やはり鋼鉄の浮遊城での奉仕部活動はまちがっている。   作:普通のオタク

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そして、少年少女らは

リトルネペントの胚珠は花を咲かせた個体のみがドロップする。

しかし、その花持ちの出現率はハズレ個体を倒した回数によってだんだんと上昇していく。つまり、効率よく花持ちをPOP(出現)させる手段とは、単純明快。

 

乱獲であった。

 

6人……シリカ、ギン、ジン、コッタ、ミナ、ケイン。彼らがとった手段は2人組の3隊に分かれての散策、各自討伐であった。

<リトルネペント>は確かに二人でかかれば今のレベルでも安定して狩れる対象だ。悪い手段ではない。

ただし、それは実付きの個体にヘタな攻撃しなければ、という注釈がつく。

実を破壊した場合、周囲の<リトルネペント>を引き寄せてしまうのだ。そうなっては、二人では対処ができないであろう。

いざとなったら介入する必要もあるかもしれない。

木の上から様子を眺めつつ、そんなことを考えていた。

今はクエストが開始されて1時間ほどが経過した頃か。流石に良いペースで狩っているが、花つきはレアエネミーだ。そうそう姿を表すことはない。

3隊に分かれた参加者たちは30分に一度集合し、成果報告をしているが未だに釣果は0のようだ。

再び別れ、乱獲を再開する3隊に思わず溜息をつく。

監視する側として、こうも別れられると面倒なんだもん……。

 

 

✕ ✕ ✕

 

 

ひとまず3隊の内訳を確認しておくことにする。

まず、短剣使いのシリカ、片手直剣使いのミナの女性陣チーム。

ミナをフロントに、シリカが背後を取ってウィークポイントにクリティカルを決めていく、安定感の有るチームだ。連携も悪く無く、なによりだいぶリラックスした状態で挑めている。ここがヘマをすることは……序盤は、ないだろう。油断はできないが、特別警戒する必要もないと思われる。

 

次に由比ヶ浜が主に世話をしている子供……ギン。これまた安定の片手直剣使いである……と、雪ノ下が推薦したケイン。ケインも片手直剣なのだが、それだけでなく大盾を装備した……いわゆる壁役であり、率先してリトルペネントの正面に立ち、そのつるによる攻撃を盾で受け止めていた。

モンスターの攻撃を一身に受けるというのはどれだけの恐怖と戦うことになるのか。俺には想像もできないが、なるほど。スノウが推薦した理由はその辺りにあるのかもしれない。

ギンはギンでウイの教育が良いのだろう。ケインと積極的に言葉を交わし、状態を確認することを怠らない。連携の基本をしっかりと抑え、負担が行き過ぎないように動く。

気配りができている、といえるだろう。安全マージンを多めに取っているようで、討伐数こそ他の二組に劣っているが、長時間戦い続けるということでこのコンビは他の二組より優れていると言えるだろう。

 

問題は、3組目であった。

 

ジン……俺が指示を出していた片手直剣使いだ。レベルこそ高いが、我が強めで、戦闘が雑だ。

そして、相方も……コッタも悪かった。

いや、この言い方は正確ではないだろう。コッタとの相性が悪かった。

コッタはジンと同年代の男子であり、ブレーキ役にならないのだ。

片手斧を振り回し、喜々として突撃していくコッタに、対抗心を燃やしてジンが走る。

討伐数で負けてると焦ったジンが突っ走り、コッタが弱ったところに剣系統の武器より火力が出る片手斧でトドメを刺してしまう。

 

その結果、今はかろうじて連携の形を取っているが、みるみる間にその連携は雑なものへとなっている。

討伐数では間違いなくトップだが、負傷やダメージコントロールができていないのだ。

 

チッ……と、思わず舌打ちをする。

やはり、時期尚早であったかと自己嫌悪に陥りそうになるが、今はソレよりも優先することがある。

メニューアイコンを開き、アルゴに現状を報告。他の2パーティーの監視を頼み、いつでも介入ができるように俺はこのチームの監視に専念することにした。

 

 

✕ ✕ ✕

 

 

一つ目のリトルネペントの胚珠が手に入ったのはそれから2時間後のことであった。

手に入れたのはシリカとミナの女性陣チーム。

ギンとケインのチームは素直に賞賛し、自分たちも、と意欲を高めた

シリカとミナの女性陣チームもやはり手に入れれたことが嬉しいのか、士気は高い。

 

だが、一人。それを気に食わないかのように、機嫌を悪くするメンバーが居た。

ジンだ。

面白く無さそうに、30分に一度の合流、休憩を兼ねた報告を終えたジンは森の奥へと向かっていく。コッタもそんなジンの姿を追って森の奥へと向かってしまった。

「アルゴ。そっちの二組は引き続き頼んだ」

追いかける前にアルゴに声をかけると、分かっているというように頷いて返してきた。

「ああ。代わりにオイラの時も参加しろヨ?」

「分かってる」

元からそういう条件でメール送ったしな。

会話をこれで切り上げ、二人を追って俺も森の奥へと潜っていった。


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