女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
完全にスルーしていた設定の一つを回収です。これ原作で重要と言ってもいい設定なのに……。
とはいっても、書いてみたらそこまでして書く必要なかったかなと思いながら……
5.5Sz、どうぞ。
「……あの、これ一体何なんでしょうかね」
俺はふと、近くにあった花を指さしながら二人に尋ねた。
最初はただの飾りなのか、と思っていたけど、階段を上がっていけば行くほど増えていってる気がする。
二人もやっぱり気になっていたのか、動きを止めて一度周囲の確認をするかのようにその花を見る。
「……悪趣味だなオイ」
「だよな……」
ジョウトの言葉に、俺は反応しながらゆっくり近づき、それに触れてみる。特に何もない、至って普通の花みたいな気がする。色合いも鮮やかで、見るだけでもちょっと痛いが、他は特に何もなさそうだ―――。
その時、気分が悪くなりそうな感覚が全身を走り出した。思わず俺はさっと手を離しもう一度見る。
……色が鮮やかな花ほど、毒素があるんじゃないか、って今更ながらそう思ってしまった。思わず全身が身震いしてしまう。
「……ふむ……これは……」
「何だオッサン、何かわかんのか?」
と、二人の会話に気づいて俺はさっとその方向を見る。興味深そうにヒカイさんはその花に触れながら、ただじっと見つめていた。
そして数秒。ヒカイさんは手を離しながら首を横に振った。
「……分からんなこの花は。私の記憶に間違いがなければ、聞いたことはない」
……そりゃ、そうだよな。俺だって、こんなの聞いたこともない―――
……ちょっと待て。本当に聞いたことないのか……?
突然の疑問に俺は思わず腕を組んで考えてしまう。いや、聞いたことないっての。この花の名前だって俺は知らない……はず……?
「………フロワロ」
「あ?」
「ぬ?」
思わず、ふと口に出てしまった謎の四文字。自分でもバカみたいに自覚して、俺は思わず首を横に振って慌てて否定する。
「いや、何でもない! ただの独り言だから、気にするなって」
「おかしな光景に頭もやられたか?」
「いちいちうっせーぞジョウト」
俺は怒りを覚えながら反発した。その言葉を聞いてジョウトは肩をすくめる。ムカつく。いっぺん殴りてぇ。
「二人ともやめたまえ。それに、今この原因の調査について必要はない。早く上がり、目的を果たさねばなるまい」
「そう……ですね。ごめんなさい。時間を取らせちゃいましたね」
俺は謝りながら、二人と一緒に先へ進む。途中、何度かマモノと戦う羽目になったけど、特に苦労はしていない気がした。
……ぶっちゃけると、内心まだ怖かった。でも、やるしかなかったんだ。よく分からないけど。
そしてエレベーター前に辿り着く。どうやら、もう少しでゴールらしい。思わず安堵の息がこぼれ出てしまう。まだ始まったばかりなのに、と俺は思っていた。
ボタンに手を触れようとして―――
「……?」
その時だ。突然、身体がゆっくりと、けど次第に大きく震え始める。
何だ……これ……!?
「……どうした、ロナ」
「い、いえ……な、なんでも……」
いや、なんでもないわけがない。何故かそう思っている。
そして……この感覚……まさか……
「……ドラ……ゴン……!?」
「あぁ? 何言ってんだよお前」
冗談言うな、って顔してると思うジョウトだけど、もし本当なら……!
「……くそっ!」
俺はただ、こんな非常事態なのにゆっくりと降りてくるエレベーターにイラつきながら、祈っていた。
この止まらない震え、本当に……俺の言った通りになってほしくない……!!