前回はこんな感じで終わった……と思います。
7ターン目エンドフェイズ
丸藤亮
LP3600
モンスター
無
魔・罠
【サイバー・ネットワーク】
手札4枚
VS
遊城十代
LP3700
モンスター
無
魔・罠
無
手札2枚
カイザーの卒業模範デュエル。カイザーは俺と十代の2人を相手に指名するという暴挙に出た。2対1ではなく、1対1を連続するということで、十代、俺の順ですることに。そして十代とのデュエルの最中なんだが、
「何やってんだアイツ?」
カイザーがターンを終了すると同時に、十代が座り込んだ。なんだ?手札事故でも発生したのか?そんな無茶苦茶な構築するからだ。寧ろよく3ターンも保ったな。
しかし、十代が座り込んだのには理由があった。
「あ〜、もうダメだ。腹減って力が出ねぇ」
ぐぅ〜。という情け無い音が微かに聞こえた。その瞬間、周囲から同時に『え?』と声が出た。
「いやー、エクシーズも融合も使いたいし、だからごちゃ混ぜにしたのは良いんだけど、負けたくないからさ。頑張って頭使ったんだけど……正直もう無理だ!頭使うの疲れるし、楽しくない!腹も減るしな。トメさーん!トメさんいるー?」
十代が急に購買のトメさんを呼んだかと思うと、なんとデュエル中に食べ物を要求してきた。腹が減ってはなんとやら、ということらしく小休止決め込んで胡座かいて飯を待つ。その間にカイザーに食事の許可を得ようとすると、二つ返事で了承。2人をよそに、俺達は唖然としていた。ただ、丸藤だけは『アニキらしくなった』と言っていた。
トメさんと同じく購買の『お姉さん』ことセイコさんがおにぎりを次々と用意して、十代はペットボトルのお茶を飲みながらそれを平らげていく。それにしても良く食べるな。一皿におにぎり3つ、それを十皿は平らげた。奴の胃袋は化け物か。俺はそんなに食べられないぞ。
「ふー、食った食った!待たせたなカイザー、ここからが本番だぜ!」
「……来い!」
少し前の不機嫌さとはうって変わって、笑みを浮かべながらデュエルディスクを構え直すカイザー。
「俺のターン、ドロー!【E・HERO バブルマン】を召喚!」
【E・HERO バブルマン】
守備表示
ATK800/DEF1200
「【バブルマン】の効果で、カードを2枚ドロー!」
遊城十代
手札2枚→4枚
「【強欲な壺】!カードをさらに2枚ドロー!」
遊城十代
手札3枚→5枚
「魔法カード【融合回収】!墓地の【融合】と【バーストレディ】を手札に加える!」
遊城十代
手札4枚→6枚
あっという間に手札が6枚に……ハイランダーのはずなのによく回せるよな。
「【融合】発動!手札の【バーストレディ】と【クレイマン】を融合!来い!【E・HERO ランパートガンナー】!」
【E・HERO ランパートガンナー】
攻撃表示
ATK2000/DEF2500
【ランパートガンナー】……ダメージが半分になる代わりに、守備表示でダイレクトアタックできる効果のモンスターだったか。攻撃表示なのはダメージが半減するのを回避するためか。
「バトル!【ランパートガンナー】でダイレクトアタック!ランパート・ショット!」
【ランパートガンナー】の右腕から放たれたミサイルが、カイザーの足下に着弾。爆風がカイザーを襲う。
「くっ……!」
丸藤亮
LP3600→1600
「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
遊城十代
LP3700
モンスター
【E・HERO バブルマン】:守
DEF1200
【E・HERO ランパートガンナー】:攻
ATK2000
魔・罠
伏せ1枚
手札2枚
「俺のターン、ドロー!このスタンバイフェイズ、【サイバー・ネットワーク】のカウントが進む」
【サイバー・ネットワーク】のカウントが『2』から『3』に変化し、【サイバー・ネットワーク】を電子回路を模した青白い線が包み、収縮する。カードが収縮し消滅する直前、【サイバー・ドラゴン】達が姿を現した。
「【サイバー・ネットワーク】発動後、3回目のスタンバイフェイズにこのカードは破壊され、除外されている機械族・光属性モンスターを可能な限り特殊召喚し、俺のフィールドの魔法・罠を全て破壊する」
【サイバー・ドラゴン】
攻撃表示
ATK2100/DEF1600
【サイバー・ドラゴン・ツヴァイ】
攻撃表示
ATK1500/DEF1000
【サイバー・ドラゴン・ドライ】
攻撃表示
ATK1800/DEF800
【サイバー・ヴァリー】
守備表示
ATK0/DEF0
「【サイバー】モンスターが、一気に4体……!」
「この効果で特殊召喚されたモンスターは効果を発動できず、俺はこのターン、バトルフェイズを行えない」
興奮気味の十代。このターン攻撃されることはないし、【ランパートガンナー】がいるからダメージの心配はあまりないだろうが、次のターン【サイバー・エンド】が来たら厄介だな。
「【サイバー・ドラゴン・コア】を召喚!」
【サイバー・ドラゴン・コア】
守備表示
ATK400/DEF1500
「【サイバー・ドラゴン・コア】の効果でデッキから【サイバネティック・フュージョン・サポート】を手札に加える!」
丸藤亮
手札4枚→5枚
「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」
丸藤亮
LP1600
モンスター
【サイバー・ドラゴン】:攻
ATK2100
【サイバー・ドラゴン・ツヴァイ】:攻
ATK1500
【サイバー・ドラゴン・ドライ】:攻
ATK1800
【サイバー・ヴァリー】:守
DEF0
【サイバー・ドラゴン・コア】:守
DEF1500
魔・罠
伏せ1枚
手札4枚
次、もしくはさらに先のターンの準備でこのターンを終えたか。にしても【サイバー・ドラゴン】関連のモンスターが揃い踏み。【フォートレス】召喚したくなる。
「俺のターン、ドロー!【ランパートガンナー】を守備表示に変更!」
【E・HERO ランパートガンナー】
攻撃表示→守備表示
ATK2000→DEF2500
「バトル!【ランパートガンナー】は守備表示でも、相手プレイヤーにダイレクトアタックできる!ランパート・ショット!」
「ぐぅ……!」
丸藤亮
LP1600→600
「この効果でダイレクトアタックするとき、与えるダメージは半分になる。さらに速攻魔法【融合解除】!【ランパートガンナー】を【クレイマン】と【バーストレディ】に!」
【E・HERO クレイマン】
攻撃表示
ATK800/DEF2000
【E・HERO バーストレディ】
守備表示
ATK1200/DEF800
「【クレイマン】で【サイバー・ヴァリー】を攻撃!クレイ・ナックル!」
【クレイマン】がバニラと成り果てた【サイバー・ヴァリー】を殴り、吹き飛ばした。
「俺はレベル4の【クレイマン】と【バブルマン】でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!全ての終わりを告げる銃声よ、今響け!エクシーズ召喚!撃て!ランク4!【ガガガガンマン】!」
【ガガガガンマン】
守備表示
ATK1500/DEF2400
【ガガガガンマン】……ガンマンライン下回ったけど、これでケリつける気かよ……あのカードでトドメをさされたことのある一部の生徒から『お前マジで言ってんの』といった声が聞こえる。明日香達は声に出さないが、似たような雰囲気だ。
「十代さん……」
ゆまは若干声に出して引いていたが……
「【ガガガガンマン】の効果発動!守備表示のときORUを1つ使い、相手プレイヤーに800ポイントのダメージを与える!」
効果説明が終わった途端、周囲から大ブーイング。しかし、カイザーの伏せたカードで状況が変わった。
「カウンター罠【ダメージ・ポラリライザー】!ダメージを与える効果が発動したとき、その効果を無効にし、互いに1枚ドローする!」
丸藤亮
手札4枚→5枚
遊城十代
手札2枚→3枚
「魔法カード【天使の施し】!カードを3枚ドローして2枚捨てる!【戦士の生還】発動!墓地の【フェザーマン】を手札に加え、そのまま守備表示で召喚!」
【E・HERO フェザーマン】
守備表示
ATK1000/DEF1000
「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」
遊城十代
LP3700
モンスター
【E・HERO フェザーマン】:守
DEF1000
【E・HERO バーストレディ】:守
DEF800
【ガガガガンマン】:守
DEF2400
魔・罠
伏せ3枚
手札0枚
「俺のターン、ドロー!魔法カード【融合】発動!フィールドの【サイバー・ドラゴン】、【サイバー・ドラゴン・ドライ】、【サイバー・ドラゴン・コア】を融合!現れろ、【サイバー・エンド】!」
【サイバー・エンド・ドラゴン】
攻撃表示
ATK4000/DEF2800
「終わりだ十代。バトル!」
「罠発動、【リビングデッドの呼び声】!蘇れ【バブルマン】!」
【E・HERO バブルマン】
攻撃表示
ATK800/DEF1200
「そのモンスターでは、【サイバー・エンド】を止めることはできない!【サイバー・エンド】で【フェザーマン】を攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト!」
「まだ終わらないぜ!罠発動【エレメンタルバースト】!」
「……そうか……【バブルマン】を蘇生させたのはそのため……!」
「このカードは、俺のフィールドの地・水・炎・風、この4つの属性のモンスター1体ずつをリリースして、相手フィールドのモンスターを全て破壊する!」
ピンポイントすぎて使い辛い。そう思ったのも束の間、【ガガガガンマン】が土砂に、【バブルマン】が水流に、【バーストレディ】が赤い炎に、【フェザーマン】が白い風に姿を変え、【サイバー・エンド】と【サイバー・ドラゴン・ツヴァイ】を粉砕した。
「魔法カード【一時休戦】を発動!」
カイザーのやつ、いつの間に俺のカード持っていった!?【インフィニティ】か!?【インフィニティ】のときに持っていったのか!?
「互いに1枚ドローし、次の相手ターン終了時まで互いに与えられるあらゆるダメージは無効となる」
丸藤亮
手札4枚→5枚
遊城十代
手札0枚→1枚
「ターンエンドだ」
丸藤亮
LP600
モンスター
無
魔・罠
無
手札5枚
「俺のターン、ドロー!魔法カード【ミラクル・フュージョン】!墓地の【フレイムウィングマン】と【スパークマン】を除外!」
【スパークマン】……【天使の施し】で落としてたのか。
「現れろ!【E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン】!」
【E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン】
攻撃表示
ATK2500/DEF2100
「【シャイニング・フレア・ウィングマン】の攻撃力は、墓地の【E・HERO】の数×300ポイントアップする!俺の墓地には、【シャドー・ミスト】
【フェザーマン】
【バーストレディ】
【クレイマン】
【バブルマン】
【ネクロダークマン】の6枚。よって攻撃力が1800ポイントアップ!」
【E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン】
ATK2500→ATK4300
【ネクロダークマン】も【天使の施し】で落としてたのか。攻撃力が【サイバー・エンド】の元々の攻撃力を超えたか。
「お兄ちゃん、十代さん凄いね!」
「……そうだな。あんなデッキを操れる。組もうとする十代は凄いよ」
「それって褒めてないよね!?」
素直に『凄い』と思ってることは思ってるさ。どう『凄い』かは別として。
「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
遊城十代
LP3700
モンスター
【E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン】:攻
ATK4300
魔・罠
伏せ2枚
手札0枚
「カイザー!俺は手札が無い、カイザーはライフが残り少ない。本気で、【パワー・ボンド】で来い!」
何故か十代が【パワー・ボンド】を要求してきた。リバースカードがあるにしても、除去されたらどうするつもりだ?
「……俺のターン……ドロー!!」
カイザーの無駄に力の入ったドロー。そんなに思い切りドローしたら、カードが傷つくと思うんだが……いや、拳銃の撃鉄を止められるし、俺もカード手裏剣でタイタンが持ってた小道具を壊したような……なら大丈夫か。
カイザーは引いたカードを確認すると、そのまま頭上に掲げた。
「魔法カード【パワー・ボンド】!さらに速攻魔法【サイバネティック・フュージョン・サポート】を発動!ライフ半分をコストに、手札・フィールド・墓地のモンスターを除外して、融合召喚を可能にする!」
丸藤亮
LP600→300
カイザーの墓地から【サイバー・ドラゴン】のカードが3枚出てきた。今引き【パワボン】……引けなかったらテンションだだ下がりだったな。
「現れろ!【サイバー・エンド・ドラゴン】!」
【サイバー・エンド・ドラゴン】
攻撃表示
ATK4000/DEF2800
「【パワー・ボンド】の効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は倍になる!」
【サイバー・エンド・ドラゴン】
ATK4000→ATK8000
「【サイバー・エンド】はさらなる高みを目指す!速攻魔法【リミッター解除】!機械族モンスターの攻撃力を倍にする!」
【サイバー・エンド・ドラゴン】
ATK8000→ATK16000
攻撃力5桁に多くの生徒が騒然となる中、
「あれに【デモンズ・チェーン】したらダメかしら?」
明日香の放った一言がやけに印象的だった。
「バトルだ!行け、【サイバー・エンド】!【シャイニング・フレア・ウィングマン】を攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト!!」
【サイバー・エンド】の3つの首から高出力のエネルギーが放出されようとする中、十代が動いた。
「リバースカードオープン!速攻魔法【決闘融合ーバトル・フュージョン】!【シャイニング・フレア・ウィングマン】の攻撃力は【サイバー・エンド・ドラゴン】の攻撃力分、16000ポイントアップする!」
【E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン】
ATK4300→ATK20300
「こ、攻撃力20000!?」
三沢がさらなる強化に驚く。周囲もカイザーの敗北を予感する中、状況がまた一つ動いた。
「狙いは同じか、だがタイミングを誤ったな!速攻魔法【決闘融合ーバトル・フュージョン】!」
【サイバー・エンド・ドラゴン】
ATK16000→ATK36300
カイザーも同じカードを握ってやがった。これで勝敗はカイザーに……そう思っていると、十代とカイザーが小さく何かを言い合ったあと、十代がさらに動いた。
「罠発動!【決戦融合ーファイナル・フュージョン】!」
「!……負けず嫌いが!」
効果を把握しているのか、一瞬驚いただけですぐに笑みを浮かべた。
「これにより、お互いのプレイヤーはお互いのモンスターの攻撃力の、合計分のダメージを受ける!」
【サイバー・エンド】と【シャイニング・フレア・ウィングマン】が激突し、閃光の後に轟音とともに大爆発。
数十秒立ちこめた煙はゆっくりと空気の中に溶けていき、跪いているカイザーと大の字で倒れている十代の姿が。
丸藤亮
LP300→-56300
遊城十代
LP3700→-52900
引き分け……この結果に暫くの間沈黙していたが、チラホラと立ち上がる人が現れ、大歓声と拍手がフィールドを包んだ。カイザーがゆっくりと立ち上がり、十代のもとへ歩いていく中、
「お兄ちゃん?」
「行ってくる」
俺は1秒も待ってられず、席を立った。
☆
「それでは、卒業模範デュエル第2戦。卒業生代表、丸藤亮。在校生代表、宮田龍斗のデュエルを始める!」
数分後、俺はデュエルフィールドでカイザーと対峙した。
「待たせたな龍斗」
「本当に待ったぞ。昨日、カイザーに指名されたときは非常に面倒だった。【幻魔】の件が終わり、仕事に集中できると思っていたからな。だが、もうそんなことどうだっていい。アンタはどうも俺を熱くさせる。楽しもう、このデュエル!」
抑えられない笑みを浮かべ、デュエルディスクを展開する。
「ああ。俺はこのデュエルで、お前に勝つ!」
カイザーもデュエルディスクを展開し、俺と同時に叫んだ。
「「デュエル!」」
次回は龍斗がこのテンションからやる気を一気に失くします。