~真・恋姫†無双~軍師たちの三国会議   作:たたらば

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はじめまして。思いつきで書き始めた本作でございます。
原作のキャラクターたちが会議室で雑談するだけ、ヤマなしオチなしイミなしのゆるい作品です。
キャラは崩壊してます。ファンの方には申し訳ありません。
一刀くんは存在するかもしれませんが話には出てきません。多分。
掲示板に上がっているSSのようなスピード感のある会話劇が書きたくて始めたので、そういったものが合わない人は読むのはやめておきましょう。
そんなんでもよければ、読んでやってくださいませ。


第一回議題『雛里ちゃんよりおっぱいありますから』

――――時は後漢。

 

漢王朝の権威が失墜し、にわかに大陸に暗雲が立ち込め始めた時代。

あるものは漢王朝を立て直すべく、あるものは漢王朝に成り代わるべく。

そしてあるものは旧秩序を破壊し、新たな時代を気づくべく。

さまざまな思惑と意志が、大陸の各所で表面化しはじめていた。

 

そんな時代にあって、大陸中央のとある場所。

大きな街から離れた小さな別荘に、この大陸の行先を憂う年若い少女たちが集まっていた。

別荘の一室に置かれた円卓、それを囲うように、四人の少女が座っている。

どの娘も見目麗しく、なれどその瞳には、全員が理知的で聡明な光を宿していた。

 

「そろそろ時間ですね。……では、始めましょうか」

 

美しい金髪の髪にちょこんと帽子をかぶった少女が立ち上がり、口を開く。

他の三人もそれに頷くと、金髪の少女へと視線を集めた。

こほんと咳払いをし、少女が元気よく声を上げる。

 

 

「それでは、第一回『大陸を平和に導いちゃうぞ会議』、始めましゅっ!!」

 

「(噛みました)」

「(噛んだわね)」

「(噛んでるよ朱里ちゃん……)」

 

 

開会宣言を台無しにした金髪の少女に、三人から微妙な視線が向けられる。

 

「……始めますっ!!」

 

金髪の少女が涙目になりながらも強引に引き戻す。

こほんと咳払いをし、改めて説明を始めた。

 

「本会議は、これから騒乱が予想される大陸を平和へと導くため、在野の中から特に知力に優れた士を集め、具体的な方策を練っていくことを目的としています。条件で言うと、在野で仕官を考えており、かつ知力90以上が目安です」

「90?」

「気にしないで下さい。それでは、初対面の人もいるので自己紹介から行きましょうか。では桂花さんからお願いします」

 

金髪の少女に指名され、猫耳型のフードをかぶった少女が立ち上がる。

 

「荀彧、字名は文若よ。……朱里にも真名を許しているし、桂花と読んでくれて構わないわ。馴れ合いはするつもりないけど、まあよろしく」

「とまあ、こんな感じでひねくれものです」

「朱里うるさい!」

 

桂花が怒鳴る。

だが金髪の少女は気にした様子もなく、素知らぬ顔で立ち上がった。

ちなみに真名とは、この世界における自身の真の名前のようなもので、本来ならばよほど気を許した相手でなければ呼ぶことすら許されない神聖なものである。

 

「では次は私が。諸葛亮、字名は孔明と申します。頭がいいです、天才です」

「自分で言ってちゃ世話ないわよ」

「はわわ!」

「何よいきなり!」

「決め台詞です」

「だから自分で言ってたら世話ないわよ!」

 

隣に座る桂花はもはやツッコミ役である。

 

「真名は朱里です。気軽に呼んでくださいね」

「気軽に呼んでいいものじゃないけど」

「桂花さん茶々入れないでください」

「こいつ……!」

「そして私の隣に座っているのが雛里ちゃんです。ほら、雛里ちゃん挨拶して」

「う、うん」

 

朱里に促され、帽子を目深くかぶった青髪の少女が立ち上がる。

 

「龐統、字は士元でしゅ……。雛里と、呼んでください」

「オドオドしてるわね。ハッキリ喋りなさいよ」

「あわわ……」

「……決め台詞?」

「あわ……」

「桂花さん!雛里ちゃんをいじめないで下さい! 雛里ちゃんは対人能力がゴミ以下なんです!」

「アンタのほうが失礼でしょ!」

 

ポカポカと桂花と朱里が殴り合う。

結果は桂花の圧勝であった。

 

「きょ、今日はこのくらいにしておいてあげましゅ……。では最後の方」

「は、はいっ」

 

ボロボロの朱里に呼ばれ、片眼鏡をかけた優しそうな少女が立ち上がる。

 

「私は呂蒙、字は子明と言います。真名は亞莎です。よろしくお願いします」

「やっとまともそうなのが来たわね」

「少し前までは孫家の部将の方に仕えていたのですが、私を目の敵にする上官をうっかり毒殺してしまったので、国から逃げてきたら朱里さんに声をかけられました」

「こわっ!! 一番まともじゃなさそうなんだけど!!」

 

恐ろしい経歴に桂花が亞莎から距離を取る。

亞莎がニコリと笑いかけると、雛里までもが怯えたようにビクリと体を震わせた。

朱里だけは動じることなく、何事もなかったかのように話を進める。

 

「というわけで、少ないですが最初はこの四人で進めていきましょう!」

 

 

 

 

 

諸葛亮、龐統、荀彧、呂蒙。

 

始まりは、水鏡という賢人が開いていた私塾で学んだ朱里と雛里が、戦乱の機運高まる世を憂えて旅に出たのが始まりだった。

私塾でも一二を争う秀才であった二人は、己の力を世直しに活かすべく、しばらくは各地を回って大陸の情報を集め歩いた。

 

その旅の途中で出会ったのが、在野として同じく世の様子を伺っていた桂花と亞莎の二人である。

両名とも知略に優れ弁舌さわやかで、人見知り気味であった朱里や雛里とも打ち解け、やがて夜通し大陸の未来について語り合うほどの深い仲となった。

それぞれの実力を認めた四人は、朱里を発起人として乱世を共に歩むことを決意。

不定期で行われる会議というかたちで大陸中央に位置するこの別荘に集い、現在に至るというわけだ。

ちなみにこの別荘は、朱里と雛里の門出の祝いとして、旅立ちの時に水鏡が貸し与えた場所である。

 

雛里が入れた茶をすすりながら、まったりと会議が進む。

 

「まあ、まず挙げるなら黄巾党ですよね」

「最近、大陸中で行動している謎の集団ね。官軍と各地で戦ってるそうじゃない」

 

朱里の言葉に桂花が頷く。

黄巾党とは、ここ最近、漢王朝の打倒を掲げて決起した武装集団である。

発生した経緯等はよく分かっていないが、その数は凄まじく、優に官軍の数十倍の人数に膨れ上がっている。

 

「数は居るけど、烏合の衆でしょ? 討伐できないなんて官軍も情けないわ」

「桂花さんならできるんですか?」

「できるわよ」

「在野の分際で?」

「アンタ私のこと嫌いなの?」

 

さらりと毒を吐く朱里。

そういえば、と亞莎が口を開いた。

 

「黄巾党の首領は、張三姉妹なる三人の女性らしいですね。人をひきつける魔性を持つとか」

「そうなんですか。雛里ちゃんを黄巾党に送り込んで首領を篭絡させようと思ってたんですが、女性では無理ですね」

「あわっ!?」

 

雛里が驚いた顔で朱里を見る。

 

「朱里ちゃん、ひどくない?」

「大陸の平和のためだよ」

「朱里ちゃんが行ってよ」

「私はこの会議の頭脳だから」

「むぅ」

 

雛里が可愛らしく膨れる。

 

「……朱里ちゃんはおっぱい無いもんね。篭絡無理だもんね」

「言ってはならないことを! 雛里ちゃんも同じなくせに!」

「朱里ちゃんよりあるよ」

「何を!」

「あわわ」

 

胸が無いことを気にしている朱里が雛里にわーっと襲い掛かり、ポカポカと殴り合う。

結果は雛里の圧勝であった。

 

「今日のところはこのくらいに……」

「アンタ弱いわね」

 

ボロボロの朱里に桂花が微妙な顔をする。

めげることなく、朱里が話題を軌道修正した。

 

「やっぱり、黄巾党は打倒しなきゃダメですね。ここはやっぱり手っ取り早く、私たちのようなすごい頭脳が官軍に味方するのが良いのではないでしょうか」

「だから自分で言うんじゃないわよ」

 

桂花に突っ込まれながらも、朱里が地図を広げる。

 

「最近、黄巾党相手に連勝しているところというと……孫策さんですね。亞莎ちゃんが居た場所です」

 

揚洲を指さしながら朱里が言う。

 

「うぅ……私の故郷ですし、可能なら戻りたいのですが……」

「でもアンタ、上官殺したんでしょう? もどったら処刑されるわよ」

 

桂花に言われ、亞莎がうなだれる。

朱里はしばらく考え込むと、ぴんと指を立てて提案した。

 

「うーん。お手紙書きましょうか。亞莎ちゃんを許してくださいって」

「アンタ馬鹿じゃないの?」

「失礼な。誠意を見せればきっと許してくれますよ。……えーと、『亞莎ちゃんはうっかりさんなので許して上げてください』っと」

「誠意の欠片もないんだけど」

 

書をしたためた朱里が、亞莎にそれを渡す。

 

「はい。これで国に帰れますよ」

「大丈夫でしょうか?」

「自己責任でお願いします」

「分かりました。試してみます」

「馬鹿しかいないのここ」

 

桂花がうんざりした顔で溜息を吐いた。

 

「他人事じゃありませんよ。桂花さんはどこにするんですか?」

「私は……そうね、この北の曹操って騎都尉が気になるわ。連勝してるみたいだし」

「おっぱいが小さそうな名前ですね」

「どんな名前よ」

 

桂花の話を聞き、朱里が考え込む。

 

「私は、義勇軍のほうをあたってみようと思います。最近、劉備なる人物が率いる義勇軍が活躍しているみたいですし、その辺りを」

「義勇軍ねぇ。活躍してるっていっても、知れてるんじゃないの?」

「小さくて人材不足の組織のほうがチヤホヤしてくれます」

「会議の名前もう一回思い出しなさい」

「考えたのは亞莎ちゃんです。イマイチですよね」

「だからさらっと毒を吐くのはやめなさいってば! ほら、亞莎も泣かないの!」

 

うなだれる亞莎を、桂花が必死でなだめる。

最後に残った雛里に、朱里が視線を向けた。

 

「で、雛里ちゃんは黄巾党だね」

「いいよ。朱里ちゃんたち滅ぼしてあげるね」

「私のほうが頭がいいから無理だよ」

「あわわ、象棋では私の勝ち越しだよ」

「水鏡女学院では私のほうが成績良かったし」

「…………」

「…………」

「(ばしっ)」

「(げしっ)」

「だから喧嘩するなってんでしょ!」

 

桂花が叫ぶ。

その後しばらく悶着があり、ようやく全員が落ち着いて席に着いた。

 

「それではとりあえず、桂花さんが曹操さん、亞莎ちゃんが孫策さん、私と雛里ちゃんが劉備さんの陣営の様子を伺うという感じでいきましょう。各自死なないように」

 

まとめるように朱里が言う。

 

「在野でめぼしい人がいたら勧誘してくださいね。ただしおっぱいがある人は駄目です。亞莎ちゃんも正直言ってギリギリですが、文句を言うと後が怖いので許しました」

「私、怖いですか?」

「ひぃぃ、ごめんなさいごめんなさい」

「何もしてないのに」

「とにかく、こんな感じで大陸に平穏をもたらすべく暗躍しましょう。では、お疲れ様でしたー」

「お疲れ様でした……」

「お疲れ様」

「お疲れ様です」

 

挨拶を終え、ひとしきり雑談をしてから全員が部屋を後にする。

大陸の騒乱は、始まったばかりである。

 

 

 


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