ダンジョンで無双するのはおかしいだろうか   作:倉崎あるちゅ

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遅くなってすみません! PSO2に少しハマってしまってwww


どうぞ!


三話

 

「ねぇ、この後は南のメインストリートに行こうよ!」

 

昼食を食べ終えたところで、ティオナがそう言ってきた。まだ一時過ぎ頃だと思うので時間的に余裕はある。ある、のだが、疲れてきた。とくに周りからの視線が辛い。

面子は俺、アイズ、レフィーヤ、ティオネ、ティオナ。これで分かる通り男は俺だけ。見る人によってはハーレムだ。全くもってこれは遺憾だ。俺はアイズ一筋だというのに。………何を俺は考えてるんだ。

 

「繁華街ね……私はいいけど」

 

「私も大丈夫です」

 

「じゃあ、俺は疲れたから帰r」

 

「アルスぅ? 逃げない逃げない。どうせ暇なんだし。アイズも行こう! 夜にならなくてもあっちは凄い賑やかだから楽しいよ!」

 

俺を挟んでティオナはアイズに笑いかけると、彼女は何も言わずに視線を落とした。

 

「アイズ、今は楽しもうぜ? そんな暗いと可愛い顔が台無しだぞ?」

 

どこか気が咎めたような素振りを見せるアイズに俺は冗談めかして言う。だが、アイズは視線を上げようとしない。

そんな姿を見て、俺は痛々しく見えてしまって、俺はそんなアイズの頭に手を置いた。

 

「………?」

 

目を丸くしてアイズは俺を見る。

 

「あんまりさ、思い詰めるなよ。何がお前をそうさせる? 【ステイタス】のことか? ベルのことか?」

 

優しく声をかける。俺の質問にアイズは首を振る。じゃあなんだ? と訊くと、思ってもみなかったことを言った。

 

「……【ステイタス】もある、あの子のこともある………けど、一番は……アルに迷惑かけたこと……」

 

「俺に? アイズに迷惑かけられたっけ?」

 

ないと思うけど。何かあったっけ?

うーん、うーん、と考えているとアイズから答えた。

 

「昨日の……ことで、迷惑かけちゃったから……」

 

なるほど。昨日のベートの発言のことで落ち込んでたのか。でも、それは昨日アイズのせいじゃないって言ったのに。全くこの娘は。

俺は溜息をついて、アイズの柔らかい頬を抓った。

 

「っ!? ……いはい(いたい)あふ(アル)

 

「俺は謝って欲しくて服買ったんじゃないんだぞ? 純粋にいいもの見れたと思ったからだ。それに、俺があの犬っころに対して根に持つと思うか?」

 

頬から手を離してアイズの金色の瞳を見て言う。アイズは小さく首を振った。

 

「なら、お前が気にすることじゃないよ。あと、なんか悩んでたらリヴェリアさんやここにいる三人に相談すればいい」

 

「……うん。アルにも相談する………」

 

「俺らが会ったら、即ダンジョン直行じゃねぇか。相談なんてする時間あるか?」

 

「……ない」

 

だろ? と俺はアイズ言う。相談するにしても、モンスターを狩りながらの相談になってしまうだろう。どんな相談の仕方だ。

しかしアイズはどこか不満そうに口を尖らせている。

 

「あのさ、アイズ、アルス」

 

「「ん?」」

 

「あたし達いるんだから、二人だけの空間作らないでくれますかね?」

 

ティオナがジト目で俺達二人を見てくる。そしてティオナに便乗して、ティオネも言ってくる。

 

「そうよ。私からしたら嫌味みたいに見えるわ」

 

「ぐ、ぬぬぬぬ…………」

 

レフィーヤが俺に殺気をぶつけてくるのは何故だろうか。いや、大体は予想できてるからいいけども。

 

「さ、お昼も食べたし南のメインストリートへレッツゴー!」

 

椅子から立ち上がってティオナがテンション高めに右手を掲げた。俺達はそれに苦笑しながら小さめに手を掲げた。

 

 

♠︎❤︎♣︎♦︎

 

 

グチャ、と水分が含んだものが落ちる音が俺の耳に届いた。目の前にあるのは、今さっき屠った大型モンスター、『バグベアー』の死体。

その死体はすぐに魔石を残して霧散した。

 

「はぁ……」

 

チン、と音を立てて太刀を鞘に収めて魔石を拾う。

アイズ達とは、夕方になるまで遊んで【ロキ・ファミリア】のホームまで送り届けた。そして今、軽くダンジョンでモンスターを狩っている最中だった。

そろそろバックパックに入り切らなくなってきたので帰ろうとすると、奥から走る音が聞こえて、それがだんだんとこっちに向かってきた。凝視してみると、一人のヒューマンの少女が手を振っていた。

俺は後ろを振り返って誰もいないことを確認。体を正面に戻すと少女がすぐに近くにやってきた。

 

「久しぶり〜アルっ」

 

「どわっ……!」

 

その少女は俺の首に抱きついた。俺は素早く彼女の顔に手を当てて引き剥がそうとした。

 

「相変わらずのうざったさだな、フウ」

 

うんざりしたように俺は長い銀髪にアイスブルーの瞳をして母性溢れる胸をした少女--フウ・リンクスに言う。彼女はパッ、と俺から離れて笑顔を見せた。

 

「ひっどいなぁアルは。彼女(・・)のわたしと会えたのに」

 

「誰の彼女だ。冗談でも程々にしとけ」

 

ゴツン、とフウの頭に軽くゲンコツを見舞う。身長が俺より低いフウに対してはこれが有効的なのだ。

目に涙を溜めてフウは、はーい、と返事をした。

 

「それにしても……お前、あれからどこ行ってたんだよ? 他の元メンバーから訊いても全然分からないって言ってたぞ」

 

そう、こいつは俺がヴリトラを殺して【ファミリア】が解散された後、元メンバーにも何も言わずに行方を眩ませた。

その本人であるフウは、きょとんとした表情を作って、次にはポンと手を叩いた。

 

「そういえばそうだったかも! いやー、忘れてたわ」

 

「やっぱお前、適当だな。……お前が【ヴリトラ・ファミリア】の中で二位だったのが不思議なくらいだ」

 

「えへへー。褒められちゃった♪」

 

「褒めてないっ!」

 

こいつといると調子が狂う。いつも俺がボケ担当--かどうか分からんが--なのに何故俺がツッコミ担当になってしまうのか。

ふと、俺は気になったことをフウに問うた。

 

「というか、お前、どこに入ったんだ?」

 

単身でダンジョンにいるということは、冒険者になったということだろう。では、どこに入ったのか。

 

「ん? えっとね、【アナト・ファミリア】っていう中規模の【ファミリア】よ」

 

「アナト…………あぁ……俺のところにも前に来たな」

 

愛と戦いを象徴する女神様だったはずだ。にしても、愛と戦い、ねぇ? 確かにこいつにはお似合いの【ファミリア】だろうが……しっくり来すぎて気持ち悪くなってきた。

 

「大丈夫、アル? 顔色悪いわよ?」

 

俺の気持ちなんぞ一ミリ、いや一マイクロも理解していないフウが俺の顔を除き込む。

 

「大丈夫だ。ただ単に自爆しただけだ」

 

俺が言ったことが分からないフウは、む? と唸って首を傾げた。

その直後、俺の後ろにある壁がピシッ、と亀裂が走ってそこから大型モンスターが湧いて出た。

 

「へぇ、珍しいなこいつがここで湧くなんて」

 

「『ワイルドベアー』……。それにしても、アルのその余裕は通常運転なのね」

 

「余裕っていうか、なんていうか。もうこんなの慣れたし」

 

「慣れた? アル、貴方どれだけ潜ってるのよ……」

 

フウがジト目で言ってくる。こうしてモンスター目の前にして無駄口を叩き合うのは数ヶ月振りだな。

俺達は無駄口を叩き合うのをやめて、雄叫びを上げて向かってくるワイルドベアーを見据えた。俺は太刀を、フウは片手用両刃直剣(ワンハンド・ロングソード)を構えた。

 

「久しぶりに連携技やる?」

 

ワクワクしたようにフウが訊いてきた。俺は溜息をついて、頷いた。

 

「やったぁ! 久しぶり久しぶり!」

 

なにやら凄い笑顔なんだが、良く分からない。こいつの考えていることがあまり分からないのだ。

ただ、戦闘に関しては考えてることが分かる。どのタイミングでフウが切り込んで、モンスターから離れるか。

俺とフウは同時に地面を蹴る。初撃を与えるのはフウ。

 

「りゃぁああっ!」

 

フウがバツの字にワイルドベアーを斬ってみせて、すぐに後ろに後退。すぐさま俺が割り込む。

 

「シッ!」

 

敏捷を全開にして鞘から素早く抜刀する。そして、一瞬にしてワイルドベアーの体にはバツの字の傷の上に十字の傷が出来上がっていた。

チン、と鞘に納めた時と同時に血飛沫を上げて崩れ落ちた。

 

「うっひゃ〜やっぱりこの連携技ってエグイわね」

 

「まぁ、な。久々にやったからコンマ五秒ズレたがな」

 

そう? とフウは言いながら片手剣を背中にある鞘に納めた。

この技は、フウがバツの字で切り込んでモンスターの怯みを与えて、俺が即座に十字に斬る。初撃こそ視認できるがそれも怪しい。そして二撃目は視認は不可能の斬撃だ。

 

「さてと、帰るか……」

 

「そうなの? じゃあ、わたしも帰ろっ」

 

そう言って俺のすぐ隣にフウは歩き始めた。俺が距離をとると近づいてくる。しばらくそのいたちごっこが続いたが、結局俺が諦めることになった。




言い遅れました。アル君の太刀の持ち方は、手に持っている状態です。もしくは瞬時に転移させて手に持つか、です。なので、無理な体勢でも抜刀できる…………はずかと。私も木刀とか竹刀とかでやってみて出来たので。あまりにも無理な体勢はしていませんが。

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