「いだだだだだだ!!」
カイザーにデュエルを挑まれたが、デッキを忘れたという理由で断ると、明日香に両肩を掴まれ尋常じゃない痛みに襲われた。
「デッキを忘れた!?貴方それでもデュエリストなの!?」
「し、仕方ないんだ!急いで来たから忘れ物するのは仕方がいだだだだ!!ご、ごめんなさい!謝るから肩から手をぉぉぉおおお!!」
ようやく解放され、肩を確認。良かった……潰れてない。
「今すぐ取って来なさい!」
「い、イエッサー!!」
おそらく今までの記録を超える速度で走っていたと思う。全速力で走り部屋から急いでデッキを選んで戻る。
「ぜぇ……ぜぇ……いま……ぜぇ……もどった……ぜぇ……」
肩で息をしながら戻ってくるとカイザーが若干申し訳なさそうな顔で、何故かレイが不機嫌そうに俺を睨んでいた。
「すまない龍斗。リベンジ前にレイが挑みたいらしい」
「ぜぇ……ぜぇ……?」
まるで意味がわからない。何故俺に?
カイザー達曰く、何故俺とカイザーがデュエルするのかレイが聞いてきて、カイザーが俺に負けたことをあっさりと言ってしまい、何を思ったのか敵討ちと称して俺に挑もうとしているらしい。
「ぜぇ……はぁ……俺……割とガチな……デッキ……はぁ……持ってきたんだが……」
「相手してやってくれ。俺は明日改めて挑もう」
コレ……断れない空気だ。とりあえず息を整える時間をもらって落ち着いたところで構えるが、
「レイ、これからするデュエル。しばらくの間は誰にも言わないでくれ」
「?……わかった」
「「デュエル!」」
宮田龍斗
LP4000
VS
早乙女レイ
LP4000
「先攻はもらう。俺のターン、ドロー!」
…………引かないか。だがこのカードがあれば……
「まずはこのカードだ。俺はスケール9の【クリフォート・ツール】をセッティング!」
左側のペンデュラムゾーンを展開してカードをセット。俺の後ろに青く光る柱が現れ、その中に【クリフォート・ツール】の姿があった。
「え、な、何!?なんなのそのカード!?」
「これはしばらく後になったら現れる新たなカードのうちの1つ。ペンデュラムモンスターだ」
「ペンデュラム……モンスター……?」
ゆっくりと俺の言葉を反芻し覚えようとするレイ。
「続けるぞ。【クリフォート・ツール】のペンデュラム効果。1ターンに1度、ライフ800をコストにデッキから【クリフォート・ツール】以外の【クリフォート】カードを手札に加える。【クリフォート・アセンブラ】を手札に加える」
宮田龍斗
LP4000→3200
手札5枚→6枚
「800ポイントも使ってカード1枚だけ……?」
「800ポイントで好きなカードをサーチできるなら安いと思うが……あーでも4000スタートだと……まぁいいや、続けよう。今手札に加えたスケール1の【クリフォート・アセンブラ】とセッティング済みの【クリフォート・ツール】でペンデュラムスケールをセッティング!」
右側のペンデュラムゾーンにカードをセット。後ろにもう1つの柱が現れ、【クリフォート・アセンブラ】が姿を見せる。そして【ツール】の下に9、【アセンブラ】の下に1の数字が浮かぶ。
「これでレベル2から8のモンスターが同時に召喚可能!」
「えぇっ!?」
「キープログラム入力完了。IFシステム実行。ゲート解放、出力開始。ペンデュラム召喚!来い!俺のモンスター達!レベル8【クリフォート・シェル】!」
【クリフォート・シェル】
攻撃表示
ATK2800/DEF1000
「レベル6【クリフォート・ゲノム】!」
【クリフォート・ゲノム】
攻撃表示
ATK2400/DEF1000
「一気に高レベルモンスターが2体!?」
「これがペンデュラム召喚だ。条件を満たしていれば高レベルモンスターを複数体召喚できる……だが、この【クリフォート】の多くに共通効果がある。それはリリース……つまり生贄無しで召喚できること。そして特殊召喚、生贄無しの召喚をしたら自身のレベルは4となり、元々の攻撃力が1800となる」
フィールドの【クリフォート】から音が発せられ、攻撃力を下げた。
【クリフォート・シェル】
レベル8→4
ATK2800→ATK1800
【クリフォート・ゲノム】
レベル6→4
ATK2400→ATK1800
「レベル4が2体……」
「まさか、ペンデュラム召喚からエクシーズ召喚なんてできるッスか!?」
「カードを2枚セットしてターンエンド」
宮田龍斗
LP3200
モンスター
【クリフォート・シェル】:攻
ATK1800
【クリフォート・ゲノム】:攻
ATK1800
ペンデュラム
【クリフォート・アセンブラ】:スケール1
【クリフォート・ツール】:スケール9
魔・罠
伏せ2枚
手札1枚
「あれ?エクシーズはしないんスか?」
「【アセンブラ】と【ツール】の効果で俺は【クリフォート】モンスターしか特殊召喚できない。そしてエクストラデッキに【クリフォート】は無い」
一応エクストラは用意してるが、まず使わない。あのカード引けないし。
「ボクのターン、ドロー!……【恋する乙女】を召喚!」
【恋する乙女】
攻撃表示
ATK400/DEF300
「リバースカード【スキルドレイン】。ライフ1000をコストにフィールドのモンスター効果を無効にする」
「えぇ!?じゃあボクの【恋する乙女】が……」
「ただの攻撃力400のモンスターになる」
宮田龍斗
LP3200→2200
「そして効果が無効になったことで【クリフォート】モンスターの攻撃力が元に戻る」
【クリフォート・シェル】
レベル4→8
ATK1800→ATK2800
【クリフォート・ゲノム】
レベル4→6
ATK1800→ATK2400
「……カードを2枚伏せてターンエンド!」
早乙女レイ
LP4000
モンスター
【恋する乙女】:攻
ATK400
魔・罠
伏せ2枚
手札3枚
主力モンスターを活かせない状況でも諦めないか……ならここで更に展開するか。
「俺のターン、ドロー!【クリフォート・ツール】のペンデュラム効果で、ライフ800をコストにデッキから【クリフォート】モンスターを手札に加える!【クリフォート・アーカイブ】を手札に」
宮田龍斗
LP2200→1400
手札2枚→3枚
「キープログラム再入力完了。IFシステム外部からのアクセスにより停止。通常形態で運用。ゲート解放、出力開始。ペンデュラム召喚!現れろ【クリフォート・アーカイブ】!」
【クリフォート・アーカイブ】
攻撃表示
ATK2400/DEF1000
高攻撃力とされる2000オーバー3体を前にしてもレイは表情を変えない。
「バトル!【クリフォート・アーカイブ】で【恋する乙女】を攻撃!」
「罠発動!【ドレイン・シールド】!相手モンスターの攻撃を無効にしてそのモンスターの攻撃力分ライフポイントを回復する!」
【アーカイブ】からレーザーが放たれるが光のドームに阻まれレイのライフが回復した。
早乙女レイ
LP4000→6400
「次だ。【ゲノム】で攻撃!」
【ゲノム】の筒状の部分から出たレーザーが【恋する乙女】を呑み込んだ。
「きゃあ!!」
早乙女レイ
LP6400→4400
「ラスト【シェル】でダイレクトアタック!」
【シェル】が回転し地面に突き刺さり砂嵐がレイを襲う。
「ぅぅ……砂だらけ……」
早乙女レイ
LP4400→1600
「ターンエンド」
宮田龍斗
LP1400
モンスター
【クリフォート・シェル】:攻
ATK2800
【クリフォート・ゲノム】:攻
ATK2400
【クリフォート・アーカイブ】:攻
ATK2400
ペンデュラム
【クリフォート・アセンブラ】:スケール1
【クリフォート・ツール】:スケール9
魔・罠
【スキルドレイン】
伏せ1枚
手札2枚
「ボクのターン、ドロー!【強欲な壺】発動!」
トップそれってどういう引きだよ。
早乙女レイ
手札3枚→5枚
「よし!【サイクロン】発動!【スキルドレイン】を破壊!」
竜巻によって吹き飛ばされる【スキルドレイン】。しかし状況は大して変わらないだろう。展開力の無いデッキではこのデッキに追いつくのは無理なのだから。このデッキしつこいし。
「【死者蘇生】発動!墓地から【恋する乙女】を特殊召喚!」
【恋する乙女】
攻撃表示
ATK400/DEF300
またそのカードか。
「モンスターを伏せて、カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
早乙女レイ
LP1600
モンスター
【恋する乙女】:攻
ATK400
裏守備1枚
魔・罠
伏せ2枚
手札1枚
「俺のターン、ドロー!…………このターンで終わりだな」
「ま、まだ終わってない!」
「いや、終わりだよ。キープログラム再入力完了。IFシステム実行。ゲート解放、出力開始。ペンデュラム召喚!来い!【クリフォート・ゲノム】!」
【クリフォート・ゲノム】
攻撃表示
ATK2400/DEF1000
「自身の効果で【ゲノム】の攻撃力とレベルが変更される」
【クリフォート・ゲノム】
レベル6→4
ATK2400→ATK1800
「俺は【ゲノム】2体と【アーカイブ】をリリース!」
「さ、3体のモンスターを!?」
「バカな!3体の生贄は神のカードを召喚する条件!神のカードが無い今、その条件で召喚できるモンスターはいないはず!」
いやカイザー、【ギルフォード・ザ・ライトニング】とか忘れてないか?
「【アポクリフォート・キラー】をアドバンス召喚!」
【アポクリフォート・キラー】
攻撃表示
ATK3000/DEF2600
俺の後ろの【ツール】と【アセンブラ】の間に【アポクリフォート・キラー】がズシンという音とともに現れる。
「フィールドから墓地に送られるペンデュラムモンスターはエクストラデッキに加えられる。そしてリリースされた【ゲノム】2体と【アーカイブ】の効果をチェーンして発動!何かチェーンはあるか?」
「え、えっと…………無いよ!」
「そうか。ならチェーン3、【アーカイブ】の効果で裏守備モンスターを手札に戻す」
「て、手札に!?」
裏守備モンスターの下から【アーカイブ】が姿を現し連れ去った……それ除外じゃ……
「チェーン2【ゲノム】の効果でフィールドの魔法・罠を破壊する。右のカードを破壊する」
選択したカードの上に【ゲノム】が現れ……【ディフェンス・メイデン】を破壊した。思いっきりハズした……まぁ関係無いか。
「チェーン1【ゲノム】で残った方の魔法・罠を破壊する」
破壊されたのは……【ホーリージャベリン】?なんだそれ?
「…………まぁいいや。【アポクリフォート・キラー】の効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力と守備力が500ポイントダウンする」
【クリフォート・シェル】
ATK2800/DEF1000→ATK2300/DEF500
【恋する乙女】
ATK400/DEF300→ATK0/DEF0
「ぼ、ボクの【恋する乙女】が……」
「もう1つの効果も使っておこう。1ターンに1度、相手は自身の手札・フィールドのモンスターを墓地へ送る」
レイは泣きそうな表情で手札のモンスターを墓地に送った。
「……【迷犬マロン】の効果で、このカードが墓地に送られたとき、このカードをデッキに加える」
「バトル。【クリフォート・シェル】で攻撃」
先程のダイレクトアタックとは違う場所に突き刺さり砂嵐で【恋する乙女】を砂まみれにした…………ちょっとやりすぎたか?
「ぅ……ぅぅ……」
早乙女レイ
LP1600→-700
「……スマン。やりすぎた」
【妖仙獣】とかのほうが良かったか?いや、普通に泣かれるだろ。相性が悪すぎる。
「また負けちゃった……」
「龍斗相手ってのが拙かったなぁ」
いや十代。相手がカイザーだと思ったから【クリフォート】持ってきたんだが……レイが相手なら……【マドルチェ】あたりか?
「なんなの?ペンデュラム召喚って……」
まぁやっぱり喰いつくよな。
「デュエルの前にも言ったが、故郷に帰った後、誰にも言うなよ。まだ秘密なんだ」
「わかったって」
少ししつこいかもしれないが、仕事の都合上仕方がない。
「ペンデュラム召喚。いつかI2、KCで発表される3つの召喚法の1つだ」
「いつかって……まだ発表されてないってこと?」
肯定し頷くとレイは更に質問をしてきた。
「じゃあなんでそのペンデュラム召喚を使えるの?」
「俺がI2社及びKCのテスターだからだ。ここデュエルアカデミアで3つの召喚法を浸透させることでより早く、多くの人に使いこなせるようにするのが目的だ」
とりあえずここまで言えばいいか?
と思ったら更に質問が
「じゃあ、ボクにもペンデュラム召喚できる?」
「一般に販売されたらな。ペンデュラムだけじゃなく、他の召喚法も扱えるだろう」
レイは『そっか』と言って何かを考えている。まさか【クリフォート】と【恋する乙女】を組み合わせようとか考えてるのか?やめとけ、事故るだけだぞ。
「質問はもういいか?なら帰らせてもらう。カイザー、また明日」
「ああ」
さて、明日はどのデッキでカイザーとデュエルしよう?
次回はVSカイザー第2戦です。