女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
で、でも次回は終わるよ?きっと、多分、恐らく……うん。多分。
さて……皆さんは最新作、買いますか?……私は小説そっちのけで買いますね(待
では、53Sz、どうぞ!
「リンっ!」
俺は慌てて自衛隊駐屯区の会議室に駆け込んでいた。
リンが驚いた顔をする、が、すぐに安堵の表情を見せた。
「よかったぁ……一時的はどうなることかと思ったけど、なんとか復帰したって身体持ちか?」
「あ、うん迷惑かけたね……ってそうじゃなくって! リン! 説明しろ!!」
俺があわててどういう状況なのか、俺自身もまだ分からないままで叫び出して、またリンが驚いた顔をする。……さすがに俺も頭の中が整理できてない状況で叫んだから俺だって意味不明だよ。
俺は一度、心を落ち着けるために深呼吸を、してる間にリンが口を開く。
「……キリノの様態、見たか?」
「……あ、えーっと……ごめん、色々ありすぎて見てない」
知ってるところは、「俺達と一緒に車に乗って逃げた」ぐらいだ。……そこだけはなんとか覚えている、じゃなくて、今思い出した、か。……意識が完全に消し飛んだのは確か……ドアが閉まったような音の時。………
……今は後ろ向いている暇は、ないな。
話を戻して、でもキリノは無事だ。それだけは分かる。……何でナツメはキリノを狙わなかったのか、いや、狙いたくても三人が妨害したんだろう。多分、な。
「……今ではひどく落ち込んでいる。……恐らく、戦場を見る事自体もできないだろうな」
「……それで」
「あぁ。このままじゃ危険だと思うんだ。だから、私達で作戦を……」
「ちょ、ちょっと待て。……そういや東京タワーにいた人たちは!?」
……話それてるけど、でも気になった。……あの時は自分たちの無事を最優先しすぎたせいで残りの人達は助けられなかった。
……途端に脳裏にあの出来事が浮かんで、背筋を震わせた。
………聞いたら、謝らなくちゃ。
「……いなかったんだ」
「え?」
「多分だけど……贄にされた、って話が有力だろうな」
「………ごめん。俺のせいだ……」
「何一人で背負ってるんだ。それに、今回ばかりは仕方ないだろ?」
リンが俺の肩を叩いて、一人じゃないってことを教えてくれた。……でも、自分が許せなかった。どうしても……さ。
……話が少し逸れたけど、俺はリンに「作戦って、何をする気だ?」と問いただした。
「あぁ、だからあの帝竜を倒そうと思う」
「……は?」
「行ってすぐ帰ってくればいいだろ? こっちはもう対策分かっているんだしな!」
と、胸を張って答えるリン。
………ちょっと待て!?
「ちょ、待てって! そんなことしてメリットとかあるのかよ!?」
「そりゃ、もう13班やキリノには迷惑はかけられないし、いつ動くかも分からない。……だったら先手必勝して倒すさ!」
「ダメに決まってるだろ! っああもういい!! とりあえず他の人たちからも聞いてくる! 俺が来るまで勝手に外出るなよ!!」
そう言って俺は部屋を飛び出す。……次はミロク達だ。今ので見ていると思いたい。
もう……めちゃくちゃだよ。……俺も、その一人なんだけどさ。
無我夢中で走って、気づいたらムラクモ本部の司令室の扉を開けていた。
騒がしく入ってきたからか、ミロクとミイナ、二人が何かの作業を一度止めてこちらを向く。
「「ロナ!」」
「ごめん、心配かけた。……でもいくらなんでもめちゃくちゃな作戦だろ!? お前らは何をやっているんだよ!!」
謝りつつも、すぐにあわてて本題へ。……双子は互いの顔を見ると、俺を一直線に見る。先に開いたのはミイナだ。
「今から、ナツメ総長の行動分析を始めてみました」
「は?」
「朝ごはんから寝るとこまで全部おっかけてみたら、何かヒントが見えてくるかもって」
なんでどういう理論で!?
……だめだ、こっちもいろいろとビョーキかもしれない。……でも、かける言葉も見つからない。
「つか、ヒントって何!? どういうこと!? マジで分からないし……あぁもういい!! とにかく二人は休め!! 俺は他の人から意見をもらいに行くから寝ろ!!!」
俺はとりあえず今思ったことを全部無理やりぶつけてまた後にする。……ちくしょう、めちゃくちゃすぎるだろいくらなんでも。俺でも何言っているのか分からなくなってきた。焦っているのか、ただ単に理解できないだけか。
……とにかく俺はまた部屋を飛び出して、タケハヤさん達の様子が気になったので一度医務室に行くことにした。……前に「SKY居住区を作った」的な話をしたけど、容態的に三人はきっと医務室だ。……なんとなく、ね。
少し時間がかかったような気がしたけど、俺はドアを強引に開けようとして、そういやここは医務室だ、と言うことに気づいて一旦深呼吸。普通に開けるように開く。俺の予想通り、タケハヤさん達は奥にいた。……疲れてるのか、タケハヤさんは、アイテルさんが見ている中で寝ていたけど……。
「……ロナか」
「さっきは、迷惑かけたね」
「いや、俺の方こそ、ごめんなさい……。……でも、二人は一体何を?」
一旦冷静になったのか、いつも……とはちょっと違うような、落ち着いた声で二人に話す。答えたのは、ダイゴさんだ。
「あぁ、我々はナツメを倒しに行こうと思う」
「へ、え、え!? ま、待てよ!! いくらなんでも無謀すぎる!!」
だめだこいつらも!! 思わず丁寧語を忘れてタメ口で叫ぶ。……本当に、無茶過ぎるに決まってる。……『委員長』たちの班でも倒せなかったのに、無防備すぎる。……なのに、二人は、いや、SKYは分かってて言ってるのか……?
「流石にそれは危険だ。……無理だよ。ミヅチを倒すなんて。……他に何かないんですか?」
「……そうだな。……バリアの強行突破手段、とかな」
「バリア……?」
なんか変なワードだな。俺はバリアって一体何なのかを聞いてみる。
するとこれだ。どうやら、東京タワー周辺に通信電波すらも妨害する特殊なバリアが貼られたらしい(どうやらミヅチが創り出したもののようだ)。で、それを強行突破するために―――
「ば、バカ! とにかくそれもむちゃくちゃすぎる!! ……あぁもういい!! とにかく何か方法ないのか聞いてくる! 絶対都庁から出るなよ!!」
……とにかく、何とかしないと!! 俺は無我夢中に、どこかへと走る。……どこに走っているのか、俺自身も分からない。
みんながみんな、司令塔を失って冷静になれてない。そんなの、分かってる。……分かってるはずなんだ。分かってるのに……俺まで冷静になれてない。
どうすれば……どうすれば、どうすれば、どうすれば……!!
「……ハァ……ハァ………ハァ…………」
……気づいたら、雨の降っている都庁の屋上に出ていた。
……間接的に、俺の居場所はない、って示しているのだろうか。
……そうだよ……な。俺はよそ者でさ、同じ人を護れなかったし、自分の都合だけ押し付けて、話聞くだけ逃げて、打開策が欲しいのに何も分からないまま。
「どうすりゃ………どうすりゃいいんだよ――――――!!!」
みんなを失いたくない。
失いたく……ないのに……。
俺は…………何もできやしない……。
何も………変えられはできない…………!!!
「誰か………誰か教えてくれよ……俺は……俺はどうすればいいんだよ……」
………答えなんて、帰ってこないよな。
誰もいないんだし――――――。
―――じゃあ、どうする?
どうするって……分からないよ。
―――ずっと、見たままにする?
そんなのは……見殺しと一緒だよ。
―――だったら、変えてみる?
無理だよ。俺なんかじゃ……『俺』なんかじゃ……。
―――大丈夫。『私』も、いる。
……え?
―――ヒカイさんもいる。
……ヒカイさんも?
―――ジョウトもいる。
……ジョウトも?
―――アオイちゃんもいる。
……アオイも?
―――いろんな人たちがいて……『
……『
―――『ロナ』は……独りじゃない。
……『ロナ』は……一人じゃない。
―――私が、
俺が、
―――仲間が、
友達が、
――――――いるから――――――
「……キリノ! どこだ!!」
気が付けば、俺は研究区に足を出していた。
いや、気づくまでもなく、俺はここに来るべきなんだって、今の声に気づいた。
部屋の隅で、落ち込んでいるキリノを見つけ、すぐに接近。無意識にキリノがこっちを見てくる。
「え……あ、ろ、ロナ……」
「とにかく危険だ!! 自衛隊は帝竜を何の策もなしに倒そうとしてるし、ナビたちは徹夜ぶっ通しでない筈のヒントを見つけようとしてるし、SKYは東京タワーのバリアを真正面からほとんど丸腰で強行突破しようとしてる!!」
「……そんなの……僕には……」
「関係あるだろ!!! とにかく今は指示を出せるやつが一人しかいねぇ!!
「でも……どうせ僕がいたって……」
「いて指示を出せよ!! そうしないとみんなバラバラなんだよ!! 戦う力じゃない、まとめる力が必要なんだ!!
あの時組んだ円陣を思い出せキリノ!!! あの時お前は何をしてた、何を思った、何を学んだんだ!!!」
とにかく、俺は必死にキリノを説得した。怒鳴り散らして、目を覚まさせたくて、指示を欲したくて。
これは俺のわがままだよ。あぁどっからどう見てもそうとしか思えない。でも、今必要なわがままに決まってる。そうに決まってる。
「…………」
「キリノ……ナツメがいない今、俺達は暗闇の中で正解にたどり着けないんだよ。そのためにも、光が欲しいんだよ。だからさ………」
「………みんなは?」
「……え?」
「み、みんなはどこに!?」
……どことなく、キリノの目に光がともったように思えた。思わず俺は笑っちまったけど、すぐに首をブンブン振って、「多分会議室だ!!」と、叫んだ。……とにかく暴走してたのかな、って頭が冷えたころにはそう思うぐらいに。
「……分かった。……もう、キカワさんやガトウさんのように……失いたくないから……」
「……大丈夫だ。俺がいる」
「私もいるさ」
「オレもな」
!?
思わず俺は後ろを振り向いてしまう。いや、今の状況じゃ、どうも信用できなかったし……
でも……確かに、俺があんな、確信を得てるような説得をしたのは……この二人がいたから―――
「……なーにかっこつけてんだアホ娘。ずっと独りで抱え込むんじゃねーよ」
「そうとも。……ロナはもう、13班の一員だからな」
「ヒカイさん……ジョウト……」
二人が、多分無意識に手を伸ばす。
……そうとも。俺は二人がいたからこんな風に言うことができたんだ。
喧嘩して、怒られて、バカ騒ぎして、悔やんで、泣いて、そして笑って。
二人がいなかったら………俺はあんなこと言えなかったし、今の俺はいない。
「……心配かけて、ごめん。そして……これからよろしく頼むよ」
俺は二人の手を、両手で叩く。……感じる。……二人からもらった力ごと。
「……さて、急ごうぜキリノ! こんな無茶な作戦を止めるんだ!!!」