自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結 作:ケツアゴ
月光が差し込む校庭でエクスカリバーを使うフリードと自ら創り出した魔剣を使う祐斗の戦いが繰り広げられていた。フリードはまだ本調子出ないのか顔色が悪く、祐斗は剣の差と打ち合う度に漂ってくる臭気によって気分を悪くし、二人の戦いは正しく互角だった。
なお、ここで戦っているのはコカビエルがリアス達を挑発して誘き寄せたからで、奪われたエクスカリバーは統一されてフリードが握っている。
「ちぃ! 早~く死んでちょ!」
「くっ!」
フリードが振り下ろしたエクスカリバーを身を翻して避けた祐斗だが、刀身から漏れる聖剣のオーラによってダメージを受ける。顔を顰め膝を崩した所に向かって横薙ぎに振るわれたエクスカリバーを悪魔の翼を広げて避けた祐斗は一旦距離を空けた。
「悪いけどそう簡単に負ける訳にはいかないんだ。……それにさっきから思ってたんだけど、君ってゲロ臭いね」
「うっせぇ! 街中でテメェの仲間をぶっ殺そうとしたらゲロ不味い味が口の中に広がったんだよっ!」
フリードの言葉を聞いて祐斗は確信する。自分が全て転んだゲロは目の前の男の物だと。つまり、ズボンの中に滲みて来たのも、股間が濡れてお漏らししているみたいになったのも、全て目の前の男のせいなのだ。
「……許せない。絶対に許してなるものかぁっ!!」
怒り狂って猛攻を仕掛ける祐斗の脳裏に幼い子供の声が過る。
『ママー。あのお兄ちゃん、お漏らししてるー!』
無邪気な声だけに一際キツかった。母親らしき女性がサッと目をそらしたのを見た時も祐斗の心は大いに傷ついたのだ。
しかしやはり武器の性能差からか徐々に形勢がフリードに傾いていく。祐斗の魔剣はエクスカリバーで砕かれ僅かながら剣先が掠り、それだけで祐斗の体中に激痛が走る。そしてトドメを刺そうとフリードがエクスカリバーを振り上げた。
「はんっ! その程度で……うっぷ! ま、またか……オロロロロロロ」
フリードは又もや大量の吐瀉物を吐き散らしその場に倒れ込む。なお、お分かりかと思うが祐斗は直ぐ近くに祐斗が膝を崩した状態で居り、彼は匙と同じ運命を辿った。
「……勝った、のか? なんか微妙だけど、これで聖剣使いは変態揃いだと確定されたと思えば。……うん」
「失礼だな、君は!」
聖剣使いであるゼノヴィアは納得いかなかった。
「こ、このような形で終わるとは。いや、エクスカリバーが負けた訳ではないが……」
祐斗の復讐の対象であるバルパー・ガリレイもこの様な決着の仕方に納得が行かず崩れ落ちる。その時、彼の懐から丸い結晶が転がり落ちて祐斗の足元まで転がって来た。
「……此れは?」
祐斗がそれを拾い上げた時、悪臭が染みて流れた涙が結晶に零れ落ちる。すると結晶が光り輝き、バルパーの手で死んでいった祐斗の同士達が姿を現した。
「聖歌」
その歌を聴き、誰かが、そう呟いた。天より舞い降りた魂たちは祐斗の下に降り、青白い光を放つ
『聖剣を受け入れるんだ――』
『怖くなんてない――』
『たとえ、神がいなくても――』
『神が見てなくても――』
『僕たちの心はいつだって――』
『――ひとつだ。……うん、多分大変だけど頑張って。恨むならあのパンダを恨んで』
ただし彼らは祐斗から微妙に距離を開けていた。
「……なんで僕から距離をあけてるんだい? て言うか、アンノウンが何かしたのっ!?」
『……聞かないほうが良いよ。……ガンバッ!』
祐斗の同胞達は顔を逸らしながら親指を立て、そのまま天へと昇っていった。
「……なんでパンダってだけで僕が何かしたって思うのかなぁ」
「普段の行動が悪いのですよ。……それにしても酷い決着ですね」
旧校舎から校庭の様子を観察していたアンノウンは不満そうに呟くも隣のアーサーはそれを切り捨てる。ギャスパーは堕天使幹部の襲撃と聞いて蹲って震えていた。
「ピ、ピラミットォパゥワァァァァァアァァ!!」
「……さて、そろそろ参戦しようかな。今彼らに死なれたら……面白くないし」
「それはつまり、死んでも面白いなら放置するという事ですね」
「うん!」
アンノウンは空からぶら下がった蔦に捕まるとターザンの様に移動していった。
「……さて、私はギャスパーちゃんを守るとしますか。……取り敢えずなにかして遊びますか?」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
「それにしても神の下僕とは哀れだな。奴が既に死んでいる等知らずに」
祐斗は聖剣の因子を取り込む事で聖魔入り混じった剣を創りだす禁手に至ったのだが、コカビエルに斬りかかった時に口の中に小猫の手料理の味が広がったせいでコカビエルに最大級の嫌がらせをして気絶した。
本日三人目の被害者・コカビエル。
「そんなっ!? 神はもう死んでいるのですか? 私達にもう愛を与えてくれないのですか?」
流石に空気を読んでコカビエルに付着した物について言及しないゼノヴィアやアーシアはその場に崩れ落ち、彼女達の優しさが逆につらいのか、それとも悪臭の為なのかコカビエルは涙が滲むのを感じていた。
「・・・・・さて、そろそろ貴様らを殺して戦争の引き金にするとしよう」
コカビエルの背後に無数の光の槍が出現し、リアス達目掛け切っ先を向ける。そしてコカビエルが上げた腕を振り上げると同時に槍が動き出したかと思ったその時、校庭中のライトが入り口に向けられた。
「はっ~っはっはっはっはっはっ!」
聞こえてくる笑い声にその場にいた全員の視線が入り口に向き、コカビエルは槍を入り口に向けた。
「何だっ!?」
「パンダっ!」
そしてコカビエルの脳天に巨大なシャモジが叩き付けられる。其所には『其れ行け隣家の朝ご飯!』と書かれていた。
「アンノウンっ!?」
「さて、皆! ここから先は僕に任せておいて」
頭を押さえて転がり回っているコカビエルに視線を送ったアンノウンは何処からか槍を持った青年を取り出した。
「・・・・・貴様がアンノウンか。聖書の神やミカエルが警戒する存在だと聞いていたが・・・・・面白い!」
「・・・・・うわぁ。戦闘狂かぁ。面倒臭いなぁ・・・・・」
アンノウンはブーメランサーを投げ付けるもコカビエルは体を逸らして避ける。だがブーメランは戻ってくる物。避けたかと思ったコカビエルがアンノウンを見た時、後頭部に激突した。
「じゃあ、僕も本気で行こうか」
アンノウンは体中からオーラを放ち、両手に笹と牛蒡を出現させた。
「
その場に居た全員が転び、周囲の景色が大きく変わる。何ともメルヘンな空間の地面には玩具の剣が突き刺さっていた。
「この場にある剣は全て
「ツッコミ切れるかっ!!」
其れはこの場にいる全員の代弁なのだろう。アンノウンが手にした三代前の戦隊物に出てきた聖剣の玩具は放たれた光の槍を全て砕き、そのままアンノウンはコカビエルへと迫る。
「奥義! ブーメランサーァァァァァ!!!」
そして、そのまま
「勝利っ!」
「……やれやれ、漸く終わったか。ったく、服が埃まみれだよ」
「じゃあ、クリーニング代出すよ。リーアたんのカード使い放題だし」
「なら、別に良いけど」
曹操は無傷で這い出すとブツブツ文句を言いながらアンノウンに詰め寄り、話が纏まるとそのまま二人は霧に包まれて消えて行く。そして次の日になってもアンノウンは帰ってこず、一枚の書き置きが残されていた。
『友達と温泉に行ってきます。旅費は一誠君のコレクションを全て売って捻出したから安心してね。・・・・・お詫びにちゃんと別の物を入れておきました』
本やDVD全てが無くなって落ち込んだ一誠だが、代わりの物に期待して指定された引き出しを開ける。
其所には学校の女子が書いた一誠と祐斗の絡みが精巧な絵で描かれている本が入っていた・・・・・。
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