君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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045 真の奈落

「スタンドアップ・THE・ヴァンガード!!」

 

「スタンドアップ!ヴァンガード!!」

 

ヒカリとユズキ…二人のFVが姿を見せる。

 

 

ユズキのFV…先陣の探索者 ファイル(5000)。

 

「前戦った時と同じ……か」

 

ヒカリのFV…“ジャッジバウ・撃退者(5000)”。

 

「そっちは…色々変わってそうだな」

 

先攻はヒカリ…彼女はゆっくりとドローする。

 

(私のシャドウパラディンもユズキのロイヤルパラディンも、以前戦った時から新しいカードが発売されている……か)

 

「ライド、無常の撃退者 マスカレード(7000)」

 

ヒカリはFVのジャッジバウをマスカレードの後ろにコールすると、ターンエンドを宣言した。

 

(…ロイヤルパラディンは間違いなく今のヴァンガードで最強クラスのクラン…油断はできない…)

 

「では、私のターンかな……ドロー……連節棍の探索者 イスバザード(7000)、誠実の探索者 シンリック(7000)をコールだ」

 

安定の立ち上がりをするユズキ。

 

「シンリックでヴァンガードにアタック!(10000)」

 

ヒカリは今の自身の格好を改めて見つめ直す。

 

(落ち着け…私らしく…だ……そう…私は!!)

 

「我を守れ…」

 

「おお?」

 

「氷結の撃退者!」

 

ヒカリは自身の“勢い”を掴む。

人には誰しも“ファイトの勢い”というものがある。

手の動き、言い回し、思考力…自分なりの“勢い”を見失ってはいいファイトは行えないだろう。

 

ヒカリはそれを実感するのだった。

 

(この感じ…懐かしい……………)

 

「ファイルのブースト、イスバザードでアタック!(12000)」

「ノーガード…」

 

ユズキのドライブチェックで登場したのはグレード2の“弩弓の探索者 ギルダス”…ダメージチェックではグレード1の“撃退者 ダークボンド・トランペッター”と、両者共にトリガーを引くことは無かった。

 

「ターンエンドだ」

「ならば、スタンドandドロー…共に行こう、漆黒の騎士よ…ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”(9000)にライド!!」

 

ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”…長い上にまとまりの無い名前を持ったユニットだ。

 

通常のブラスター・ダーク・撃退者がCB2で前列のユニットを退却させるスキルであるのに対して、このAbyssはCB1で後列に置かれやすいグレード1のユニットを退却させることができる。

 

つまり…

 

(2枚揃えば…最強……なんてね)

 

「詭計の撃退者 マナ(8000)をコール…マナのスキルで“鋭峰の撃退者 シャドウランサー(7000)”を山札からスペリオルコール!!さらにスキル発動!!」

 

ヒカリは手札からグレード3…撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”を見せる。

 

「Abyssは奈落へ…そしてモルドレッドが帰還する」

 

ドロップされたファントムブラスターと入れ替わるように山札から幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントムが手札に加えられる。

 

「山札から特定のグレード3を呼び出すカードか…なるほどな…」

 

「行くよ…ダーク“Abyss”が剣を抜く…ジャッジバウのブーストを受けアタック!!(14000)」

 

「ラヴィングヒーラーでガード(1枚貫通)!!」

 

ヒカリは山札へと指を伸ばす。

 

「ドライブチェック…暗黒の撃退者 マクリール」

「トリガー無し…ダメージも無しだな?」

「……ええ、ならシャドウランサーのブーストしたマナでヴァンガードにアタック!!(15000)」

「ハロルドブレス・ドラゴンでガード」

 

2回の攻撃は2枚のトリガーによって完全に防がれてしまった。

スキルでスペリオルコールされていたシャドウランサーも山札に戻り、ヒカリのターンはここで終了した。

 

 

「カードゲームっていいよな」

 

「?」

 

 

突然、しみじみと呟いたユズキ。

 

「私のターンだ」

 

しかしヒカリがその事を追求する間もなく、ユズキはスタンド、ドローとゲームを進め始めた。

 

「英気の探索者 マッダン(9000)にライドして、シンリックでヴァンガードにアタック!(10000)」

「マナでインターセプト!!」

 

「ブースト付き!マッダンでアタック!(14000)」

 

「……ノーガード」

 

「ドライブチェック…まぁるがる!!ドロートリガーだ!!」

 

ユズキは1枚引き、ヒカリは1点のダメージを受けた。

ダメージゾーンにはダーク“Abyss”が顔を覗かせていた。

 

ターンはヒカリに移る。

 

ここまでダメージは2vs0…いまだにユズキは無傷の状態であった。

 

だがヒカリは落ち着いていた。

 

今の自分ができる、最善の手を……打つために。

 

(慌てる場面じゃ……ないからね)

 

「スタンドandドロー……参る!世界の優しさと痛みを知る漆黒の騎士よ!我らを導く先導者となれ!!ライド・THE・ヴァンガード!!幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム!!!」

 

モルドレッド・ファントム(11000)…ヒカリは自身の宝とも呼ぶべきカードへとライドする。

 

「私は手札から超克の撃退者 ルケア(9000)を呼ぶ!」

 

「へぇ…」

 

ヒカリは2回戦の後デッキ構築を変更する際、モルドレッドを加えるだけでなく様々なカードを新たにデッキに加えていた。

 

FVのジャッジバウ・撃退者、シャドウランサー…そしてこのルケア……

 

それがヒカリの新たなデッキ、新たな仲間であった。

 

「そして督戦の撃退者 ドリン(7000)をルケアの後ろにコール!!ルケアはスキルでパワー+3000!!」

 

超克の撃退者 ルケアのスキルとは“グレード1以下のリアガードがコールされる度にそのターン中自身にパワー+3000する”というもの。

使いやすく、小回りがきく。

 

「ジャッジバウのブースト、モルドレッドはヴァンガードにアタックする!!」

 

「む……ノーガード」

 

「ドライブチェック…first…モルドレッド…second…ブラスター・ダーク・撃退者……トリガー無し」

 

ユズキのダメージに英気の探索者 マッダンが落ちていく。

 

「ジャッジバウのスキル発動!!」

 

ジャッジバウ・撃退者は『ブーストしたアタックがヒットした時、ブーストしたユニットが“ファントム”を含む名前を持っている場合に発動する』スキルを持っている。

ちなみにヒカリのデッキのグレード3は全て“ファントム”という名前を持っている。

 

「CB1…自身をソウルに……無常の撃退者 マスカレード!!雄弁の撃退者 グロン(4000)を山札からスペリオルコール」

 

マスカレードは空いていた前列に、グロンはモルドレッドの後ろにコールされる。

ジャッジバウ・撃退者のスキルは山札からグレード1以下のユニットを2枚までコールできるというもの、そしてその恩恵を受けるユニットがヒカリのリアガードには存在した。

 

「ルケアにパワー+6000!」

 

これでルケアは単体パワー18000になった。

 

 

「マスカレードでシンリックに!!(7000)」

「ノーガード」

 

「ルケアとドリン!パワー25000でヴァンガードを!」

「ノーガード!」

 

ダメージとして護法の探索者 シロン…完全ガードが落ちる。

 

「ターンエンド…」

 

2vs2…これでようやくダメージが並ぶ、だがしかしヒカリのヴァンガードがグレード3になったことで次のターンからユズキは双闘を使うことができる。

 

 

ここから戦いが激しくなることは明らかだった。

 

 

 

「私のターン……スタンド…ドロー……ふふっ」

 

「??」

 

楽しそうに、実に楽しそうにユズキが笑う。

 

「楽しいよな、こうして向かい合ってカードで戦うのって」

 

「ユズキ…」

 

「知らない奴とも知ってる奴でも…カードを通してより深い所でコミュニケーションが取れるっていう感じが…凄いよな」

 

 

カードゲームとは、勝ち負けを決める勝負事であり、コミュニケーションの方法の一つ。

カードを持つ手、言動、礼儀、その人の性格がよく表れる。

ユズキが感動していたのは、カードゲームのそういった側面だった。

 

 

「…私達が知り合ったのも、ヴァンガードが切っ掛けだったね……」

 

「ああ…そして、今こうして戦っている」

 

 

ユズキの手札から…1枚、カードが抜かれる。

 

「覚えているか?カードショップで初めて会った時のこと……」

 

「うん…ファイトをしたよね…」

 

「そして私は負けた……だからこれは私にとってリベンジマッチなんだ……勝たせて貰うぞ!!!」

 

ユズキから気迫を感じる。

 

純粋に勝利を求める…思いを。

 

「王は来た!!輝ける祝福の鎧…解き放て!!ライド!!光源の探索者 アルフレッド・エクシヴ!!!」

 

光源の探索者 アルフレッド・エクシヴ(11000)…ネオンメサイアに収録された新たなる騎士王。

 

そして、その力は…

 

「まぁるがるをコール!その上から弩弓の探索者 ギルダス(9000)を上書きコール!!」

リアガードのいなかった列にギルダスが置かれる。そして、まぁるがるは退却されドロップゾーンのカードが4枚に……

 

「シークメイト!!」

 

ハロルドブレス、ラヴィングヒーラー、シンリック、まぁるがる……それらのカードが山札に戻っていく。

 

「ブラスター・ブレード・探索者!!双闘!!」

 

アルフレッドとブラスター・ブレード…切っては切れないこの二人がレギオンとしてここに降り立った。

 

「先陣の探索者 ファイルのスキル…ソウルに入れてブラスター・ブレード・探索者(9000)をスペリオルコール!!ギルダスのスキル…CB1でぐりんがる・探索者(6000)をスペリオルコール!!」

 

“双闘時”を条件に誘発する二つのスキルが発動していく。

 

「さらにぐりんがる、奮起の探索者 アレミールをコール!アレミールのスキル!!ブラスター・ブレード・探索者がヴァンガードの時、SB2、他の探索者のユニット1枚につきパワー+1000!!」

 

ユズキの盤面の探索者ユニットはアレミールを除くと6枚…つまりパワー+6000ということになる。

 

ソウルブラストも使うことによって、次のレギオンの準備も万端という訳だ。

 

「そしてエクシヴも他の探索者の枚数分だけパワー+1000され、リアガードが5枚存在するならクリティカルも増える」

 

アルフレッド・エクシヴのパワーは現在26000、☆2まで上昇している。

 

「さて、行くぞ!!ぐりんがるのブーストした、エクシヴでアタック…クリティカル2のパワー32000だ!」

 

「…ノーガード」

 

強力な攻撃…だが、これはおそらくユズキの全力では無い。前回ヒカリが戦った時から“エースカード”は変わっていない筈だ。

 

(そう…まだシングセイバーが控えている…)

 

「ドライブチェック…護法の探索者 シロン……そして……」

 

ヒカリが考えた矢先だった。

そのカードが姿を見せる。

 

「探索者 シングセイバー・ドラゴンだ…トリガー無し」

 

ヒカリはダメージチェックを行う。

 

詭計の撃退者 マナ、そしてドロートリガーの氷結の撃退者……

 

「ぐりんがるのスキル…ブーストしたアタックがヒットした時……縦列にブラスター・ブレード・探索者がいるならスキル発動…シングセイバーを山札の下へ、CBを1枚表にし、1枚引く」

 

(ドライブチェックで引いたシングセイバーを山札に戻したということは、既にシングセイバーが手札にあるということ……?)

 

呆気なく山札に戻されたシングセイバーを見てヒカリは考えていた。

 

(確かにこの方法なら、少なくとも次にレギオンするまで山札に必要なシングセイバーは安全だ…)

 

シングセイバーのスキルは山札から同一カードによるスペリオルライド…山札にシングセイバーが1枚以上存在しなければ使えない故に最大の問題は自身のダメージ落ちとされている。

 

(取り合えず…確実にどこかでシングセイバーが来ると考えて……間違いないかな)

「ぼーっとしてる暇は無いぞ!ぐりんがるのブーストしたブレード・探索者でリアガードのルケアにアタック!!(15000)」

 

「…ノーガード」

 

「なら、アレミールのブースト、ギルダスでモルドレッドにアタック!!(22000)」

 

「撃退者 エアレイド・ドラゴンでガード!」

「ターンエンドだ!!」

 

ヒカリにターンが回る。

このターン、ユズキは双闘を使いこの後も使ってくるだろう。

ここからのユズキの猛攻をどう耐えるかがヒカリにとぅての課題だ。

 

(とは言え…選択肢は一つか……)

 

ヒカリは自身のダメージゾーンと手札を見比べる。

ダメージは今や4点…敗北の足音が少しずつ近づいて来ている。

だがしかし。

 

(4は幸せの数字…だよ!!)

 

「スタンドandドロー……幻の闇纏う漆黒の騎士よ、奈落より生まれし剣で我らを勝利へ導け!ペルソナブレイクライド!幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム!!」

そして、ブレイクライドスキルが発動する。

 

「CB1、モルドレッドにパワー+10000、ブラスター・ダーク・撃退者をパワー+5000の状態でスペリオルコール!!」

 

ダーク撃退者の後列にはドリンが控えている。

ドリンのスキルで消費したCBを回復する。

 

…と、ヒカリの隣から恐ろしい言葉が聞こえてきた。

 

 

 

「ナイトアーマーでアタック!ナイトアーマーでアタック!ナイトアーマーでアタック!ナイトアーマーでアタック!!マグマアーマーでアタック!!」

 

「インターセプト!ガード!ガード!ガード!ガードっ!!」

 

(……何…?)

 

「止めだ…ナイトアーマー!!」

 

「くっそぉぉぉっ!!!」

 

 

 

それは青葉ユウトの悲痛な叫び、そう彼は敗北した。

 

「…どうやら私の仲間が一勝を決めたようだな」

 

「まだ勝負は決まってない…先に倒れた者の思いは私たちが受け継いでいる…だから私は絶望しないし諦めないよ」

 

「ああ、そうだ、私だって油断するつもりは無いさ、最後まで貪欲に勝利を求めてやる」

 

ヒカリとユズキの間で静かに花火が散る。

 

「グロンのブーストからスキル発動、モルドレッドでアタック!!」

 

グロンのスキル…ブーストしたユニットが“ファントム”ならばSB1で10000ブースターに変化するというもの。

これでモルドレッドのパワーは……

「パワー33000!!」

「ノーガードだ!」

 

ユズキのダメージは2点…ここで致命傷を与えることは不可能だ。

「ドライブチェック…暗黒医術の撃退者!ゲット!ヒールトリガー!!」

 

このヒールトリガーは嬉しい、これでヒカリとユズキは同点になる。パワーはダーク撃退者に与えた。

 

「second…ルケア、トリガー無し」

「ダメージチェック…シンリック、こちらもトリガー無し」

 

「マスカレードでリアガードのギルダスにアタック!(10000)」「ノーガード」

 

「ドリンのブースト、ダークでヴァンガードにアタック!!(26000)」「それもノーガード!ダメージチェック…探索者 シングセイバー・ドラゴン……か」

 

ヒカリは心の中でガッツポーズを取る。

 

1体…たった1体だが、シングセイバーをダメージに落とすことができた。

 

「ターンエンド…」

 

それだけでも収穫だ。

 

「私のターンか…スタンド、ドロー…エクシヴのスキル、CB2…マッダンをスペリオルコール!!」

 

リアガードは再び埋まる、この展開力は流石ロイヤルパラディンといったところか。

 

(シャドウパラディンも負けてはいないけどね…)

 

「ぐりんがるのブースト、エクシヴでモルドレッドにアタック!!パワー32000クリティカル2!!」

「そこは暗黒の撃退者 マクリール!!完全ガードだよ!!」

 

ヒカリはコストとしてルケアをドロップする。

 

「ドライブチェック…必殺の探索者 モドロン、クリティカルトリガーだ!!パワー、クリティカル共にマッダンに与える……そしてセカンドチェック……シングセイバーだ、トリガー無し」

 

これで恐らく彼女の手札にはシングセイバーが2枚入っていることになる。

 

「ぐりんがるのブーストしたブレード・探索者でモルドレッドに!!(15000)」「ダークでインターセプト!!」

白と黒の剣士…その剣がぶつかり合った。

 

「シンリックのブーストしたマッダン!モルドレッドへ!!パワーは21000、クリティカルが2!!」

 

「……ノーガード」

 

ヒカリは2点のダメージを受ける、身の安全より次の攻撃を選んだのだ。

ダメージに落ちたのは雄弁の撃退者 グロンとドロートリガーの氷結の撃退者であった。

 

「ターンエンド」

 

ユズキのターンが終わり、ダメージは5vs4。

 

(ユズキの方が有利な状況……か)

「私のターン……スタンドandドロー…幻の闇纏う漆黒の騎士よ、奈落より生まれし剣で“再び”我らを勝利へ導け!!ペルソナブレイクライド!!幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム!!!」

(そろそろその盤面…破壊させて貰うよ!!)

 

「CB1でパワー+10000!、そしてブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”をスペリオルコール!!AbyssのスキルでCB1!!エクシヴの後ろのぐりんがるを退却!!」

 

“Abyss”はマスカレードと同じ列にコールされた。

ヒカリは手札からさらにユニットをコールする。

 

「ブラスター・ダーク・撃退者をコール!!ドリンのスキルでCBを1枚表に!」

 

ここに来て、ようやくヒカリのリアガードサークルが全て埋まった。

 

「さっきと同じ…グロンとモルドレッドでアタック!!(33000)」「完全ガードだ!」

 

ガーディアンサークルに完全ガードの護法の探索者 シロンが置かれる…コストはシングセイバーだ。

「ドライブチェック…first…マクリール…second…撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”!!」

 

トリガーでは無い、トリガーでは無いが。

 

(やっと……来てくれた、私の切り札…)

 

モルドレッドが“ヴァンガード”だとするなら、ヒカリにとって“Abyss”は“ジョーカー”……

使用するタイミングに制約があるが、強力なカード。

それはもちろんユズキも知っている。

 

(そろそろ決めないと不味いか……)

 

「マスカレードとダークAbyssでヴァンガード!(21000)」

 

「ノーガード、ダメージは…まぁるがる、ドロートリガーだ…パワーはエクシヴに与え1枚引く」

 

これでダメージは5vs5。

 

「なら、ドリンのブーストしたダーク・撃退者でヴァンガードに!!(16000)」

 

「マッダンでインターセプト…私のターンだ」

 

流れるように自分のターンに入るユズキ。

そして…恐れていた事が、“彼”が姿を見せる。

奈落竜の前身にして、先代の守護竜……

 

 

「スタンド、ドロー……穢れ無き純白の輝きで世界を照らせ!!ライド…!探索者 シングセイバー・ドラゴン!!!」

 

 

それはヒカリが前回戦った時と全く同じ口上だった。

 

 

「シークメイト…希望に満ち溢れる世界で見つけた、絆で繋がる友よ!ブラスター・ブレード・探索者!“双闘”!!」

 

(あの攻撃に耐えられる…?…いや耐えなきゃ…ならないんだ……)

 

「マッダンをコール……行くぞヒカリ」

 

「……うん」

ユズキはシングセイバーの後ろにブースト役をコールしなかった……つまり彼女の手札の内容も質が良いとは言えないのだろう。

 

「シングセイバーでモルドレッドにアタック!!(22000)」

 

「…暗黒医術の撃退者、厳格なる撃退者でガード!!(2枚貫通)」

 

シングセイバーはスペリオルライドを使って追撃する仕様上、乗せたトリガーを引き継ぐことは出来ない。

ここでガードを破ってくることは無いだろう。

 

「ドライブチェック…護法の探索者 シロン、連節棍の探索者 イスバザード…トリガー無し…だが!!」

 

来る。

 

「レギオンスキル!!CB2、SB3…イスバザード、エクシヴを手札から捨てる!」

 

(私の手札は残り4枚……)

 

「ソウルメイト……レギオン!!」

 

スタンド、レギオン状態のシングセイバーがヒカリの目の前に現れる。

 

(さすが奈落竜様…白くても凛々しい……現実逃避してる場合じゃないか……)

 

「モルドレッドにアタック!!(22000)」

「完全ガード!!」

 

ヒカリは暗黒の撃退者 マクリールを使う……そのコストは……

 

「…撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”をドロップ」

 

切り札は失われた。

 

「…ドライブチェックだ……」

 

運命の…ドライブチェックが始まる。

 

「ファーストチェック……探索者 ハロルドブレス・ドラゴン……クリティカルだ」

 

効果は全てブラスター・ブレード・探索者に与えられた。

 

「セカンドチェック……!!」

 

「…………」

 

「探索者 ハロルドブレス・ドラゴン……同じくクリティカルだ!」

 

効果は全てマッダンに与えられた。

 

(ここに来て……ダブルクリティカル……なんて)

 

「ブラスター・ブレード・探索者!!ぐりんがるのブーストを受けモルドレッドにアタック!!パワー20000、クリティカル2だ!!」

 

「ダーク・撃退者!ダークAbyss!インターセプト!」

 

「決める!!シンリックのブースト、マッダンがスキルを発動する!!」

 

ユズキはコストのCB1を払う。

 

「他の探索者の枚数パワー+1000……行くぞ、パワー26000、クリティカル2でアタック!!」

 

「撃退者 エアレイド・ドラゴン、厳格なる撃退者でガードっ!!」

 

これでユズキのアタックは終わる。

 

「……ターンエンドだ」

 

ダメージは5vs5と互角に見えるが、手札はユズキが5枚あるのに対し……

 

(今のでもう手札は無くなった……ね)

 

0枚…ヒカリは両手に何も持っていなかった。

 

リアガードにしても相手は3列でアタックができる状態であるのに対し、ヒカリはブラスター・ブレードの攻撃で2枚のブラスター・ダークを失っている。

 

(打つ手無し……なのかな)

 

ヒカリは自分の両手を見つめる。

 

共に戦う仲間がいる。

 

ここで戦おうと誓ったライバルがいる。

 

何より、モルドレッドの負ける姿は……

 

(そんなの……私が見たくないよ!!)

 

 

瞬間、ヒカリは幾つかの事を思い出した。

 

 

 

……ベルダンディ……そして“力”…ヒカリの知る者達はヒカリにその力があると、そう言った。

 

 

 

(私にそんな力があるって言うなら……)

 

 

ヒカリの目に…微かに光が宿る。

 

「スタンドand……」

 

 

(あるって言うなら……)

 

 

光は確かに強くなる、その色を変化させながら。

 

 

 

(……使いたいっ!!!)

 

「…ドローっ!!!!」

 

 

 

ヒカリの瞳が一瞬だが、完全に緋色に染まる…

 

 

対戦相手のユズキでさえ確認できない程…一瞬のことだった………それをしっかりと見ていたのは対戦を見ていた舞原ジュリアンのみ。

 

 

「あ……」

 

ヒカリの手に降り立ったのは、切り札……

 

真なる奈落で目覚めた黒き竜。

 

「……見えたよ…私のファイナルターン」

 

「…ふっ…ヒカリの全てをぶつけてこい」

 

ヒカリのたった1枚の手札が、ヒカリを勝利へと導いていく。

 

「真なる奈落で影と影…深淵で見た魂の光が彼らを繋ぎ、強くする!!ブレイクライドレギオン!!」

 

ブレイクライドスキルでパワー+10000、ブラスター・ダーク・撃退者をスペリオルコールし、ブラスター・ブレード・探索者を退却させる。

 

そして…シークメイト……これがブレイクライドレギオン。

 

「撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”、ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”!!!」

 

ヒカリは後列にいたマスカレードを前へと出す。

 

「マスカレードでマッダンへ」「…ノーガード」

 

そしてユズキのインターセプトはいなくなった。

ユズキの手札は5枚…ヒカリが把握しているのは内4枚…クリティカルトリガー3枚と、完全ガード1枚だ。

 

「ドリンとダーク・撃退者でアタック!!(21000)」

「マッダンとハロルドブレスでガード!!」

 

見えた……ヒカリは確信する、これがファイナルターンだと。

 

(できればクリティカルを乗せたいけど…確か“この力”って1回切りって噂だっけ……)

 

 

「グロンのスキルandブースト!撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”……アタック!!(42000)」

 

「パワー……42000!?」

 

「そう…42000…」

 

 

恐ろしいパワーだ、いや、恐ろしいのはここからか。

 

 

「…完全ガードだ!」

 

護法の探索者 シロン…そしてハロルドブレス。

 

ユズキの手札はこれで1枚。

 

(やっぱりクリティカルが欲しい……けど)

 

「ドライブチェック…first……撃退者 ダークボンド・トランペッター……second…暗黒の撃退者 マクリール」

 

そこまで都合のいい能力は無い。

 

現在のヒカリの力にはしっかりと“1回のみ”の制約が課せられていた。

 

(でも…私は勝つ…勝って次に……進む!)

 

「レギオンスキル!!CB2、マスカレード、グロン、ドリンは下がれ!!ここからは地獄への一本道だ!!」

 

ヒカリは……“Abyss”をスタンドさせる。

 

「影は消して消えず、光の元に在り続ける!!もう一度、撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”でアタック……パワー32000!!」

 

「ははっ…ノーガードだ」

 

ヒカリのドライブチェックからトリガーは出ず、ユズキのダメージチェックからも、トリガーが出ることは無かった。

 

「ゲームエンド…ありがとうユズキ、いい試合だった」

 

「こちらこそ…な、まぁまだチームでの勝ち負けは決まってないようだがな」

 

ヒカリはその言葉に隣を見る。

 

「天乃原さん……」

 

心配そうに見つめるヒカリの前……立ちはだかるマシニング・ウォーシックルの前で……

 

…アシュレイ“Я”が地に伏していた。

 




突然のキャラクター紹介(1)

深見 光

フカミ ヒカリ

7月11日生まれ…45話時点で16歳

身長158㎝ 視力は1.2程度

物語開始時は耳が隠れる程度だった髪も現在は肩に届くまで伸びている。

両親はいわゆる研究者…ヒカリが小学6年生の頃に海外で行方不明になっている。

その後、生まれ育った天台坂を離れ、祖母の住む北宮の町へと引っ越すことになる。

高校生の現在は高校に通う都合で、両親と暮らしていた家に戻り従姉妹の香坂夫婦の助けを借りながら生活している。

使用クランはシャドウパラディン

45話時点の所持デッキは「撃退者」と「ファントム・ブラスター」

中学時代にヴァンガードを始め、引退した後にネット上で“ベルダンディ”と呼ばれることになる。


↓ちなみに筆者のイメージをアナログな落書きにしてみました。

…雑で未完成、下書き状態ですが、よろしければ……どうぞ。


【挿絵表示】



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