衝動のままに決闘する   作:アルス@大罪

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カードに縛り加えてデッキを組むって大変ですね。
使いたいカードがまるで使えません。
今回の話から72話まででヒシヒシと感じました。


シンクロ 明日香VS.ーーー

新ルールに慣れてきたところで、イベントの段取りに移る。進行……というより、以前アカデミアであった本校とノース校の交流試合で俺がやったシンクロ召喚について、ペガサス会長ならびに海馬さんから説明がされ、そこからエクシーズ、ペンデュラムに説明が動いていくらしい。そして、それぞれの召喚を使ったデッキで俺達がデュエルすることになっている。ペガサス会長に対戦相手を聞いてみたが、『Top secret』と教えてくれなかった。俺達にサプライズを受けている余裕はないんだが……

会長は非常に機嫌良さそうにイベントの打ち合わせをしていき、着々と準備(藤原とゆまの退治も込み)を完了していった。

そして、イベント当日。

 

「「「……………………」」」

 

舞台裏には、イヤホンで音楽を聴いている俺、目を閉じて集中を高めている藤原、デッキの確認をしている明日香の姿が。イベント会場にはマスコミだけでなく、一般客でも入れるらしく、かなりの人数がやってくることが予想される。

ゆま達は会場に用意されている客席で俺達を見守るらしい。俺達は用意された衣装(パッと見私服)を着て開始を待っている。

数分後、スタッフがやってきた。どうやらそろそろ時間らしい。

舞台の壁際で待機していると、ゴン……という音とともに天井が開いた……これ、海馬さんの演出……?いや、思い返すと、今までペガサス会長は見たが、海馬さんは見ていない。つまり海馬さんは今の今まで別の仕事をしていた……?そんな疑問を抱いていると、【青眼】のジェット機ではなく、KCのヘリから梯子を降ろし、そこに片手片足をかけてインカムを付けている海馬さんが、会場に設置された3つのモニターに映っていた。モニターは俺達が立つ舞台の端に1つずつ、舞台中央に取り分け大きなモニターが1つ設置されている。

海馬さんは梯子から飛び降り、背中に背負っていたバックパックから【青眼】を模した翼が広がり、エンジン音を響かせてスラスターを噴射。ゆっくりと着地した。

海馬さんとペガサス会長は平然としているが、イベントにきた一般客やマスコミは目を点にして海馬さんを見ている。

 

「あれが、海馬瀬人……」

 

生の海馬さんを初めて見る藤原がポツリと呟いた。俺はあの人の規格外っぷりは短い間に嫌ってほど味わったから、特に感動とか、登場の仕方に思うことは無かった。明日香は、会ったのが数時間程度だから慣れてないか。目を丸くしてる。海馬さんはバックパックを磯野さんに渡して、耳に手を当ててインカムのスイッチを入れた。

 

「今日はお集まりいただいてありがとうございマース!今から、我がI2社と」

「KCからの重大発表を行う」

 

ペガサス会長と海馬さん直々の進行に、マスコミ及び一般客はこのイベントの重大さに期待にもにた感情を抱いているだろう。

 

「まずは、この映像を見ろ」

 

海馬さんの上から目線な進行。そして海馬さんの背後、舞台中央の巨大モニターに映ったのは、俺と藤原の姿。

 

[デュエルアカデミアノース校の生徒諸君!そして今中継を見ているデュエリスト諸君!これから諸君らにとって未知の力を見せよう!]

 

仕事が関わっていたとはいえ、改めて見てみると恥ずかしい。映像は途中カットして、俺がシンクロ召喚する場面になっていた。

 

[シンクロ召喚!いでよ!レベル5!【ジャンク・ウォリアー】!]

 

【ジャンク・ウォリアー】が召喚されたところで映像が止まった。

 

「これは以前、あるTV局が生中継で放送した、我がKCにより設立されたデュエルアカデミア本校、ノース校の交流試合の1シーンだ。この直後、一部ネット等で騒ぎがあった」

「I2社にも問い合わせが殺到したらしいデース。But,全て『ノーコメント』と回答させてもらいました」

 

そんな騒ぎがあったのか。その手のサイトは見てなかったな。

 

「今回、この『シンクロ召喚』について説明させてもらう」

 

モニターの映像が切り替わり、プレイヤー1人分のフィールドが表示された。ただ、『マスタールール』用ではなく、『エキスパートルール』用の物だった。

 

「シンクロ召喚とは、昨今の変わり映えのないデュエルに一石を投じるために、KCとI2社が共同開発した新システムだ」

 

海馬さん言い方。言い方が酷いです。『お前達のデュエルはつまらない』って言ってるようなものです。もっとパパッと決着つけてほしいとか思ってたりしますけど、言わないほうが良いと思います。

 

「シンクロ召喚とは、自分フィールドの『チューナー』のテキストを持ったチューナーモンスターと」

 

ペガサス会長の説明に合わせ、モニターに【ジャンク・シンクロン】のカードが表示され、『チューナー』のテキストが拡大表示される。その後、カードがフィールドに置かれる。

 

「チューナー以外のモンスターを墓地に送り」

 

【ボルト・ヘッジホッグ】が表示され、フィールドに置かれる。その後2枚のカードが墓地に送られる。

 

「墓地に送ったモンスターのレベルの合計と等しいレベルのシンクロモンスターを、召喚する。これがシンクロ召喚デース!」

 

モニターに【ジャンク・シンクロン】と【ボルト・ヘッジホッグ】の2枚が表示され、カード名のあたりに『3+2=5』という式が書かれ、【ジャンク・ウォリアー】のカードが2枚のカードの上に置かれるように現れた。

 

「新システムの導入にあたり、I2社はDMのルールを一新、『マスタールール』と呼称し変更することを宣言しマース!」

 

海馬さんが説明を代わり、『マスタールール』の説明が始まる。

先攻ドロー無し、フィールドの変更、3つの召喚等の経緯、説明がされる。

 

「今日は『マスタールール』で採用される3つの召喚、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラムの実演を、I2社とKCに所属するテスター、及び彼が見つけた選りすぐりのデュエリストが行いマース!」

 

『おぉっ!』という声とともに、フラッシュの頻度が増す。

 

「それでは入場してもらいましょう。先程のデュエル映像でシンクロ召喚を使ったデュエリスト。I2社及びKC所属のテスター。宮田龍斗ボーイ!」

 

出番が来たか。ハッと短く息を吐いて舞台に一歩踏み出す。

フラッシュの嵐の中、舞台中央にいる海馬さんとペガサス会長の傍に辿り着いた。

 

「紹介に与りました、I2社及びKC所属のシンクロ、エクシーズペンデュラム召喚のテスター。宮田龍斗です。本日はペンデュラム召喚の実演、並びに各召喚実演中の解説を務めさせていただきます。よろしくお願いします」

 

一般客からであろう拍手の中、一礼する。次は……明日香の紹介か。ここは俺が進行していかないといけない。

 

「それでは、『マスタールール』で採用された3つの召喚の1つ、シンクロ召喚の実演を行いましょう!デュエルアカデミア本校所属、天上院明日香さんです!」

 

明日香にさん付け……この上ない違和感だ。集中するフラッシュと視線に、明日香は緊張を見せながらも、俺達の傍にやってきた。

 

「龍斗ボーイを含め、彼女には実戦形式の実演をしてもらいマース。その対戦相手は……海馬ボーイデース!」

「「っ!?」」

 

ペガサス会長による対戦相手の紹介に、俺と明日香が固まった。よりによって海馬さん……色々なカード渡したから、非常に嫌な予感がする。

明日香と海馬さんが舞台で距離を取り、デュエルディスクを展開する。明日香のはアカデミア仕様のデュエルディスクで、海馬さんのは……【青眼】の翼を広げたようなデザインだ。

 

「それでは、新ルール『マスタールール』にて、シンクロ召喚の実演を開始します!」

「「デュエル!」」

 

天上院明日香

LP4000

 

VS

 

海馬瀬人

LP4000

 

「先攻は私!私は魔法カード【おろかな埋葬】発動!デッキから【ボルト・ヘッジホッグ】を墓地に送る!」

「【ボルト・ヘッジホッグ】は、フィールドにチューナーがいれば墓地から特殊召喚できるモンスターです。デッキ圧縮を兼ね、いつでもシンクロ召喚ができるように準備をしているわけですね」

 

これ、解説になってるのか?

…………適当に言って誤魔化していこう。

 

「チューナーモンスター、【ジャンク・シンクロン】を召喚!」

 

【ジャンク・シンクロン】

攻撃表示

ATK1300/DEF500

 

「【ジャンク・シンクロン】の効果発動!召喚に成功したとき、墓地のレベル2以下のモンスターを効果を無効にし、守備表示で特殊召喚できる!出て来なさい。【ボルト・ヘッジホッグ】!」

 

【ボルト・ヘッジホッグ】

守備表示

ATK800/DEF800

 

「【ジャンク・シンクロン】の効果でなくても、【ボルト・ヘッジホッグ】自身の効果でこのフィールドになりますが、【ボルト・ヘッジホッグ】が自身の効果で特殊召喚された場合、フィールドを離れるとゲームから除外されてしまいます。【ジャンク・シンクロン】で召喚することにより、もう一度シンクロ召喚の素材に出来るのです」

 

長い。セリフが長い。

そう思いながらも、表情は変えない。早く終われこの仕事。

 

「レベル2の【ボルト・ヘッジホッグ】にレベル3の【ジャンク・シンクロン】をチューニング!」

 

先攻1ターン目でシンクロ……【カタストル】か。

 

「電脳世界に住む者、我が前に出でて癒しを齎せ!シンクロ召喚!現れよレベル5!【マジカル・アンドロイド】!」

 

【マジカル・アンドロイド】

攻撃表示

ATK2400/DEF1700

 

現れたのは歪な杖と……盾だろうか?盾らしきものを持った女性。

そういや、コイツもリストに入ってたな。

観客は生のシンクロ召喚に『おぉ』と声を出す。

 

「この【マジカル・アンドロイド】は、DMに新たに加わった種族の1つ、サイキック族のモンスターです。今回、我々テスター陣は、各召喚のプロトタイプとなるモンスターを使用します」

「また、今回テスター達が使用したカード達はこの後皆さんに配布し、また数日後に販売されるスターターデッキ並びに新パックに封入されマース!」

 

ペガサス会長の言葉に、マスコミ関係者含め、観客が盛大な拍手を送る。

 

「カードを1枚伏せ、エンドフェイズに【マジカル・アンドロイド】の効果発動!私のフィールドのサイキック族モンスターの数だけ、ライフを600ポイント回復するわ!」

 

【マジカル・アンドロイド】の背後から緑色の粒子が放出され、明日香に触れる。

 

天上院明日香

LP4000→4600

 

「これでターンエンド!」

 

天上院明日香

LP4600

モンスター

【マジカル・アンドロイド】:攻

ATK2400

魔・罠

伏せ1枚

手札2枚

 

「ふぅん。俺のターン、ドロー!」

 

海馬さんはドローしたカードを手札に加えると、明日香を見据えた。

 

「1ターンでシンクロ召喚したことは褒めてやる。だが、シンクロ召喚による強化は貴様だけではない!」

 

い、嫌な予感がする……あの人、大人気ないことしてないよな……

 

「手札からフィールド魔法【光の霊堂】を発動!」

 

こ、この人汚ねえ!自分だけ好きなカードを思う存分使ってやがる!

そう思っている間に、海馬さんの背後に【青眼】の像が置かれた台座が出現し、スポットライトとは違う柔らかい光が台座を照らす。

 

「……海馬社長!」

「なんだ」

「立場的に言えない立場だとわかっているつもりですが、あえて言わせてもらいます!アンタ汚ねえよ!自分だけ好きなカード使うなんて!」

 

立場も弁えず海馬さんに言うと、観客は当然『どういうことか』と騒然とする。

 

「……今海馬社長が使ったフィールド魔法【光の霊堂】はもっと先に販売する予定のカードなんです。我々テスターは、今回のイベントに向けてプロトタイプのカードまでしか使用できないんですが、社長は……」

「ふぅん。デュエルはこれから新ステージに突入する。これを機に、俺に挑もうとする輩が出ないとも限らん。新システムを取り入れたこのデッキの力で、先にその思惑を砕いてやるだけだ」

「さ、最悪だ!雇い主だけど最悪だ!」

 

思わず大声を出してしまうくらいには最悪だ。

 

「チューナーモンスター【青き眼の賢士】を召喚!」

 

【青き眼の賢士】

攻撃表示

ATK0/DEF1500

 

水色のローブを着て、紺の布を首元に巻いた青白い髪で名の通り青い眼の青年が現れた。

マジで【霊堂】以外のカード入れてやがる……

 

「【青き眼の賢士】の効果発動!召喚に成功した時、デッキから【青き眼の賢士】以外の光属性・レベル1チューナーを手札に加える!【青き眼の乙女】を手札に加える!」

 

【青き眼の賢士】が杖を振ると、デッキからカードが飛び出した。

 

海馬瀬人

手札4枚→5枚

 

「【光の霊堂】がある限り、俺は通常召喚に加え1度だけ、光属性・レベル1チューナー1体を召喚できる!【青き眼の乙女】を召喚する!」

 

【青き眼の乙女】

攻撃表示

ATK0/DEF0

 

海馬さんの背後の像から、黄色い粒子が溢れ人の形に集まり、【青き眼の乙女】が現れた。

 

「龍斗ボーイ、チューナーモンスターを2体召喚する意味はあるのデスか?」

 

ペガサス会長はこの状況でも、解説役を続けさせるつもりらしい。

…………海馬さんはともかく、ペガサス会長の機嫌まで損ねる訳にはいかないか……

 

「……通常でしたら、避けたいことではあります。連続召喚するなら、非チューナーとチューナーを召喚してシンクロしたいですから。しかし、海馬社長が発動した【光の霊堂】と【青き眼の乙女】にはシナジーがありますから、まだ動きます」

「【光の霊堂】の第二の効果を、【青き眼の乙女】を対象に発動!手札・デッキから通常モンスターを墓地に送り、対象モンスターの攻撃力・守備力を、墓地に送ったモンスターのレベル分アップさせる!」

 

俺の不機嫌な説明を待っていたように海馬さんが動いた。

 

「だが、その前に【青き眼の乙女】の効果発動!このモンスターがカード効果の対象になったとき、手札・デッキ・墓地から僕を呼び出す!」

 

海馬さんはデッキから飛び出たカードを、右手人差し指と中指で抜き取り、頭上高く掲げた。

 

「強靭にして無敵!我が魂!【青眼の白龍】」

 

【青眼の白龍】

攻撃表示

ATK3000/DEF2500

 

【青き眼の乙女】が祈ると、その祈りに応えるように【青眼】が咆哮とともに現れた。

 

「これが、【青眼】……」

 

明日香は【青眼】を見てなお、怖気付くことなく気丈に振る舞う。

 

「これが、【乙女】と【霊堂】のコンボです。『対象にとる』効果である【霊堂】で攻撃力・守備力を上昇を狙いつつ、【乙女】の効果で【青眼の白龍】を生贄、『マスタールール』におけるリリース無しで召喚する。今の海馬社長は本気かと」

「【光の霊堂】の効果で、デッキから【青眼】を墓地に送り、【青き眼の乙女】の攻撃力・守備力をアップさせる!」

 

【青き眼の乙女】

ATK0/DEF0→ATK800/DEF800

 

「手札の【太古の白石】を捨て、魔法カード【ドラゴン・目覚めの旋律】を発動!」

 

どこからともなく、エレキギターの音が響く。これ、ドラゴンじゃなくても目覚める音量だぞ……

 

「デッキから攻撃力3000以上、且つ守備力2500以下のドラゴン族モンスターを2枚まで手札に加える!」

「攻撃力3000以上、守備力2500以下のドラゴン族……まさか!?」

 

明日香の予想が当たっていると答えるように、海馬さんは笑みを浮かべる。

 

「デッキから【青眼の白龍】と【青眼の亜白龍(オルタナティブ・ホワイト・ドラゴン)】を手札に加える」

 

海馬瀬人

手札2枚→4枚

 

海馬さんが手札に加えた【青眼】カードに客席から動揺する声が聞こえた。

 

「これは、我がKCが開発した【青眼】カードの1枚。文字通りの亜種だ。そしてこの【亜白龍】は、手札の【青眼の白龍】を相手に見せることで特殊召喚できる!」

 

【青眼の亜白龍】

攻撃表示

ATK3000/DEF2500

 

【青眼】が半透明で現れたが、揺れるように消え、遥か上空から【青眼】より鋭い眼を持ち、身体中に青い線が走っている【亜白龍】が現れた。

 

「バトルだ!【青眼の亜白龍】で【マジカル・アンドロイド】を攻撃!滅びのバーンストリーム!」

 

【亜白龍】のブレスが【マジカル・アンドロイド】を瞬時に飲み込んだ。

 

「くっ……!」

 

天上院明日香

LP4600→4000

 

「【青眼】でダイレクトアタック!滅びの爆裂疾風弾!」

「罠発動【くず鉄のかかし】!相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

 

ヘルメットやドライヤーなどのスクラップで出来た案山子が、【青眼】の攻撃を防いだ。

 

「このカードは発動後、フィールドに再セットされる!」

「ならば【青き眼の乙女】でダイレクトアタック!」

 

【青き眼の乙女】が明日香の傍まで歩いていき、頬に平手打ちをかました。

 

「痛っ!?」

 

天上院明日香

LP4000→3200

 

「メインフェイズ2に移行する。レベル8の【青眼の白龍】にレベル1の【青き眼の賢士】をチューニング!伝説となりし咆哮よ、堅固なる力で我が僕を守る盾となれ!シンクロ召喚!出でよ!レベル9!【蒼眼の銀龍】!」

 

【蒼眼の銀龍】

守備表示

ATK2500/DEF3000

 

フィールドに、【青眼】の眼よりも濃い青の眼を持った龍が現れる。その体は光を反射し、銀色に輝いていた。

 

「【蒼眼の銀龍】がシンクロ召喚に成功したとき、俺のドラゴン族モンスターは次のターンまで効果の対象にならず、効果では破壊されない!」

 

【蒼眼の銀龍】が翼を広げると、翼から白い光の粒が降り注ぎ、【亜白龍】に白い光が宿った。

 

「カードを1枚伏せ、エンドフェイズに墓地に送られた【太古の白石】の効果発動!このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズ、デッキから【青眼】を召喚する!」

「【青眼】を!?でも、【青眼】は既に手札に1枚、墓地に2枚ある……なら、召喚するのは【亜白龍】の方ね」

 

残念だが明日香、【亜白龍】は一度自身の効果で特殊召喚しないと、他のカードの効果で召喚できないんだ。

 

「貴様ごときデュエリストに、この俺のデッキが測れるものか!俺は【白き霊龍】を特殊召喚!」

 

【白き霊龍】

攻撃表示

ATK2500/DEF2000

 

【青眼】より少しばかり小さな龍が召喚された。

 

「【青眼】じゃない!?【青眼】を召喚するんじゃないの!?」

「【青眼の亜白龍】は、その効果の性質の関係で、一度自身の効果で特殊召喚したカードでないと、他のカードで特殊召喚できません。また、【白き霊龍】は、ルール上【青眼】モンスターとして扱う、所謂ルール効果を持っています」

 

明日香だけでなく、客席の人達も同じことを思っていると判断し、すかさず解説を入れる。

 

「【白き霊龍】の効果発動!このモンスターの召喚・特殊召喚に成功したとき、相手フィールドの魔法・罠1枚を対象にし、対象カードを除外する!」

「なんですって!?」

 

【白き霊龍】が咆哮すると、セットされていた【くず鉄のかかし】が消滅した。

 

「俺はこれで、ターンエンドだ」

 

海馬瀬人

LP4000

モンスター

【青き眼の乙女】:攻

ATK0

【青眼の亜白龍】:攻

ATK3000

【蒼眼の銀龍】:守

DEF3000

【白き霊龍】:攻

ATK2500

魔・罠

伏せ1枚

フィールド

【光の霊堂】

手札2枚

 

アドバンテージは圧倒的に海馬さんが有利。むしろ次のターンで倒す気満々といった様子だ。腕組んで構えてるし。

明日香の手札はドロー込みで3枚。さて、何を見せてくれる?

 

「私のターン、ドロー!墓地の魔法カード【おろかな埋葬】を除外して、手札の【マジック・ストライカー】を特殊召喚!」

 

【マジック・ストライカー】

攻撃表示

ATK600/DEF200

 

「【マジック・ストライカー】か。確かにそのモンスターの能力なら、俺にダメージを与えられるが、俺の【青眼】達の前には塵芥に等しいぞ!」

 

海馬さんのフィールドにいる【青眼】は、それぞれ自分の存在を誇示するかのように咆哮する。【乙女】が後ろでガッツポーズをとっているが、何故だろう……和む。中身があのキサラなら気味が悪いが。

 

「速攻魔法【緊急テレポート】!手札・デッキからレベル3以下のサイキック族モンスターを特殊召喚する!デッキからレベル3チューナーモンスター【サイコ・コマンダー】を特殊召喚!」

 

【サイコ・コマンダー】

攻撃表示

ATK1400/DEF800

 

砲台付けた……UFO?に乗った緑の服着たやつが現れた。

 

「レベル6……いや、墓地にはあのモンスターがいたか」

 

一応、イベントだという事がわかっているのか、態とらしく海馬さんが口にした。

 

「私のフィールドにチューナーがいる場合、墓地の【ボルト・ヘッジホッグ】は特殊召喚できる!」

 

【ボルト・ヘッジホッグ】

守備表示

ATK800/DEF800

 

「レベル3の【マジック・ストライカー】とレベル2の【ボルト・ヘッジホッグ】にレベル3の【サイコ・コマンダー】をチューニング!

散りし戦士の魂、今ここに不屈の戦士の雄叫びとならん!シンクロ召喚!天地を揺るがせ!レベル8!【ギガンテック・ファイター】!」

 

【ギガンテック・ファイター】

攻撃表示

ATK2800/DEF1000

 

最上級モンスターを1ターンで召喚したことに、客席から驚きの声が上がったが、攻撃力が【亜白龍】に及ばないとわかると、すぐに静まり返った。

 

「【ギガンテック・ファイター】の攻撃力は墓地にいる戦士族モンスターの数だけアップする!今私の墓地には2体の戦士族モンスターがいて、貴方の墓地には戦士族モンスターはいない。よって攻撃力は200ポイントアップ!」

 

【ギガンテック・ファイター】

ATK2800→ATK3000

 

「バトルよ!【ギガンテック・ファイター】で【青眼の亜白龍】を攻撃!ギガンテック・スマッシュ!」

 

この状況での相打ち狙いに騒めく客席。海馬さんのリバースはなんだろうな?

攻撃に海馬さんは反応せず、【ギガンテック・ファイター】が【亜白龍】を右拳で殴り、直後にブレスで【ギガンテック・ファイター】を倒し、【亜白龍】が力尽きるのを見届けた。

 

「この瞬間、【ギガンテック・ファイター】の効果発動!このモンスターがバトルで破壊されたとき、墓地の戦士族モンスター1体を選択し、特殊召喚できる!蘇れ!【ギガンテック・ファイター】!」

 

【ギガンテック・ファイター】

攻撃表示

ATK2800/DEF1000→ATK3000/DEF1000

 

「【ギガンテック・ファイター】の効果は破壊された後、つまり墓地で発動します。墓地にいる戦士族、自分自身を特殊召喚することで、相打ちでも実質相手のみを破壊し、さらには新しいモンスターとして扱われるため、追撃も可能にしたんですね」

「このまま追撃よ!【白き霊龍】を攻撃!」

 

【ギガンテック・ファイター】の右拳に、【白き霊龍】はなす術なく打ちのめされた。

 

「ふぅん……」

 

海馬瀬人

LP4000→3500

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

天上院明日香

LP3200

モンスター

【ギガンテック・ファイター】:攻

ATK3000

魔・罠

伏せ1枚

手札0枚

 

「俺のターン、ドロー!このスタンバイフェイズ、【蒼眼の銀龍】の効果発動!墓地の通常モンスターを特殊召喚する!」

「通常モンスターを!?つまり……!」

「墓地より蘇れ!我が魂!【青眼の白龍】!」

 

【青眼の白龍】

攻撃表示

ATK3000/DEF2500

 

「永続罠【リビングデッドの呼び声】!墓地より【青眼の亜白龍】を特殊召喚!」

 

【青眼の亜白龍】

攻撃表示

ATK3000/DEF2500

 

「【青眼の亜白龍】の効果発動!1ターンに1度、このモンスターの攻撃を放棄する代わりに、相手モンスター1体を対象にし、破壊する!」

「攻撃力3000でモンスターを破壊する効果!?龍斗!コレどんなインチキよ!」

 

俺に振るな。おそらく前世で俺が死んだあとに出たカードだろう。【Em】とかも。

 

「滅びのバーンストリーム!」

 

攻撃と効果が同じ名前なのは良いんですか?【亜白龍】は攻撃とまったく同じ動きで【ギガンテック・ファイター】を破壊した。

 

「魔法カード【融合】を発動!フィールドの【青眼の亜白龍】と手札の【青眼】を融合!

伝説となりし二頭の龍よ!今一つとなりて新たな伝説をこの地に刻め!融合召喚!双頭の白龍!レベル10【青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)】!」

 

【青眼の双爆裂龍】

攻撃表示

ATK3000/DEF2500

 

現れたのは双頭の【青眼】。体には青く発光している線が走っている。

 

「【青眼の双爆裂龍】は【青眼の白龍】2体を融合素材にします。【亜白龍】はフィールドと墓地では、カード名を【青眼の白龍】として扱う効果があります。効果を使って攻撃できなくなったモンスターを素材に新たなモンスターを召喚……海馬社長、容赦無いですね」

 

明日香のリバースカードは1枚だけ。手札は0、墓地で使えるカードも無い。これは厳しい……いや、決まったか?

 

「【蒼眼の銀龍】を攻撃表示に変更!」

 

【蒼眼の銀龍】

守備表示→攻撃表示

DEF3000→ATK2500

 

「バトル!【青眼の双爆裂龍】でダイレクトアタック!」

「罠発動【リビングデッドの呼び声】!【ギガンテック・ファイター】を特殊召喚!」

 

【ギガンテック・ファイター】

攻撃表示

ATK2800/DEF1000→ATK3000/DEF1000

 

「ふぅん。バトルは中断しメインフェイズ2に移行する。レベル8の【青眼の白龍】にレベル1の【青き眼の乙女】をチューニング!

伝説となりし咆哮よ、その魂を新たな伝説のために研ぎ澄ませ!シンクロ召喚!新たな伝説!レベル9【青眼の精霊龍(ブルーアイズ・スピリット・ドラゴン)】!」

 

【青眼の精霊龍】

守備表示

ATK2500/DEF3000

 

青い眼と【青眼】よりも白い、純白と言ってもいい体の龍が現れる。

 

「【青眼の精霊龍】は1ターンに1度、墓地で発動する効果を無効にできます。海馬社長は【ギガンテック・ファイター】を封じるつもりなのでしょう」

「ターンエンドだ」

 

海馬瀬人

LP3500

モンスター

【蒼眼の銀龍】:攻

ATK2500

【青眼の双爆裂龍】:攻

ATK3000

【青眼の精霊龍】:守

DEF3000

魔・罠

【リビングデッドの呼び声】

フィールド

【光の霊堂】

手札1枚

 

「私のターン、ドロー!」

 

明日香はドローしたカードを確認したあと、海馬さんのフィールドを見つめる。【ギガンテック・ファイター】の効果は【精霊龍】が妨害してくる。【双爆裂龍】と相打ちしても追撃ができない。そもそも【双爆裂龍】は戦闘で破壊されないけどな。ドローしたカードが魔法・罠だとすると、やれることは一つだろう。

 

「バトル!【ギガンテック・ファイター】で【蒼眼の銀龍】を攻撃!ギガンテック・スマッシュ!」

 

【ギガンテック・ファイター】の右拳が【蒼眼の銀龍】の体を貫いた。

 

海馬瀬人

LP3500→3000

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

天上院明日香

LP3200

モンスター

【ギガンテック・ファイター】:攻

ATK3000

魔・罠

伏せ1枚

手札0枚

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード【死者蘇生】発動!墓地から【白き霊龍】を特殊召喚!」

 

【白き霊龍】

攻撃表示

ATK2500/DEF2000

 

「【白き霊龍】の効果で貴様のリバースカードを除外する!」

「速攻魔法【イージーチューニング】発動!墓地のチューナーモンスター【サイコ・コマンダー】を除外してその攻撃力分、【ギガンテック・ファイター】の攻撃力をアップさせる!」

 

【ギガンテック・ファイター】の全身から白い煙が上がった……【サイコ・コマンダー】の要素0だ。

 

【ギガンテック・ファイター】

ATK3000→ATK4400

 

「【青眼の精霊龍】を攻撃表示に変更」

 

【青眼の精霊龍】

守備表示→攻撃表示

DEF3000→ATK2500

 

「バトル!【青眼の双爆裂龍】で【ギガンテック・ファイター】を攻撃!双爆裂疾風弾(ツイン・バーストストリーム)!」

 

双頭から放たれるブレス攻撃を両腕で真正面から受け止め、跳ね返した。

 

海馬瀬人

LP3000→1600

 

「【双爆裂龍】はバトルで破壊されない。そして【双爆裂龍】の効果発動!このモンスターの攻撃で相手モンスターが破壊されなかった場合、その相手モンスターを除外する!」

 

【双爆裂龍】が再度ブレス攻撃を放ち、【ギガンテック・ファイター】を塵一つ残さず消滅させた。

 

「【白き霊龍】でダイレクトアタック!ホワイト・バースト!」

 

【白き霊龍】が球体のブレスで明日香を攻撃する。

 

「くぅっ…………!」

 

天上院明日香

LP3200→700

 

「トドメだ。【青眼の精霊龍】でダイレクトアタック!」

 

【青眼の精霊龍】が白い電気を放出しながらブレスを放ち、明日香を呑み込んだ。

 

「あああぁぁぁああ!!」

 

天上院明日香

LP700→-1800




社長ってすごいですよね。『闇属性モンスターの攻撃力を3倍にする』とかいうふざけたカード持ってたんですから(アニメでの話です)。
次回はゆきのんが縛りプレイ(意味深)です。

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