「十代が負けた?」
ゆまに負けたりディレに精神攻撃をくらったりした昨日、早く寝ていつも通り起床し、いつも通り学校に行くと明日香にアイアンクローを決められ、ディレに『役立たず』と罵られ、ゆまに抱きつかれて両腕を拘束され、その間にジュンコと雪乃に頭を撫で回された。
何故こんな目にあわなければならないのか……
ももえの話によると、昨日の夜にエドがアカデミアにやってきたらしい。そして今朝早くに十代とデュエルすることになり、結果は十代の負け。そのショックなのか、十代は気を失い保健室にいるらしい。
そしてその場にいなかった俺にお仕置きするために待ち伏せていたと……俺悪くないような……腑に落ちないところはあるが、ともかく保健室に向かうことに。
保健室に入ると、十代が保健医であり、女子寮の寮長でもある鮎川先生に診察されていた。十代のそばには万丈目、剣山、丸藤がいた。
「十代、大丈夫……じゃなさそうだな」
十代の顔には気力というか、元気がなく、雰囲気も暗い。
「アニキ、カードが見えなくなったって……」
「カードが?」
十代が起きたのは少し前。デュエルを終えて散らばったらしいデッキを丸藤が集め、預かっていたらしい。そして十代が起きてデッキを渡したら、カードの絵柄が真っ白に見え、精霊の声も聞こえなくなったと言ったらしい。
そして鮎川先生に診てもらうことになったと……
「身体的には問題無いわ。ただ、エド君とのデュエルが、よほどショックだったのね……」
デュエルでショック……十代は『参ったな』と言って保健室を出る。丸藤がついて行こうとしたが、『1人になりたい』と言ってそれを拒否。そのままどこかに行ってしまった。
丸藤が十代を心配している中、俺は剣山といつの間にか保健室にいた三沢によって、明日香が住み着いているレッド寮の万丈目の部屋に連れていかれる。作戦会議とか言っていたが、何の作戦だ?ディレもよくわかっていないようだが、ジュンコとももえが部屋の隅っこで教えている。できれば俺にも教えてもらいたい。
「十代がデュエルできなくなった今、学園はチャンスとばかりにレッド寮を潰しにくるだろう」
三沢が現状を説明してくれた。
ああ、アレか。レッド寮を潰すとか言っていたやつ。
丸藤、剣山、三沢、明日香、ゆまの表情が暗くなる。雪乃は興味無さそうにデッキを弄っている。自由だ。
1人不適な笑みを浮かべている万丈目は落ち込むな。自分がいると皆を鼓舞する。
それが効いたのか、暗くなっていた連中がやる気を取り戻した。
ディレの方も説明が終わったのか合流してきたタイミングで寮の外からエレキギターだろうか?演奏が聞こえた。
デッキを広げていた雪乃以外の全員で音が聞こえた場所にいく。
レッド寮から港へと繋がる橋の下から音が聞こえ、覗いてみると、アロハシャツを着た吹雪先輩がボートの上に立ち、頭の上にスピーカーを乗せて小さなエレキギターを演奏していた。シュールだ……
剣山は初めて見たらしく『突き抜けた人』という印象らしい。
理屈はわからないが、独りでにボートが動いていくのについていくと、近くの崖に到着。明日香が何か用なのか聞くと、ブルー寮に連れて帰ろうとしに来たらしい。
今度の相手は吹雪先輩なのかと思ったのか明日香が『まさか』と呟く。それに答えたのは吹雪先輩ではなく、
「そのまさかナノーネ」
ボートを背負い、ウェットスーツを着てシュノーケルとフィンをつけたクロノスだった。独りでにボートが動いていたのはそういう理屈か。身体張ってるなぁ……
前へ進もうとしながら、明日香にブルー寮、アイドル養成コースなる場所に戻るように促す。しかし、促すだけで、ボートの船尾部分が崖に引っかかって前に進めていない。
「お断りします。私達はレッド寮を守ると決めたんです」
キッパリと断る明日香に、吹雪先輩は『可愛いアイドルになるのがそんなに嫌なのか』と問う。
俺としては、その後ろでクロノスが背負っているボートの所為で前に進めず、崖から落ちそうになっているのが気になって仕方ない。
ゆまも同じようで、小さな声で『クロノス先生が落ちそう』と言っている。
丸藤は状況がよくわからないのか、どういうことなのかを聞こうとすると、明日香が先んじて説明してくれた。
どうやら、クロノスは吹雪先輩と明日香でユニットを組ませようとしているらしい。
「…………イイ!」
「良くないわよ!」
それを聞いた万丈目が何かを想像したのか、目をハートにして叫んでいた。
そしてそれに明日香が即反応。
ここで止まれば良かったのだが、万丈目のそばにいた三沢がとんでもない一言を放った。
「確かに、年齢的にはギリギリだ」
この一言に、明日香のビンタが炸裂。三沢のライフを一気に削ると同時に、頬に明日香の手形を残す。
「今のは、先輩が悪いドン……」
「珍しく剣山君に同意ッス」
「てか三沢。16、17でギリギリってお前……もしかしてロリなのか……?」
剣山と丸藤に続くように放った俺の一言に、周囲の空気が凍った。
「三沢さんがロリコン……!?」
「そ、そんなことって……!」
「いや、しかし、天上院君で年齢ギリギリということは……三沢、貴様ぁ!」
ももえとジュンコが動揺し、万丈目が俺が言ったことを脳内で確認。同じ発想に至ったのか、批難するように三沢を指差し、ディレは声を大にして『キモッ!』と罵り、雪乃はどこか汚物を見るような目で三沢を見ている。
「?」
ゆまはよくわかっていないらしく、首を傾げていた。
しかし、今重要なのは三沢の
吹雪先輩は何か考えていたようで、少しの間を置いて、
「まさか明日香、この衣装が嫌なのかい?」
そう言ってクロノスから受け取った明日香の等身大のパネルを見せた。
デュエルアカデミアの女子制服より露出の激しい赤い衣装だ。正直、目のやり場に困る。
『それもある』という明日香に対し、『それなら』と言って今度はオレンジのチェック柄の衣装の明日香の等身大パネルを出す吹雪先輩。
肩を震わせて『いい加減にして』と言う明日香をわがままと言う吹雪先輩。その間に2つの等身大パネルを畳むクロノス。
「いや、わがままなのは吹雪先輩達だと思うんだが……」
俺がそう言っても、吹雪先輩はスルー。先輩相手でもイラッときたので、
「ふにゃぁ!?」
ゆまの頬を伸ばすことで紛らわせる。柔らかい。ゆまの頬で遊んでいると、吹雪先輩から万丈目に話が振られた。万丈目を味方だと思っているらしい。吹雪先輩と仲良いみたいだしな。だが、今度は天上院に自分達の絆は誰にも壊せないと言われる。兄妹の間で揺れる万丈目は、
「罵るなら罵るがいい!だが!俺には決められない!決められないんだ……」
そう言ってその場に崩れた。
「ロリコンに優柔不断野郎に……この集団は大丈夫なのか?」
俺も俺で何かありそうだが、そのことについては置いといて万丈目と三沢にチクリと口撃してみる。
しかし、2人には思いの外ダメージが大きかったらしく、真っ白になった。
結局、天上院兄妹は平行線のまま、決着がつきそうもないと判断し、デュエルで決着をつけることになった。
翌日、授業を潰すわけにはいかないので、放課後にデュエルすることになったのだが、デュエルフィールドに『歌うデュエル』がなんたらとアナウンスが流れている。
生徒の進路がかかっているとも言えるデュエルを見せ物にする気満々だ。
「【WE】を渡せば良かったか……」
「お兄ちゃん、それは吹雪先輩が泣いちゃうかも……」
俺の呟きにゆまが苦笑する。
今俺はデュエルフィールドの明日香が出てくるらしい場所のそばに座っている。フィールドに入ろうとしたら座席表があったのには驚いた。
ジュンコとももえは吹雪先輩の場所に走っていった。味方が2人消えた。
明日香側には残った面子で3列を確保。
最前列には剣山、丸藤、ディレが座り、真ん中の列に雪乃、俺、ゆまが、最後列には万丈目がいる。
十代は来なかった。
「アニキがデュエルを見ないなんて、初めてだよ……」
悲しげに言う丸藤。
直後にフィールド全体の照明が落とされた。クロノスの紹介により、天井から衣装を着た吹雪先輩がワイヤーに吊るされて降りてくる。
あの人、【真紅眼】じゃなくて【EM】使った方が合ってる気がする。もしくは【Em】。
『キャ〜〜!ブッキー!!』
ワイヤーを使って宙を舞う吹雪先輩がある場所に着くと、黄色い声が。ファンか何かだろう。ジュンコとももえが居そうだ。
「吹雪先輩、凄い人気だね」
「あんなチャラそうなやつのどこがいいんだか……」
ゆまは吹雪先輩の人気に感心しているが、ディレから棘のある一撃が飛んでいった。もっとも、当の本人には届いていないが……
吹雪先輩はフィールドに降り立ち、右手人差し指を頭上高く立てて一言。
「僕の指差す先にあるものは?」
『天!』
ファンの返答。
「ン〜〜ジョイン!」
…………ファンには大受けみたいだが、個人的にはスベった。
吹雪先輩が声援に答える中再び照明がつき、続いて明日香が紹介され、スモークとともに現れた。
…………白鳥の乗り物に直立した状態で。
「明日香も可哀想にな。あんなのに乗せられて」
「龍斗、今回やけにキツくないかしら?」
「L!O!V!E!ラブユー明日香!」
雪乃にそう言われたが、そうだろうか?俺としては普通のつもりなんだが……
あと万丈目、うるさい。後ろのやつらに迷惑だから立つな。
2人がフィールドに揃い、今回のデュエルについて確認しあう。吹雪先輩が勝てば明日香はブルー寮に戻り、吹雪先輩とユニットを組む。明日香が勝てばレッド寮に残る。吹雪先輩の中ではもうユニット名まで決まっていて、『ブッキーとアスリン』でいくらしい。
「微妙だ」
「いや、無いだろ」
いつの間にかディレの隣に座っていた三沢に突っ込む。
明日香にとって、いろんな意味で負けられない戦いが始まった。
「「デュエル!」」
天上院吹雪
LP4000
VS
天上院明日香
LP4000
「僕の先攻だ。僕は【漆黒の豹戦士パンサーウォリアー】を召喚!」
【漆黒の豹戦士パンサーウォリアー】
攻撃表示
ATK2000/DEF1600
【パンサーウォリアー】?吹雪先輩が使うのは【真紅眼】だったはず……今回に向けて別のデッキを用意したのか?
「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」
天上院吹雪
LP4000
モンスター
【漆黒の豹戦士パンサーウォリアー】:攻
ATK2000
魔・罠
伏せ2枚
手札2枚
「私のターン、ドロー!フィールド魔法【祝福の教会ーリチューアル・チャーチ】を発動!」
明日香が発動したフィールド魔法によって、周囲が教会の内部に変化する。
後ろで万丈目が何か妄想していたが、それを察知した明日香に怒られた。
他人の妄想まで察知するとは……恐ろしいやつ。ちなみに、ゆまはうっとりとした表情で妄想していた。明日香の声も届いてなかった。
それにしても、明日香のデッキにあんなカードは…………あ、シンクロデッキじゃないのか。
「【リチューアル・チャーチ】の効果で、手札の魔法カード【リチューアル・チャーチ】を捨て、デッキから光属性の儀式モンスターまたは儀式魔法を1枚手札に加える!【機械天使の絶対儀式】を手札に!」
儀式デッキ……そういえば去年、明日香のデッキを弄ったが、あれから変わったのか……?というかどこかで見たような……
「【サイバー・プチ・エンジェル】を召喚!」
【サイバー・プチ・エンジェル】
攻撃表示
ATK300/DEF200
機械で出来たピンクの球体に手足と羽、天使の輪をつけたようなモンスターが現れる。
「【サイバー・プチ・エンジェル】の効果発動!召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから【サイバー・エンジェル】モンスターか【機械天使の儀式】を手札に加える!【機械天使の儀式】を手札に!」
サーチが多いな……だが儀式魔法しかサーチしてない。
「【機械天使の儀式】を発動!フィールドのレベル2、【サイバー・プチ・エンジェル】と、手札のレベル6【サイバー・エンジェルー弁天ー】をリリースして、レベル8の【サイバー・エンジェルー荼吉尼ー】を儀式召喚!」
【サイバー・エンジェルー荼吉尼ー】
攻撃表示
ATK2700/DEF2400
腕が4本ある女性型モンスターが現れる。肌は青く、左右の腕には刃の大きさが異なる片刃の剣、残った腕で先端に金の輪が4つほどついた長い棒を持っている。
「【荼吉尼】のモンスター効果。儀式召喚に成功した場合、相手は自身のフィールドからモンスター1体を墓地へ送らなければならない!」
破壊を介さず、強制的に墓地に送る効果。『効果を受けない効果』をスルーできるらしい。
「【荼吉尼】の効果にチェーンして墓地の【弁天】の効果を発動!このカードがリリースされた場合、デッキから天使族・光属性モンスター1体を手札に加える!」
「【弁天】にそんな効果が?……チェーンしよう!速攻魔法【スケープ・ゴート】!僕のフィールドに【羊トークン】を4体、守備表示で特殊召喚!」
【羊トークン】
守備表示
ATK0/DEF0
赤、青、黄、ピンクの毛の羊が現れた。
これで吹雪先輩は【パンサーウォリアー】を守れる。
「……【弁天】の効果で、【サイバー・エンジェルー韋駄天ー】を手札に!」
天上院明日香
手札2枚→3枚
「そして【荼吉尼】の効果で、僕は【羊トークン】を墓地に」
破砕音とともに破壊されるピンクの【羊トークン】。
「まだ終わらないわよ!儀式魔法【機械天使の絶対儀式】を発動!儀式召喚する【サイバー・エンジェル】のレベルと同じになるように手札・フィールドのモンスターをリリース、またはリリースの代わりに墓地の天使族か戦士族モンスターをデッキに戻し、手札の【サイバー・エンジェル】儀式モンスターを儀式召喚する!」
墓地のモンスターを……アイツもしかして、いつの間にか俺のカードパクった?最近のパックには【機械天使の絶対儀式】なんて無かったはずだし、それ以前にも無かった……と思う。
あとで聞いてみよう。
「墓地の【弁天】をデッキに戻して、【サイバー・エンジェルー韋駄天ー】を儀式召喚!」
【サイバー・エンジェルー韋駄天ー】
攻撃表示
ATK1600/DEF2000
全身がピンクで、赤い装甲を付けた女性型モンスターが現れる。
「【韋駄天】の効果発動!儀式召喚に成功した場合、デッキ・墓地から儀式魔法を手札に加える!デッキから【機械天使の儀式】を手札に!」
天上院明日香
手札1枚→2枚
「バトル!【荼吉尼】で【羊トークン】に攻撃!」
【荼吉尼】が棒を振り回して赤の【羊トークン】に襲いかかる。
「罠発動【ダメージ・ダイエット】!」
「アイドルたる者、時にはスタイル維持のためのダイエットも必要!【ダメージ・ダイエット】は、このターン僕が受ける全てのダメージを半分にする!【荼吉尼】の効果は知っているよ。守備モンスターを攻撃したとき、攻撃力が守備力を超えていれば、その数値差分のダメージを与える」
余計なことを言いながらダメージを軽減しようとする吹雪先輩。
隣でゆまが自分の腹を見ていた。
「ゆま、お前には必要ないから」
「なんで考えてることがわかるの!?」
吹雪先輩の発言の直後にそんなことしてたら誰だってわかる。
ディレ、何故俺を恨めしそうに見る?
「それでも、ダメージは通る!」
【荼吉尼】が【羊トークン】を棒でフルスイングし、吹雪先輩にぶつけた。
「くっ!」
天上院吹雪
LP4000→2650
「【荼吉尼】の効果は確かに貫通効果。だけど、兄さんの言ったことは正確じゃないの」
「正確じゃない?それは一体……」
「【荼吉尼】の効果は、私のフィールドの儀式モンスター全てに貫通効果を与える!」
儀式モンスター全体に貫通効果……【パンサーウォリアー】を守った結果、大ダメージを受けることになったのか。
「シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムの登場に、私の【サイバー・エンジェル】は進化した!【韋駄天】で【羊トークン】を攻撃!【荼吉尼】の効果で貫通ダメージをくらいなさい!」
【韋駄天】が【羊トークン】を蹴り飛ばし、吹雪先輩の顔に直撃した。しかし、シンクロ等の登場で進化……マジでカードパクった?
「あ、アイドルの顔にぶつけるなんて……」
天上院吹雪
LP2650→1850
まだアイドルじゃないというツッコミはどこからも来なかった。似た扱いだからだろうか?
「ターンエンド」
天上院明日香
LP4000
モンスター
【サイバー・エンジェルー荼吉尼ー】:攻
ATK2700
【サイバー・エンジェルー韋駄天ー】:攻
ATK1600
魔・罠
無
フィールド
【祝福の教会ーリチューアル・チャーチ】
手札2枚
1ターンでライフを半分以上削られた吹雪先輩に、ファンの女子生徒達から『負けないで』と声援が送られる。
それに吹雪先輩は笑顔で感謝を送り、デッキに手をかけた。
「僕のターン、ドロー!【不屈闘士レイレイ】を召喚!」
【不屈闘士レイレイ】
攻撃表示
ATK2300/DEF0
「さらに装備魔法【愚鈍の斧】!このカードを【レイレイ】に装備し、攻撃力を1000ポイントアップ!さらに効果を無効にする!」
【不屈闘士レイレイ】
ATK2300→ATK3300
「【不屈闘士レイレイ】は、レベル4で攻撃力2300という強力モンスター。でも攻撃を終えると守備表示になってしまい、その守備力は0……あの先輩、ただチャランポランなだけじゃないザウルス!」
剣山がそう言うと、三沢が『吹雪先輩はかつて、カイザーの唯一のライバルと言われていた』と言った。それを聞いた丸藤がショックを受ける。まぁ、カイザーとは性格から何から共通してる部分が無いからな。気持ちはわかる。
「バトル!【不屈闘士レイレイ】で、【荼吉尼】を攻撃!」
【レイレイ】が四足歩行の動物のように突進してくる。普通に走ったほうが楽だと思うんだが……身体構造的に。獣戦士だからか?
「墓地の【機械天使の儀式】の効果!」
「墓地の儀式魔法を!?」
吹雪先輩が若干態とらしく驚く。十代や三沢はそうでも無かったが、他のテスターは墓地のカードを結構使うから、驚きはあまり無いんだろう。
「私の光属性モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、このカードを身代わりとして除外できる!」
「だが、バトルダメージは受けてもらう!」
【レイレイ】が【荼吉尼】にタックルするが、【荼吉尼】はそれを受け止める。互いのモンスターが破壊されることは無かったが、ダメージが衝撃波となって明日香を襲う。
「くっ……!」
天上院明日香
LP4000→3400
「【羊トークン】をリリースして、【パンサーウォリアー】で【韋駄天】を攻撃!」
【パンサーウォリアー】が右手に持ったサーベルで【韋駄天】を切り裂く。
天上院明日香
LP3400→3000
「メインフェイズ2。僕は【パンサーウォリアー】と【レイレイ】でオーバーレイ!」
吹雪先輩がエクシーズ……ランク4……【ホープ】か?
「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!大空へ羽ばたき雲を突き抜けろ!エクシーズ召喚!ランク4!【鳥銃士カステル】!」
【鳥銃士カステル】
攻撃表示
ATK2000/DEF1500
【カステル】……丸藤だけじゃなく吹雪先輩も当てていたのか。
「カステルのモンスター効果!ORUを2つ使い、【荼吉尼】を対象にして発動!」
「手札の【エフェクト・ヴェーラー】の効果で【カステル】の効果を無効に」
「えっ?」
明日香が吹雪先輩のセリフに被せるようにして発動した【ヴェーラー】が半透明の状態で出現し、【カステル】に猫だましをする。銃を撃とうとした【カステル】は驚き、銃を撃つことなく元の体勢に戻った。
「くっ……カードを1枚伏せ、ターンエンド」
天上院吹雪
LP1850
モンスター
【鳥銃士カステル】:攻
ATK2000
魔・罠
伏せ2枚
手札0枚
「リバースカードがあるけれど、状況は明日香が有利かしら?」
「微妙だな。手札わかってるから、あのリバースカードが除去系だと吹雪先輩が有利だと思う」
雪乃にそう返す。他には、蘇生系だと生き延びる可能性があるってくらいか?
「私のターン、ドロー!」
「罠発動【強制脱出装置】!【荼吉尼】には
手札を幕裏って言うな。そう思いながらも手札に戻される【荼吉尼】。
「……墓地の【機械天使の絶対儀式】と【リチューアル・チャーチ】の2枚をデッキに戻して、墓地の【サイバー・プチ・エンジェル】を対象に、フィールド魔法【リチューアル・チャーチ】の効果!対象モンスターを特殊召喚!」
【サイバー・プチ・エンジェル】
攻撃表示
ATK300/DEF200
【サイバー・プチ・エンジェル】はたしか、デッキから【サイバー・エンジェル】をサーチできたな。そして手札には【荼吉尼】と【機械天使の儀式】……決められるか?
「【サイバー・プチ・エンジェル】の効果発動!召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから【サイバー・エンジェル】か【機械天使の儀式】を手札に加える!【サイバー・エンジェルー
天上院明日香
手札2枚→3枚
「そして儀式魔法【機械天使の儀式】を発動!フィールドのレベル2、【サイバー・プチ・エンジェル】と手札のレベル8、【荼吉尼】をリリースして、レベル10の【サイバー・エンジェルー美朱濡ー】を儀式召喚!」
【サイバー・エンジェルー美朱濡ー】
攻撃表示
ATK3000/DEF2000
腕を4本持ち、背中に大きな金のギアを背負い、腰のあたりから光の翼を広げた女性型モンスターが空中からフィールドに降り立つ。攻撃力とレベルからして、あのモンスターが明日香の最終兵器なのだろう。
「【美朱濡】の効果発動!儀式召喚に成功した場合、相手フィールドのエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、1体につき1000ポイントのダメージを与える!」
…………確定したな。融合モンスターだけじゃなく、シンクロやエクシーズにまで影響する儀式モンスターなら、これしかない。
「あの野郎……テスターの仕事に関係無いカードパクりやがった……!」
「落ち着いて龍斗。勝負のついでにシンクロ以外のカードのテストをしたと思えばいいじゃない」
雪乃にそう諭されるが、それならば言ってほしかった。しかし、昨日は明日香にカードを渡してないから、それ以前に持っていったことになる。
…………やっぱりあとで問い詰めよう。
俺が決意している間に、【美朱濡】が背負うギアから光の玉がいくつも出てきて一度集まり、吹雪先輩のフィールドに降り注ぎ、【カステル】を破壊した。
「【荼吉尼】ではなく、新しいカードを使ってくるとは……」
天上院吹雪
LP1850→850
「バトル!【美朱濡】でダイレクトアタック!」
「まだ終わらせないよ!罠発動!永続罠【リビングデッドの呼び声】!その効果で【不屈闘士レイレイ】を特殊召喚!」
【不屈闘士レイレイ】
攻撃表示
ATK2300/DEF0
「フィールドのモンスターの数が変化したことで、バトルは巻き戻される。【レイレイ】を攻撃対象に変更して攻撃!」
【美朱濡】の顔の横からバイザーが現れ、【美朱濡】の目を隠す。翼を【レイレイ】に向けて、光を放つ。【レイレイ】は抵抗することなく光に飲み込まれた。
天上院吹雪
LP850→150
「これで、【美朱濡】の攻撃は終了し、僕のターンに」
「それはどうかしら?」
「何?」
勝利を確信した笑みを浮かべる明日香。
「【美朱濡】の効果には続きがあるの」
「続きだって!?」
「儀式召喚に成功したことで発動する効果を使った【美朱濡】はこのターン、1ターンに2回攻撃できる!」
「なんだって!?」
【美朱濡】の2回目の攻撃宣言により、吹雪先輩は光に飲み込まれた。
「明日香ーーーー!!」
天上院吹雪
LP150→-2850
吹雪先輩が明日香の名を叫び、デュエルは決着した。
☆
「十代君が!?」
デュエルが決着したあと、デュエルフィールドに集まる。
吹雪先輩は明日香をアイドルにし、恋の歌を歌い、普通の女の子に戻ってもらおうとしていたらしいが、男子にアイアンクロー決める時点でもう戻れないと思う。
そして、吹雪先輩が俺達のそばに十代がいないことに気付いたので、十代がどうしているのか教えることに。
吹雪先輩は心配して何かしようとしていたが、三沢に『自分達にできることはない』と止められる。
しかし、この件からしばらくの後、十代がデュエルアカデミアから姿を消した。
次回は『アイドル候補はもっといてもいいんじゃね?』ってことでゲスト登場。ついでに龍斗が巻き込まれます。