女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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また1か月かかってるじゃんこの人!

というわけでお待たせいたしました。多分後1話か2話でやっとChapter6が終わります。……長すぎた。(年月的な意味で)

あと、多数の評価をいただいたおかげか、機能で読み上げが出来ているようです。これもひとえに皆さんのおかげです。本当に、本当にありがとうございました。

……でも読み上げ機能使うと可笑しな読みになることもあるから自己責任でお願いしますね?

というわけで66Sz、どうぞ。


66Sz センパイ=ライバル

「よ……っとぉ!!」

 

 襲い掛かってきたマモノを、フウヤは両手に持ったナイフで一閃し、斬り裂く。裂かれたマモノはバタンと倒れると霧散し、消滅した。

 

「おーい整備班さんよぉ。いつになったら終わるんだー?」

 

 フウヤが遠くで設備をいじっている整備班の一人、といっても彼にとっては誰でもよかったわけだが、その中の一人が「もう少しー!」と大声で答える。その声に、溜息をつくフウヤ。

 

「もう少し……ねぇ。数分ならともかく、十分以上かかったら容赦しねぇぞ」

 

 と、呟くように小さくいう。

 そんなフウヤの前に、赤髪のサイドテールの女性が現れた。アオイだ。

 

「こーんにちは」

「なんだよ急に挨拶しに来やがって」

「いえ。そういえばちゃんと声かけてなかったなーって」

 

 そう言ってアオイはそこから少し離れ、遠くにいる整備班をじーっと見つめてからフウヤに向き直る。

 

「それにしても意外ですよね?」

「何がだ?」

「いえいえ。センパイが貴方を作戦の護衛に入れる代わりに後でタイマンしてあげてもいいって承認してたの」

「………いやあれ本人の意思じゃねーと思う」

「えっ!!?」

 

 アオイはすごく驚いた。まさか本人の意思ではないと言う事に。いや、逆に本人の意思ではないことだけは素直にほっとしていた。もし本当だったら、ちょっとセンパイを疑うところだった。とアオイはそう思うのだった。

 フウヤは続ける。

 

「だってあんだけ人を傷つけるのが怖いんですー。とか言ってるやつが急に『分かった』とか言い出すんだぜ? 気味悪いったらありゃしねぇ」

「ちょっとー。センパイのことをそんな風に言わないでください!」

「センパイ? アレが?」

 

 なんであれが、と言わんばかりにあざ笑うフウヤ。そんな態度にアオイはむっと頬を膨らませる。不機嫌な表情のままにアオイは続けた。

 

「そりゃセンパイはセンパイですから! 私の方が後から入ってきたのでコウハイなんです!」

「そういうもんかねぇ」

「そういうもんです! それに……」

「それに?」

 

 何故か勿体ぶっていじわるな笑顔を浮かべるアオイ。フウヤは「あーそういうことね」と勝手に理解してその場から立ち去ろうと、クルリと回ってどこか行こうとした。勿論アオイは慌てて阻止してまたフウヤの前へと現れ出る。

 

「ちょちょちょ、ちょーっと待ってくださいよ!? そこ普通『それになんだよもったいぶらずに話せ』って言う場面でしょう!?」

「は? 面倒くせぇよ。聞いてる時間あるならオレはその辺のマモノ狩ってた方が有意義だし」

「じゃあここで言います! 聞きなさい!」

 

 もう逃がすか、と言わんばかりにフウヤの両腕を掴むアオイ。その行動に流石に観念したのかフウヤはわざとらしくため息をついた。

 

「はーいはい分かりました。ソレニナンダヨモッタイブラズニハナセー」

「そうですそうです! 最初からそう言えばいいんですよ!」

 

 何故かアオイは得意げだ。

 

「センパイは本当に強いし優しいですからね。きっと私に持ってないものを持ってます。もし私が先に入ってたとしても多分、尊敬してたし憧れてましたよ」

「うっそだろ? 多分だがお前の方が経験あるし戦闘慣れもしてるだろうが」

「そうだとしてもです。……多分ですけど、この世界を救うのもセンパイ達13班じゃないかな、と思います」

 

 アオイは手を離した後、ゆっくりと下がって見上げる。地下道故の薄暗さが、まるで天井などないような気分に錯覚させる。

 フウヤは肩を竦めると、そこから離れ始めた。離れつつも、呟く。

 

「まぁそんなよえーやつでも、オレとタイマンして一応勝ったからな。そこは認めてやるよ」

「……ふふっ。魅力に気づいてくれて何よりです」

「だが気をつけな。お前さん死んだらアイツ弱体化するぞ? そしたら許さねーからな」

「おやおやぁ? 気遣ってくれるんですか」

「ちげぇよ」

 

 フウヤは振り返り、口元をゆがめて笑う。

 

「せっかくやりあうなら万全の態勢でねぇと困るんでな。やっぱ全力出させて完膚なきまでにねじ伏せたほうがいいだろ?」

 

 それだけ言ってまた身体の向きを変え、何処かへと歩く。恐らく開発班の元へと、だろう。

 きっと他の人にとっては呆れてものも言えなかった態度でフウヤは言ったつもりだった。

 だがそれを聞いていたのはアオイだ。能天気なアオイはクスリと笑い、誰にも聞こえないように、誰もいない方向へと向き直る。

 

「つまりセンパイはライバル、ってことですね」

 

 そんなつぶやきをポツリと漏らす。

 

 やがて開発班の準備が完了し、連絡が行き届く。

 後は帝竜をおびき寄せ、光を当て、討伐するだけだった。


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