~真・恋姫†無双~軍師たちの三国会議   作:たたらば

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第二話です。相も変わらず何の生産性もないお話です。
第一話は加筆・修正しました。あまりにも説明が足らなすぎたので。
それではどうぞ。


第二回議題『亞莎ちゃん殺人鬼説』

 

第一回の会議から二ヶ月後、前回とおなじ別荘にて。

 

 

「はい、というわけで第二回でしゅ!」

「また噛んだわね」

 

 

桂花に突っ込まれながら、朱里が第二回の開会を宣言する。

 

「えーとですね、とりあえず気になるのは……」

 

朱里が言うと、桂花と雛里の視線が亞莎へと注がれた。

二人の意見を代弁するように、朱里が言う。

 

「えっと、亞莎ちゃんはなんで生きてるんですか?」

「ひ、ひどくないですか!?」

 

あんまりな言い方に、亞莎が涙目になって喚く。

 

「いやその、ほら……あんな書状持ってほんとに国に帰ったから、てっきり処刑されてるものだと」

「その書状書いたのアンタじゃない」

「じ、自己責任でと言いましたし!」

 

桂花にジト目を向けられ、朱里が必死で言い訳をする。

会話を聞いていた亞莎はしかし、朱里の書状が冗談だったとも気づかずポカンとしている。

 

「えっと、お二人が何を言いたいのか分かりませんが……あの書状を渡したら国主さまよりお許しが出たので、私はまた孫家にお仕えしてますよ?」

「えっ、あの書状ほんとに渡したんですか!?」

「……? は、はい」

 

驚く朱里に、亞莎が頷く。

 

「国主の孫策様にお渡ししたら、大笑いした後に『面白いから許す!』と」

「……おおらかな方なんですね」

「はいっ。孫策様は懐が深いです!」

 

嬉しそうに言う亞莎に、朱里たちは笑うしかできない。

 

「ま、まあいいです。会議を進めましょう。……そういえば、今日は新たな士を桂花さんが勧誘してきてくれたんですよね」

「ええ。頭も切れるみたいだし、在野でちょうどいいから拾ってきたわ」

 

桂花が扉に向かって「入って」と言うと、勢いよく扉を開け、緑の髪をなびかせる一人の小柄な少女が会議室へと入ってきた。

少女は促されるまま、桂花の隣の椅子にちょこんと座る。

 

「えーっと、では自己紹介を」

「……陳宮、字名は公台なのです」

 

そっけなくそれだけ名乗った少女は、不機嫌そうに鼻を鳴らす。

無愛想な挨拶ではあったが、なぜか朱里は大喜びである。

 

「素晴らしいです桂花さん! この子おっぱいがありませんよ!」

「アンタの判断基準それしかないの?」

「よろしくね陳宮ちゃん! 私は諸葛孔明、真名は朱里って言います!」

「なっ、初対面のねねに真名を預けるのですか!?」

 

陳宮が驚く。

 

「ここに来てくれたってことは、もう私たちの同志。桂花ちゃんのお墨付きなら信頼にも値しますから」

「む、む……そうですな。……では、ねねのことも真名で呼んで構いませんぞ」

「本当ですか! 嬉しいです!」

「ねねの真名は、音が三つで音々音といいます。ねねとでも呼ぶといいのですよ」

 

ねねが真名を名乗り、それぞれと名前を交換する。

 

「それでは、新しい同志を加えて今日も頑張りましょう!」

 

 

 

 

 

 

雛里が入れた茶を飲み、亞莎が持ってきたごま団子をつまみながら、まったりとした雰囲気の中で五人が会議を進める。

 

「それでは、前回の作戦の報告と行きましょうか。例によって桂花さんからお願いします」

「そうね。……完結に言うと、私は曹操様に全てを捧げるわ」

「……ほぇ?」

 

突飛なことを言い出した桂花に、朱里が間の抜けた返事を返す。

 

「だから、私は曹操様に全てを捧げるって言ってるの。身も心もね」

「……ど、どうしたんですか? この二ヶ月で何があったんです?」

「一目惚れよ。華琳さまの神々しい美しさに、私はもう魅了されてしまったの♡」

「うわぁ……」

「もう処女も捧げたし」

「ええぇぇぇぇぇぇぇっ!!??」

 

うっとりと虚空を見つめる桂花に、朱里が絶句する。

話の流れからして、どうやら華琳というのが曹操の真名であるらしい。

 

「き、気持ち悪いです桂花さん」

「失礼ね。いいじゃない惚れたんだから。私は華琳さまのもとで、これからの乱世を生き抜くわ」

「ちょ、ちょっと! 当初の目的は分かってますか!?」

「心配ないわよ。それはそれ、私情と目的は混同しないわ」

「ならいいですけど……」

「人のことより、アンタたちはどうだったのよ?」

 

桂花が朱里へと視線を向ける。

 

「私たちも、もう桃香さま――劉備さまの下で軍師をやってます。人材不足らしくてすぐに軍師に任命してくれました」

「えらく簡単にいったわね」

「事前に、周囲の国で近くに二人の天才軍師がいるという噂を流しておきましたから」

「……ああ、あの伏龍と鳳雛とかいう馬鹿っぽい噂アンタたちだったのね」

「ば、馬鹿っぽいとはなんですか! それに伏龍と鳳雛という名前を考えたのは雛里ちゃんです!」

「朱里ちゃんの嘘つき。考えたの朱里ちゃんでしょ」

「自分の感性の悪さを人のせいにしちゃダメだよ雛里ちゃん」

「…………」

「…………」

「(ぺちっ)」

「(びしっ)」

「はいはい喧嘩しないの」

 

慣れが入ってきた桂花が二人を仲裁する。

 

「それで、劉備のほうはどうだったの? 噂では腕利きの義兄弟がいるって聞いたけど」

「関羽さんと張飛ちゃんですね。三人を評するなら、おっぱい・おっぱい・ちっぱいって感じでしょうか」

「……アンタに聞いても話が進まないわ。雛里?」

「あわわ……ちっぱい、おっぱい、ちっぱいって感じでしゅ」

「おっぱいが一人居なくなったんだけど! アンタ何したのよ!?」

 

虚ろな目をしている雛里に、桂花が叫んだ。

 

三人がわぁわぁと騒いでいる間に、取り残された亞莎とねねがそろって茶をすする。

 

「この会議は、いつもこんな感じなのですか?」

「まだ二回目ですけど……まあ、そうですね。あはは……」

「まあ、楽しそうなのは結構ですが……。あ、そういえば」

 

何かを思い出したねねが、一旦部屋を出て、すぐにまた戻ってきた。

その手には紐が握られ、紐の先には小柄な犬が結ばれている。

 

「洛陽からここに来る途中、犬をひろったのです」

「わあ、可愛いですね」

 

少し元気のない犬を撫でながら、亞莎が笑う。

 

「あれ? ねねさん、この子首輪に名前が書いてありますよ」

「ほんとですか?」

「えっと……セキト。この子の名前でしょうか」

「小柄な体に似合わず勇ましい名前ですな」

「それから……『呂奉先』?」

 

首輪に書いてあった文字に、亞莎が首をひねる。

 

「呂奉先? それって確か、最近涼州から出てきた董卓のところの武将じゃない。それ、呂布の飼い犬じゃないの?」

 

話を聞いていた桂花が、つかつかとセキトのもとまで歩いてくる。

 

「呂奉先と言えば、最近の黄巾党討伐で活躍してる猛将よ。なんでも数万の軍勢を一人で退けたとか。……うわ、本当に呂布の名前が書いてある」

 

首輪の文字を見ながら、桂花が言う。

だがねねはそれを鼻で笑い、反論した。

 

「数万の軍勢を一人でなんて、おとぎ話にしても出来が悪いのです。……その呂布とかいう武将、よほど自分の武を誇りたいのですな。性格悪そうなのです」

「まあ、私も信じてるわけじゃないけど。……ねねアンタ、ちょうどいいから董卓軍の様子見てきなさいよ」

「えぇ~……なんか粗暴そうでイヤなのです」

「わがまま言わないの。アンタも同志なんだから、しっかり私たちに協力しなさい」

「面倒ですなぁ。……まあ、飼い犬を返しがてら、行ってきますか」

 

ねねが諦めたように溜息を吐いた。

そこに、喧嘩が終わったらしい朱里が入ってくる。

 

「どうやら、ねねちゃんのお仕事も決まったみたいですね」

「そうですな。というか朱里、ボロボロですぞ?」

「気にしないでくださいねねちゃん。今日は引き分けでした」

「雛里は無傷のようですが」

「引き分けです」

「……そうですか」

 

それ以上、ねねは何も言わなかった。

 

「では、ねねちゃんの今回の目標は董卓軍の様子を見てくること。他の皆さんは仕官に成功したみたいですし、少しずつ重役に登っていけるよう努めましょう」

「「「「おー」」」」

 

揃っているような揃っていないような声で、皆が掛け声を上げる。

 

「そういえば、黄巾党のほうはだいぶ勢力が弱まってきたみたいですね」

「諸侯の活躍で官軍が盛り返してきてるからね。このままいけば滅ぶでしょ」

 

朱里の発言に、桂花が返答する。

 

「あっ、黄巾党との戦では私も功を上げたんですよっ」

「おおっ、そうなんですか亞莎さん。どんな策を用いたんです?」

「いえ、策ではなく前線での槍働きですけど」

「……亞莎さん、軍師をやってるんですよね?」

「そうですが?」

 

またもキョトンとする亞莎に、再び四人が沈黙する。

 

「前線で、たくさんの黄巾党の兵をくびり殺したんです。全部で五十人はヤったでしょうか。……楽しかったです」

「楽しかったって言った! いま亞莎さん楽しかったって言いましたね!?」

「はいっ、とっても楽しかったです!」

「開き直らないでください!」

 

晴れやかな笑顔で亞莎が言う。

 

「はわわ……どうしよう雛里ちゃん。亞莎ちゃんって実はとってもヤバい感じの人なんじゃないかって気がしてきたんだけど」

「勧誘したのは朱里ちゃんだよ。もしもの時は責任とって死んでね?」

「ひどい! 雛里ちゃんひどいよ! そんなこと言うならわたし、雛里ちゃんが巻物での自慰に挑戦して紙がふやけて抜けなくなった時のことみんなに言いふらしてやるんだから!」

「あわわぁっ!? 微妙に本当っぽい嘘つくのやめてよ朱里ちゃん! ほら、そんなこと言うからねねちゃんが私から距離を取ろうとしてる!」

 

相も変わらずぎゃあぎゃあと喧嘩を始める二人。

蚊帳の外の桂花は、ぬるくなった茶を啜ると、

 

「…………帰ろ」

 

そういって、帰り支度を始めるのだった――――。

 

 

 




はい、前回に続きどうもすみません。
勘違いされるかもしれませんが、作者は恋姫のキャラたちをとっても愛しております。
愛ゆえにのこの酷さです。

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