ダンジョンで無双するのはおかしいだろうか   作:倉崎あるちゅ

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やっと、投稿できました………一ヶ月経たなくて良かった………………
本当にすみませんでした。待っていた方々には心からのお詫びをさせていただきます。本当に申し訳ありません。

そして! お気に入り登録数が1200!! 皆様のお陰でこんな数字に! ありがとうございます!



それでは、どうぞ!


7月7日
15時05分、加筆しました。


五話

朝になり、俺はロングコートを羽織って左腕に手甲の代わりに篭手を付ける。何故左腕だけかと言うと、右も付けてしまうと指輪が付けられないからである。

どうもこの篭手は、俺の思ったように自由自在に姿を変えることが出来るようで、俺は左腕にスリムな篭手を思い浮かべるとその形になったのだ。もしかしたら篭手だけでなく盾も可能なのでは、と思ってしまう。

 

「よし……」

 

隣を見れば装備を新調したベルがいた。

昨日エイナさんと買い物をしたベルは、現在、体に鉄色のライトアーマーを装着していた。左側のアーマーには赤い一本線が刻んである。そして、目を惹くのが左腕に装着された緑玉色(エメラルド)の輝きを放つ細長いプロテクターだ。

 

「ベル、それ、エイナさんからか?」

 

笑みを含んだ声音でそう訊く。ベルは微笑んで言った。

 

「はい! これ、綺麗で丈夫なんですよ!」

 

そう言ってベルは、プロテクターを撫でる。

俺は彼に向かって良かったなぁ、とニヤニヤ笑って言った。

ベルはえへへ、と笑った後、ベッドに沈んでいる駄神様を見て口を開いた。

 

「それじゃあ神様、行ってきますねー!」

 

「行ってくるわ、駄神様」

 

「駄神様言うなぁ………いってらっしゃぁ〜い……むにゃ」

 

バイトで疲れているのだろう。言ったあとに、ヘスティアはすぐに寝に入った。

それを見た俺とベルは苦笑を浮かべて、教会の地下室の扉を潜り、ダンジョンに向かうためにバベルを目指した。

 

 

裏道を経由してメインストリートの出て、そして中央広場(セントラルパーク)に着く。

俺は今日も頑張るか、と思い足を前に出すはずだったのだが、

 

「お兄さん達、お兄さん達。白い髪のお兄さんと茶髪のお兄さん」

 

ふいに俺達と思われる者を呼ぶ声に、行動を中断された。

 

「えっ?」

 

「………?」

 

後ろから呼ばれたので、その方向へ振り向く。しかし、声の人物らしい者は見当たらなかった。

 

「下、下ですよ」

 

可憐な声に従って下を向くと、クリーム色のゆったりしたローブを着て、被ったフードから俺とは違った栗色の髪がはみ出ている小人族(パルゥム)の少女。その背にはとても大きなバックパックを背負っている。

 

「き、君はっ……」

 

()()()()()、お兄さん達。突然ですが、サポーターなんか探してませんか?」

 

ベルの言葉を遮って、少女はベルのバックパックを指してそう言う。

俺は少女の言葉を聞いて、へぇ、と思った。何故かと言えば、

 

(あくまで他人のフリをするか、昨日のパルゥム君?)

 

昨日、冒険者に追われていたパルゥムの少女。あの子と今目の前にいる少女は同一人物だ。

俺は確信を持ってそう思う。雰囲気と気配で分かる。

 

「え、ええ?」

 

「混乱しているんですか? でも今の状況は簡単ですよ? 冒険者さん達のおこぼれにあずかりたい貧乏なサポーターが、自分を売り込みに来ているんです」

 

一応、こちらも貧乏だけども。

そう俺は思って口に出すところで止めた。言ったところで何も得はないからな。

ベルもこの少女が昨日の子だと思ったのか、少し怪訝そうに彼女に目を向けている。

 

「……そうじゃない。君は、昨日男の冒険者に追われていた子だろう?」

 

俺は目を細めて少女に問う。だが、彼女は可愛らしく首を傾げた。

 

「? お兄さん達、リリとお会いしたことありましたか? リリは覚えていないのですが」

 

ほー、ポーカーフェイスが上手いことで。

俺は内心悔しく思った。これでボロが出れば問い詰めることが出来るのだが、こうまで上手く言われると手の出しようがない。

 

「あれぇ?」

 

「悪い、人違いみたいだ」

 

ベルは首を傾げ、俺は微苦笑した。

まぁ、今回は問い詰めなくてもいいだろう。しかし、決定的なものが何かあれば問い詰める。何故、惚けるのかと。

 

「それでお兄さん達、どうです? サポーターいりませんか?」

 

「え、えぇと……」

 

そう言ってベルは俺を見上げる。普段、俺とベルはバックパックを身に着けているが、それはすぐにポーションなどを取り出せるようにつけているだけだ。

その理由は、俺の魔法にある。【転移】なんていう魔法があるお陰で、荷物がかさばるような魔石やドロップ品は俺が全て、教会の地下室にあるアイテムボックスに転移させている。

という理由によって、俺達にはサポーターが不要だ。しかしそれは俺とベルが一緒に行動を共にしていればの話。ここ最近、俺とベルとのパーティでの出撃はあまり少ない。最近体が鈍ったように感じるし、そろそろ一人遠征に行きたいのでそれに慣らすために深層の一歩手前まで潜っているからだ。

よって、今回のこの少女の申し出は結構ありがたい。

俺はベルに向かって頷いた。

 

「……じゃあ、頼めるかな?」

 

「本当ですかっ! ありがとうございますっ!」

 

ベルが了承の旨を伝えると、少女ははしゃいだ。その時に、フードで見えていなかった彼女の目が露になった。

その目は、ベルの腰に差してある《ヘスティア・ナイフ》を見ていた。そして、目は動き、俺の手や腰を見た。

--なるほど、大体予想できた。この子、油断ならない人物だ。

俺はこの少女の目的を大方見当を付け、最大限の警戒をすることにした。

 

 

♠︎❤︎♣︎♦︎

 

 

「ふぅん、【ソーマ・ファミリア】……ねぇ」

 

バベル二階の簡易食堂。正午前は他の冒険者達はダンジョンに潜っているため、無駄に広いこの食堂は、より一層広く感じる。

そして今、俺達はフードを被った少女--リリルカ・アーデと名乗った少女と話をしていた。

 

「はい、割と有名な派閥だとリリは思ってます」

 

まぁ、確かに有名だ。神酒(ソーマ)という酒でな。

それと、ギルドの人達が【ソーマ・ファミリア】のことを何か言っていたな。確か、()()()()()()()()みたい、だったか。何故焦っているのか分からないが、俺が思うのはこのリリルカ・アーデという子は、少なからずそれに関係しているのでは、と思っている。

 

「どうして違う【ファミリア】の僕達を? 別々の【ファミリア】の構成員が繋がりを持つことはいいことじゃないのに……」

 

まだまだ一人前の冒険者とは言えないベルでも、そうホイホイ申し出をすぐ頷くほどお花畑ではないようだ。というより、お花畑じゃなくて安心した。

別々の【ファミリア】の構成員同士が繋がりを持つということは、あまり褒められたものではない。理由は様々。一番良くあることは、神様同士の仲が悪いかったり、【ファミリア】間での闘争が起きるやも知れないからだ。

しかし、今回の【ファミリア】は【ソーマ・ファミリア】。神様の中でも自分の趣味を優先するという珍しい神様なので、闘争などは起きないだろう。

 

「ベル、リリルカ・アーデの【ファミリア】は【ソーマ・ファミリア】だ。神ソーマは、自分の趣味を優先する故、闘争などのいざこざはあまり起きないよ」

 

「はい、茶髪のお兄さんの仰る通りです。ソーマ様は、他の神様達のことに未来永劫無関心なので、争いなどはまずないと思います」

 

ベルの懸念を払拭して、それからはリリルカ・アーデの事情などを訊いた。

曰く【ファミリア】のメンバーからは彼女の腕っ節を見て、呆れられて同じ【ファミリア】の人達とは行けなくなったから、色々な人達に自分を売り込んでいるとのこと。

まぁ、分からなくもない。俺も最初の頃は先輩達に呆れられたからな。

 

「ねぇ、リリルカさん。僕達、会ったことない?」

 

「いえ、リリは初対面だと思うのですが……」

 

やはり惚けるようだ。何か決定なものがあれば看破することが出来るというに、俺にはその手札がない。

 

「………君の種族って、何かな?」

 

ベルがリリルカ・アーデにそう訊く。その言葉に俺はハッ、とベルに顔を向けた。俺が思い付かなかったことをベルが言ってくれた。これには感謝する他ないだろう。

昨日の子はパルゥム。この子がパルゥムなら、それは決定的な証拠に成りうる。しかし、

 

「リリの種族ですか? リリは犬人(シアンスロープ)ですよ?」

 

俺達の思惑は、そう簡単には行かないようだ。何せ、彼女の頭には犬の耳--獣耳が生えているのだから。

俺は内心苦虫を潰したような感じになり、ベルは昨日の子とこのリリルカ・アーデが別人だということに信じてしまった。だが、俺は信じていない。何かあるのでは、と思っている。

 

 

その後、俺はリリルカ・アーデを警戒しつつもサポーターに迎え入れ、ダンジョンに潜ることになったのだった。

 




ふぅ、加筆して三千三百まで行った………

それと、報告を。
だいぶ前に、私、ストライク・ザ・ブラッドの二次創作を書かせていただいています。そちらも、興味がありましたらお読みください。
ヒロインは紗矢華です。

それでは失礼致しました!

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