女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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さてこんにちは。これまたな6話目でございます。

自信の誕生日までに今までの話含めて22話書きたいなぁと思いつつ、絶対無理かも。なんてことだ。

今回はあの転生者にもう一つの能力が発覚!でもおさわり程度のために微妙な6Sz、どうぞ!


6Sz 決裂接合

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……動けねぇ。

 ………また、死ぬのか。

 俺の前で勝ち誇ったように雄叫びを上げる赤い竜。『帝竜』、ウォークライ。ぶざまに、血だまりの中で横たわっている俺。血って、なんだかぬるくも冷たくも感じる。…何言ってんだよ俺。

 

 『死ぬ』んだぜ。また。一回目の死は自覚すらもねぇから、これが初めての死亡体験になる。

 

 って、何言ってんだよ本当に。頭ぶち抜かれてイカれてんのかよ。自分で自分をツッコミながらも、それが弱弱しくなっていた。

 自分の状態の再確認、だったんだろう。何の冗談なのか、四肢は無事だった。でも、確認できるだけの状態。………瀕死状態なんだろう。

 

 ………ほんと、なんで転生初日でいきなり死ぬんだよ。結局普通に死ぬのとかわりねぇじゃんか。

 

 こうなったのも、全部、俺のせいだよな―――――――――

 

===============

 

 扉が開く。めちゃくちゃ遅く感じたエレベーターがようやく開いて、俺はすぐに出ようとした。

 

 直後、トラップでも仕掛けていたように、『物体』が飛んできた。

 

 グチュリ、と言う音。肉を壁に撃ちつけた音。

 

 …………え、今のは………。

 

 確認してはいけない。してしまったら、正気を失う。やめろ見るな。見るな。今は目の前の敵に向かって武器を振るうだけでいい。確認なんて後でできるだろ。だから、見るな………見るな、見るな!!!

 

「…………」

 

 人間ってのは、基本的に怖がりの筈なのに、怖いもの見たさで何が何でも何かを見ようとする。お化け屋敷だって、嫌だ嫌だ行ってもつい行っちまう。本当に怖がりで入りたくない人とか例外はいるけど、基本はそうだろ……。

 

 あぁ、つまり、『見てしまった』。

 

「……あ、あああ!!!」

 

 悲鳴を上げる。意識を一瞬失う。いや、その時は本当に一瞬だったのかは分からない。

 

 気が付いた時には、二人が戦闘態勢になっていた。俺を護るような形。

 

 ……やばい。二人とも戦っている。力にならなくちゃいけない!

 

「…テメェ!!!」

 

 全力で突っ込む。さっき見たドラゴンと一緒の姿だ。でも、今はたったの三人だけ。

 

 逃げる、っていう選択肢はこの時の俺の頭の中にはなかった。

 

 復讐。ある意味、俺の知っている中で一番近い意味な状態だ。

 

「喰らってろ!!」

 

 胸部部分に短刀を突き刺す。やっぱり、それなりに固い。でも、突き刺せられないってわけじゃない。さらにそこに俺は特殊な力―――多分、MANAって力―――を使って毒素に変換。もう一発。ドラゴンが悲鳴を上げる。効いたか。

 

 今のはトリックスターのスキル、『スコルピオ』。攻撃と同時に確率で毒を与える。トリックスターが暗殺者と言われる所以だろうな。

 

 まだ、終わりじゃねぇ。さらに俺は一点をさらに突き刺す。まだだ。こんなんじゃねぇ……死ねよ、死ねよテメェ!!!

 

 

 

 

「落ち着けテメェっ!!」

 

 気が付いた時には俺は誰かに腕を掴まれていた。はっとしてまた我に返る。ジョウトだ。

 

 ………いつの間に?……何で……?

 

 俺はいつの間にか、空を見上げて、ただ一点に向かって短刀をぶん回していただけらしい。寝ている状態で。

 ………ど、ドラゴンは?

 

「とっくに死んでる。…でもテメェが何度も何度も突き刺したからオッサンが無理やり寝込ませたんだぜ」

 

 ………俺、正気を失っていたのか…?

 

「だから、嫌なんだ」

 

 誰かの声が聞こえた。絶対ヒカイさんだ。身体だけを上げて、辺りを見渡してヒカイさんを見つける。……怒って、るよな絶対……。

 

「素人が出たら大抵こうなる。抑えるべき感情を抑えずにただ目の前に向かって殺しにかかるだけの狂戦士になるだけだ。……若者は特にな」

 

 ………………。俺は言い返す言い訳もない。

 戦場って、そんな感じなんだろうな。

 

「ロナ。お前はすぐに試験を降りろ」

 

 なっ、いきなり……!!

 

「今後それが続く。すまんが、私はあきらめが早くてな。だから、降りろ」

 

 ……それってつまり、戦力外ってことだろう。ジョウト以下の。

 

 でもよ、いきなりそんなこと言われて反論できないわけねぇだろうよ!!

 

「何でいきなりそんなこと言うんだよアンタ!!俺だってな…!!!」

「俺が?俺がなんだ?死んだ誰かのために戦ったって言うのか?…今の戦闘じゃ、それが見受けられんな」

 

 なっ……!!!

 

「先ほども言っただろう。目の前に向かって殺しにかかるだけの狂戦士だお前は。戦場に出るってことは、それを乗り切らなくてはいけんだろうが。もう少し考えたらどうだ?」

 

 ………なんだよ、またさっきの現象に陥ったら、またあんなふうになるってのかよ!!

 

「じゃあなんだよ!!俺ってそんなに頼りねぇのかよ!!……確かに頼りねぇかもしんないけどよ!!力になるって言ったのは誰だよ!!言えよ!!!」

「力になるとはいった。…だが、それは『君』じゃないからだ。……君じゃなくて『お前』だ。今のままではな」

「ふざ、…けてんじゃねぇ―――」

「バカなのはテメェらだろうが!!!」

 

 ジョウトの横槍。その怒声を受けて俺は一瞬動きを止めた。

 

「さっきっからギャーギャーわめきやがってよ……ただ自分の主張を押し付けているバカ共だろうがよ!!辺りを見渡せ!!」

 

 ジョウトはそれだけいうと、舌打ちして何処かへと早足で歩いて行ってしまう。追いかける?……できるわけねぇだろうよ。それって自分が悪いって意味だろ。

 ……一応、辺りを見渡す。

 

 ……ひどい光景だ。死体が見つからなかったのが救いだっただろう。辺り一帯は血だまりに染まっていた。……ところどころに突起物っぽいのがあるのは、絶対気のせい………だよな………。

 

「待て。どこに行くんだ」

「野暮なこと聞くんじゃねぇよクソジジイ。俺は降りるぜ。こんなくそったれなテメェらと組みたくねぇな」

「あぁそうかい。まぁ構わん。止めやしない」

「止めようが無駄だぜ。…まず、テメェの頭を冷やしてから止めるこった」

 

 ………………

 俺はこの光景を見て、どんどん崩壊していくのが分かっていた。若干だけど、クールダウンしたからだろう。

 それと同時に、俺らのそれぞれの伝えたい思いが分かった気がする。多分、違うけど…

 

 ヒカイさんは俺に戦いを降りさせようとした。それってつまり、俺が死ぬ光景をないからだろう。内心は、多分違うと思うけど信用してくれていた。

 ジョウトは俺らのことをバカ共と言った。確かに、よくよく冷静になって振り返ると、俺のは完全に自己主張だっただろう。それに、この状況。とにかく、俺に見せたく、そして、ヒカイさんのその言葉が間違っていることだと言いたかったのかもしれない。違うかもしれないけど。

 そして俺は、怖かった。弱みをこれ以上見せることに、足を引っ張りたくないとも。

 

 それらが激突して、崩壊した。

 

 事の発端は、俺だ。全部、俺のせい―――――――――。

 

「……!!二人とも、上だ!!避けろ!!!!」

 

 突然、圧倒的な存在感と殺気を感知したように俺は上を向いた。確認も取らずに。

 

 …ッ!!嘘だろ、二人とも、こっちに気づいてない………!!!

 叫ばなきゃいけない。赤の他人じゃないんだよ、二人とも―――!!

 

「避けろって、――――――いってんだよ!!!!」

 

 ドスン。遠くのほうで、何かが地面に降り立つ。

 

 ………でけぇ。さっきの竜より倍ぐらい大きく、それ相応の存在感がある。そいつは紅い。まるで、返り血でも喰らったように……

 

 ……まて、二人は!?

 

 ……確かに初撃は避けていた。でも……!!

 

「や、やめろ!!!」

 

 俺の声は、届かなかった。

 

 ドラゴン、『ウォークライ』はそのまま、剛火球で二人を一掃した。

 

 こっちからでも伝わる。完全に場違いな破壊力。二人はなすすべもなく、吹き飛んだ。

 ドシャ。俺の近くに血だまりを蹴散らしながら激突する。

 

 ………

 

 ………

 

「……――――――ッ!!!」

 

===============

 

 あの後の事は覚えていない。

 

 …いや、覚える隙もないほど、一瞬だったんだろう。

 

 訳の分からない叫びをあげて、俺は突貫した。そしてこの有様だ。……何にも反省してない。そう、何も。後悔したところで、代償は大きかった。

 

 身体も痛いし、心も痛い。どこかしら折れているはずだし、意識もなくなりかけているし。

 あぁ……俺、死ぬんだな。

 

 ……『だからだめなんだ』

 『死にたいと思うからこそふさぎ込んでしまう』

 

 右手が……熱い。

 

 『それを一瞬で力に変えたのはロナの強さだ』

 『さっさと行こうぜ。こいつが変な意味で死ぬ』

 

 左手が……冷たい。

 

 『キミの力が必要だ』

 『こいつでましになったろ!』

 

 遠くから声が聞こえてきた。……生存者がなんたらって。いいよ、今の事は。

 

 『答えは『力になってあげたい』。だ』

 『じゃあ、力貸してやらァ』

 

 二人が力を貸してくれたんだ。俺に。

 絶対返さないけど、貸したままじゃ嫌だ。

 

「……………」

 

 まずい、意識が、途切れる。

 ウォークライが、俺を、食おうと。

 

「…………」

 

 両手をかざす。何をしたいのか分からない。

 別にいいよ。

 二人を、

 

 

 

 

 

 俺に『生きる』を与えてくれた仲間を護れるなら―――!!!

 

 

 

 

 

 

「――――――!」

 

 

 

 

 叫びながら、両腕に籠った力を―――

 何の確認も……いや、確認する間もなく、俺の意識は急速に沈んでいった―――


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