やはり鋼鉄の浮遊城での奉仕部活動はまちがっている。 作:普通のオタク
「怖いか?」
今一度、同じ言葉を投げかける。
こうして話しかけている間にも<リトルネペント>は俺を攻撃してくる。
鞭は突進のように単純な動きではない。避けたと思っても先端が背後から俺を叩くし、眼を離し過ぎると、いつ酸をかけられるか分かったものじゃない。
今の俺の心境は、超わかりやすい。この世界にきてグダグダと考える機会が増えたが、そんな時間も必要ないくらい明白だ。
だからこそ、言える。
「安心しろ。俺も怖い。超怖い。今すぐ逃げたいくらい怖い」
お前らが逃げ出しても、理解できるし、責めない。そう断言できる。
だが。
「それより怖いのは、自分のせいで誰かが死ぬことだ。そうして自分に責任がかかることを恐れている。俺はだからこうして手助けしてる」
お前らはどうだ。
そういう意味を込めて……危険だとは分かっていても……二人に視線を向ける。
自分の目先の貢献度に功を焦ったジン。
それを止められず、目の前の死に怯えて動けないコッタ。
その失敗が、動けないように自分を縛り付けている。
今このまま動くとしたなら、これ以上は失敗したくないという焦りからくる動きだろう。冷静さを欠いている以上、すぐに死ぬ。
だから。
「……なにもできないなら、逃げろ。邪魔だ」
俺は、ただ突き放す。
逃げた先にあるのは、蔑みと自己嫌悪。
俺と同じで、ボッチに入る道だろう。奉仕部内に居場所がなくなり、居づらく思うようになる。
だが、そうなればこの二人はこのデスゲームを最後まで生き残るだろう。
人に迷惑をかけず。
自分にできないことを人に頼らず。
どんな結果も自分自身の成果だと向き合う。
それをせざるを得なくなり、自分をどこまでも追い詰める。
「……邪魔? お前……俺が何も出来ないって?」
ジンが、ポツリと、言葉を漏らした。
コッタも、腰にかけたアイテムバックからオブジェクトにしたHPポーションを取り出し、飲み干している。
ああ、それでいい。ジン、お前は我が強い奴だ。ウェイウェイ言ってる奴等と同じと言っても良い。だから。
最後まで、バカらしく。単純な考えで動いてくれ。
奉仕部はお前らに場所を提供する。俺はお前らを雇い、利用する。
そこにちゃんとした罪悪感も持つ。
だから、お前らはしっかりと働いてくれ。自分らしさを損なわないように。
「……お前、ふざ、ふざけんなよ! 余計な手出しなんてなくてもなぁ! 俺はあそこから大逆転したんだよ! 邪魔はそっちだこのボッチ!」
アイテムストレージから、スペアのスモールソードを抜きながら、ジンは怒鳴り散らすように宣言した。
「コッタ! グズグズすんな!動けるようになったなら行け! ムカつくけどお前のほうが火力出るんだ! あいつからタゲ取り直してこっちで処理すんぞ!」
✕ ✕ ✕
俺が対峙した<リトルネペント>の処理は思ったよりも早く終わった。そりゃ、二人にタゲが向かないようにじわじわ切っていたから当たり前である。
ジンは舌打ちしながら森の手前へと戻っていき、コッタはまだオドオドしていたがジンについて行った。
調子に乗らないように舵切りさえすれば、あの二人が死ぬこともないだろう。
そう判断し、アルゴに手伝いをやめていいという旨のメッセージを送る。
このクエストが終わるのも、あとはきっと時間の問題だ。
プログレッシブ4のアルゴが可愛すぎてちょっと本気で書き進めた。森はこのまま@1話も巻きペースで終わらせます