女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
ただ……どうもスランプに陥ってしまったため、内容がいつもの半分以下になっています。このchapterのメイン回には調子を取り戻さねば……。
というわけで、61Sz、どうぞ。
「……」
地下鉄。やっぱり、竜はいるし魔物もいる。今は視界には入っていないけど、なんとなく分かっていた。
でも……今は気が気でない、そんな気分だ。
結局、会議もよく聞いてない。いつものこと、と言われるとその通りなのかもしれないけど、今日は一段とその気ではなかった。
アオイにぶつけた言葉。今の『俺』らしくないような、そんな言葉。
おせっかい、やめてる。
いや……もしかしたら、今の『俺』が、俺ではないのかもしれない。
気持ち悪くて、吐き気が出そうな気分になる。それほどまで、さっきの言葉が非常に嫌になっていた。
「……俺、何かあったのか……」
その一言。俺は今まで断片的に思い返していたけど、蒸気のようにフワッと消していたこと。
俺は記憶喪失だ。
だから、失くした記憶の中に、何かあったんじゃないのかと。
……でもおかしい。だとしたら、なんで『俺と委員長』の記憶があるんだ?
何かのショックで思い出したから、と決定づけることはできるけど、何故かほぼそれしか思い出せない。
てかそもそも、ヒカイさんやナツメは俺を『実験体』と確信させている。赤の他人という記憶の根拠はないし、そうじゃなかったらそのことを思いはしないはずだ。
そしてそれ以前に、俺は転生者だってことを自分で分かっているんだ。夢で済む問題じゃない。
何が正しい、何が間違ってる?
答えは……どこにあるんだ?
「ロナ」
声をかけられ、我に返った後に振り返った。
「……辛いなら無理をせず、休んでいたほうがいい。その方が私たちも安心する」
「……俺は安心できません。俺だって、13班ですから。休んでる暇なんてないんです」
結局意地張ってた。この言葉を言った時には俺は、あっ。と思ってしまった。
無理をするな、と言われているのに、自分からそれを見せていた。
……変わってないのか、俺。
「まぁ、少しは実践させたほうがいいんじゃねーの、オッサン。正直、ずっと休まれるとオレ達も勘弁してもらいたいわ」
「……ジョウトの言う通りでもある、か」
ジョウトがフォローするように言ってくれる。
……結局、こうだ。
俺は何も変わってない。むしろ、ずっと悪いことばかり思い出している。
変われ、というのは……無理なのだろうか。
「まぁいいか……ロナ。そしてジョウト。内容の確認をするぞ。まず私たちが与えられているのは……」
「あれだろ、電線繋いでライトの効力を高める」
「もちろん。その間の開発班の護衛はあの若者がやってくれているとのことだ」
……あの、若者……?
「えっ……フウヤ一人で大丈夫なんですか!?」
驚いた。多分、一人であることより、フウヤが護衛を買って出たことに。
だけど、ヒカイさんは逆に驚いた表情で俺を見ていた。
「何も、ロナが承諾したからだろう? 『護衛はイヤだけど、ロナが後でサシで俺と戦ってくれるならやる』と。そうしたらロナが分かりました、と言っただろう」
「……」
……なんてこった。意識が別の方向に向いていた時にそんなことを約束してただなんて。
……確かに、よくよく思い返してみればそんなこと言っていた気がする。でもあれは帝竜の話じゃなかったのか?
……そういえば、俺が「分かりました」、とだけ言った後に誰か(声からして、多分アオイかもしれない。うろ覚えだけど)が反論する声が上がって……何か、説得させてしまったような気がする。
……最悪だ。
「……そうですね、確かにそんなこと言ってました」
「……この際だから言うぞ、ロナ。ボーっとしていると何もできなくなる、いいな?」
「ごめんなさい。気を付けます」
次からはちゃんとしておかないとな……。そう思って、俺は両頬を叩いて気合を入れなおす。
……迷うのは、帝竜を倒した後。
……そうじゃないと、取り返しのつかないことになる。……思うのは、簡単だった。