女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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Q お前どんだけ時間かけてんだ。
A 申し訳ない。

というわけで……やっとお待たせしました。65Szの、そしてChapter6の折り返し地点の話です。
ただこれを書き始めたのが結構前で、それなのにこれだけしか書けていないので数年前ほどの出来ではないのはご了承ください。(別に数年前も凄いとは思ってませんが!)

というわけで、65Sz、どうぞ。


65Sz 戻る必要性

 ヒカイさんからいろんな話を聞いた。

 元々ヒカイさんはナツメさんの下にいたこととか、それから家族の事とか。俺の話はしなかった。

 家族のことは俺が何となく聞きたかっただけだ。でも、ヒカイさんは普通に話してくれた。

 

 ……どうも、ヒカイさんの家系は武術に長けていたらしい。通りで強そうな雰囲気を出していたわけだ。ただ、武術に長けていたとはいえS級ではなかったらしい。ヒカイさんだけが異質だった、と言うべきだろうか。

 それに感づいたのは20代になる前だった。正確な年齢はもう覚えていないようだった。そんな自分が嫌だったのか、それっきり武術はやめ、医学を学んでいた。そうすれば、父を超えられないように出来たのでは、と当時のヒカイさんは思っていたらしい

 

「つーかナツメのこと、何で今まで黙ってたんだよ」

「聞かれなかったからな」

 

 まぁそりゃそうだ。俺だってあんまり聞きたいとは思ってなかったし、まさかそういう関係とは思わなかった。

 ……いや待てよ。でも、ヒカイさんからすれば、『ロナ』はナツメのことを知ってると言う事になる。

 でも、『ロナ()』はナツメのことを全く知らなかった。だからこそ聞かれなかった、ということにもなる。

 ……何か話がややこしくなってきたぞ。とりあえずこの話は一旦置いておこう。

 

「とはいえ、正直な話……ナツメがこうした手段に出ることに関しては予想はしてなかった。どんな人であれ、上に立つ以上相応しい行動をする人だと思っていたからな」

 

 そう言われればそんな気もする。

 何で気づけなかった、と言われればそこは仕方ない、としか俺は言えない。

 だって、今までの話によると、ヒカイさんとナツメはただの協力相手なんだろう。少なくても、ナツメにとっては。ヒカイさんはどうなのか分からない。……聞きたいことでもあるけど、でも……今は聞くときじゃない。

 

「上に立つ……か」

 

 ふと、そんなことを無意識に呟いた俺。……別に、ナツメのやってることは正しいとは全く思ってない。

 てか、今の話聞いてたらただそれは責務から逃げてるんじゃないのかって思っただけだ。

 

「……とにかくだ」

 

 一旦話を仕切り直すように俺は二人に言う。

 

「とにかくジョウトは知りたいことを知った。ヒカイさんは言うべきことを言った。二人ともそれでOK?」

 

 そんな俺の言葉に、ヒカイさんはゆっくり頷いた。ただ、ジョウトはまだなんか納得していない。

 ……正直なとこ、俺は不安だ。このままの状態で戦ったら……また分裂しそうな気がして。

 怖いんだ。

 

「……なぁ、ジョウト」

 

 言葉を慎重に選ぶ必要がある。だから俺はゆっくりとした口調で、続ける。

 

「………なんか、ゴメンな。置いてけぼりにしたみたいで」

「別に……」

「別に、じゃねぇよ」

 

 俺は若干苦笑しつつも、続ける。

 

「まぁでも、これからは一緒だからな。相手の過去も知ったし……って、あ」

 

 そう。過去。

 

「……なぁジョウト、やっぱ俺の過去も晒したほうが良いか?」

 

 それじゃ不公平だろ、と付け加える。

 俺はジョウトの過去をちょっとだけ知ってる。ヒカイさんの過去も知ってる。

 ヒカイさんは俺の過去を知ってる。ジョウトの過去は……知って、る、のか? ここは保留。

 ジョウトは………俺の過去を知らない。

 だから、まるで俺自身が平等じゃないような気がして、そんな風に思った。

 ジョウトが答える。

 

「バカ野郎。誰がテメーの過去なんざ聞きたがるか」

 

 よしぶっ飛ばす。

 

「……ワリィな。こっちもつい意地張っちまった。俺なんかいなくても二人でどうにかしちまいそうだったしな」

 

 手を振りつつ、ジョウトが答える。なんだこいつ、結構素直なとこあるじゃん。

 

「まぁとりあえずオレから言いたいことは一つ。オッサン、ロナに謝れよ」

 

 …………は?

 え?

 ………ヒカイさん俺に何かやらかしたのか?

 

「あぁ……そうだったな」

 

 忘れてた、と言わんばかりにヒカイさんが立ち上がり、俺に向かって頭を下げ、謝罪の意を示す。

 もちろん俺が、それがなぜなのか分からず焦ったのは言うまでもない。

 

「すまない。どうしても無理してほしくなくて……だからこそあの場面で手を上げてしまった」

 

 手を………あげた?

 

「………え、いつの話ですか?」

 

 まじでいつ?

 

「……渋谷の時だ」

 

 何かちょっと、驚いたような表情でヒカイさんが言う。

 渋谷? …………あー。そうか、そうだな……。思い出した。でもそれは……。

 

「いや、俺自身は覚えないので、そのことで謝られても………」

 

 嘘だ。覚えてる。でもそれは俺自身が悪いことだってことは自覚している。

 けどそれで覚えてる……と言ったところで何か変わる?

 だからこそ、覚えていないと誤魔化した。それはただ単に罪悪感だけではなく……俺の予想通りの光景を見たいからだ。

 案の定、ヒカイさんは申し訳なさそうに、だが何か言いたいがどうすればいいかを悩む顔になり、ジョウトは「お前なぁ……」と呆れた顔になっている。

 あまりに予想通りすぎて、俺は思わず笑ってしまう。

 

 ……これでいいんだ。

 

 今、わざわざ過去に戻す必要はない。今を受け入れてどうにかするしかない。

 大丈夫。俺達ならやれる。今の俺達なら―――。


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