君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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081 渦が逆巻くように変態は踊る

どこかの街、どこかのカードショップ。

 

そこに一人の男が現れた。

 

その男の髪は天へ向かって真っ直ぐ伸び、その足はもう一人の男によって支えられており地に着くことは無かった。

 

男が大海に響き渡るような大声で幼い少年に話しかける。

 

 

「おいっ!!そこな少年よぉぉ!!」

 

「ひっ??」

 

「このウイングエッジ・パンサー4枚とお前のグレートダイアース4枚……この俺がっ!!何と今だけ!!交換してやろうではないかっ!!!!!」

 

 

男は自慢するようにシャドウパラディンのFVを少年に見せつける。

 

「……嫌だ」

 

「お前に拒否権は無いなぁ?」

 

「だって、そんなカードいらないもん!!」

 

「馬鹿者がぁぁぁぉっ!!!この世に価値の無い物など存在しぬわぁぁぁぁぁいいいい!!!こいつを見てみろよぉっ!?ソウルに入れるだけで……パワー+3000だぞ!?3000!?3000!!馬鹿にするのか?だったらファイトするか?お前のカードのパワー全てパワーマイナス3000って条件でファイトするか??しないだろ!?だったらこのカードをお前のグレートダイアース4枚とさっさと交換するんだなぁぁぁ!!」

 

少年は泣き出し、ショップの店員が警察に連絡を入れる。

 

 

「ちぃ…また来る!!」

 

 

男の足下にいる人間が高速で這いずり始める。それに伴い上に乗る男は移動を始める。

 

男は高笑いをあげながらそのショップを去っていくのであった。

 

 

近くの公園で男は次のターゲットを探す。

 

そして男は見つけた、こちらに向かって走ってくる一人の幼女を。

 

 

「おいっ!!!そこの幼j「やっと見つけた…!!」

 

 

その幼女…いや少女は男のことを知っていた。

 

 

「何だ…お前……?」

 

「貴方のような悪い人は!!アタシが懲らしめますよ!!」

 

 

男は唐突にその幼女のことを思い出した。忘れはしない去年の6月。いつものように有給を取りカードショップで良心に満ち溢れたトレードをしていたところ、礼儀をわきまえない男女共にトレードを邪魔されたのだ。男はすっかり忘れていた。この屈辱、今日まで忘れたことはない。今、思い出した。

 

「お前……そうかわざわざ俺のところまでトレードしに来てくれたのだなぁぁぁ!?」

 

その幼女はその6月のショップでトレードし損ねた相手だったのだ。

 

 

「違うよ!!誰かを泣かせる変態さんは、アタシが懲らしめるんです!!」

 

「ほぉぉぉぉぉぉう!?小娘がぁ?この正義の体現者、天地海人を懲らしめるぅ??」

 

「そうですよ!!アタシとヴァンガードファイトしなさい!!勝ったらもうこんなことしないで!?」

 

幼女が雄々しく叫ぶ。なるほど、そんな非道なことを言うかこの小娘。

 

「ならばっ!!俺が勝ったときは!!おとなしくお前のカードを譲って貰うぞぉぉぉぉっ!!」

 

「う……うん」

 

 

 

公園のテーブルに二つのデッキが置かれる。

 

 

幼女と変態の対決が、今、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

 

ベリベリコールドな風が吹く、冬の街。

 

 

僕は一人、そんな風のように旅をしていた。

 

 

 

 

風にのって、ソーバット…耳障りな声が聞こえてくる。

 

 

「おぅらぁぁぁ!!!マイ・ジャスティス・アルティメット・ハイパーっ…完全ガーーーーーードっ!!!」

 

そして…天使の涙ボイスが……

 

 

「う…まだ、まだだもん…ドライブチェック…」

 

 

僕はその公園の中へと入っていく、一人の天使のような幼女と醜いタンクトップ姿で奇抜な髪型の男がカードファイトをしていた。

正直、この時点で警察を呼んでいい気がする。

 

 

「どうしたぁぁ?そぉぉのぉぉぉ程度かぁぁぁ??」

 

「ルゴスくん、ベリトくん、ダークボンドちゃんを退却!!スペリオルペルソナライド!!撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン!!…そしてマスカレードくんのブーストしたマーハちゃんでアタック!!スキル発動だよ!!」

 

 

その可愛らしい天使…少女はレイジングフォームのスキルを使用し、再ライドを行うと“闇夜の乙女 マーハ”のスキルを発動。山札から撃退者 ダークボンド・トランペッターを、そしてそのスキルでドロートリガーである氷結の撃退者をスペリオルコールした。

 

マーハのアタックは相手の男にガードされる。

 

 

「もう一度レイジングフォームくんでアタック!!」

 

「無駄ぁ無駄ぁ、大無駄よぉ!!完っ!全っ!ガーーーーーードォォ!!」

 

「うー…ドライブチェック……」

少女の手にクリティカルトリガーが舞い降りるものの、そのパワーを受け継げるユニットは存在しない。

 

「まだ…まだだよ!!あのお姉さんから貰ったレイジングフォームくんはまだ終わらないんだから!!ダークボンドちゃん、マスカレードくん、氷結くんを退却!!お願い…助けて!!スペリオルペルソナライド!!レイジングフォームくん!!アタック!!」

 

 

「ぶるううううぅぅぅわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!かぁぁんぜぇぇん…がぁぁぁぁぁぁど!!」

 

少女は三回目のドライブチェックを行うもののトリガーは出ない。

 

「う……うう……ター「俺のぉぉぉぉぉぉぉぉファイっナルっターーーーーーーーーーーーーンっ!!」

 

 

男の汚いシャウトが公園中に響く。僕の眼鏡にひびが入りそうだ。

 

僕はそれを黙ってウォッチするしかない。一度始まってしまったファイトに水を差すことはヴァンガードファイターとして恥ずべきことだからだ。

 

……本当なら今すぐにあの少女の視界から、あの男をデリートしたいが。

 

 

「ジェネレェショオンゾーーン!!解放っ!!我が正義を体現せし勇者よぉぉ!!悪逆非道の精神で我が前に立つ者達に裁きを与えよぉ!!!いざ!!ストライドぉぅ…ジェネッレェェェェェーーーーショォォォオオオオオオン!!!!!」

 

 

……Gゾーンの表のカードは現時点でダイアースが4枚のエクスタイガーが2枚で合計6枚…そして汚い男が繰り出したユニットは……

 

 

 

「超宇宙勇機 エクスぅ…ka…ごほん、エクスぅ…タぁぁぁイガぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

「……うぅ」

 

「幼女よぉぉぉ!!この俺の趣味である鯖トレを邪魔する等と言う非道な事はこのエクスタイガーが許さんっ!!」

 

 

男はダイジェット、ダイシュート等のスキルを発動させていく、ハーツに“究極次元ロボ グレートダイカイザー”を持つエクスタイガーは瞬く間にそのパワーを上げていった。

 

更にアタック時、エクスタイガーのスキルによってそのパワーは止まるところをドントノウ。

 

 

「26000+4000+4000+4000+28000イコォォォるぅ!!パワー66000!!クリティカル2ぃぃぃ!!アタァァァっクゥゥゥ!!!!」

 

「……あ、あの、か、かか完全ガードで止まりますか?」

 

「止まるわけないだろ」

 

 

待て、あの男さらっと嘘をついたぞ。幼女相手に嘘をつくなんてなんてクレイジーな男だ。

 

そろそろ黙っていられない。

 

 

僕が駆けつけると、少女は泣きそうな顔でレイジングフォーム・ドラゴンを差し出す。

 

少女のダメージゾーンにはカードが10枚程並んでいた。相手の男はどうやらトリプルクリティカルを出した上にそれをわざわざ全てダメージゾーンに並べさせたのか。なんて醜い男。

 

 

「レイジングフォームぅぅぅ?SPか…ふん、便所紙の代わりくらいにはなるか…」

 

「やめてっ!!」

 

「はっ…価値の無いカードに相応しい末路だ…」

 

「あなた…さっきは価値の無いカードなんて無いって……」

 

「んんーー?聞き違いじゃないかぁ?俺はぁ高ぁぁく売れそうなカードにしか興味は無い……じゃあな」

 

 

「待てっ!!」

 

僕は醜い男の前に立つ。そして睨み付ける。

 

 

「今度は何だぁ?」「…?」

 

 

僕は言い放つ。

 

 

「幼女を泣かす不届き者よ…この僕がお前を許さない……ファイトだ!!」

 

「泣かすぅ?…この小娘は泣いてなぞいないだろう?全ては合意、合法、合格なんだぞ、そこをどけぃ!!」

 

「どかん!!その娘の心の涙が見えないような醜い男よ…そのカード、返してもらう!!」

 

「ちっ…せっかくの勝利の余韻が台無しだ、いいぞ、捻り潰し、ぎったぎったのめためたにしてくれるぅぅぅ!!!!」

 

 

 

僕と男は公園のテーブルを挟んで向かい合う。ファイトテーブルはこのテーブルだ。

 

 

「…あの」「お兄さんに何かようかな?」

 

僕は眼鏡の位置を直しながら、エンジェル…女の子の目線に合わせ、しゃがむ。

 

 

「あの嫌な変態さん、懲らしめてくれる?」

 

「任せておきな!」

 

 

僕は女の子の頭をぽんぽんと撫でると、あのベリベリクレイジーな男に向き合った。

 

ファイトの準備は整っている。

 

 

「近くにギアースがあるのに何故使わない?」

 

「はっ、あのギアースとやら俺のジャスティスを理解していない…何度カードを読み込ませても…俺の使うユニットはどれも黒ずんで表示されるのだっ!!我慢ならん!!」

 

「ああ……」

 

 

やはりこいつはクレイジーだ。

 

 

 

「俺はぁぁぁ正義の体現者…天を裂き、地を産み、海を荒らす、この星そのもの!!!天地カイトだぁぁぁぁぁぁ!!!!これがお前を滅ぼす男の名だ、覚えておけぇ!!!」

 

 

 

そんなつもりは残念だが無い。

 

 

 

「僕は渦ヶ坂セン…この宇宙、全ての幼女のお父さんだ!!」

 

「(このおにーさんも結局変態か…)」

 

 

 

行くぞ…醜く汚い、嫌な男!!

 

 

「スタートっ!!マイっ!!ジャスティスっ!!」

「スタンドアップ!!ヴァンガード!!」

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

 

 

「は、はは、はははははははははははは!!!!お前の終わりが見えたぞぉぉぉ!!カイザードでアタック!!ゲットクリティカルぅぅぅ!!!」

 

 

3ターン目、僕はダメージに並ぶ3枚のカードを見つめる。食らいすぎたか。ディメンジョポリス相手にここまで食らってしまうともう後が無い……ヒールを狙いたいが……ディスティニーが僕に味方するかどうか…

 

「タァァァァァァンっ!!エンドぉ「僕のターン」

 

 

僕は男を無視し、ファイトを進める。

 

 

「連携ライド、シャイニースター コーラル…ソウルにフレッシュスター コーラルがいるからパワーは10000だ」

 

 

僕が使うクランはバミューダ△、グランブルー、アクアフォースの3つだ。

 

今回は…バミュのコーラル、マイフェイバリットデッキの一つだ。可愛い。特に幼女から始まるところが。

 

 

「そしてローヌ、ヤルムーク、G2コーラル、G1コーラルをコール」

 

 

2コーラル/2コーラル/ローヌ

ーーーー/1コーラル/ヤルムーク

 

「リアガードのコーラルでアタック!」

 

「んんー?ダイブレイブでガードだ」

 

 

今のところダメージは3vs1。だけど、このターンで確実に2点は入れられる。いや、入れていきたい。

 

 

「コーラルのブースト、コーラルでヴァンガードにアタック!!」

 

「ノーガードだ!!」

 

 

ドライブチェックはシャングリラスター コーラル。トリガーは無しだ。男のダメージゾーンに超次元 ロボダイカイザーが落ちる。

 

 

「コーラルのヒット時スキル発動!!前列と後列のユニットを一枚ずつバウンス!!今回はコーラルとコーラルだ!!そしてヤルムークは自身のスキルでパワー+6000!!」

 

 

「むう」

 

 

「ヤルムークのブーストしたローヌでヴァンガードにアタック!!パワー21000!!」

 

「……ノーガードだ」

 

 

男のダメージゾーンにはクリティカルトリガーが落とされた。

 

 

「Duoのエスペシャルカウンターブラスト!!ヤルムークを手札に戻し、山札からもう1枚ヤルムークを手札に…ターンエンドだ」

 

バミュは手札を攻撃にも防御にも使える。相手リアガードに全く干渉出来ないという弱点はあるが、それなりに強いクランだ。環境クラスにはなれないが…ね。

 

それって弱いってことじゃないかって?そんなこと言ったらどうにもなんないよ。使う側が諦めたら終わりじゃないか。

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!!俺のっ!!タァァァァァァン、ライド!!超次元ロボっダイっ!カイっ!ザーぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

……うるさい。

 

男は続けてG2のダイジェット、G1のダイライオンをコールする。

 

 

「ダイシュートのブーストしたダイカイザーぁぁでアタックだぁぁぁぁぁぁパワー23000!!」

 

「…マディラ、メジェルダでガード…2枚貫通だ」

 

「ツインドライブ…ファースト、クリぃぃぃぃぃぃティカルぅぅぅぅ!!全てダイカイザーにぃぃ!!セカンド…ぉお!!クリぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃティカルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!はぁぁぁぁぁぁっはっはっはっはっはっはぁぁぁぁぁぁ!!!終わりだなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ヴァンガードが僕の2枚貫通ガードを無理矢理突破してくる。信じられない。いや、信じたくない。しかもこれで僕はヒールトリガーを引けなければ敗北とまで来た。

 

 

「嘘だろ……?」

 

 

……僕はダメージチェックを始める。ダメージは3点…か。ちなみに今の僕のダメージも3点、あの男も3点。

 

「……ダメージチェック…ファースト、ヒールトリガー…ダメージを回復しパワーはヴァンガードに」

 

 

間一髪の所でヒールトリガーを引くことができた。心臓の鼓動がやばい、なんだこいつ、そもそも前のターンから数えて3連続でクリティカルトリガーを引くなんてなんて恐ろしく醜い男なんだ。クレイジー。

 

これはやはり保険をかけておく必要があるか。

 

 

「……セカンドチェック…アリア、トリガー無し、サードチェック……くっ…オーロラスター コーラルっぐ……ぐ、ぐぐわぁぁぁぁぁ!!??」

 

 

僕は手札を相手に見えないようにテーブルに置くと胸に手を当てて苦しんだフリをする。我ながらクレイジーウェイだ。

 

 

「ほう、余程イメージ力(笑)があるようだな貴様、このファイトで社会的に死に果てるといい!!!」

 

「ぐ、ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

僕は奴の足元へ崩れ落ちる。その時に奴の土台を構成している男と目があってしまった。バッドな気分だ。

 

 

 

そして僕は“何事も無かったように立ち上がる”とファイトテーブルに戻る。

 

 

「リアガードでアタック、これで、とどめだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「…シャイニースターコーラルとマディラでガードする!!」

 

 

ダメージは5点、だが手札に大きな損失は無い。

 

 

「ちぃぃぃぃ!!ターンエンドだ……」

 

「……僕のターン…連携ライド!!オーロラスター コーラル!!」

 

 

僕のヴァンガードを見て男が叫ぶ。

 

 

「いぃぃぃいぃぃぃのぉぉぉぉかぁぁぁぁぁ??お前の大好きな幼女が既に大人だぞぉぉぉ!?!?」

 

「…男、お前は何も分かっていない」

 

 

僕は冷静に手札を見つめながら。その愚かな言葉に返事をする。

 

 

「…幼女、いやロリショタの最も素晴らしい点は発達途上である点だ。ロリショタには無限大の未来が広がっている、それを見守り、育てることこそ至高。故にこのデッキ…コーラルの連携デッキこそ至高。最高のデッキだ……お前は僕を勘違いしている、僕は普通のロリコンじゃあない…僕は!!全ての幼女の!!お父さんなんだよっ!!!そんな僕に的外れな質問をするお前は!!ナンセンスだっ!!」

 

「………」「………」

 

 

何か凄い引かれている気がする。

 

 

「シャングリラスター コーラルで新たな世界の扉を開く……ストライド・オン・ステージ!!レインエレメント マデュー!!」

 

 

マデューのハーツであるオーロラスター コーラルは元々のパワーが10000…これを条件にマデューのスキルが発動する。僕はドロップゾーンからシャングリラスター コーラルを手札に加える。

更にリアガードに2体…G1のフレッシュスター コーラルをコールする。

 

 

「さあ…食らえよ!!変態!!」

 

「はっ!?変態は貴様だろぉぉぉぉぉぉがぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

お前が言うか。

 

マデューの攻撃はノーガード。こちらはクリティカルを1枚引き、男を5点まで追い詰める。(ちなみに残り2枚は守護者)

 

「コーラル、ローヌでアタッ「ダイウルフ、ダイライオンでがぁぁぁぁぁぁどぉぉぉ!!!そして俺のっファァァァァイナァァルっタァァァァァァァぁぁぁぁぁン!!!!」

 

「っ!!」

 

 

 

「ぶるぅぅぅぅぅぅぅぅぅえいくぅぅぅうっ!!!ラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁイドぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!レギ!!オぉぉぉぉぉぉン!!!!!!!“真”!!究極!!次元!!双闘!!!グレぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇトぉぉぉぉぉぉ!!ダイっ!!カイっ!!!ザぁ(略)」

 

 

 

「うるさい…」「うるさい…」

 

 

 

しかし不味い、これは不味い。

 

 

 

 

「は、はは、ふはははははははははははは!!!残る二つのリアガードサークル!!一つはダイジェットをコールだぁ!!そしてもう一つはぁぁぁ?」

 

「……」

 

「コールぅぅぅ!!…コマンダぁぁぁぁぁぁ!!!ローぉぉぉぉぉぉぉぉぉレルぅぅぅぅぅぅう!!!」

 

「ちくしょう……」

 

 

やはり保険をかけておいて良かった。

 

 

「行くぞぉぉぉ?パワー34000クリティカル3のレギオぉぉぉンアタぁぁぁぁぁぁックぅぅぅう!!!」

 

「……アリアで完全ガード…×3だ!!」

 

 

僕は手札からコーラルを1枚、ヤルムークを2枚ドロップし、完全ガードを一気に3枚発動させる。何としてでもここで止めて、次のターン…アトモスを打ち込めれば…ワンチャン……!?

 

 

「ドラぁぁぁぁぁぁイブぅぅぅぅぅぅう!!チェぇぇぇぇぇックぅ!!!は、はは、ははは、はははははははははははは!!!究極次元ロボぉぉぉぉぉぉ!!!グレーーーーぇぇぇぇぇトぉぉぉぉぉぉダぁぁぁイユーぅぅぅぅぅぅシャぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」

 

 

ドライブチェックでグレード3が登場する。そして、それによってダイカイザーの恐怖のスキルが発動する。

 

 

「ダイカイザーのぶるぅぅぅぇいくライドスキル発動ぅぅぅぅ!!お前の完全ガードを消し炭にするぅぅぅぅ!!!」

 

 

僕はガーディアンサークルのアリアを1枚、ドロップゾーンへ送る。

 

 

 

「そして“真”!!グレートダイカイザーのスキルも発動ぅぅぅ!!!CB1!!お前のもう1枚の完全ガードにも消えて貰うぞぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

僕のガーディアンサークルから更にもう1枚、アリアが消える。僕のガーディアンサークルのアリアは残り1枚になってしまった。

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!セっカぁぁぁぁぁぁンドぉチェーーーーぇぇぇぇぇックぅぅぅぅぅぅう!!!!!ぉぉぉ…おぉぉぉぉぉぉ…おおおおおおお!!真!!究極次元ロボっ!!グぅレーーーーぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇトぉぉ!!!ダぁイ!!カぁイ!!ザーぁぁぁぁぁぁ!!!ゲぇぇぇぇぇットぉぉぉぉぉぉ!!グレーぇぇぇぇぇドぉぉぉ3だぁぁぁぁぁぁ!!!ぶるぅぅぅぅぅぅぅえいくぅ、ラ(略)」

 

 

ダイカイザーのブレイクライドスキルによって、こちらの完全ガードは全て消えてしまった。

 

こちらのダメージは5点、奴のクリティカルは3。

 

終わったな。

 

僕の山札からヒールは出なかった。

 

 

「これが俺のぉぉぉ!!!実ぅぅぅぅぅぅ力ぅぅぅぅぅぅだぁぁぁぁぁぁ!!!!はぁぁぁぁぁぁっ!!はっはっはっはっはぁぁぁぁぁぁ!!!はぁぁぁぁぁぁはっはっはっはっはぁぁぁぁぁぁ!!!実に気持ち良かったぞぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

男は自身の勝利を確認すると、デッキを回収し、高笑いをあげながら公園から出ていった。

 

敗北した僕の後ろでは少女が僕を睨んでいる。

 

 

「……嘘つき、あの変態を懲らしめるって約束してくれたのに…」

 

「ははは…まあファイトには負けちゃったけどね」

 

 

 

面目ない、情けない。だけど、最低限のことはした。僕は彼女に“あのカード”を渡す。

 

 

「これで……許してくれないかな?お嬢さん」

 

「これ……アタシの!!」

 

それはあの男がこの少女から取り上げていたカード“撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン”だ。実はファイトの途中でこっそり取り返しておいていた。

 

あの男も自分が奪ったカードが突然消えていれば、多少は面食らうのでは……どうだろうか。

 

 

「……」

 

 

少女はそのSP使用のレイジングフォームを大切そうに抱える。

 

 

「どうかな?」

 

「……ありがとぅ」

 

少女は嬉しそうに微笑む、うん、この笑顔があれば僕は三日三晩何も食べなくても生きていける。

 

 

「お礼にアタシもおにーさんにイイコトしてあげる」

 

「え?」

 

少女は僕の手を取る。

 

 

 

「おにーさん、アタシについてきて!!」

 

 

涙が出そうだ。少女が僕を引っ張っていく。

 

 

「ほら!ついて来て!!」

 

 

 

至福の時とはこういう瞬間のことなのだろうか。日頃の行いが良かったから、神様が僕に幼女を授けてくださったのか。いや、これは僕が関わっていった、僕が拾った幼女だ。

 

僕は拾った。幼女を拾ったんだ。

 

ついつい呼吸が荒くなる。眼鏡も曇る。

僕は彼女の小さな手の温もりを感じながら、空いた方の手で携帯を取り出す。

 

電話をかける。その相手は僕の最大の理解者。

 

プルルルルルル…

 

 

『おー、センどうしたん?』

 

「幼女拾った、やばい」

 

『出頭してきな、じゃあね』

 

 

 

プッ…ツーツーツー……

 

 

 

いや……いやいやいや。ねえ。

そんな…冷めるようなことを言われても…ねえ。

 

…………。

 

 

 

少女は僕を連れていく、その先には交番がある。

 

 

 

 

…………。

 

 

 

少女は僕を連行する。そう、交番に。

 

 

 

…………ん?

 

 

 

少女が僕の方を見て言う。

 

 

 

「おにーさんはアタシを助けてくれた良い人だと思うの、だけどね、時々アタシを見る目がね、怖いの、はぁはぁ言ってるのもね、怖いの」

 

 

「………」

 

「だからね、ここで“かいしん”したらね、一緒に遊んであげる!!またね!!」

 

 

「え?……ちょ……」

 

 

「じゃあね!!」

 

 

 

少女がてけてけと、あっという間に遠くへ行ってしまう。

 

 

あれ…………?

 

 

 

 

 

……僕は渦ヶ坂セン、全てのロリ、ショタのお父さんだ。だけど今はただの屍だ。

 

 

 

 

数十分の間、交番の前で魂が抜けたように立っていた僕。……警官に職質されるのも時間の問題であった。

 

 

 


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