ギアーズ・スクール   作:クロラピ

2 / 2
前の続きです


変態は勘弁だ……

そんな時、服の裾が引っ張られている事に気が付いた。

 足元には、灰色の四角いロボット。キャタピラ足のモノアイ。

 

「どうしたんだ?」

 

 俺は屈み、ロボットと同じ目線になる。ロボットはモノアイを点灯させている。

 

『コンニチワ、デス』

 

 ロボットは律儀にお辞儀し、俺も釣られお辞儀を返した。

 

『ソレデハ、ココニテヲオイテクダサイ』

 

 ロボットは体からアームを出すと、そのアームを差し出す。

 別に断る事も無い俺は、出されたアームに手を乗せる。すると、学園長が「あーっ!」と叫んだ。

 

「へっ? どうしたんだ」

「お主、何故わざわざ旧型を選んだのじゃ!?」

 

 学園長はそう言いながら顔を近づけてきた。彼女も出来ず十八年過ごしてきた俺は、

女性への免疫が無い。だから、顔を背ける。

 きっと、顔が熱いのは気のせいでは無い。

 

「世界で一人しかいないお主には、最強の新型ギアーズを渡すつもりじゃんたんだぞ!」

 

 それは、理不尽じゃないか? と思っていると学園長は横目でロボットを一瞥する。

 

「こんなガラクタ、どこが良いのじゃ。今ならまだ契約破棄が可能じゃぞ!」

「黙れ」

 

 学園長の言いように、頭に来た。そして、口から自分でも驚くほど冷たい声が出た。

 

「使かってないのに、最初から駄目扱いはいけないだろう」

「……このガラクタを使った者は死んだのじゃ」

 

 学園長は辛そうに顔をしかめる。

 だけど……。

 

「使ってみなきゃ解らないだろ。前の奴は、コイツの所為で死んだとは限らない」

 

 ロボットはモノアイを忙しく、左右に動かしている。

 一方の学園長は顔を背け。ケイトは無表情で俺を見ていた。

 

「なら、それを使えばいい……ケイト、あやつを部屋に連れて行くのじゃ」

 

 後ろに控えているケイトに指示する。ケイトは俺の前に立ち「変態、行きますよ」と。

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

 さっさと行ってしまうケイト。

 だが、俺はこの学園の地形を全く知らない。だから、はぐれたら迷子になってしまう。

 俺は早足でケイトの後ろを付いて行った。

 

 ロボットは器用にお辞儀をして、学園長室の扉を閉めた。

 

 

 純白の壁に、均等的に付けられている電球。その廊下を歩いていた。

 

「ちょっと待ってくれよ! ケイト」

「気安く名前を呼ばないで下さい、変態」

 

 ケイトに一瞥される。

 というか、何で俺はこんな扱いなんだ……?

 あっ、原因は俺じゃん。

 

「せ、せめて普通に呼んでください」

 

 何故か、敬語になっている。

 というか、変態という名から変えてもらえるなら、俺は土下座でも出来る覚悟だ。

 

 ケイトは考える素振りをすると「分かりました」と、頷く。

 

「じゃあ――」

「では、今後から変態さんとお呼びしますね」

 

 あまり変わってない自分の呼び名に絶望した。

 俺は地面に膝を着き、頭を下げる。言うなれば土下座、というやつだ。

 

「本当に変態以外でお願いします!」

 

 頭が痛くなるほど、地面に打ち付ける。

 この世界に俺以外の男がいない。それで、もし変態と言われ続けていたら、

男は変態という方程式が出来上がってしまう。

 

「しょうがないですね……じゃあ、Tさんとでも呼びましょうか?」

「俺は容疑者か! って、驚いた顔をしない」

 

 ケイトは驚いた顔をする。

 だけど、変態よりはマシかと納得する。変態よりはね……。

 

「じゃあTで構わないよ」

「分かりました。へ……Tさん」

「今、変態って言いそうになってたな」

 

 俺が詰め寄ると、ケイトは顔を反らす。そして、会話を変えることを思い出したのか、

手を叩き「そうでした」と言う。

 

「ここが、Tさんの部屋ですよ」

 

 ケイトは足を止め、木製の扉を指さす。

 

「本来は物置部屋でしたけど、急ピッチで片づけました」

「ここが、俺の部屋か……って物置?」

 

 この部屋が物置。しかも、急いで片づけた。ならこの学園の生徒は? まさか……。

 

「後、本来なら同部屋なんですが、変態と一緒では可哀想なので、独断で

この部屋を案内しました」

「ちょっと待て、相部屋の子に確認したのか?」

「はい。貴方との相部屋の方は、突然いやらしい笑みを浮かべ、一人で頷き変態だから嫌です、と」

「成程な」

 

 俺はもう変態の角印を押されたのか。でも、まだ会ってない子にまで変態……って。

 

「それって、相部屋ってお前じゃねーか!」

 

 そうツッコミを入れると、ケイトは舌打ちをする。俺にも聞こえる位の高さで。

 

「では、明日の早朝迎えに行きますから。身勝手な行動は慎んで下さい」

 

 無視をして、話し続けるケイト。

 ケイトは淡々と明日の事を話すとその場を後にしていた。

 

 俺は溜息を吐きながら木製の扉を開いた。

 

「アイツはツンデレか」

 

 俺は部屋を見て、そう呟いてしまった。何故なら……。

 物置部屋と思わせないほど綺麗で、一片の汚れもない。しかも広い。

 家具はベットと机だけだが、満足ものだ。

 

「というか疲れたな」

 

 今日は色々とあり過ぎた。

 獣人族のケイトに銃を突き付けられたこと。

なんやかんだで、このローテイア学園に入学すること。

 

「帰れるのか? 元の世界に……」

 

 ベットの上で横になる。

 まだ、気持の高ぶりはあるが、それでも睡魔の方が勝っていた。

俺は、意識を睡魔に委ねた。

 




感想、アドバイスなどドシドシ下さい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。