自由大熊猫UNKNOWN ただしキグルミ 本編完結 作:ケツアゴ
「そうか。なら私に今すぐ切り殺されればいい。いくら罪深き存在でも主はお許しになるだろう」
「あれ? 誰? この痴女ちゃん達」
アンノウンが部室に入るとフードの下はピチピチの水着のような服しか着ていない少女二人が居た。その片方の青髪は何故かアーシアに剣を向けており、アンノウンの姿を見るなり驚いている。
「パンダが喋っているだとっ!? 魔獣か何かかっ!?」
「違うわ、ゼノヴィア。ほら、名札に喋るパンダって書いてるじゃない!」
「……む、確かに。ならば喋ってもおかしくはないか。しかし、初対面の相手を痴女呼ばわりとは感心しないな。グレモリー、このパンダは君の使い魔かい?」
ちゃんと名札に喋ると書いているのでアンノウンが喋る事など驚くべき事ではなく、二人は平然としている。むしろ驚くほうがどうかしているだろう。
「あっ! 一応俺の家で飼ってるパンダなんだ。……それよりもテメェ! アーシアから離れやがれ」
一誠はアーシアと青髪の少女の間に割って入ると青髪の少女を睨む。その間、もう一人の栗毛の少女はアンノウンをベタベタと触っていた。
「私、パンダを触るの初めてだわ。ねぇ、名前は何ていうの?」
「僕、アンノウン~」
「「アンノウンっ!?」」
先程まで一誠に敵意を送っていた青髪も、栗毛の少女も名前を聞いた途端にアンノウンを警戒しだした。青髪の方など今にも切りかからんばかりに剣を構えている。
「……そうか。まさかとは思ったが悪魔の味方だった訳だね」
「ん~ん。僕は僕の味方だよ?」
「……アンノウン、貴方何をしたの?」
「酷いっ!? 僕が悪いのを前提にするなんて……リーアたんの馬鹿ぁぁぁっ!!」
アンノウンは顔を覆いながら部室から飛び出していく。溜息を吐いたリアスが視線に気付いて顔を上げると眷属達が非難する様な視線を送っていた。
「部長、あんまりっすよ」
「……ちゃんと話を聞いた方が良いと思います」
「あらあら、可哀想に。いくら何時もの行動が行動とは言え、あの子はパンダですのよ?」
「あ、あの、私が追いかけてきます!」
「……僕も行こうかな。……きっと彼女達も変態だろうから一緒に居たくないし」
すっかり聖剣使い=変態だと思い込んだ祐斗はアーシアと一緒にアンノウンを追いかけて行く。リアスはキリキリ痛む胃を堪えながら二人の方を見た。
「……それで、何があったの?」
「昔ミカエル様が降臨した時、背景に自室で尻を掻きながら屁をこいた瞬間の映像をリピートで流した」
「ついでに大天使と名乗る時に”大”が”尻かき屁こき”って聞こえる様に細工したらしいわ」
「……貴方達、私に何か言う事あるんじゃないかしら?」
「「「すいませんっしたっ!!」」」
其れは見事な土下座だったという……。
一方、その頃のアンノウンはというと・・・・・、
「アンノウンとぉ~」
「ルフェイの」
「「三分クッキング~!!」」
二人の前に設置された調理台の上には怪しい『食材?』が置いてある。『食材』ではなく『食材?』だ。二人は何時もの服の上からエプロンをしており、アーサーはカメラでルフェイの姿を激写していた。
「……ああ、やはり素晴らしいですね」
「アンノウンさん、今日は何を作るんですか?」
ルフェイは腕に付いた返り血を水道の水で流しながらエプロンを着替える。先程は白のシンプルなエプロンだが、今はピンクのフリル付き。料理しない黒歌が何故エプロンなど持っているのか、それは察して欲しい。ただ言えるのはヴァーリが危うく卒業する所だった、という事だ。
「今日は”エクスカリバーの因子 メシマズヒロインの自称最高傑作風味”です。では、ご用意しするのは以下の材料」
ジャムおじさんモドキからこっそり盗んだ聖剣の因子 四個
ソーナ・シトリーの手作りお菓子 致死量
搭城小猫の手料理 致死量
百均喪女の手料理 致死量
「あの、致死量はどうでも良いですが、この百均喪女って誰ですか?」
「北欧のロスちゃん。仕事は出来るけど家事はまるでダメなの」
「ああ、
「それでは作り方の説明だよ! 激マズ料理をすべて混ぜて」
「はい、混ぜましょう」
ルフェイは
「アンノウン、何作ってる? 我も……我、用事を思い出した」
「……無限龍が逃げる料理って一体」
「そしてそれを一口大に捏ねるね。……ヴァーリが」
「俺がっ!? ……仕方ない。不味さを半減するか。それならきっと触れる」
『Divide』
そして半減した不味さはヴァーリが吸収した。血を吐いて倒れるヴァーリ。アルビオンはさめざめと泣いている。
『ヴァ、ヴァリィィィィィィ!! こんな、こんな事に俺の力を……って、俺の方にもぎゃぁぁぁあああああっ!!』
「この混ぜた物体と因子を混ぜった物体で包み込むよ。そして残りの時間待ち、取り出したら出来上がり!」
「はい、見事に出来ましたね。。でも、これをどうするんですか?」
「ジャムおじさんっぽい人が気付く前に戻しとくの。聖剣を発動している時は数秒に一回口の中にどれかの味が一瞬だけ広がるんだ」
「まあ! それは酷いですね。では、早速戻して来ましょう」
アンノウンとルフェイは何事もなかったかの様に話を進め、アンノウンはそのまま因子を持って帰っていった。
「……残った料理……とは言いたくない物質はどうしましょうか?」
「曹操にでも差し入れしたらどうにゃん? ほら、この前オーフィスの叩いて被ってジャンケンポンに巻き込まれた時、アンノウンが砂鉄を入れたピコハンで叩かれたのに、ヘルメットを被ろうとして挟まれた小指の爪にヒビが入っただけで済んでたわよ。オーフィスってアンノウンと遊ぶ事が多いから手加減ってもん知らないのに。……人間が何処まで出来るか知りたいって言ってるけど、もはや人間じゃないわね……」
「え~、お恵みを~」
「哀れな神の下僕に愛の手を~」
次の日の事、最大限の泣き真似をしてアーシアと祐斗を騙したアンノウンはせしめたお小遣いを持って出掛けた先で物乞いをする二人を見かけた。二人の名はゼノヴィアとイリナ。エクスカリバーを持ってこの街に侵入した堕天使コカビエルを追ってやって来たエクソシストだ。
だが、イリナが経費を騙し取られて無一文。今日の食事代にも困る有様になっていた。
「……仕方ないか」
アンノウンは財布を取り出すとコンビニに入り、弁当を買うと二人の前に持っていった。空腹で我を忘れていた二人の鼻に漂ってきたのは大盛りマヨカルビ丼のニンニク臭。
「お、お前は……。まさかそれを私達にっ!?」
「ああ! なんて素晴らしいパンダなの! 主よ……感謝致します」
「
そのまま口に流し込んだアンノウンはゲップをすると二人の前から去っていく。呆然とする二人はしばし固まっていた。
「……鬼だ」
「そうね。……あれ?」
イリナは足元に置いていた箱に何か入れられているのに気付いてしゃがんで確かめる。其処に入っていた物は……。
「こ、高級バイキングの割引券。千円で90分間食べ放題だと……そして千円札が一枚」
「す、凄いわっ! でも、一人だけ……」
「元はといえばお前が騙されるから……。イリナ、私が行っても良いよな」
「あら? 過ぎた事をグチグチ言うのは醜いわよ。……私もお腹減ってんだから」
二人は無言で睨み合い、そっと剣の柄に手を掛ける。そしてその様子をアンノウンが遠くから撮影していた。
「後でミカっちに送っとこ~」
なお、祐斗の過去は聖剣適合者を作り出す計画で失敗作として殺されそうになった、というものだ。
「あれれ~? 一誠君と小猫ちゃんが
もっとも、アンノウンにとってそのような事どうでも良く、自分が楽しめればそれで良いのだが……。
「あれ、券の期間は残ってるけど店は問題起こして昨日潰れてるのにさ。プククッ~」
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