アミッドという【ディアンケヒト・ファミリア】の団員には悪いことしたかな。なんだか泣きそうな感じだったな。アイズ達なんて言って一二〇〇万もぶんどったんだよ。
そして今、【ゴブニュ・ファミリア】へ歩きながらアイズと話していたのだった。ちなみに心臓はもうおかしくなって一周して平常になっている。
「確かアイズの武器ってサーベルの形したやつだろ。名前は《デスペレート》って言ったっけ?」
「……うん。アルの太刀は?」
「俺のは《
不壊属性って言っても、言った通り切れ味と威力の低下が発生する。どうにかならないかな。
「そういえば、何斬ったんだ? 相当厄介なやつを斬ったんだろうけど」
そうでなければ、武器を整備に出すのはもっと先でもいいはずだ。そりゃ遠征から帰ってくれば出すだろうが、多少は自分でも出来るだろう。
「なんでも溶かす液と、その液を吐くモンスターを、何度も」
「………それって、芋虫型?」
「うん。アルも、戦ったの?」
「いいや。見かけただけだ。安全で確実な狩りをするにはまず情報が必要だからな。だからやってない」
そう。
未知なるモンスターとの戦闘は燃えるが、その芋虫モンスターは厄介そうだった。だから俺は撤退して上層に行った。けど、上層にも何体かいた。
『ここにもかよっ! 俺はストーカーは受け付けてないんだけどなぁ』
あの時は冗談混じりに言ってたが、割と本気だった。だってキモイし。アイズが言った通り、なんでも溶かす液吐いてたから。
まぁ、小太刀で細切れにしたがな。………あれ、今思ったら俺も整備しないといけない?
「………ごめんアイズ。今思ったらやってたわ」
「……だと思った。アルは、そういう人だから」
俺の行動パターンが読まれているなんてな。まぁ、俺もアイズも暇があったら即ダンジョンへGOだから分かりやすいんだけども。
俺達はあれこれ話していると、いつの間にか【ゴブニュ・ファミリア】の店に到着していた。ジメジメしててなんか嫌なところだ。アイズはいつも通りの表情なんだが、俺は顔を顰めている。
ドアを開けて店の中に入って俺達は挨拶した。
「失礼しまーす」
「します……」
工房という言葉がしっくりくる建物に入った途端に叫び声が聞こえた。
「ノオォォォーー!?」
親方ー、親方ーっ、と悲鳴が散っていた。その近くに先程別れたアマゾネスの双子の妹がいた。
「ティオナ、何やったんだ」
「お、仲良く来たねぇ」
「………」
オイ、俺の質問はスルーですか。そうですか。というか頬赤らめるなアイズ。可愛いから。
中にいたのは、ティオナと親方と呼ばれた人と他諸々。ティオネとレフィーヤがいないのは荷物などを【ファミリア】に置きに戻ったんだろう。
俺とアイズはまだ騒いでいる奴らを無視して、とことこと歩き去って奥の部屋に入った。部屋にいるのは老人の外見した一柱の男神だった。
皺の刻まれた整った顔でベルと違った白髪を生やして、口元を隠す程度に白髪も蓄えている。しかも筋肉も引き締まっている。
この男神が【ゴブニュ・ファミリア】の主神だ。
「何の用だ、アイズ。それも男連れで」
「整備を、頼みに来ました」
「俺も頼むわ、ゴブニュ」
俺が言うと、ゴブニュは俺をジロジロ眺め回した。十分眺め回した後、ゴブニュは顔を引き攣らせた。
「って、お前アルスか! いつもの黒一色じゃねぇから分からなかったぞ」
「悪かったないつも黒一色で」
そんなに俺のイメージカラーが黒なのか。どこぞ黒の剣士じゃないぞ俺は。
俺は小太刀--《
順に見ていくゴブニュは顔を引き攣らせた。
「派手にやったな、お前ら」
「いやぁ、そんなに褒められるとは」
「………とは」
「褒めてない! アイズも乗っかるな」
怒られちゃったな。でもアイズも乗るとは俺も思わなかったわ。
俺達の得物の摩耗は厳しいのか、ゴブニュは目を細めている。
「お前ら何斬った?」
「なんでも溶かす液と、その液を吐くモンスター」
「カドモスとフォモールを何十体、アイズと同じモンスターを何体か」
「……やっぱりアルスは頭のネジが何本か飛んでるな」
ひでぇ。このヒゲ爺ぃ人をなんだと思ってやがる。オイ、アイズ。コクコク頷くな。否定してくれ。
それから得物を観察し終えたゴブニュは溜息をついて口を開いた。
「はぁ……アルス、お前の刀なんだが当分使えそうにないぞ。大太刀だけで足りるか?」
「んー足りる、と思うけど……手数がなぁ」
「こう言っちゃアレだが、ヘファイストスのところでやってもらったらどうだ?」
「いいよ。俺はあんた達を信用してるんだ。ここでよく元ヴリトラのメンバーに会えるしな」
「そうか……」
ヘファイストスというのは我ら【ヘスティア・ファミリア】の主神、ヘスティアと仲のいい神様だ。天界にいた時は凄い鍛冶師だったようだ。ゴブニュよりな。まぁ、ここに来てしまっては神様の力、『
それに、さっき言った通り元ヴリトラのメンバーにも会える。だから俺はここを贔屓してるんだ。
「アイズ。元の切れ味を取り戻すには、アルスほどではないにしろ、時間がかかる。代剣を用意してやる。しばらくそれ使ってろ」
「あ……」
おもむろに切り出されたゴブニュの提案に、アイズは断ろうとした。だが、彼は強引に代剣を押し付けられることになった。
「半端な武器ではどうせ使い潰す。素直に甘えておけ」
「そうだぞ、アイズ。受け取っておけよ」
「分かった……」
ゴブニュは腰を上げて別室から細身のレイピアを持ってきた。レイピアの中でも長めの刀身だろう。
「団員達には整備を急がせる。アイズは五日経ったら来い。アルスは二週間後だ」
「分かり、ました………ありがとうございます」
「ありがとうなゴブニュ。また来る」
アイズはペコリと頭を下げて礼を言い、俺は手を挙げて礼を言った。ゴブニュはふんっと鼻を鳴らして、仕事を再開させた。
俺達は部屋から退室した後、ふと俺は思い出した。
「あっ、まだドロップアイテムあったの忘れてた……」
「そう、なの? 手伝う?」
アイズの思わぬ申請に、俺は驚いた。ここで解散だと思っていた俺にとっては、驚愕だ。
「えっ、いいのか? 合流しないといけないんじゃ……」
「大丈夫。少し、くらいなら」
「そうか。ならお願いできる? 現金な話だが、アイズがいれば高く買ってくれるから」
苦笑いをしながら俺はアイズの申し出を受けた。心臓は死にそうだが、必死に抑え込む。
それからまだ騒いでいたティオナに、俺の付き合いで遅くなることを伝えた。
まぁ、案の定からかわれたが。
「そのまま夜の宴会までデートしてていいよ?」
「…………」
「売り払ったら即送るから結構だ」
ティオナのからかいに、アイズは顔を赤くして俯き、俺は呆れたように言い返した。
俺は工房を出ようとしたが、アイズが一向に動かなかった。どうしたんだと思ったが、ティオナのからかいでオーバーヒートしてるみたいだった。
「ほら、アイズ。行くぞ」
「………」
アイズの手を掴んで俺達は工房を出た。その際に後ろから何か声が聞こえたが、転移でティオナの頭にタライを落としておいた。
今日分かったことは、アイズは初だったということだな。まぁ、可愛………もういい、素直に言えば可愛かった。
アイズの私服姿可愛かったですね! ソード・オラトリアで読みましたけどやっぱり可愛いですね。
今回はデート回? みたいな感じでした。なんだかやらかしてしまった気がしますが、後悔はありません。
それでは失礼します。