衝動のままに決闘する   作:アルス@大罪

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46話が完成してませんが投稿します。


ノリ デュエル無し

交流試合1戦目を勝利したのでデュエルフィールドから降りるとクロノスが小声で話しかけてきた。

 

「シニョール宮田良かったノーネ?シンクロモンスターは、まだ一般には出回ってないノーニ」

「海馬社長からの命令で、【ジャンク・ウォリアー】を出すように言われたので問題ありませんよ」

「そ、そうナノーネ?」

「ええ、【ジェット・ウォリアー】等のシンクロモンスターも使っていいって言われたので。では失礼します。あとは十代が勝つのを待つだけですから」

 

勝ってくれないと面倒なことになりそうな予感がする。1勝1敗になって3戦目になるんだろう。そうなると1戦目に勝った俺が出る確率が高くなる。そうなったら今度はエクシーズか?……【ホープ】?だったら【ライトニング】使いたい。もうノース校とか視聴者とか置いてきぼりにしてクビになってもいいから早く終わらせたい。

 

「あ、来たわね鬼畜外道テスター」

 

観客席に来て早々枕田から罵声が飛んできた。どこに鬼畜やら外道やらの要素があった?前世では普通だ。寧ろとんでもなく優しいデッキだったと思うんだが。

 

「うるせーぞ枕田。【スキドレクリフォート】でボコボコにしてやろうか?あ?」

 

テスターの中で唯一ペンデュラムを使えるので言ってみたが、いいかもしれない。【魔術師】でもいいな。トラウマになるかどうかはさておき。

 

「や、やってみなさいよ!」

「言ったな?ならデッキ持ってくるからちょっと待ってろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デッキを取りに寮に戻り、普段置いてある場所から出したケースを部屋の入口で確認すると……

 

「ふぅん……ココがボウヤが住んでいる寮なのね」

「っ!?」

 

急に背後から艶っぽい声が聞こえた。

振り返ると先程相手した藤原がいた。

何故コイツがここにいる……?

 

「…………」

 

警戒しつつケースにゆっくりと近づく。

 

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。ただボウヤに興味があるだけ」

「……他人の部屋に許可無く入って警戒するなという方が無理だろう」

 

藤原は『つれない』とか言って、妖艶に笑う。笑える要素なんてどこにもないだろ。しかし、ずっとこのままというわけにもいかない。十代が負けたらおそらく俺が2度目の出番となり決着をつけることになるのだから。

とりあえず目的でも探ってみるか。

 

「……何が目的だ?」

 

遠回しに聞くヒマがあったらストレートに聞く。

 

「ずいぶんストレートに聞いてくるのね?言ったでしょう?『ボウヤに興味がある』って。シンクロ召喚なんて私が知らない召喚法を使うボウヤに」

 

やはり目的は……シンクロか。デュエリストは、自分が未知の召喚法によって敗北したとなるとその召喚法の持つ力に興味が沸くのは当然と言っていい。

 

「俺には『お前に興味は無く、シンクロ召喚にしか興味は無い』としか聞こえないな」

「確かにデュエリストとして、シンクロ召喚には興味があるわ。でも私が興味あるのはボウヤなの。シンクロ召喚なんてオマケにすぎないわ」

 

…………サッと先程使ったデッキケースから【ニトロ・ウォリアー】を見せる。

 

「あら?さっきとは違うモンスターね。で、そんな物見せびらかしてなんのつもりかしら?」

 

喰いつくと思ったんだが……一瞬視線をカードに移しただけですぐにこちらに視線を戻した。

…………ザァッとエクストラデッキのシンクロモンスターを見せると、

 

「…………なんのつもりかしら……」

 

なんか怒気が込められた。どうやら本気でカードに興味は無いらしい。

 

「いや、本当にカードに興味が無いのか確認しただけだ」

「そう。ならもう充分よね」

 

藤原が一歩近づいてきたので一歩下がる。

 

「…………」

「…………」

 

また近づいてきたのでまた下がる。

 

「どうして逃げるのかしら?」

「何か嫌な予感がしたからソレに従ったにすぎない」

 

こう……人生が破滅してしまうような……そんなレベルでの嫌な予感がしている。意を決したように大きく前進してきた藤原。こちらも大きく後退するが、先程ケースに近づいたのが悪かったのかケースに躓いてしまった。

 

「あらあら。転んじゃったわね」

 

藤原が隙アリとこちらに急接近してきた。少し動いたら触れてしまいそうな距離だ。どうやってこの状況を切り抜ける?まず正面は無理だろう。藤原がいる。背後はケースが障害になるだろうからこちらも無理。右に転がる?ベッドがあるから無理だ。となると左だ。

少し勢いをつけて転がろうとすると、ガッと何かにぶつかる感覚とともに止まった。バカな、左には何も無かったはず……

 

「なにをコロコロ転がってるのかしら?」

 

俺の太ももが藤原の脚に止められていた。藤原はゆっくりとこちらにのしかかってくる。

そして俺の髪に手を伸ばした。

 

「女の子みたいな髪ね。サラサラでとても綺麗」

 

ただ髪に触れ弄られてる。危害を加える気も無いらしい。なら……

 

「……髪とかどうでもいいから退いてくれないか?」

 

素直に頼んでみよう。

 

「本当につれないわね。2人の男女が密室でここまで密接してるというのに」

「本来なら勘違いしそうな状況なんだろうな。だが俺にはやらなきゃならないことがある」

 

そう、枕田と浜口をデュエルでボコボコにしてやらなきゃならない。

 

「女?」

「女?確かに女子が関わってるな」

 

何故か藤原はスッと目を細めた。何か勘違いされたか?今のうちに誤解を解くか。

 

「何か勘違いしているみたいだし、先に言うぞ。やらなきゃならないことはさっきのデュエルについて『やることが酷い』だの帰ったら帰ったで『鬼畜』だのと言ってきたからそいつをデュエルでボコボコにしないといけないってことだ」

 

なるべく丁寧に説明してやったら表情を戻し、離れてくれた。ただ……

 

「で、なんでノース校の代表がいるのよ?」

 

なんか藤原が観客席までついて来やがった。

なので観客席に戻ると枕田にいきなり突っ込まれた。ゆまはなんか頬を軽く膨らませてこちらを見てるし、丸藤は『羨ましい』とか勘違いしてる様子。明日香には『いいご身分ね』と笑顔で言われた。俺より十代のデュエルを見てやれよ。け、決して明日香の笑顔にビビったわけじゃないぞ!

明日香を視界から取り除くために十代のデュエルを見てみよう。

 

万丈目準

LP2100

モンスター

魔・罠

【リビングデッドの呼び声】

手札4枚

 

VS

 

遊城十代

LP1600

モンスター

【E・HERO ワイルドマン】:攻

ATK1500

魔・罠

手札2枚

 

万丈目が有利か。墓地見たいな。それしだいで十代にも逆転の可能性があるかもしれない。

 

「せめて【属性HERO】でも渡せば良かったかなぁ……」

「【属性HERO】?」

「ゆまも使ってる融合した【HERO】のことだ。【アブソルートZERO】とか【ノヴァマスター】とか【HERO】と特定の属性のモンスターを素材にした【HERO】のことだ」

 

浜口の問いに答える。するとゆまと三沢、浜口達テスター3人は納得したように頷いた。しかし藤原だけ理解できていないらしい。というかなんでついて来たんだ。

 

「他には適当にエク……これって言っていいの?」

「シンクロは構わないと思うが、他は知らん。『使え』と言われたのは【ジャンク・ウォリアー】だけだからな。とりあえず伏せておこう」

 

枕田がエクシーズのことを言おうとしたが、藤原のことを考えて言っていいのか判断しかねたのだろう、俺に聞いてきた。簡単にエクシーズのことバラして海馬さんに怒られるなんて悲劇は避けたい。

 

「エク……?ボウヤ、なんのこと?」

「今お前が知る必要は無い」

 

一蹴すると藤原は何を思ったのか俺の左腕に自分の腕を絡めてきた。う、腕に柔らかい2つの何かが……!

腕にくる感覚を必死に意識しないようにしていると、ゆまがいきなり立ち上がった。

 

「ちょ、ちょっと藤原さん!お兄ちゃんにくっつかないでください!」

 

そのセリフとともに俺の右腕にゆまがくっついてきた。こ、こっちもか……!1人激しく動揺していると明日香がこちらを見ている。

 

「明日香、見てないで助けてくれ」

「いいじゃない。両手に花で」

 

1人は従妹だしもう1人は名と使用デッキくらいしか知らん奴だ。カイザーが偶々近くにいたので目線で助けを求めるが諦めろと言わんばかりに目を閉じやがった。これは……詰みか?

 

「藤原、離れろ」

「ボウヤが秘密にしていることを教えてくれたら離すわ」

 

ゆまは……置いておこう。たぶん藤原が離れたら離れると思うし。となると藤原を納得なりさせないといけないということなんだが、エクシーズを教えるってことだろ?『デュエルアカデミア生徒』だから問題無いとは思う。しかし『デュエルアカデミア本校の生徒』では無い……なんか微妙なラインな気がする……。それにさっき『伏せておこう』と言ったばかりだ。前言撤回が早すぎる。

 

「……お前に包み隠さず全てを話す必要は無いし、いつかわかることだ」

「いつかわかるなら今でもいいじゃない?」

「これは俺個人の話じゃなく、企業の話にもなる。俺が簡単に話していい事じゃないんだ」

 

藤原は枕田を数秒見た後、渋々といった感じで引き下がった。そして空いている席に座る。そして十代が居たと思われる席に藤原が座るが、ノース校の制服(……だよな?万丈目とコイツ以外同じような服だし)を着ているので浮いている。デュエルに視線を移す。

 

「【フレイム・ウィングマン】で【アームド・ドラゴン LV7】を攻撃!フレイム・シュート!」

 

【フレイム・ウィングマン】?【アームド・ドラゴン】って攻撃力2800のはず……あ、いや守備表示だったり……

 

【アームド・ドラゴン LV7】

攻撃表示

ATK1600/DEF1000

 

なんか攻撃力下がってる。そして【フレイム・ウィングマン】が腕の龍頭から火を吹き【アームド・ドラゴン】を倒した。

 

「バカな……俺が負けるなど……!」

 

万丈目準

LP2100→1600

 

「【フレイム・ウィングマン】の効果発動!バトルで破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

 

万丈目は声を出さずに敗北した。

両手を床についている万丈目に兄2人が歩み寄る。流石にエリート意識があっても慰めるくらいはするか。

 

「準、貴様何をやっているんだ!自分が何をしたのかわかっているのか!」

「万丈目一族に泥を塗りおって……!」

 

『慰め』の『な』の字も無かった。

 

「すまない、兄さん達……」

「貴様、俺達の与えたカードはどうした!?」

「あのカードがあればもっと強いデッキが作れただろう!」

 

…………ここで『アンタらの集めたカードなんてシンクロモンスター達で倒してやるZE!』とか言ってもいいだろうか……どうせただ金のかかるだけのバニラだろうし。

 

「俺は、自分のデッキで勝ちたかったんだ……」

「このバカ弟がぁ!」

 

万丈目が自身の思いを言った直後、兄達のうちの1人に胸倉を掴まれた。

もう片方の兄も『だからお前は落ちこぼれなんだ』と万丈目を罵る。……そろそろ目障りに思えてきたな。

 

「やめろアンタ達!」

 

そんなことを思っていると、十代が静止させた。そして十代の後ろにはカイザーに明日香、丸藤、前田、三沢がいた。アイツらいつの間に……普段は無理矢理に巻き込むクセにこういうときはスルーかよ……

席を立つとゆまに声をかけられたが、『すぐ戻る』とだけ伝えて十代達の所へ。

 

「万丈目は一生懸命戦ったんだ!」

「他人が我ら兄弟のことに口出しするのか」

「兄弟ならなおさらそんな態度はないだろう!」

「落ち着け十代」

 

到着するころには既に口論になっていたので十代を下げる。お前の頭でどうにかなるとは思えないぞ。

 

「龍斗!」

「別に兄弟で反省会するのは構わないんだが、場所を考えてくれないか?目障りでしかないぞ」

「なんだと!?」

「誰が喋っていいと言った?アンタらエリート気取りの兄弟は勝利、結果を重視してるんだろ?だったら敗者であるアンタらには喋ることすら許されない。なにせこちらは勝者だからだ」

 

我ながら無茶苦茶な理屈だ。多分後ろの連中も、周りの生徒もそう思っているだろう。

 

「俺は十代と違って、アンタらに言いたいことを言いに来ただけだ。今回のTV中継はどうせアンタら兄弟のくだらない夢だか妄言だかのためだろ?」

「くだらないだと!?」

「我ら兄弟の野望をそんな言葉で!」

「俺は喋るなと言ったはずだ。別に夢だの野望だの持つのを悪いとは言わないさ。ただ、ソレを自分以外の誰かに押しつけるなよ。万丈目はアンタらの人形じゃない」

 

なんでこの兄弟はそんなことも理解できないんだ?もういい歳だろ……

 

「人形遊びがしたいなら自室でしてろ。あとそろそろ帰れ、邪魔だから。以上」

 

うん。とりあえず言いたいこと言った。戻ろうとするとノース校の生徒を中心に『帰れコール』が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場の空気に耐えられなくなった万丈目の兄達はヘリで帰った。

交流試合も終わったのでノース校の生徒達を見送る。

十代や丸藤が万丈目に別れの挨拶をするが、万丈目本人は『ノース校には帰らない』とか言った。曰く、本校でやり残したことがあるらしい。鮫島校長は『元々万丈目君はここの生徒だから』と万丈目が本校に戻ることを快諾。

 

「なら、私もここに残るわ」

 

万丈目が本校に戻ることが決定した直後、艶っぽい声でそんなセリフが聞こえた。

 

「ふ、藤原君!?」

「私はノース校でデュエルの腕を磨こうと思って入学したけど、ここの方が自分を高められると思うの」

 

『興味のある子もいるし』とも言っていた。一瞬寒気がしたのは気のせいだろう。

藤原は鮫島校長と市ノ瀬校長にアレコレ言って了承させた。その後市ノ瀬校長が万丈目に何か言おうとしたが、クロノスが遮った。なんでも、ミス・デュエルアカデミアから勝者側の校長にご褒美があるらしい。ミス・デュエルアカデミア……そんな人がいるのか……去年もあったと考えると2年と3年は誰か知ってるよな。その証拠にクロノスのいるステージに集まっているのは1年ばかり。俺はその様子を遠巻きに見ていると、厚化粧をしてギリギリ着れるくらいのサイズの服を着たトメさんが現れた。

 

「…………吐き気がしてきた」

「お、お兄ちゃん大丈夫!?」

 

こういうのって学生がなるものだと思っていたから、不意打ちされて微かに吐き気がしてきた。

 

「お、お兄ちゃん!トメさんが校長先生のほっぺにき、キスしてる!」

「……ゆま、実況しなくていい」

 

マジで吐きそうになる……

直後市ノ瀬校長らノース校の生徒は男泣きをしながら帰っていった。

万丈目が本校に戻ってきたのはいいのだが、3ヶ月も居なかったのでオベリスク・ブルーとして進級するのは無理らしい。進級するには出席日数に関係ないオシリス・レッドに行くしかないらしい。万丈目は『俺がコイツらと同じ寮!?』とギャーギャー言っていたが、それは自業自得というか仕方ないだろ。

 

「それじゃ、万丈目の入寮を祝して!」

『『『一!十!百!千!』』』

 

何故か十代の声とともにカウントされ、

 

『『『万丈目サンダー!!』』』

 

万丈目の名が叫ばれた。

 

「ダー♪」

 

ゆま、別にノらなくていいんだぞ。

俺の前には、『やめろ』だのなんだのと抗議するも、まんざらでもない表情の万丈目がいた。




次回はトロトロの修羅場(笑)です。

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