ダンジョンで無双するのはおかしいだろうか   作:倉崎あるちゅ

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ふぅ、最近早めに書き終えられてるなぁと思っております。今回はアル君がどのようにして魔神を倒すのかを書きました。(前半だけですが……)

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それではどうぞ!


七話

 

 

一歩踏みしめた俺の脚には、夜空色の光が漏れ出していた。また一歩、屋根の上を踏みしめる。反対側の脚にも光が漏れ出している。

腕にも、肩にもだ。俺は歯がむず痒く感じて、痛む左腕を上げて歯を触る。すると、犬歯が二C(セルチ)ほど伸びて鋭くなっていた。次いで髪も栗色から漆黒の髪に染め上がっている。

 

『グウゥルゥ……』

 

魔神が異変を感じて訝しむ。俺はゆっくりと顔を上げて魔神を見上げる。ニッ、と笑って俺は転移(・・)して魔神の後ろに接近した。

 

「シッ!」

 

夜空色の光が纏った《倶利伽羅》を振るって、魔神の背中に深い傷を穿った。

 

『ルゥアァァアッ!?』

 

悲鳴のような咆哮を上げて、魔神は片膝をついた。俺はそのまま背中に着地して、渾身の突きを見舞う

突きを放つと、軌跡を残すように夜空色の光が舞う。瞬間、スオォォッと音が聞こえてきて、突きを放った場所が何かに飲まれたように綺麗に消え去った。

 

『ルアァァアアッ!!??』

 

絶叫を上げて、魔神はのたうちまわった。俺は太刀を片手でだらりと下げたまま地面に着地する。

魔神は絶叫を上げ終わると、怒りの表情を見せて鼻息を荒くして、マルタよりも太い腕で俺を殴ってきた。

 

「ふっ……!」

 

下げていた太刀を上段に構えて、半月を描くように片手で抜き胴を打つ。

魔神の拳と俺の夜空色の光が纏った太刀が真っ向から衝突した。俺はそのまま一切違和感を覚えることなく、太刀を振り切った。

 

『グゥアァ!』

 

拳から肘まで横に斬られて、魔神は苦悶の声を上げる。痛がる魔神を冷たい目で見て、俺は左手に鞘を転移させた。そのまま太刀を納めて、抜刀の構えを取る。

誰も見ていないことを確認して、俺は小さく呟く。

 

「--奥義」

 

呟き、一気に右足を踏み込む。弾丸が発射されたかのような音を立てて、俺は魔神に接近して太刀を抜く。一撃目は横薙。次は手首を返して縦に斬る。そしてその後は、音速を越えた斬撃を千回。

千回の斬撃を終えて、俺は魔神の後ろに着地する。

 

「千本桜・満開」

 

チン、と鞘に納めると魔神のあらゆる箇所から、鮮血を散らした。こちらに振り向いて襲いかかろうとする素振りを見せて、雷のブレスを吐こうとして一歩進んだところで大きな魔石を残して、その巨体を霧散させた。

 

「やっぱり、反則だ。この力……」

 

独り言を言いながら俺は大きな魔石を拾って、廃墟と化した教会へ転移させた。

俺はそのまま、アイズがいるところへ転移した。誰もいないところで倒れてしまっては危険だからだ。

一瞬の浮遊感と少しの目眩に襲われたが、すぐに治った。そして、目の前には急に現れた俺を見て驚く服がボロボロのアイズとロキがいた。

 

「っ! アル、なの?」

 

髪の色が変わっているからか、俺だと判別できないのだろう。俺は小さく頷いて少し笑みを見せた。

ロキは俺の姿を見て、糸目を薄く開いて訊いてきた。

 

「アルス……自分、どんな姿してるか分かっとる?」

 

「……いい、や……」

 

普通に声を出したつもりだったが、声は掠れて、少々聞きづらくなってしまった。

大体の姿は理解しているが、瞳の色が分からない。体の何ヶ所から出る夜空色の光と鋭い牙、そして漆黒の髪以外は分からない。

 

「……ほとんどヴリトラと同じような姿してんで」

 

「……ヴリ、トラと………?」

 

あいつの姿と同じような姿ということは、漆黒の髪に黄金の瞳を持ち、口には鋭い牙を持っているということか。是非鏡が欲しいところだが、そうは言ってられないな。というより、そろそろ気絶するかもしれない。

 

「……アイ、ズ。ロキ。……後は頼、む」

 

「え?」

 

そう言って俺は前のめりに倒れた。微かに包み込む温かさを感じて、俺は意識を手放した。

 

 

♠︎❤︎♣︎♦︎

 

 

アルスと魔神との戦闘を眺めていた男は、満足そうに笑った。しかし、男はその笑みを消して見下したように言う。

 

「ふん、まだだぞアルス。まだ、こんなのは序の口だ……」

 

綺麗なバリトンでそう言うと、男はローブを翻してその場を去っていった。

魔神を呼び寄せたのはこの男。何故アルスを狙ったかは、この男しか分からない。だが、これからアルス達の前には大きな障害が立ちはだかることは確かなようだった。

 

 

♠︎❤︎♣︎♦︎

 

 

時は遡り、アイズとアマゾネス姉妹、レフィーヤが蛇のようで花のようなモンスターを倒した後、アイズとロキは迷宮街の異名を持つ『ダイダロス通り』に来ていた。

残すモンスターはおそらく『シルバーバック』だろうと、アイズは思っていた。

だが、そのシルバーバックはある少年によって一撃で倒されたそうだ。その少年の特徴を教えられたアイズは、驚いた。

 

(赤っぽい目をして白髪で、兎みたいな子………アルの仲間のベル? その子がシルバーバックを一撃で……?)

 

ミノタロス相手に逃げていた彼が、それより強いシルバーバックを倒すなんて、とアイズは驚いていた。そして、あの日多くの者に馬鹿にされ、悔し涙を流していた少年の『成長』をアイズは祝福した。

 

(………おめでとう)

 

そう思っていると、急に目の前に漆黒の髪長くした人物が現れた。その人物は俯いていた顔を上げて、アイズとその隣を歩いていたロキを見た。

 

「っ! アル、なの?」

 

その人物の顔が、アイズの想い人の顔と重なって、咄嗟にアイズは彼の名前を口にした。

その人物--アルスは小さく頷いて少し笑みを浮かべた。

何があってこんな姿になったのだろうと、アイズはそう考えた。

隣のロキといえば、その糸目がちの目を薄く開いてアルスに訊いた。

 

「アルス……自分、どんな姿してるか分かっとる?」

 

「……いい、や……」

 

いつもなら、綺麗な高めのテノールの声なのだが、今は掠れてしまっていて声を出すのが辛そうに見えた。

それはロキも感じたようで、少し眉を寄せている。そして次に言う言葉を言って、ロキは悲しそうな表情を見せた。

 

「……ほとんどヴリトラと同じような姿してんで」

 

それを聞いたアルスはそのアイズとは違った金色の目を見開いて口ずさんだ。

 

「……ヴリ、トラと………?」

 

しばらくアルスは考えていたようだったが、次に頼む、と言って前に倒れそうになり、それをアイズが抱き抱えた。

抱き抱えて軽い、とアイズは思った。それほどモンスター相手に奮闘したのだろうと思った。それと同時に、アルスでこれなのだから自分だったらどうなるか、とも思っていた。

それからロキは用事があると言って、どこかへ行ってしまった。アイズはアルスを背負ってティオナ達と合流して【ロキ・ファミリア】のホームへ向かった。

 

 

♠︎❤︎♣︎♦︎

 

 

今回の怪物祭(モンスターフィリア)の一件が終わり、ヘスティアは徹夜で疲れていたため、シルバーバックの襲撃も相まって事件が終わった時に気絶してしまった。ベルはそんなヘスティアを心配して『豊饒の女主人』の二階の一室を借りて、ヘスティアを休ませた。

次の日、アルスに心配かけたかな、と思って教会に帰ると、アルスの姿はなかった。夜にもなっても帰ってこなくて、事情をギルドにいるエイナ・チュールに話すと、驚くことを言ってきた。

 

「アル君なら………モンスターとの戦闘の後で倒れちゃってね。今、【ロキ・ファミリア】が彼を保護しているのよ」

 

「え、えぇ!?」

 

これにはベルも凄く驚いてしまった。何に驚いたかと言うと、アルスが倒れたことだ。ベルは彼がこのオラリオ内でも屈指の強者だと思っていたからだ。

 

「あの……アルさんは大丈夫なんでしょうか……?」

 

ベルが心配そうにエイナに訊く。エイナも心配そうに、眉を寄せて言う。

 

「うーん……アル君なら大丈夫だと思うけど、倒れちゃってから一度も起きてないって聞いたから……」

 

「そ、そうなんですか!? アルさん大丈夫なのかな………」

 

ベルはうーん、唸った。いつも元気で強いアルスを見てきたベルにとっては、凄く不安な気持ちになっていた。




アル君の容姿は、髪の色・栗色→漆黒。瞳の色・碧眼→黄金色。犬歯が鋭くなって、所々夜空色の光が漏れ出している状態です。分かりづらかったら申し訳ありません。刀身にも夜空色の光が纏っています。

ちょっとアル君を強くし過ぎた感がハンパありませんが、そこは御愛嬌ということでお願い致します。

それでは失礼致しました。

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