人生二回目でヒーロー目指します   作:74

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少し忙しく書くのが遅れてしまいました。




9.理屈じゃない

 

私、石弦にとって相澤消太は、緑谷出久にとってのオールマイトと同義である。

 

 

13号が言っていた様にこの超人社会は個性の使用を資格制にし厳しく規制している。

 

数ある理由の中の1つにそれはいきすぎた力を得てしまった事で呼び起こされた人の残忍な感情から起こる犯罪を防ぐためだという理由がある。

 

それ故に人を救うヒーローという職業ですら資格とされている。

 

そんな社会において私という存在は異端もいいところである。

 

資格を持っていないのにヒーローの様に個性を使い敵を捕まえてしまった。

それも1度や2度ではなくもう両手の指では足りない程に私は敵を捕まえたり人を助けたりししてしまった。それも全てで成功という結果を残してしまっているのだ。

私という異端を面白がったメディアにより私は取り上げられ決して少なくない支持を得てしまった。

 

 

しかし当然私の存在を良く思わない人達はいた。

 

 

私は天狗になっていた。

 

正義の味方の様に敵を倒し、人を助けて賞賛されて調子に乗っていたのだ。

 

ヒーローの真似事をしていること事態が無資格の違法な個性の使用という犯罪に他ならない事に気づいていなかった。メディアが取り上げ支持を得てしまいさらに未成年だったことも有り違法者として裁けなかったのだ。

 

自分の名前があるサイトを見つけて調子に乗っていた私は嬉々としてサイトを開いた。そのサイトが私を批判しているサイトだとは知らずに。

私はネットで叩かれた。

 

私は愕然とした。

自分が犯罪を犯していた事に。私は正しいことをしている自分に酔っていたんだと気づかされた。私はそれ以上見ていられず電源を切りベッドで布団にくるまった。

そして自己嫌悪した。なんて自分は気持ちの悪い存在なんだろう。調子にのってヒーロー気取りなんかして本当に馬鹿でしかない。応援してくれる両親に申し訳がない。そんな風にぐるぐると思考し明け方を迎えた。

 

 

日課のランニングを初めてサボった。

自己嫌悪しつつも学校にいった。

放課後に道場も行かず公園でベンチに座っていた。

 

「弦じゃないか。こんな所で何してる。」

 

そこに現れたのが相澤さんだった。

 

いつもの猫背で少し眉を寄せ訝しげに私を見ていた。相澤さんは私の顔を見てから私の横に座った。ただ黙って座る相澤さんに私は誰かに聞いて欲しかったのか自然と話していた。相澤さんは黙って聞いていてくれた。

 

話し終えた私に相澤さんがかけた言葉は一言だった。

 

「それでお前はどうしたいんだ?」

 

その言葉に私は言葉に詰まった。自分みたいな奴がヒーローになれる訳がないとも思う。なら諦める事を選択するべきだ。だけど私は諦めるの一言が言えなかった。理由は応援してくれる両親に悪いからとかそういう理由ではなくて、もっと自分勝手な理由だった。

 

 

「私は、諦めたく・・・ない!」

 

 

ただ私が諦めたくないから。ヒーローになりたいから。そんな私の為の理由だった。

そんな私に相澤さんは軽く言った。

 

「なら、なればいい。」

 

「は?」

 

呆ける私になおも相澤さんは言葉を続けた。

 

「どうせお前の将来の事だお前が決めればいい。ここで諦めるだとか言っても俺は止めない。

だがこれだけ言っとくが、お前が捕まってねぇのはお前がやったことが市民にとって正しい事だったからだ。ヒーローが間に合わないその状況でお前が動いた事で確実に救われた人が存在した。どこもおかしいことじゃない。むしろ褒められて然るべき事だ。」

 

相澤さんはため息をついてから私を見て不機嫌そうに続けた。

 

「大体お前は気にしすぎなんだ。ヒーローは良くも悪くも注目される存在だ。いちいちネットの書き込みで落ち込んでたらヒーローなんてやってられねえよ。それにお前はそんな書き込み1つで困ってる奴のこと見捨てられるのか?」

 

「そんな事できません!!・・・ぁ。」

 

思わず反論してしまい自分に驚く。相澤さんはそんな私に口元を緩めて言った。

 

「だろうな。」

 

そして相澤さんはベンチから立ち上がり目線のみ私に向けた。

 

 

「弦、お前にはヒーローの資質がある。少なくとも俺はそう思ってる。」

 

 

そう言って去って行った相澤さんの背を見つめる私からは迷いが消えていた。

私は認めて欲しかったんだ。私のやっていた事が間違いではなかったのだと。人の為になっていたのだと。諦める必要などないのだと。相澤さんは当然の様に私に欲しい言葉をくれた。

ヒーローになりたいならなればいいと肯定してくれた。資質があるとまで言ってくれた。嬉しかった。

 

 

相澤さんのこの時の言葉で私は今まで以上にヒーローになりたいという気持ちが強くなった。

ネットで私の活躍も見るのをやめた。まだ批判が怖いというのもあったが1番は慢心しないため。

 

 

 

この出来事がきっかけで私は緑谷出久がオールマイトに憧れる様に、イレイザーヘッドに強く憧れを抱くようになったのだ。

 

 

 

私、石弦にとって相澤さんは憧れと同時に両親と同じ程に敬愛する存在なのだ。

 

 

 

そんな相澤さんの血だらけでぐしゃぐしゃになった右腕を見て眉間に皺が寄る。

こうなると知っていたのに間に合わなかった事に自分を責める。

 

 

「弦、おまえの敵う相手じゃねぇ!おまえなら分かるだろ・・・逃げろ!!」

 

 

自分もぼろぼろなのに人の心配をする相澤さんに格好いいと思わされる。あぁ、この人はやっぱりヒーローなんだ・・・。

 

「敵う相手じゃない?そんなの気づいてますよ。それにこの場面で私が参戦しても勝てる算段もないし合理的じゃないのも分かってます。」

 

相手は対平和の象徴に改造された存在、敵うわけがない。

 

分かってる。それでも私は逃げない。

逃げるなんて選択肢は存在すら許さない。

 

 

「なら・・・!」

 

 

必死に言いつのろうとする相澤さんに私は軽く笑って答える。

 

 

 

「すいません相澤さん。

 

 

理屈じゃないんです。」

 

 

 

「バカ野郎・・・!!」

 

 

 

あなたが傷つけられて私が黙っている事なんて出来ないんです。

例えそれをあなたが望んでいなくても。

 

 

 

まだまだ弱い私だけど、あなたを必ず守るから・・・。

 

 

 

私は一歩踏み出して“脳無”と“死柄木弔”を睨み付けた。

 

 

頭は不思議と冷静で自暴自棄に突っ込むなんて考えはもちろんない。

 

勝つ事が目的ではない、飯田くんが助けを呼びに行き黒霧が現れるまで時間を稼げば良い。

ここで私が助けの来る前にやられてしまえば結局相澤さんも出久くん達も殺される。

焦っては、いけない・・・。

 

 

「なに君いきなり現れて助け出したりしてかっこいいなぁ・・・かっこいいね・・・イレイザーヘッドに惚れてんの?どうでもいいんだけどね・・・。君子どもじゃん・・・そんなヒーローみたいな事してるとつい殺しちゃいそうだなぁ・・・。まぁ殺せばいっかぁあ・・・。」

 

 

死柄木弔の言葉と同時に走り出し糸を伸ばして一瞬で脳無の後ろへ移動し背後から後頭部を思い切り蹴る。

 

「っ・・・!!」

 

直感でその場からすぐ飛び退く。

私が今いた位置に避けた一瞬後に脳無の拳がありクレーターが出来ていてゾッとする。避けてなければやられていた・・・!

私は今の腕の動きがほんの一瞬見えていて気づけた。

おそらく、いや絶対的に敵は本気を出してはいない。時間稼ぎを目的としている私からすれば好都合。死柄木弔も特に何もせず傍観しているのもありがたい。相手からの攻撃に移らせないようとにかくヒット&アウェイで攻めるしかない。

 

全神経を脳無に集中させる。

 

糸を伸ばすと同時に踏み込む。

 

 

「ふっ・・・!」

 

 

頭上に移動し蹴り掛かるが脳無の肩が動く。即座に糸で背後に移動ししゃがみ込み足払いをかける。しかし蹴りの衝撃は脳無の足に吸収され無意味となる。瞬時に左へ飛び脳無の拳を避ける。

 

脳無の動きが床を殴ったままの体勢で止まる。

 

足払いをかける時に着いた手から糸を床に貼り付けておいた。私のいた場所を必ず攻撃するのでそこに罠を仕掛けたのだ。案の定引っかかってくれた。いつまで糸が持つか分からないが、この好機を逃すわけにはいかない。

即座に距離を詰め脳無の空いている左手を胴体ごと糸で巻き付けて固定する。また動こうとして動きが止まる。今度は両足を囲む様に巻き付け・・・

 

「っ!!」

 

咄嗟に悪寒がして避けると今いた位置に死柄木弔の手があった。

脳無に集中するあまり死柄木弔が頭から消えていた。今避けられたのは本当に運が良かったとしか言えない。背中に冷や汗が流れた。

 

死柄木弔は脳無に巻き付けられた糸に触れた。

 

 

ボロ・・・ボロボロ・・・

 

 

糸は崩れて落ちた。これでまた振り出しに戻った。それだけではなく傍観していた死柄木弔も参戦するかもしれない。状況は最悪だ。

 

死柄木弔が私に顔を向ける。

 

「君なかなかやるねぇ・・・脳無の攻撃を先読みしてる。最近の子どもはすごいなぁ。でもそろそろ・・・飽きたんだよね。だからさぁ・・・

 

脳無、殺せ。」

 

 

「!!」

 

 

それは前世で似たシーンを見たことがあったからこそできた1度限定の奇跡に他ならない。

 

漫画でもオールマイト以外目視すら出来ていなかった超スピード。

 

死柄木弔の言葉が終わると同時に私はただがむしゃらに横に飛んだ。

この判断が正に私の命運を分けたと言って相違なかった。

それでも完全に避けきる事は出来ず口から血を吐く。

 

脳無の拳が脇腹を掠めた。

 

ただそれだけの事で血を吐く程のダメージをもらった。真面目に化け物だ。今の攻撃がもう一度来たら今度は確実に食らう。動き出すより早く避けなければ避けられないのだ。今の万全の状態ですら掠められ、尚且つ肋骨も数本折れ内蔵にもダメージを食らい万全ではなくなった。

 

詰んだ。

 

状況的に死ぬのだと理解したが後悔はしていなかった。

原作では相澤さんは両腕と顔面に骨折を負いさらに眼窩低骨がこなごなになり目に後遺症が残る可能性があるとまで言われていた。私1人の存在でその未来を変えられた。目への被害を防げた。

それだけで私は笑えた。

 

脳無がゆっくりと体をこちらに向ける。

 

 

 

あぁ、ここまでか・・・。

 

 

 

ズズズ・・・ズズ・・

 

 

「死柄木 弔。」

 

「黒霧、13号はやったのか?」

 

死柄木弔の意識が黒霧に逸れてそのせいか脳無の動きも止まる。

 

助・・・かっ、た・・・??

 

気が抜けそうになるが堪える。まだ敵は目の前にいるのだ。今はズキズキと痛むダメージに感謝した。

私の事は眼中から外れた様で死柄木弔と黒霧は会話を進めていく。

 

「今回はゲームオーバーだ。帰ろっか。」

 

私はその言葉を聞き警戒する。まだ!まだ安心するなっ・・・!

 

「けどもその前に平和の象徴としての矜恃を少しでも・・・

 

へし折って帰ろう!」

 

 

ただ一心に糸を伸ばした。

 

 

「っは、はぁはぁ・・・!!」

 

 

隣にいる梅雨ちゃんの無事を確認する。今のダメージでは引き寄せるのは1人が限界だった。

 

 

「本当にかっこいいぜ・・・君。でもまだ甘いね。」

 

 

また糸を伸ばすが届かない。出久くん達がやられてしまう・・・!!

しかし死柄木弔の個性は発動せず出久くんが咄嗟に攻撃に移る。

 

 

「脳無」

 

 

SMOSSH!!!

 

 

「え・・・?」

 

出久くんのSMOSSHで一切ダメージを受けていない脳無に驚き出久くんの動きが止まる。

 

「いい動きするなぁ・・・。スマッシュって・・・オールマイトのフォロワーかい?

 

まぁいいや君・・・」

 

 

 

バアンッ!!

 

 

その時、ドアを壊して現れたのは正に希望。

 

 

 

「もう大丈夫。

 

 

私が、来た!!!」

 

 

 

平和の象徴だった。

 

 

 




相澤さんが主人公のヒーローであることを書きたかったんですが伝わったでしょうか?
私は心理描写が特に苦手なので書けているか不安です。
死柄木弔さんの口調もあってるか不安です。


避ければ何かアドヴァイスなどをいただけるとありがたいです。

質問感想お待ちしてます。

今話も読んでいただきありがとうございました!

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