よりセラフォルーの背後で作業している黒子やキグルミに見覚えが有り過ぎた。どう見てもアンノウンの手下だ。
「私が主演している番組『魔法少女レヴィアたん』の次回予告だよ☆ 本当は再来月に流す予定なんだけど、新し子が決まっていなくて」
「お断りします」
「酷いっ!? お姉ちゃん、まだ何も言ってないのに!」
確かにセラフォルーは何も言っていない。だが、誰が聞いても予想できるだろう。要するにソーナにも魔法少女になって欲しい、そんな所だろう。当然、ソーナは即効で断った。その時、黒子の一人が懐から携帯を取り出す。
「あ、はい。ソーナ殿は断りました。え? 『例の映像を持って行ったらユー君と仲良くなって、彼が興味を持ったから魔法少女物のDVD一気に観る』、ですか? 取り敢えず魔法少女物のDVD一式用意ですね。おい、皆。撤収だ!」
そのまま黒子とキグルミ達は帰っていった……。
そして、いよいよ三すくみの会談当日、ギャスパーはピラミッドパワーがなければ神器を制御できないからと部室で留守番している。流石に他の勢力の前で例の叫びをさせる訳にはいかないからだ。
「み、皆さ~んっ! ぼ、僕も会談に出席したいですぅぅぅ! ピラミッドパワーが広まれば、きっと世界は平和になりますからぁぁぁぁあぁっ!!」
絶対に連れて行く訳にはいかない。そう改めて決心するリアスであった。
「部長、胃薬です」
「……有難う」
リアスは錠剤タイプの胃薬を一瓶丸ごと口に流し込むとボリボリと噛み砕く。破片が床に落ちる事を気にせずに細かくなるまで噛み続け、液体胃薬で胃に流し込む。どう見ても体に悪いが其処までしないと胃痛が収まらないでいた……。
「失礼します」
「入り給え」
会談の会場のドアをノックした時には胃痛は収まっており、スッキリとした表情で会場となった駒王学園の一室のドアをノックする。すると中からサーゼクスの声が返ってくる。ドアを開けると既に三すくみのトップ陣とソーナ達が集まっていた。なお、アンノウンはまだ到着していない。
「……なにやってんだよ、あの珍獣は……」
「……あれだけの事をやらせといて来ないつもりですか」
アザゼルは呆れ顔、グレイフィアは表情を変えずに怒りのオーラを放ち壁にヒビが入る。その気迫にサーゼクスは何も言えず冷や汗をダラダラ流していた。
「わ、私の妹とその眷属だ……。さて、座りたまえ」
取り敢えず何事もなかった様にリアス達を紹介すると着席を促す。そしてアンノウン不在のまま会談が始まった。
「では、堕天使側の意見を聞きましょう。今回の件、どう考えているのですか? アザゼル」
「今回の件はコカビエルの独断行動で、奴はコキュートスの最下層に封印した。二度と出てこれやしねぇよ」
「説明としては最低の部類ですね」
アザゼルのいい加減な態度にミカエルは眉を顰める。その時、マイクを通した様な声が響いてきた。
『相変わらず常識がないね、アザっち。はい、ど~も! 皆大好き、パンダのアンノウンで~す』
「テメェにだけは非常識扱いされたくねぇよっ!!」
その場にいた一同は同時に頷く。今まで敵対していた三勢力のトップ陣の心が一つになった歴史的瞬間だった。
「おい、ヴァーリ! アイツをとっ捕まえて……ヴァーリ?」
先程までアザゼルの背後で壁にもたれ掛かっていたヴァーリの姿が忽然と会場から消え、校庭から花火の音が聞こえてくる。その場に全員が窓から校庭を見ると空中に巨大なステージが浮かんでおり、そこから大量のスモークが吹き出していた。
「今日は僕達の初ライブに来てくれて有難う! それではメンバーの紹介だ! まずリーダー兼ドラムは、も……子供のアイドル、喋るパンダのアンノウン!」
『ワァァァァァァァッ!!』
ステージの中央後方に立つアンノウンにスポットライト当たり、名乗ると何時の間にか屋上に集まっていた黒子やキグルミ達が歓声を上げる。そして今度は左後方にスポットライトが当たったかと思うと其処にはヴァーリが立っていた。
「ギターはこの俺、ヴァーリ・ルシファー! 夜露死苦!」
再び上がる歓声。ただしアンノウンの時より遥かに小さい。続いてステージ右後方に立つ美猴にスポットライトが当たった。
「ベースはこの俺、美猴だぜぃ!」
今度は全く歓声が上がらない。そして最後に中央前方にスポットライトが当たった。
「ボーカルは我、オーフィス。……第一のナンバー『メロリンパッフェ・ロックバージョン』」
『メロリンパフェ・ロックバージョン』
作詞 グレイフィア・ルキフグス
作曲 美猴
恋はメロリン、あなたの眼差しシューティングソーダ 私のハートはメロリンパッフェ とろけとろけてチョコフォンデュ
とまらない このDO☆KI☆DO☆KI 届けたい このTO☆KI☆ME☆KI(繰り返し)
だけど嫌な予感が落雷エクレア パリパリ弾けて お口でとろける 蕩けちゃう
恋を阻む障害はポポロン投げつけて追い払うの 恋のライバルはスパイス 刺激が涙をさそうの
豆板醤にキムチに塩辛 嫌いなあの子は胃痛にな~れ
私の愛はスーパー激甘 砂糖にクリーム、餡子にハチミツ。恋の痛みは歯に響く
恋はメロリン、あなたの眼差しシューティングソーダ 私のハートはメロリンパッフェ とろけとろけてチョコフォンデュ
「……止まらない、この
グレイフィアの体から途轍もない魔力が溢れ出した……。
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