ゆまが編入のためデュエルアカデミアにやってくる日、浜口とともに港にやってきた。
「その従妹というのはどんな娘なんです?」
「どんなって言われてもなぁ……十代と同じ【HERO】使いってことくらいか?」
「そ、それだけですの?」
1週間しか一緒にいなかったしな。それ以前は知らん。少しすると船がやってきて、購買へ行くであろう大きな荷物に続いてゆまが来た。
「お兄ちゃん!」
「よく来たな。ゆま」
ゆまは以前のように抱きついてくるなんてことはなく、俺の隣にいる浜口を見てキョトンとした表情をしていた。
「お兄ちゃん、その人は?もしかして彼女さん!?」
何故そうなる?
「違うよ。同級生の浜口ももえ。お前の案内役だ」
「よろしくお願いします。ゆまさん」
浜口は自然に、ゆまは少し緊張気味に握手をする。
「よ、よろしくお願いします!あ、でも案内ならお兄ちゃんに……」
「男の俺だと案内できない場所とかあるだろ……だから女子のコイツに案内役をさせるんだ。とりあえずまず職員室に行くぞ」
浜口とゆまを引き連れて校舎へ向かう。ゆまは校舎内をキョロキョロと見ていたが、先に職員室に挨拶に行かせた。俺と一緒に来たこと、同じ『宮田』ということに関係者か聞かれたので普通に従妹と答えた。
「お兄ちゃん、有名人みたいだね!」
「有名人といえばそうかも知れませんね」
「教師なら生徒を覚えていても不思議じゃないだろ」
職員室を出た直後、ゆまが興奮気味に話しかけてきたので若干冷めたように対応するがゆまはスルーして尚興奮気味だ。何がゆまをここまで興奮させるんだ?
「校舎の案内は明日でいいだろう。浜口、ゆまを寮に連れて行ってくれ」
「わかりました」
「え?お兄ちゃんは?」
「…………男子と女子は寮が違うんだ。浜口に色々面倒見てもらえ」
「……わ、わかった……」
何故か納得いかないような態度で了承された。
☆
翌日。
今日は日曜だが、月一の集会があるため校舎にいる。少し早め十代達に校舎前に来るように言って、先に合流した明日香達テスターとゆまの5人で十代達を待っていると、
「どうしたんだよ龍斗。いきなり呼び出して」
その声とともに十代と丸藤、前田、あと……知らない人がやってきた。三沢も呼んだはずなんだが……アイツはまだか?まぁ先に紹介しておくか。
「一昨日言ってた従妹を紹介しようと思ってな。ゆま、こっちに来い」
ゆまには『友人に紹介する』と伝えてあったからか、特に初対面でも緊張するということはなく普通に自己紹介していた。
「で、こっちのメンバーなんだが、体が大きいやつが前田隼人」
「よろしくなんだなあ」
「その隣にいるのが丸藤翔」
「よろしくッス」
「で、コイツが遊城十代。お前と同じ【HERO】使いだ」
「よろしくな!お前も【HERO】使いか〜!なぁ、デュエルしようぜ!」
いきなりゆまとデュエルしようとするなよ十代。お前にはやることがあるだろ。
「十代、デュエルするのは自由だが、その前に……」
どこかで見たような気がする、丸藤と同じくらいに小柄な奴をチラ見しながら言う。十代は『忘れてた』と言いながら紹介してくれた。
「昨日編入してきたレイって言うんだ!編入してした奴はオシリス・レッドかららしいんだ」
編入……あーいたな。このくらいの体格で【恋する乙女】を使ってた奴。そうか合格したのか。
「宮田龍斗だ。よろしく」
「よ、よろしく」
軽く紹介したあと、明日香達も紹介することになり、直後に三沢も合流。ゆまに『俺と同室の奴で成績はトップクラス』と三沢を紹介。
勉強関連は三沢に聞くことを勧めてみたが、ゆまは俺に聞くと言っていた。三沢の方が筆記の成績良いんだけどな。
そしてこの後すぐ移動して集会へ。
集会では年に1度行われるデュエルアカデミアノース校との交流試合について校長から話があった。去年はカイザーが本校の意地をみせ勝利を収めたとか、今年も本校生徒として勝利を目指そうとか言っていた。
校舎を出ると十代がレッド寮とは違う方向に走っていた。
「何やってるんだ……?」
気になったので追うことに。少しずつ小さくなっていく十代を必死に追いかけて見えてきたのはブルー寮。十代が何故ここにと思っていると十代が木を登り始めた。……ブルーの生徒に見つかったら拙いと判断して茂みに隠れる。十代はベランダから部屋の様子を見て、戻ろうとすると……カイザーと友人または取巻きと思われる数名がやってきた。身を縮めてやり過ごすと十代が叫んだような声。その後ベランダから出てきたのは十代ではなくレッドの服を着た少女……レイだったか?木から降りて茂みに隠れた。アイツ女だったのか。女顔という訳じゃなかったのか……
「おじゃましました〜〜ぁぁぁ!!」
続いて十代がベランダから出ようとするも引きずられるように再び中へ。少し後に今度は玄関から出てきた模様。とりあえず事情を聞くために合流するか。
「十代」
「龍斗!?どうしたんだよこんなところで?」
「お前がこっちに走ってたから追ったんだ。何があった?」
十代の話では、丸藤、前田と飯の話をしながら校舎を出るとレイがブルー寮に向かって走っていたらしい。
……丸藤と前田?俺は見てない気が……まぁいいや。
レイは集会のとき終始カイザーを見ていたので何かあると思い追ったところ、カイザーの部屋でカイザーのデッキを取りだし頬に当てていた。カイザーが戻ってきたのを見て慌てて連れていこうとしたら帽子が脱げ、レイが女子ということが発覚。レイは十代を置いてベランダから飛び出した直後カイザー達が部屋に入り十代が見つかる。危うく退学かというところでカイザーに助けられ部屋を出たところで今に至ると。
後ろのブルー寮を見るフリをしてレイを見ると茂みから顔をヒョコッと出していた。男のフリをしてカイザーに……ふむ……コレって……そういうことか?
「龍斗、どうしたらいいと思う?」
「……お前がしたいことをすればいいと思う。お前はどうしたい?」
「…………」
☆
同日夜。
レイに事情を聞こうとした十代から連絡があり、レイに呼び出されたらしい。急いでレッド寮裏の崖に向かうと、
「「デュエル!」」
レイと十代がデュエルを始めていた。
…………何があった?
崖の上には丸藤、前田の他に明日香とカイザーがいた。
「龍斗?どうして……」
「十代に呼び出された。そういう明日香は?」
「ちょっと相談されてね」
そう言って明日香はカイザーを見る。
相談……もしかして十代かレイが何かやらかしたか?
まぁいいや。十代のデュエルを見守ろう。
早乙女レイ
LP4000
VS
遊城十代
LP4000
「ボクの先攻、ドロー!【恋する乙女】を召喚!」
【恋する乙女】
攻撃表示
ATK400/DEF300
来たな【恋する乙女】。丸藤は可愛いとか言ってるが、お前あのカード使うのが大変なの知ってるか?
「ボクはこれでターンエンド!」
早乙女レイ
LP4000
モンスター
【恋する乙女】:攻
ATK400
魔・罠
無
手札5枚
さて、十代はどう戦う?
「俺のターン、ドロー!【E・HERO フェザーマン】を召喚!」
【E・HERO フェザーマン】
攻撃表示
ATK1000/DEF1000
「バトル!【フェザーマン】で攻撃!」
「えぇー……勝負にならないよぉ……」
いや、丸藤お前……何残念な表情してんだ?
「でも恋すると、女性は変わるわ」
明日香、それは体験談か?一般論か?もし一般論ならぜひゆまには変わってほしい。アイツなんか危なっかしい感じがするし。
「フェザーブレイク!」
【フェザーマン】が翼から風とともに羽を送るが、【恋する乙女】は何事もないかのように反応が無い。
「【恋する乙女】は攻撃表示なら戦闘で破壊されない!」
「お、おい【フェザーマン】!?何やってるんだよ!?」
レイの説明の後十代がいきなり慌てだした。【フェザーマン】?目の前に突っ立っているじゃないか。
「【恋する乙女】の効果で、【恋する乙女】に攻撃したモンスターに乙女カウンターが1つ乗る」
早乙女レイ
LP4000→3400
「女の子にメロメロになるなんて【HERO】失格だぞー!」
いや十代、ただカウンターが乗っただけなんだが……十代は特に何かをすることなくターンを終了した。
遊城十代
LP4000
モンスター
【E・HERO フェザーマン】:攻《乙女カウンター:1》
ATK1000
魔・罠
無
手札5枚
「ボクのターン、ドロー!【恋する乙女】に【キューピッド・キス】を装備!」
どこからともなく天使が現れ、【恋する乙女】の頬にキスをした。あれって装備したことになるのか?
「バトル!【恋する乙女】で攻撃!」
「な、なに!?」
十代は攻撃力の低いモンスターで攻撃することに驚いている。
「一途な想い!」
【恋する乙女】は両手を広げ【フェザーマン】に特攻。しかし【フェザーマン】はそれを半身をきることで回避した。
早乙女レイ
LP3400→2800
「【キューピッド・キス】の効果発動!乙女カウンターが乗っているモンスターを装備モンスターが攻撃して、ボクがダメージを受けた後、攻撃されたモンスターのコントロールを得る!」
「なっ!?お、おい【フェザーマン】!?」
良い感じに翻弄されて十代はペースを乱してるな。外野として見ると面白い。十代が意味わからないこと言ってるのは別として。
「【フェザーマン】でダイレクトアタック!」
【フェザーマン】の攻撃が十代を襲う。
「くぅぅう!!」
遊城十代
LP4000→3000
「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」
早乙女レイ
LP2800
モンスター
【恋する乙女】:攻
ATK400
【E・HERO フェザーマン】:攻《乙女カウンター:1》
ATK1000
魔・罠
【キューピッド・キス】《恋する乙女》
伏せ1枚
手札4枚
「俺のターン、ドロー!【E・HERO スパークマン】を召喚!」
【E・HERO スパークマン】
攻撃表示
ATK1600/DEF1400
「バトル!すまない【フェザーマン】!【スパークマン】で攻撃!スパークフラッシュ!」
「罠発動【ディフェンス・メイデン】!」
【スパークマン】の攻撃が【フェザーマン】に当たる直前、【恋する乙女】が立ちはだかった。
「相手モンスターが攻撃するとき、攻撃対象モンスターを【恋する乙女】に変更する!」
早乙女レイ
LP2800→1600
「お、おい【スパークマン】まで!?女の子に夢中になるなー!!」
また十代が喚いてる……
「十代は男女の心の機微に疎いようね」
いや明日香、そうかもしれないが、【フェザーマン】も【スパークマン】も【恋する乙女】もモンスターなんだが……
「十代だけじゃない。1人の美女によって国が滅びることは歴史が証明している」
カイザー、確かに美女かもしれないが、性格は悪女だろソイツ。
「なるほどね。カイザーと呼ばれる男が手こずるわけよね」
苦笑しながらデュエルを見守る明日香。十代は何もせずにターンを終了したようだ。
遊城十代
LP3000
モンスター
【E・HERO スパークマン】:攻《乙女カウンター:1》
ATK1600
魔・罠
無
手札5枚
「ボクのターン、ドロー!装備魔法【ハッピー・マリッジ】!相手モンスターがボクのフィールドにいるとき、そのモンスターの攻撃力分、装備モンスターの攻撃力をアップさせる!【恋する乙女】に装備!」
【恋する乙女】の服装が純白のウエディングドレスになった。
【恋する乙女】
ATK400→ATK1400
「バトル!【恋する乙女】で【スパークマン】を攻撃!一途な想い!」
再び両手を広げて【スパークマン】に特攻。しかしまたも回避される。
早乙女レイ
LP1600→1400
「なぁ明日香」
「何かしら?」
「想いをぶつけた相手が2人、いや2体だがそれでも一途なのか?」
「そういう攻撃名なら仕方ないでしょ」
…………何か納得のいかないものが……
「【スパークマン】と【フェザーマン】でダイレクトアタック!」
「ぐぁあああ!!」
遊城十代
LP3000→1400→400
「女の子は恋をすると強くなる。不可能なんて無いの!」
【フェザーマン】の攻撃の余波で帽子が飛ばされたがそれを気にせず、それどころか髪を結んでいたリボンまで取ってしまった。
早乙女レイ
LP1400
モンスター
【恋する乙女】:攻
ATK1400
【E・HERO フェザーマン】:攻《乙女カウンター:1》
ATK1000
【E・HERO スパークマン】:攻《乙女カウンター:1》
ATK1600
魔・罠
【ディフェンス・メイデン】
【キューピッド・キス】《恋する乙女》
【ハッピー・マリッジ】《恋する乙女》
手札4枚
「さすがの十代もレイの前にはタジタジだな……」
「デュエルのモンスターを夢中にさせるのなんて簡単でしょ。初恋の人を追って、遥か南の島まで追いかけて来ちゃうんだもの」
丸藤と前田は『そうだったの!?』と驚いている。明日香はそれに対し『難しい編入試験まで突破して』と言っている。あの試験の内容知ってるのは何故だ?俺は付き添いで言ったが筆記の内容は知らないぞ。それに実技は楽に思えるんだが、それは俺がテスターだからか?
「俺のターン、ドロー!……女の子相手に、男の【HERO】をぶつけたのが間違いだったんだ。【E・HERO バーストレディ】召喚!」
【E・HERO バーストレディ】
攻撃表示
ATK1200/DEF800
十代は【バーストレディ】を召喚した後、『今日は迫力が違う』だのと意味のわからないことを言った。十代、お前だけ見えてる景色違わないか?
「【バースト・リターン】を発動!俺のフィールドに【バーストレディ】がいるとき、フィールドの【バーストレディ】以外の【E・HERO】を手札に戻す!」
十代の手札に【フェザーマン】と【スパークマン】のカードが加わったが、
【恋する乙女】
ATK1400/DEF300
【恋する乙女】のステータスに変化はなかった。
「あれ?攻撃力が発動したときと一緒だ」
丸藤、前田だけでなく、明日香もわからないようだ。カイザーは……表情が変わらないが解説は無しか。仕方ない。
「おそらく、【ハッピー・マリッジ】というカードの攻撃力がアップする効果は、発動時にのみ参照するんだろう」
「ど、どういうことッスか?」
「【ハッピー・マリッジ】の発動条件は『相手モンスターが自分フィールドに存在するとき』。発動した瞬間に条件を満たしているモンスター……今回の場合【フェザーマン】の攻撃力を参照して、それ以降はただ【フェザーマン】の攻撃力1000ポイント分上げる装備魔法になるだけ。今回のように『1000ポイント』と確定した後はモンスターが手札に戻ったりしても、あのカードが装備されていれば上がる数値は変わらない」
んー……少し説明が難しいな。また今度考えてみるか。いつになるかわからないけど。
「……【融合】を発動!【バーストレディ】と手札の【フェザーマン】を融合!来い!【E・HERO フレイムウィングマン】!」
【E・HERO フレイムウィングマン】
攻撃表示
ATK2100/DEF1200
「バトル!【フレイムウィングマン】で【恋する乙女】を攻撃!フレイム・シュート!」
【フレイムウィングマン】の右腕の龍頭から出た炎が【恋する乙女】を包むがやはり【恋する乙女】は破壊されない。
「くっ……!!【恋する乙女】の効果で【フレイムウィングマン】に乙女カウンターが1つ乗る!」
早乙女レイ
LP1400→700
十代はフィールドを見て『【フレイムウィングマン】お前まで』とか言っている。嫌なら攻撃するなよ。
「くっ……カードを1枚伏せ、ターンエンド」
遊城十代
LP400
モンスター
【E・HERO フレイムウィングマン】:攻《乙女カウンター:1》
ATK2100
魔・罠
伏せ1枚
手札3枚
「ボクのターン、ドロー!……カードを1枚伏せて、ターンエンド!」
早乙女レイ
LP700
モンスター
【恋する乙女】:攻
ATK1400
魔・罠
【ディフェンス・メイデン】
【キューピッド・キス】《恋する乙女》
【ハッピー・マリッジ】《恋する乙女》
伏せ1枚
手札4枚
静かだな。流石にライフを使いすぎたか。
十代のターン……あ、【サイクロン】……リバース破壊して【フレイムウィングマン】で攻撃か……あっさりしててつまらんな……
「龍斗、行くわよ」
「え、あ、ああ」
デュエルが終わったということで十代の元へ。
「ガッチャ!レイ、面白いデュエルだったぜ!」
「十代、ボク……」
「おっと、みなまで言うな。そこから先はずっと見ていた後ろの奴に言えよ」
レイはこちらに振り向いた。そして明日香は『男の責任』とか言ってカイザーを前に押し出した。
レイは頬を染めカイザーを『亮様』と呼んだ。明日香、笑いが漏れてるぞ。
「ごめんなさい……昼間、寮に忍び込んだのは、ボクだったんだ。十代はそれを止めようとしただけなんだ」
カイザーは頷いた後、『わかっている』と言ったが、何故わかる?マジで十代かレイがやらかしたのか?
レイはカイザーがデュエルアカデミアに進学してから、どうしても会いたくてようやくここまで来たらしい。
「十代にはデュエルで負けたけど、亮様への想いは誰にも負けない!乙女の一途な想いを受け止めて!」
レイが両腕を広げた途端、一瞬だが後ろに【恋する乙女】の姿が見えた。なんだ、今何が起きたんだ?
気迫のような何かにカイザーさえも一歩下がってきた。
「カイザー、厄介なことに巻き込まれてるな」
「……他人事のように言うな」
他人事だし。小声で話していたおかげかレイには聞こえてないようだ。いや、十代が何か言っていたおかげで聞こえなかったのか。
「それにしても凄え迫力。デュエルと同じだぜ」
「デュエルじゃないもん……」
少し恥ずかしそうに抗議するレイに明日香が『そうね』と被せてきた。
「一途な想いは素敵よ。でも今、貴方が言ったようにデュエルのヒーローと違って本物の男性はウィンクな投げキッスじゃダメなの。デュエルも恋も気持ちと気持ちが繋がって初めて実るんじゃないかしら」
中にはウィンクやら投げキッスやらで落ちそうな奴もいるけどな。丸藤とかそんな感じだし。明日香の言葉にレイは勝手に恋のライバルと思い込み明日香を睨みつけていた。
「レイ、お前の気持ちは嬉しいが……」
カイザーがいざ返事をすると、レイは明日香を無視してカイザーを見つめた。明日香も若干振り回されてるな。
「今の俺にはデュエルが全てなんだ」
それだけ言ってポケットから何かを取り出し、レイに手渡した。アレは……髪留め?……レイがやらかしていたのか。
「レイ、故郷に帰るんだ」
カイザーの発言に、レイは目の端に涙を溜め、十代が噛みついた。
「そこまで言うことないだろ!女の子だってオベリスク・ブルーの女子寮に入れてもらえば……!」
「レイはここには居られない」
居られない?何故だ?まだ何かあるのか?
「レイにはまだ秘密があるのか?男のフリした女と見せかけて……実は男だったりして!」
いや十代、笑顔で言うことじゃない。いろいろおかしな事になる。
明日香は十代の隣で苦笑し、カイザーが
「レイはまだ小学5年だ」
と言った。…………小学5年?あ、十代が真っ白になった。
そして丸藤と前田が2人揃って目を丸くして驚いた。レイは『えへへ』と笑っている。
「なんなんだよ〜!俺ってば、小学生に苦戦したのかよ〜!」
「ごめんね十代。ガッチャ、楽しいデュエルだったよ!」
ジタバタする十代にレイが何故か勝ったかのように十代の決め台詞を言った。十代はコントのように転け、『これだからデュエルは楽しいんだ』と笑っていた。
「…………さて、帰るか」
いろいろ片付いたようなので帰ろうとすると、
「待て」
カイザーに止められた。
振り返ってカイザーを見ると……好戦的な目をしていた。…………そういうことかよ。
「アレからデッキを作り直した。久しぶりに会えたんだ、デュエルしよう」
デッキを取り出し構えようとするカイザー。俺は、
「すまない。デュエルはできない」
カイザーとのデュエルを断った。
「……理由を聞いてもいいかな?」
「……………………た」
「?」
「……デッキを忘れた」
「おい、デュエルしろよ」
「デッキ忘れたから無理」
仕方ないですよね。デッキ忘れたんですもん。
次回はデッキ忘れた龍斗にお仕置きが……