「で、誰だ?」
「っ!?ゆ、ゆまだよ!宮田ゆま!」
家の前で抱きついてきた少女に軽い尋問をすると泣きそうな顔をしながら自己紹介してきた。『宮田ゆま』……?どこかで聞いたような……しかし知り合いに宮田なんていないし……
「ま、まさか記憶喪失!?どこまで覚えてる!?ここは?自分名前わかる?」
「記憶喪失じゃない。マジに誰だ。金なら無いから巻き上げようとしても無駄だぞ」
「………そ、そうだ!メール!おばさんからメールしてもらってるよ!」
「メール?」
言われて一応持っているけどまるで使わない携帯の電源を実に数ヶ月ぶりに入れる。そしてすぐにメールが数十件受信された。
母親と思われる名前から送信されているメールを開いては閉じを繰り返し1番上のメールが『宮田ゆま』なる少女の言っていたメールだと思われるものだった。内容は『冬休みに従妹のゆまが自宅に行くから面倒見ろ』といったもの。送られたのはまだアカデミアにいる時期だ。従妹ねぇ……まぁいいか。どうせ次の船に乗るまでだし。
「………とりあえず状況は把握した」
携帯をしまい家の鍵を開けて中に入る。続いて宮田……紛らわしいな……ゆまでいいや。ゆまも家の中に入る。
さて、コイツを泊めるための部屋だが……適当に空いてる部屋でいいか。
つっても2階にしか空き部屋ないけど…………?
「…………」
「……?」
…………流石に2階に上げるのにキャリーバッグを女子に持たせるわけにはいかないか……
「バッグ貸せ。2階に上げる」
「……うん!」
キャリーバッグを受け取って2階に運ぶ(思いの外重かったが……)。とりあえず寝る場所はここでいいとして、次は……
「…………アイツはどこに行った?」
部屋に入ってきたはずのゆまがいない。トイレか?いや、場所は……昔来てたのなら知ってるか。とりあえず自分の部屋にデッキを入れていたアタッシュケースを運ぶと何故か部屋にゆまがいた。
トイレではなく俺の部屋にいた。何故かベッドの下を凝視してる。
「……ゆま、何してるんだ?」
「え!?あ、お、お兄ちゃん!?えと……お、男の人ってこういうところに本を隠すって本に書いてあったから……」
いつの時代だよ。それ以前に俺はお前が探してるような本は持ってないぞ。アレ18歳未満禁止だろ。俺はまだ16だ。
「…………お前の部屋はさっき荷物置いた部屋だ。荷物整理してこい」
「う、うん!」
逃げるように部屋に戻っていくゆま。
…………さて、アルバムか何かあったかな?ゆまについて情報を得られればいいんだが……
☆
部屋の中にあったアルバムやら昔の日記やらでわかったのはほとんど無く、代わりに推測できることが1つあった。まず、数少ないわかったことは、ゆまと俺は同い年ということ。
なら何故俺のことを『お兄ちゃん』などと呼ぶのかというところが推測できた点だ。
単純に俺の方が2ヶ月程度早く産まれたということ。そしておそらく母親あたりに『龍斗のほうがお兄ちゃんなんだから云々』的なことをよく言われたのを見たか何かしたのだろう。そしてその情報から俺を『お兄ちゃん』などと呼ぶのだろう。
「てかアイツの両親はどうした?」
「アイツ?」
「っ!?」
急に俺以外の声が聞こえて声のした方向を向くとゆまがいた。驚かしてくれる……
「アイツって誰のこと?」
「お前だ。両親はどうした?何故ここに?数日でアカデミアに戻るのに」
「あ、そう!そのデュエルアカデミアに行こうと思ってるの!」
いや、行こう思ってるって言ったって……
「入学試験はとっくに終わってるぞ。9月から1学期が始まるからな」
「今度、編入試験を受けて、合格したら編入できるんだ!それで、デュエルアカデミアに通ってるお兄ちゃんにいろいろ教えて貰おうって」
…………いや、
「俺がこっちに戻ってくる保証無かっただろ」
「ふぇ?」
テスターのことは……おそらく知らないだろう。俺はコイツの存在すら知らなかったし、家族にも教えてないからな。
「俺は本土に用事が無かったらアカデミアで冬休みをすごす予定だったんだ。俺がいなかったらどうするつもりだ?それに俺は誰にもアカデミアに行ってるなんて言ってない。何故知っている」
「帰ってくるって信じてたもん!それにお兄ちゃんがデュエルアカデミア以外に行くわけないもん!」
いや、信じてたって…………
それで帰ってきたら……俺帰ってきてるな。しかしそれは海馬さんとペガサス会長に呼び出されたからであってコイツが信じてたからということにはならないな。うん。それにアカデミアについても……
「はぁ……まぁいいや」
「出た!お兄ちゃんの『まぁいいや』!」
「は?」
俺そんなに言ってるか?いや、思ってることはよくあるとは思う。だが口に出すのはまず無かったと思うんだが……昔言ってたってことか?
「…………まぁいいや。とりあえず編入試験の内容はわかるか?筆記はあるのかとか、実技試験もするのかとか」
「えっと……筆記と実技だって書いてあるよ」
ゆまはポケットから何かの用紙を取り出して教えてくれた。しかし筆記と実技……基本的にはこのスタイルは変えないのか。
「…………勉強は自分でしろ。特に通常モンスターのことは俺には聞くな。実技はただ実践あるのみだ」
「ぅぅ……わ、わからないところは……」
「……通常モンスターのこと以外、可能な限り教えてやる」
通常モンスターは嫌な記憶しかないからパスだ。
「……よぉし!がんばる!」
ガッツポーズをとり自分の部屋に戻るゆま…………さて、晩飯どうするかな……
「お兄ちゃん!デュエルしよ!」
「…………」
筆記は二の次か。まぁいいけどさ。
「…………少し待ってろ」
さて、どうする?こっちで仕事はしなくてもいいとは思う。明日香達がどうかは知らんが。試験では使わないということを考慮すると、よくて融合か儀式デッキか……あったかな……
とりあえずアタッシュケースを開けデッキを選ぶ。
「……お、お兄ちゃん。そのケースは?」
「ん?これはデッキ入れるためのケース」
「そ、それ全部デッキなの!?」
「ああ」
じゃないと仕事にならないからな。
これは……?…………いけるか。よし、これに決定。
「準備できたぞ。早く座れ」
「えへへ……じゃーん!」
とくと見よ!とばかりに背後から出したのはデュエルディスク。しかもバトルシティで使用されたタイプだ。
「こういうこともあろうかと持ってきてるんです!」
「…………」
要はディスク使って外でやろうってことか。いいけどさ。
ケースの蓋の裏に取り付けてあるディスクを取って外へ。
「いくよ、お兄ちゃん!」
「来い」
「「デュエル!」」
宮田龍斗
LP4000
VS
宮田ゆま
LP4000
「先攻は貰う。俺のターン、ドロー!モンスターをセット!カードを1枚セットしてターンエンド!」
宮田龍斗
LP4000
モンスター
裏守備1枚
魔・罠
伏せ1枚
手札4枚
事故ってやがる……手札に魔法が1枚も無えのはこのデッキだとキツいってレベルじゃないんだよなぁ……
「私のターン、ドロー!……よし!魔法カード【融合】発動!手札の【E・HERO フェザーマン】と【E・HERO バーストレディ】を融合!えっとえっと……風纏うヒーローさん。炎操るヒーローさん。今一つになりて私に新しい力をください!融合召喚!お願い!【E・HERO ノヴァマスター】!」
【E・HERO ノヴァマスター】
攻撃表示
ATK2600/DEF2100
【HERO】デッキ……しかも【属性HERO】か……いや、だったら何故【フェザーマン】?いや、いいや。
口上も突っ込まん。
「バトル!【ノヴァマスター】で守備モンスターを攻撃!ごめんなさい!」
なんか謝られた。しかし【ノヴァマスター】は謝罪を無視して裏守備モンスター……【ジェムタートル】を粉砕した。
「【ジェムタートル】のリバース効果。デッキから【ジェムナイト・フュージョン】を手札に加える!」
宮田龍斗
手札4枚→5枚
「【ノヴァマスター】の効果も発動!相手モンスターを戦闘で破壊したら1枚ドロー!」
宮田ゆま
手札3枚→4枚
「えっと……カードを1枚伏せてターンエンド!」
宮田ゆま
LP4000
モンスター
【E・HERO ノヴァマスター】:攻
ATK2600
魔・罠
伏せ1枚
手札3枚
「俺のターン、ドロー!【ジェムナイト・フュージョン】発動!手札の【ジェムナイト・ガネット】と【ジェムナイト・オブシディア】を融合!
紅の真実よ、鋭利な漆黒よ!今新たな輝きとなりて現れよ!融合召喚!燃え上がれ!【ジェムナイト・ルビーズ】!」
【ジェムナイト・ルビーズ】
攻撃表示
ATK2500/DEF1300
「【ジェムナイト・オブシディア】の効果発動!このカードが手札から墓地へ送られた場合、墓地にいるレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚する!来い!【ジェムナイト・ガネット】!」
【ジェムナイト・ガネット】
攻撃表示
ATK1900/DEF0
「【ルビーズ】の効果発動!俺のフィールドにいる自身以外の表側表示【ジェム】モンスターをリリースして、そのモンスターの攻撃力分、自身の攻撃力をアップさせる!【ガネット】をリリース!」
【ルビーズ】が刃のついた棒を振るうと【ガネット】が全身を燃やし、その炎を【ルビーズ】に与えると消滅した。
【ジェムナイト・ルビーズ】
ATK2500→ATK4400
「こ、攻撃力4400!?」
「バトル!【ジェムナイト・ルビーズ】で【E・HERO ノヴァマスター】を攻撃!」
【ルビーズ】が刃……ではなく刃のついてない方で【ノヴァマスター】を突き、【ノヴァマスター】を破壊した。たまに思うんだが、ソリッドヴィジョンの演出がおかしい。
「ぅぅ……信じてたのにぃ……」
宮田ゆま
LP4000→2200
「…………ターンエンド。この瞬間、【ルビーズ】の攻撃力が元に戻る」
宮田龍斗
LP4000
モンスター
【ジェムナイト・ルビーズ】:攻
ATK2500
魔・罠
伏せ1枚
手札3枚
「ぅぅ……ドロー……っ!魔法カード【融合回収】発動!墓地の【融合】と【フェザーマン】を手札に加える!」
宮田ゆま
手札3枚→5枚
「【融合】発動!手札の【フェザーマン】と【クレイマン】を融合!風纏うヒーローさん。大地のヒーローさん。不思議な渦で一つになって私に力を貸してください!融合召喚!頑張って!【E・HERO ガイア】!」
【E・HERO ガイア】
攻撃表示
ATK2200/DEF2600
「【ガイア】の効果発動!融合召喚に成功したとき、相手モンスターの攻撃力を半分にして、その数値分攻撃力をアップさせる!」
【ガイア】は両腕を地面に当てると、【ルビーズ】の足下から光が出てきた。
この光……【ガイア】の腕から出てるのか。それで、この光から力を吸収してると。
【ジェムナイト・ルビーズ】
ATK2500→ATK1250
【E・HERO ガイア】
ATK2200→ATK3450
「バトル!【ガイア】で【ルビーズ】を攻撃!コンチネンタルハンマー!」
【ガイア】が【ルビーズ】にその太い腕でボディブロー……姿勢を崩した首に肘をぶちこんで倒れたところをフルボッコ……やりすぎだ。
「…………【HERO】の攻撃じゃねえだろ」
宮田龍斗
LP4000→1800
「こ、こんな攻撃なんて知らなかったもん!ターンエンド!」
宮田ゆま
LP2200
モンスター
【E・HERO ガイア】:攻
ATK2200
魔・罠
伏せ1枚
手札2枚
今度海馬さんに頼んでみようかな……いろいろ覚悟して。
「ドロー。墓地の【ジェムナイト・フュージョン】の効果発動!」
「ぼ、墓地のカード効果!?」
やっぱり墓地やら手札からの効果って珍しいのか?よく同じようなリアクション聞くけど。
「墓地の【ジェムナイト】モンスターを除外して、墓地のこのカードを手札に加える!【ジェムナイト・ガネット】を除外!」
宮田龍斗
手札4枚→5枚
「そして【ジェムナイト・フュージョン】発動!手札の【ジェムナイト・ラズリー】と【ジェムナイト・ラピス】を融合!
神秘の力秘めし碧き魔石よ。今光となりて現れよ!融合召喚!【ジェムナイトレディ・ラピスラズリ】!」
【ジェムナイトレディ・ラピスラズリ】
攻撃表示
ATK2400/DEF1000
「【ジェムナイト・ラズリー】の効果発動!このカードが効果で墓地に送られたとき、墓地の通常モンスター1体を手札に加える!【ジェムナイト・ラピス】を手札に!」
宮田龍斗
手札2枚→3枚
「そして【ラピスラズリ】の効果発動!1ターンに1度、デッキ・エクストラデッキから【ジェムナイト】モンスターを墓地に送り、フィールドの特殊召喚されたモンスター1体につき500ポイントのダメージを与える!デッキから【ジェムナイト・ルマリン】を墓地に送る!」
【ラピスラズリ】が胸の宝石から一直線に青白い光を放つと、【ガイア】に当たり、光の太さを増してゆまに当たった。うん。これくらいのエフェクトでいいと思う。
「あぅっ!」
宮田ゆま
LP2200→1200
「バトル!【ラピスラズリ】で【ガイア】を攻撃!」
【ラピスラズリ】が胸から今度は白い光を放ち【ガイア】を爆散させた。
「【ガイア】さん……」
宮田ゆま
LP1200→1000
「リバースカード【輝石融合】!手札・フィールドのモンスターを素材に融合召喚する!」
「と、罠カードの融合!?」
「フィールドの【ラピスラズリ】と手札の【ラピス】、【ジェムナイト・ガネット】を融合!空より深き青よ、碧き秘石よ、紅の真実よ!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ!全てを照らす至上の輝き!【ジェムナイトマスター・ダイヤ】!」
【ジェムナイトマスター・ダイヤ】
攻撃表示
ATK2900/DEF2500
「【マスター・ダイヤ】は墓地の【ジェム】モンスター1体につき攻撃力が100ポイントアップする!
墓地には【ジェムタートル】
【ガネット】
【オブシディア】
【ラピス】
【ラズリー】
【ラピスラズリ】
【ルマリン】
【ルビーズ】の8枚。よって攻撃力800ポイントアップ!」
【ジェムナイトマスター・ダイヤ】
ATK2900→ATK3700
「そしてこれはバトルフェイズ中のものだ、攻撃できる。ダイレクトアタック!」
【マスター・ダイヤ】が持っている剣でゆまを切り裂く……なんてことはせず、剣の先のほうにある平らなところでゴンッ!という音とともに頭を叩いた。
「あぅっ!」
宮田ゆま
LP1000→-2700
「大丈夫か?」
「ぅ、うん」
ソリッドヴィジョンのはずなのに若干痛そうに頭を抱えているゆま。本当に大丈夫か?
「まぁデッキの中身は少しわかった。調整……ってか改造のほうが正しいか?」
「よ、よろしくお願いします!」
なぜ敬語。
ゆまを連れて部屋に戻り、デッキを見せてもらう。内容は俺の【ヒーローグングニール】と十代の【HERO】の間といった感じだ。エクストラは【ガイア】等の【属性HERO】だが、メインが通常モンスターの【HERO】で構築されている。
「先に聞くぞ。抜いてほしくないカードはあるか?」
「えっと……お兄ちゃんにお任せします」
「…………」
なんで若干頬を赤らめる?
まぁいいや。お任せならシンクロもエクシーズも無しで【属性HERO】にして……
「あっ!【フェザーマン】が!」
「…………なんだ。抜いちゃダメなのあるじゃないか」
「あっ!ち、違うよ?一緒に戦ってくれたカードだからその、思い出が……」
その辺の感性がイマイチわからん。まぁ今の俺にとってデュエルは半分仕事って感じっていうのもあるからだろう。このテスターの仕事が終われば少しはわかってくるのかな……
「……なら思い出は思い出としてカードファイルにでもしまっておけ」
「……カードファイル……持ってない……」
「…………買いに行くか」
財布を持って再び出掛ける準備をする。
「行くぞゆま」
「で、でもそんなにお金持ってないよ」
「それくらい出すから。さっさと行くぞ」
半ば無理矢理にゆまを連れ出す。
たしかカードショップが近くにあったな。あそこなら売ってるかな?
「あっ!お兄ちゃんデッキ忘れてるよ!デュエリストはいつ如何なるときもデッキは忘れちゃダメなんだよ!」
そんなの聞いたことないぞ。しかしなんかうるさくなりそうなので適当なデッキを選んで持っていくことにした。
ゆまと共にカードファイルを買いに近くのカードショップに買い物。店内はそこそこ広く、デュエルディスクを使ってデュエルできるフィールドまで用意してある。しかし相変わらず【エメラルド・ドラゴン】が無駄に高い。そして【魔導雑貨商人】がワンコインで買えるお手頃プライス……
「……っと。カードじゃなくてファイルを買うんだよな」
ファイルはどこだろ?
ゆまと一緒に店内を見ていると……
『か、返してよ!返して!』
…………面倒なことに巻き込まれそうな声が聞こえた。
「お、お兄ちゃん!あそこ!」
ゆまが指差す方向に目線をやると、そこにはガラの悪い男と男の子。そして子供の視線の先には1枚のカード。さっきの声からしておそらく取られたのだろう。
「お兄ちゃん、助けてあげようよ!」
…………はぁっ。
心の中で大きくため息をつき、わざとらしく足音を立てながら近づき、
「フンッ!」
『ぐげっ!?』
男の横っ腹に蹴りをいれてやった。
男は変な声を上げながら倒れ、その拍子にカードを落とす…………【ファイヤー・ウィング・ペガサス】……え、使い辛くないか?……関係ないか。
「コレ、君の?」
『……あ、うん!ありがとう!』
「あっち行ってな」
男の子にカードを渡してゆまに男の子を任せる。
直後蹴飛ばした男が復活したようで、
『テメェ……何してくれてんだ……あ゛ぁ゛!?』
物凄い形相で睨みつけてくる。
「大の大人が子供にすることじゃないだろ。それを止めたまでのことだ」
『デュエルに負けたのはアイツだ!アイツのカードをどうしようが俺の勝手だろうが!』
…………話にならないな。
「……バカに何言っても無駄、か。よし、デュエルしよう。俺が勝ったら大人しく帰れ。俺が負けたら……そうだな……カードを好きなだけくれてやる。例えば……このカードとか」
以前ネットで数万とかいうふざけた値段で売ってた【団結の力】(あの不思議ケースから取り出した量産品)を見せびらかす。
『だ、【団結の力】!?……へへっ……いいぜ。やってやるよ。ついてきな』
男は店内のデュエルフィールドに入っていった……ああ、デュエルディスクを使いたいのか。
「すみません。デュエルディスク借ります」
『あ、ああ……』
若干呆然としている店員からデュエルディスクを借りて構える。
『吠え面かかせてやる』
「…………来い」
『「デュエル!」』
男
LP4000
VS
宮田龍斗
LP4000
…………なんだこれ?
『俺のターン!【俊足のギラザウルス】を特殊召喚!』
【俊足のギラザウルス】
攻撃表示
ATK1400/DEF400
『更に【俊足のギラザウルス】を生贄に、【フレイム・ケルベロス】を召喚!』
【フレイム・ケルベロス】
攻撃表示
ATK2100/DEF1800
…………何そのカード。俺知らんぞ。
『ターンエンドだ!』
男
LP4000
モンスター
【フレイム・ケルベロス】:攻
ATK2100
魔・罠
無
手札4枚
いつの間にかいたギャラリーは『もうダメだ』だの似たような言葉しか言ってない……いや、なんとかなりそうなんだが……
「俺のターン、ドロー!モンスターをセット!カードを3枚セットしてターンエンド!」
宮田龍斗
LP4000
モンスター
裏守備1枚
魔・罠
伏せ3枚
手札2枚
『ハッ!もう終わりかよ!あっという間だな!』
「無駄口叩いてる暇があるなら早くしろ」
こっちは予定をいろいろ崩されてるんだ。
『減らず口を!俺のターン!このままバトルだ!【フレイム・ケルベロス】で攻撃!』
「リバースモンスター【魔導雑貨商人】の効果発動。デッキトップをめくり、一番最初に出た魔法または罠カードを手札に加える。それ以外は墓地へ。いくぞ。
1枚目……【ワイト】」
『……ハハハハハ!こりゃ傑作だ!【ワイト】なんて雑魚カードをデッキに入れてるなんてな!』
なんか高笑いしてるが無視しよう。まだ効果処理が残ってるし
「2枚目……【ワイトプリンス】
【ワイト夫人】
【ネクロ・ガードナー】
【ライトロード・マジシャン ライラ】
【ワイトプリンス】
【ライトロード・ハンター ライコウ】
【魔導雑貨商人】
【魔導雑貨商人】
【ライトロード・マジシャン ライラ】
【ワイトキング】
【光学迷彩アーマー】……【光学迷彩アーマー】を手札に加える。更に墓地の【ワイトプリンス】2体の効果を発動!このカードが墓地に送られた場合、デッキ・手札から【ワイト】と【ワイト夫人】1枚ずつを墓地に送る!デッキの【ワイト】と【ワイト夫人】を全て墓地へ」
そして俺の手札には【ワイトプリンス】……この謎の神落ち。
『ターンエンドだ!』
チンピラ
LP4000
モンスター
【フレイム・ケルベロス】:攻
ATK2100
魔・罠
無
手札5枚
「…………ドロー。【ワン・フォー・ワン】発動。手札のモンスター……【ワイトプリンス】をコストに手札・デッキからレベル1のモンスターを特殊召喚する。来い【ワイトキング】」
【ワイトキング】
攻撃表示
ATK?/DEF0
『攻撃力が決定してない?』
「【ワイトキング】の元々の攻撃力は墓地の【ワイト】及び【ワイトキング】の数×1000ポイントとなる」
【ワイトキング】
ATK?→ATK10000
『こ、攻撃力10000!?墓地の【ワイトキング】と【ワイト】は4枚しかないだろ!?』
「【ワイト夫人】と【ワイトプリンス】は墓地にいるとき【ワイト】して扱われる。よって墓地の【ワイト】と【ワイトキング】は計10枚だ」
圧倒的な攻撃力に目の前の男もギャラリーもどよめきを見せる。まぁ普段見ないよな5桁の攻撃力なんて。
「装備魔法【光学迷彩アーマー】を発動。このカードはレベル1のモンスターに装備可能なカードで、装備したモンスターは相手プレイヤーにダイレクトアタックできる」
攻撃力10000のモンスターが自分のモンスターを無視してダイレクトアタックしてくるという事実に男は絶望の表情を浮かべ、ギャラリーのどよめきは更に強くなった。
「さぁ、バトルだ。【ワイトキング】でダイレクトアタック」
【ワイトキング】は【光学迷彩アーマー】を使って透明化そして、
『ぐあぁぁぁっ!!目が!目がぁぁ!』
男が目を抑えだした。おそらく目潰しされたのだろう。
チンピラ
LP4000→-6000
【リビングデッド】も【針虫】も【エンジェル・リフト】も使わなかったな……
数分後、男は逮捕された。どうやらあの男はデュエルして勝った後に『アンティだった』などと言って次々とカードを奪っていたらしい。しかも思いの外逃げ足も速かったらしかったのだが、俺が【魔導雑貨商人】の効果処理をしている間に店員が通報、【ワイトキング】の目潰しに悶絶している間に到着して逮捕に至った。
「……しかし、現場検証とか言って客は全員追い出されファイルは買えずに終わったと……」
「あ、あはは……で、でもまた明日行こう!明日はきっと買えるよ!」
ゆまはポジティブだなぁ……一瞬羨ましく思った。元々閉店間際の時間だったってものあったような気がするが……
『あ、さっきのお姉ちゃんだ!』
ついさっき聞いた声に反応して前を見ると、カード奪われていた男の子がいた。母親らしき女性と一緒にいる。
『お姉ちゃん、さっきはありがとう!』
何故か俺を見てそう言ってくる。もしかして、俺のこと女だと思ってる……?女性もただ『息子のカード云々』とお礼を言ってるだけだ。ゆまは背を向けて笑いを堪えている。
「……俺、男なんだよなぁ……」
『『え!?』』
女性のお礼が謝罪に変わった瞬間だった。
『…………』
☆
翌日。
今度は朝早くゆまとファイルを買って店内でデッキを作成。元々デッキの中身は決めていたのですぐに作成終了。冬休みということもあって朝から客がけっこうな数いたので、調整を兼ねて数人とデュエルさせた。
『ねぇねぇ、この後ヒマ?俺達と遊びに行かねぇ?』
…………こんなナンパ染みたことをされることも少々あったが、全て『俺は男だ』の一言で一蹴。
「そういえばゆま、編入試験はいつなんだ?」
調整も終わった(しなかった)ので帰宅することにし、途中でふと気になったことをゆまに聞いてみることに。用紙を見たが、日程を見てなかったし。
「えっとたしか…………明日だったかな?」
「明日ぁ!?」
のんきにデッキ調整してる場合じゃなかった。ゆまの手を取り歩く速度を上げ帰宅。筆記試験に向けた勉強をさせる。まさか明日だったなんて……
元々龍斗の名前を適当に決めたんです。ある日TFに宮田ゆまっていたなぁ……と思い出し、宮田……ハッ!となり参戦の是非を問うたわけです。
次回はあるカード達が追加されます。使うかどうかは別として……