女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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……アカン、もう3月下旬入りそうや。しばらくはPC使えないのでなるべく早めに書き上げねば。

というわけで57Sz、そしてchapter5.5は終了します。何かいていたんだろう自分は……。

あー、ここだけの話、chapter6はさらにあっけなく終了しそうです。理由? ……だってあの帝竜……ゲフ、ゲフン。

とりあえずそんな話は置いといて、57Sz、どうぞ!


57Sz きまぐれ

「あーつまんねー。暇だ暇ー」

 

 降っていた雨は未だ降り続き、しかしフウヤはエレベーターの近くで雨宿りするように寝そべっていた。

 別にSKYの一緒にいたくないわけではない。かといって医務室行ってタケハヤの様子を見に行くのもなんだか恥ずかしい。

 と、なるとやることは一つ……なのだが、どこにいるのか分からないし、あんまり出歩いて他の所にも被害がいったらそれはそれで面倒だ。

 

「やっぱ牢獄だな」

 

 ぐてんと仰向けに転がって、外を見る。やっぱり雨は降り続いている。

 と、ふと一瞬、雨雫がドラゴンのように見えたが、すぐに雨雫へと切り替わる。

 

「……あーつまんね」

 

 この言葉一体何回言えば済むのだろうか。そんな些細な事を思ってしまうぐらい、退屈だ。

 

 ……思えば、あいつらと会ったのも『退屈しのぎ』だったよなぁ。

 

 ふと、フウヤはそう感じた。

 元々フウヤはSKYの中では完全に新入りで、本来なら下っ端と言われておかしくない人物である。

 しかし、タケハヤはそんなフウヤを今や共に行動をする人物の一人として数えられている。

 別に特に何かしたわけではない。ただ単に、憂さ晴らしにやった行動に興味を惹かれたからであろう。

 

 ある日彼は電車の中で眠っていた。彼は基本的に寝るときは耳栓をつけている。まぎれもなく、彼の能力の一つを自ら防ぐためである。そうしないと安眠できない。

 ついでに言うと、彼は特に何もする予定はなく、ただ単に「電車の中で寝て、起きたところを暇つぶしに歩く」だけであった。

 そして突然、電車は止まったらしいが、ある「音」に気が付くまでずっと眠っていた。

 

 雨の音、車の急ブレーキの音、水たまりを踏みつけて進む音、とある誰かの叫ぶ音。

 

 その音で現実世界に引き戻され、ゆっくりと起きた。

 

 突然、車内が揺れ、完全に目が覚める。

 

 電車のドアは開いており、その先は駅もなく、ただ砂利と線路と何かの建物だけであった。

 

 そのドアの一つから、誰かがぬっと顔を出した。

 

 長く獰猛な顎、誰もを震え上がらせる眼球、生半可な兵器すらも弾いてしまいそうな赤い鱗。

 

 最初、彼は「まだ寝てんのか?」と思っていた。いくらなんでも都合がよすぎるし、こんな出会いは絶対にないと考えていたからだ。

 

 それら全ては、ソレの咆哮で吹き飛ばされた。

 

 窓ガラスがビキビキと音を立て、車内がガタガタと震え、紙をバサバサと揺らす。

 

 耳栓で聞こえなくした世界には、ソレの咆哮しか聞こえない。

 

 最初は驚き、現実から意識を引き離していった。

 だが次第に、現実へと意識を引き戻していった。

 

 笑う。

 

 今日は最悪で最高の日に、そして今日から最悪で最高の日々になりそうだ。

 

 彼は邪魔になる耳栓をあえて外さずに、隠し持っていたナイフを二本取り出して外へと駆けていった。

 

 

 あー。前言撤回。やっぱ人とタイマンやったほうが楽しいわ。

 つか一体どうなってやがんだよ。目の前にドラゴンいて、んでもって人はいない。しかもそのドラゴンはくっそ弱い。もうちょっとハードでもいい気がするんだがなぁ。

 ……あ?

 

 彼は遠くを見る。ちょうど、スクランブル交差点のところに男女カップルがこちらを見ていた。

 しかし彼はそれよりも遠く、そう、建物を見ていた。

 

 遠くにある建物が樹海に取り込まれたようになっており、まるで未来にきてしまったと錯覚してしまったからだ。

 

 いや、それよりも今はどうなってる? 彼は思わずケータイを取り出し、確認する。

 そこには無機質に映された時刻と、今日の日付、そしてやや弱めの電波マークが存在していた。

 

 つまり、いつの間にかこうなった、そうなんだろ。

 

 そう思いながら彼はその場所から飛び降り、本来なら人がにぎわっている道路へと足を踏み入れた。

 

 そしてやっと気が付く。そういえば耳栓をしていたんだった。妙に聞こえないから何かおかしいとは思っていたが、まさか心のどこかでは楽しんでいたと思っていたとは。彼はなんだか不覚と思いながら耳栓を外す。そこに一気に音が紛れ込んできた。

 

 そんなうるさい世界は、確実に彼が生きている世界であることを実感させられた。

 

 そしてそんな能力で、聞こえたのはとある男性の声だ。

 

「お前……面白そうな力持ってるじゃねぇか」

 

 

 

「……ま、今じゃ面白いことになってるから、こういうのもある意味運命なのかもな」

 

 そうだろ? と、先ほどエレベーターから出てきた人物に向かって話した。

 

「それ、なんで俺に振るのさ……?」

「お前はオレのライバルだからさ」

「なっ!? いつの間にそんな風になってるんだよ!?」

「だって未だに不完全燃焼なんだぜ? 前は障害物あったけどよー。マジのステージだったら負けないぜ?」

「知らねーよ! ……とにかく、みんなのところに戻ったら? 多分、明日ぐらいに作戦決行するとおもうからさ」

「やだ」

「なんで!?」

「寝る場所ぐらい静かにさせてくだせぇ。おやすみ」

 

 そういってフウヤは近くに置いておいた寝袋に包まると横になった。

 

 思わずため息をつく。意外なのか、呆れなのか。

 

「……けど、フウヤはなんだかんだで、強いよな。こんな状況なのに我が道を貫いてるってか……そんな感じでさ」

 

 そういいながら、エレベーターに乗って降りる。

 

 チーン、という音を聞いてから、フウヤはそっとため息をついた。

 

「……強くねぇよ。腕っぷしの話だったらともかく、精神は意外ともろいもんだぜ?」


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