女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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どうもお久しぶりです。どうしても現実での出来事で余裕が全くなく、気づいたら年が明けてました。本当にごめんなさい。

今年こそは3年前よりも多く書かねば。そう思いながら精進していきます。

それでは62Sz、どうぞ。


62Sz 沈む暗闇

「電線……ってアレ、だよな?」

 

 壁に剥き出しになっているコードとコード。……あれ、現実で見るとマズいんじゃね? と思いながら俺たちは近づいていく。見る限り、一方コンセントプラグでもう一つがその差込口なので専門的なことはいらなそうだ。

 ……いや、いろいろツッコみ所はあるんだけど、今はそんな気分じゃない。

 

「二人とも、周囲の警戒を怠るなよ。あれは私がやろう」

 

 そういって、ヒカイさんはゴム手袋を装着して近づいていく。その間俺とジョウトは周囲を見渡し、マモノやらドラゴンやらを警戒し始めていた。……感覚的にも、近くにはいないっぽい。

 

「終わったぞ。残りは10班の方々がやってくれるから、一度外に出よう」

「分かりました」

「あいよ」

 

 そういって俺たちは来た道を戻ることにした。道中のドラゴンは全部やったはずだし、後はマモノぐらいか。分かりやすい殺気も、特にない。

 

「……?」

 

 何かが動いたような音がして、俺は立ち止まった。二人は……気づいてないのか?

 となると、俺だけが気づくような何か。……つまりそれって……?

 

 直後、通信がけたたましく鳴ると同時に地下道が大きく揺れる。

 マズい。そう思った時、先に前へと進んでいた二人に大きく声をかけた。とにかく、二人に何かを知らせようとして。

 でも、遅かった。いや……そっちに気を取られたのだろう。天井がガタガタと音が鳴ったと思ったら、落下物が落ちてくる。慌てて俺は下がり、とにかく下手に当たらないようにここは一度下がる。

 走りまくって、振動も収まったときに俺はその場で止まり、振り返る。……見ると、がれきの山だ。この状態で進もうにも難しいだろう。

 

「二人は大丈夫かな……っとそうだ通信!」

 

 すぐに通信機を取り、連絡を取ろうとする。が。

 流れてくるのはノイズ音ばかり。どうやら電波妨害もされてしまったらしい。なんてこった。

 

「……嘘だろ」

 

 状況は最悪だ。来た道を戻ろうにもがれきの山で進めないし、連絡も取れない。

 

「……はぁ、どうすればいいんだよこれ」

 

 もしかしたらさっきの地震で何処か崩れてるおかげで進めるところもあるかもしれない。とはいえ進んでも確か行き止まりだったはずだ。

 でも、行かないよりはマシだろう。俺はそう決めて、進み始めた。少ししてさっきの場所に戻る。電線は繋がったままだ。作戦には一応支障はないだろう。

 

「……」

 

 ふとよぎる。俺なんかいなくても、大丈夫なんじゃないかって。

 俺はそこまで強いとは思っていない。それに、俺は本当に役立てているのかどうかも分かっていない。

 俺が勝手に、「必要だと思ってるから」二人と一緒に行ってる感じなんじゃないか、と。こうして一人になって思ってしまう。

 

「……また、足引っ張ったのかな」

 

 多分、無意識に出た言葉。気分と一緒に心も沈んでいく。

 いつまでもこんな感じじゃだめだろう。そう言い聞かせる余裕も俺にはなかった。

 

「……?」

 

 突然、ノイズのように何かを感じた。ここから4時の方向、壁の奥。気になって俺はそこに近づき、狭い抜け道を発見する。

 

「こんなのがあるなんてな……」

 

 きっと何かがある。そう思って俺はその抜け道を進む。意外にも中は広く、人一人分は十分に通れる感じだ。

 やがて道が開ける。そこはまた空洞らしいところだった。

 

「あ……」

「ん?」

 

 気になって声の方を振り返る。女性だ。服装からして多分一般人。奥の壁で座り込んでるみたいだけどまだ無事みたいだ。

 

「大丈夫ですか?」

 

 俺は声をかけながら近づく。女性は無言でうなずいた。

 

「……通信繋がるかな」

 

 そう思ってトランシーバーを取り出す。が、どうやらまだ通信不良らしい。なんでこんな時に限って……。仕方ないこととはいえ、俺は少しだけイラついた。

 

「あの……」

「あ、はい」

「助けに……来たんですか?」

 

 女性が言う。……どちらかと言えば俺は偶然道を見つけてこの人も見つけた、同じような人だけど。

 

「……あー、そう、だとよかったんですけど……自分も生憎道に迷って。通信も繋がらないので困ったことに……」

 

 すいません。と、俺は一言付け足して謝る。女性は仕方ないか、という顔をしてしまった。

 ばか、ここで弱気になっちゃダメだろ。でも、どうする? 道はさっきので崩れたはずだし、たった一人でこの女性を護衛する力はあるのか? 俺は黙ったまま、別の道を見ながら思考していた。

 

「あの……」

「……どうしました?」

「実は、あっちの方から来たんです」

「……本当ですか?」

「はい。ですが……どちらかと言えば外のマモノやドラゴンから逃げるためにこちらに来たので……」

「……この先もドラゴンやマモノがいると?」

 

 女性は無言でうなずいた。多分、俺が救助隊(そういう立場)と思ってこその発言だったんだろう。

 女性は帰りたいと思っている。それを俺は無下に出来るのか。

 

 出来るはずがないだろう。

 

「……動けますか?」

「……はい」

「でしたら、俺が一緒に行きます。これでも実力はあるので」

 

 完全に危険な賭けだ。たった一人で女性を護り、出口を見つける。

 でもこれはS級を持つ……俺でしか出来ないことでもある。

 救助を待ってる余裕なんて今はなかった。通信も掛からない以上、このまま待ってる余裕なんてなかった。

 一刻も早く合流したい。この人を護りたい。自分の気持ちが混ざり合った答えは嘘なんかではなかった。

 

 


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