「はい、今回は第三回ですが、その前に!」
開会宣言を前に、朱里が手にした杯を掲げる。
「まずは、黄巾党完全征伐を祝して……かんぱーい!」
「「「「かんぱーい」」」」
会議に参加する面々が杯を鳴らし、注がれた老酒に口をつける。
「ぷはーっ、おいしいですね。さすがは最近なぜか酒造が盛んな揚州のお酒です。亞莎ちゃん、ありがとうございます」
「いえ、皆さんのお口に合ったなら良かったです」
「ちなみに、私たちは全員十八歳以上なので飲酒も問題ありません!」
「は、はあ……そうですね。誰に言っているんですか?」
「気にしないでください」
朱里の発言に亞莎が首をかしげるが、朱里は答えなかった。
「さてさて、いちおう出欠取りますね。名前を呼ぶので返事をして下さい」
「そんなの見れば分かるじゃない。少人数なんだし」
「野暮はいいっこなしですよ桂花さん。では、桂花さーん」
「……はいはい、居るわよ」
「亞莎ちゃーん」
「は、はいっ」
「ねねちゃーん」
「ここに居るのですぞ」
「雛里」
「なんで呼び捨て?」
「全員いますね。じゃあ会議を始めますよー」
「ねえ朱里ちゃん、なんで私だけ呼び捨て?」
そんなこんなで、今日もゆるい会議が始まる。
本日のお茶請けは、桂花がお土産で持ってきた兗州地方の老舗が作った菓子だ。
いつも通りに雛里が茶を入れ、皆に振舞う。
「雛里ちゃん、私だけお茶がない」
「…………」
「呼び捨てにしたの気にしてるの?」
「…………」
「雛里」
「…………」
「ちっ……まあいいです、報告といきましょう」
雛里から視線を切った朱里が、まず桂花に向き直る。
「桂花さんから、簡単な近況報告を」
「そうね……華琳さまは黄巾討伐で連勝、大功を立てられたわ。その功あって、朝廷から兗州牧の地位を賜った。ま、妥当なところでしょうね」
「ふむふむ、順調なようですね。桂花さん個人はどうです?」
「私も、軍師として確実に華琳さまからの信頼を勝ち得ているわ。側近の夏侯惇なんかとは対立しているけど、バカだから問題ないし」
「なるほど。妄想とかではないですよね?」
「喧嘩売ってんの?」
失礼なことを言う朱里を桂花が睨むが、朱里は素知らぬ顔で話題を移した。
「では次、亞莎ちゃん」
「はい。孫策さまは元々揚州で軍閥として勢力をもっておられましたが、今回の黄巾党討伐の功で名声を得て、勢力は確固たるものとなりました。ですが……」
「ですが?」
「その、孫策さまは正式な官位は持っておられないので、形式的には荊州太守である袁術さまの客将という立ち位置なんです。なので地元での名声は高まっても、その功績は全て袁術さまのものということに……」
「はー、なるほど。苦労してるんですね」
深刻そうに言う亞莎に、朱里が唸る。
「反乱でも起こしたらどうです?」
「軽いわよ! そんなふわっとした感じでやるものじゃないから!」
朱里の発言に桂花が叫ぶ。
が、しかし、
「あ、それは私も提案しました」
「したの!? 孫策はなんて!?」
「『面白いから採用! でも冥琳に怒られるからまだ』だそうです」
「冥……? 誰よ?」
「孫策さまの軍師をしていらっしゃる周瑜さまですね」
「ああ、噂の美形軍師ね。……というか、反乱は起こす気満々なわけか」
「そうみたいですね」
どこか楽しそうに言う亞莎に、桂花が辟易する。
ふむ、と顔に手を当てた朱里が続けた。
「では、孫家が躍進するのは近そうですね。亞莎ちゃん自身はどうです?」
「激痛が走る人体急所を的確に刺突する技を開発しました」
「間違ってます! その進歩は明らかに軍師関係ないです!」
「だめですか?」
「ひぃぃだめではないです素晴らしいです、頑張ってください」
「はい! 頑張りますね!」
笑う亞莎に、朱里が距離を取る。
「こ、こほん。気を取り直して、ねねちゃん」
「はいなのです」
「どうでした? 呂布さんは想像通りの自信過剰なお馬鹿さんでしたか?」
「ちんきゅー胴回転廻し蹴りッ!!!!」
「はわごふぅっ!?」
体重の乗った蹴りが朱里の即頭部に刺さり、錐揉みしながら椅子から転げ落ちる。
「恋どののことを悪く言うのは許しませんぞ!」
「おふぅ……な、なぜうちの軍師たちはみんな戦闘能力が高いのですか……」
「朱里が弱すぎるのです」
「ひ、雛里ちゃんとは互角ですもん……。というか、どうしたんですかねねちゃん? その、恋というのは呂布さんの真名ですか?」
「そうです。ねねは、恋どのの軍師として董卓軍で働いているのです!」
「ああ、仕官には成功したんですね」
よろよろと立ち上がり上がら、朱里が話を続ける。
「董卓軍自体は黄巾党征伐ではあまり話を聞きませんでしたが……」
「恋どのは活躍していたのですぞ! あまり大きな戦場には出ていませんが」
「へー、自軍の温存に走ったんですね。賢いけど卑怯――」
「ちんきゅー延髄切りッ!!!!」
「ぎゃーっ!!」
ずったんばったんと追いかけっこを始める二人。
会議が進まないと見た桂花が、雛里へと話を振った。
「劉備のとこはどうだったのよ?」
「あわ……こちらも黄巾党討伐の功で、桃香さまが平原の相に任じられました」
「へぇ、義勇軍出身としては破格じゃない」
「はい。私と朱里ちゃんも、正式に軍師として任命されて働いています」
「そっちも順調ってことね。……あーもう、いい加減うるさいわね」
走り回るねねと朱里にしびれを切らした桂花が、ねねの襟首を掴んで止める。
「何をするのですか桂花! ねねは朱里に制裁を――」
「うるさい。ふんっ」
「ふぎゃあぁぁっ!!??」
ねねを持ち上げた桂花が、勢いよくねねの後ろの穴(どことは言わないが)に指を突き入れた。
「あが……け、けいひゃ……なにを――」
「うるさい子には、おしおきよ。ほらほらほらほら」
「あっ! うあ……あが……! やめ……アッ――――!!」
ぐりぐりと桂花が指を動かすと、ねねは叫び声をあげた後、力尽きたかのようにがくりと脱力した。
「しばらく大人しくしてなさい」
「あぅ…………」
床に倒れ伏したねねは、ヨダレを垂らしたままぴくりとも動かない。
その一部始終を見ていた亞莎が、キラキラとした眼差しで桂花へと向き直る。
「あんなに元気なねねさんを指一本で黙らせるなんて……。桂花さん、すごいです! いったいどこでそんな技を?」
「別に。閨で華琳さまにして頂いたことを真似しただけよ」
「そうなんですか。……是非、私も会得したいですっ!」
意気込んだ亞莎が、倒れたねねに蹴りを入れている朱里に目を向ける。
「あっはっは! お姉さんに逆らうからこうなるんですよ! このっこのっ!」
「…………」
「あー、愉快です。これに懲りたらもう私には…………ん? 亞莎ちゃん?」
「…………(じりっ)」
「あ、亞莎ちゃん? なんでじりじりと距離を詰めて来るんですか……?」
「大丈夫です、痛くしないよう頑張ります」
「何かする気満々じゃないですか! 止めて! そういうのは雛里ちゃんに――」
「こんな感じでしょうか。えいっ」
「はわーーーーッ!!!!????」
亞莎が勢いよく朱里の下の穴(どことは言わないが)に指を突き入れた。
「あッ亞莎ちゃん! ソコは駄目です! 私の大切な膜が! 膜がっ!!」
「そしてこう、ぐりぐりと」
「アッ―――――!!!!」
閑話休題。
「うぅ……今日は何だか酷い目にあってます……」
「自業自得でしょ」
「どこがですか! 亞莎ちゃんのは私に非はありませんよ!」
「日頃の行いよ」
「…………ッ!!」
「ああ、言い返せないくらいには自覚あるのね」
桂花が溜息を吐く。
「まあいいです。とりあえず、皆さん順調ということで。今回は黄巾党の討伐も終わってどこも一息ついてますし、現状維持で頑張っていきましょう」
「はいはい」
「それでは、お疲れ様でしたー」
朱里が閉会の挨拶をし、各々が帰り支度を始める。
「はい朱里ちゃん、お茶」
「遅いよ雛里ちゃん! ここでお茶とかもう嫌がらせでしかない! しかも熱い!」
「じゃあ私、先に帰るね」
「待って雛里ちゃん! 謝るから! もう呼び捨てにしないから!」
「桂花……」
「何よねね」
「さっきの……もう一回……」
「気色悪い!」
「私も桂花さんの技を必ずや会得してみせます……。帰ったら、明命で練習しましょう」
こんな感じで、第三回会議もまた、何の実りもなく終了した――――。
はい、毎度どうもすみません。
何かしているようで何もしていない感じで、これからも会議は続いていきます。
未プレイの方向けに喋りますと、最後に出てきた明命というのは亞莎の同僚である周泰の真名です。きっとこのあと亞莎に後ろの穴を開発されます。どことは言いませんが。
まあ、未プレイの方向けに書いてないので、何もかもがチンプンカンプンだとは思いますが。
ご意見アドバイス頂けたら嬉しいです。ではでは。