ダンジョンで無双するのはおかしいだろうか   作:倉崎あるちゅ

11 / 27
二話

 

 

「「「おおー」」」

 

「もう……死んでもいいかな………」

 

三つの歓声と俺の謎の一言。

俺達が声を揃える中、気恥ずかしさで頬を染めるアイズは人形のように佇んで軽く俯いている。

白の短衣にミニスカート、白のニーソックス。短衣にはさり気なく花を象った刺繍が施されている。単純な組み合わせだが、着こなしているのがアイズだ。綺麗な金色の長髪に相まってこれ以上ないほど、美しかった。

 

「に、似合ってます、アイズさん!」

 

「うんうん、凄くいい! ロキがいたら飛び付いてきそう!」

 

「肌は綺麗だし、引っ込んでるところは引っ込んでるし……羨ましいわね、本当」

 

黄色い声が服を試着したアイズを取り囲んだ。

いつも防具や腰に剣を装着しているから、こんな可愛い服を着ているアイズを見たのは初めてかもしれない。

 

「ほら、あたし達も一言言ったんだからアルスもちゃんと言う!」

 

ティオナがニヤニヤ笑いではなく、純粋な笑顔で言う。

 

「そ、そうだな………似合ってて、そ、その……可愛いと思うぞ?」

 

頭を掻きながら俺は言った。本当はもっといい言葉があると思うが、今の俺にはハードルが高い。

アイズをチラリと見る。彼女はボフン、と音を立てそうなほど赤くしていた。それを見たティオナは笑みを漏らした。

 

「アイズ! これにしよう!」

 

「うん……」

 

ぎゅうぅ、と俺の心臓が掴まれた感覚に陥った。頬を染めて小さく頷くアイズがたまらなく可愛いからだ。何度も思うが、俺ってもう末期だと思う。自分でもそう思う。

 

「結局、ヒューマンのお店で買っちゃいましたね」

 

「まぁ、無難だしね。こだわりがなかったら、普通にここでしょ」

 

俺達が回った店は既に数え切れない。エルフの店だったり、他種族の店だったり。まぁ結局はレフィーヤが言った通りヒューマンの店で買うことになったが。

 

「ティオナ、お金は………」

 

「いーよ! あたしから--」

 

「俺が払う。いいもの見れたしな」

 

ティオナの言葉を遮って俺が言う。実際、本当にいいものを見れた。これが福眼というものだろう。

 

「でも……」

 

「いいからいいから。ただのお節介だよ」

 

「ありがとう………」

 

目を合わせてお礼を言ったアイズだったが、言った後すぐに目を逸らして俯いてしまった。凄く可愛い。

 

「ちょっとアルス~? アイズの服あたしが買おうって思ってたのに~!」

 

案の定、遮られて自分がしたかったことを横取りされたティオナは俺に文句を垂れる。

 

「なら、アイズに似合うアクセサリーでも買ってあげたらどうだ? それか服をティオナが買って、俺がアクセサリーを買うか」

 

「アクセサリー買ったって、アイズはあんたがあげた指輪しか付けないから無駄よ! ………あ、アルスが買えば違うかな……」

 

ティオナの言葉を聞いて、アイズはますます顔を赤らめた。

まさか、俺があげた指輪しか付けないというのは驚きだった。もうちょっとオシャレしろとツッコミたい。

 

「まぁいいや。服は俺が買うからな」

 

「うー………あ! なら、ご飯もあんたが払ってよ!」

 

唸ったティオナだったが、言った言葉は、奢れ、というものだった。ティオナに便乗してティオネとレフィーヤも言い出した。

 

「そうね、奢ってくれる? アルス」

 

「お願いしますねレイカーさん」

 

何故俺が奢んなきゃならないんだ。俺の頭の中疑問でいっぱいだぞ。あと、アクセサリーの件は無しになったのか。

 

「アル、ごめんなさい……」

 

「別にいいよ、金は結構あるから。じゃあ、会計しに行くぞ」

 

謝るアイズに微笑んで、俺はカウンターに行く。その際に店員からニヤニヤとした笑みをもらったが、俺のスルースキル--【ステイタス】とは無関係--が効果を発揮した。

時間は正午に近く、青い空に太陽が煌々と輝いている。

アイズが元から着ていた服は布に包まれており、購入したばかりの服を無理矢理着せられていた。普段着ない可愛らしい服に、アイズはもじもじしながら歩く。それを見た俺達の笑みを誘う。

 

「そろそろお昼にしない? あたし、お腹空いちゃった。いっぱい食べたいなぁ?」

 

「少し早いような気もするけど、そうしましょうか。私も少し多めに食べようかしら?」

 

「………お前ら太るぞ」

 

「「何か言った?」」

 

「いえ、なんでも」

 

小さく言ったつもりだったのに聞こえてしまったようだ。恐ろしいな。

人の金だから多く食べる気満々の二人を見てなんとしてでも阻止しようかと考える。

 

「確か、この先にカフェがありましたね。そこに行きましょう」

 

「はぁ……一人一〇〇〇ヴァリスまでな……」

 

なんだか、俺が保護者になった感じがしてきた。

会話しながら歩いていると、視線を感じた。

 

「どうした、アイズ?」

 

「あの、アル……」

 

何か言おうとしていたアイズだったが、どんっ、という衝撃に俺は少々驚いた。

 

「おっと、ごめんよ、少年君! すまない、急いでるんだ!」

 

俺にぶつかった少女は謝罪してすぐに先へ行ってしまった。その後ろ姿を見て、俺は目を瞬かせた。

 

「ヘスティア? 何してんだ」

 

「え、レイカーさん知ってるんですか?」

 

「アル、詳しく……」

 

思わず出た俺の呟きにレフィーヤとアイズが反応した。レフィーヤは純粋な疑問。アイズに関しては責めるような目で俺を見ている。

 

「俺の【ファミリア】のところの主神だよ。……アイズ、そんなに詰め寄らないでくれ」

 

答えるもアイズは俺に詰め寄ってくる。苦笑いを浮かべながら、俺はアイズをなだめる。

 

「……本当?」

 

「本当本当。というか、やっぱり俺って信用ない?」

 

コクコク頷いて言う。最後は半ば独り言だ。

アイズは渋々と言った様子で納得してくれた。……してくれたかな。不安だ。まぁ、何かあったら"あいつはベル君大好きっ子だ"と言えばいいだろう。

 

「あの女神様、胸デカくなかった?」

 

「「「「……………」」」」

 

ティオナの言葉で俺達四人は固まった。

確かにヘスティアは胸がデカイ。他の神様達からもロリ巨乳などと言われるほどに。

何故ヘスティアが急いでいるかと言うと、今日は『神の宴』かあるからだ。『神の宴』というのはその名の通り、神様の宴会だ。

 

「あいつ、タダ飯に行くつもりか……?」

 

俺はボソッと呟く。呟きを聞いたアイズは首を傾げて訊いてきた。

 

「タダ飯?」

 

「ん? あぁ……俺の【ファミリア】って俺入れて構成員二人でさ。だから、金がカツカツなんだよ。さっきの神様もアルバイトしてくれてるけど、現状はキツイな」

 

でも、と俺は続ける。

 

「それでも楽しいよ。なんか、暖かいから」

 

俺は笑顔を見せて言う。アイズはそれを見て目を逸らしてしまった。俺はさっきまでの笑顔を消して、次はニヤニヤ笑いを浮かべた。

 

「んー? アイズどうかしたかなぁ?」

 

「っ! ……なんでも、ない」

 

回り込んでアイズの顔を見ようとする。だが、アイズは赤くしてそっぽを向いてしまう。それを何度か繰り返していると、後ろから蹴りが飛んできた。

 

「ぐあっ!? ……いつつ………何するんだよティオナ!」

 

「「「イチャイチャしないっ!!」」」

 

アマゾネス姉妹とレフィーヤに怒られてしまった。イチャイチャしていたつもりはなかったのだが、何故だろう。

三人の剣幕に、俺とアイズはしょんぼりしたように謝った。

 

「すみませんでした……」

 

「でした……」

 

…………俺は反省してるけど、アイズは絶対に反省してないよな? その謝り方は。どうするんだよ、また怒るぞ。

 

「アルス! カフェ行ったら絶対に奢ること!」

 

「そうね。奢ってもらわないと気が済まないわ」

 

「何食べましょうか。あ、ジャンボパフェでも」

 

何故矛先が俺に向かってくるんだよ。ティオネに関しては絶対に、フィンさんにアタックしても応えてくれないから、その怒りもあるんだろう。あと、レフィーヤ。お前はそのパフェを食べられるのか。

 

「アイズ、ちゃんと謝れよ………」

 

「ごめんなさい」

 

「今謝られても……な………」

 

密かに俺は涙を流した。これのせいで、昼食の代金が一万ヴァリス飛んだのは想像に難くない。お金って大切だよな………はぁ……




全然話が進まないwww マイペースで進めたいと思いますっ!

それと、今回、アル君の絵を書いてみました。色を塗ると取り返しのつかないことになるので白黒です。下手だと思いますが、ご了承ください。

【挿絵表示】

髪は栗色。瞳は碧眼。肌は少し白っぽい肌色です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。