女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
でも、体験版配信開始されましたね! 遊んでみて……火力高い、と。ドラゴンの色も少し落ちてるみたいだし、でも、これからが期待できそう。
では、51Sz、どうぞ!
パシン
「………」
乾いた音と、俺の頬が叩かれたのは同時だった。
……分かってた。本当は俺は無理に動いちゃいけないんだって。
正直、多分マナが体内にあんまりなくって、無理に動いたら身体が機能しなくなる。俺自身の身体だから、そのことは感づいていた。
そして、無理しなくたって二人……ナガレさんも手伝ってくれるんだから、来なくてよかったのかもしれない。いや、来ない方がよかったんだ。
俺は……怖いくせに、またこっちに来た。足引っ張るくせに、またこっちに来た。
「……ごめんなさい」
それしか、言えなかった。
……ヒカイさんは黙ったままだ。………さすがに、呆られたかな。
それっきり、ずっと俺は黙ったままだった。
……あれから、ジョウトが簡単に被害状況を教えてくれた。
帝竜のせいでSKYの人達が同士討ちを始めたり頭がおかしく―――多分催眠術なんだろう―――なったりしてかなりの被害を被ったらしい。
で、これ以上の被害を抑えるために帝竜を討伐しにかかっていた。以上。
……そして、話は進んでいく。
居場所が壊され、仲間もかなりの数を失ったSKYにとって今の渋谷は危険地帯だ。だから、ミロクが「都庁に来て、一緒に戦ってくれないか?」と訊ねた。もちろん、最初はタケハヤさんは拒否をしていた。
でも……頑なに拒んでいたせいでついにミロクも怒った。「オレもミイナも、作られた天才だ」って。同じ境遇にあった者同士、そして、何か思うことがあったのかタケハヤさんはふっきれて承認した。……この部分は、よくやったって思ったよ。
で、俺達はまだ息があるメンバーを救出し、………もし亡骸があったら俺んところに来い、とタケハヤさんが指示した。
………犠牲は大きすぎる。東京タワーの事件も、渋谷も事件も。
そして……現実は非情だった。
………アイツに……勝てるのか…………?
なんだか知らないけど、俺はこの状況下で、そんなことを思っていた。
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「………」
森林の隙間から降り注ぐ木洩れ日はどことなくスポットライトのように思えてくる。
だが、そんな観客も、歌も、聞こえない。
さまざまな悲鳴が上がった、この
わたしは、どこまであるけばいいのだろう。
「………」
足音が聞こえてふと止まる。
「……」
見ると、二人。男子と女子だ。
「………あー、その、なんつーの? ……おいどうすりゃいいんだよ」
男子が女子に小突いてどうするのか聞いてくる。女子はため息をつくと、一度辺りを見渡す。
「どーもしないわよ。とにかく、この子をあっちまで連れて行けばいいだけよ。バレずにね」
「あーへいへい。そうだと思ったよ」
渋々男子は返事しながら近づいてくる。思わず拒否をして下がる。
「……その、怪しい者達じゃねぇ。お前を助けに来たんだ。分かるか?」
黙ったまま、首を振る。
このひとたち、こわい。
「まぁ賢明な判断よね。どうやら
……?
思わず疑問を浮かべる。この時代……?
「とにかくだ」男子は両手を上げてこちらに敵意はないことを示し、言う。「とにかく俺たちはアンタを助けたい。それはこの時代に不可欠な行動なんだ」
その言葉にあわてて女子は男子のほぼ無防備な腹をひじ打ちして黙らす。
「バッカ。わざわざ言いふらして他人にばれたらどうすんのよ」
「ごほっ……だ、大丈夫じゃねぇの? 事実、そんな資料は見つかってないし、ばーちゃんからは何も言われちゃいない。……いっちちち……」
「はぁ……。まぁとにかく。何とかこの子と打ち明けたいけど……あれ?」
いない。
どうやら二人が喧嘩をしている間に逃げてしまったらしい。
「……とにかく追うぞ! あのままマモノやらドラゴンやらに襲われたら後味が悪ぃ!」
「りょーかい。じゃ、急ぎましょうか」
二人は全力で追いかけ、途中で分かれて探すことに。
……この行動、明らかに怪しい人である。
「決して怪しい人なんかじゃねぇ、って思いたいなこりゃ!」
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「ん?」
「どうしたのさ、ジョウ……ドボッ!?」
突然の横からの殴打に俺は状況が分からずに地面を転がる。数回転して勝手に止まり、顔を上げる。
「いっててて……あっ!?」
そして、視界に入っている『人物』に俺は驚いていた。
記憶に……ないはずなのに―――
「……君は……」
無意識に俺は立ち上がる。
確か……彼女は………
「いた! おーい!!」
「あん?」
「え?」
俺とジョウトは声に驚いてそっちの方向を見る。
………無意識に銃を構え、一旦戦闘態勢に入る。なんか見た目から怪しいし。
「げ……! やっば……!」
「……もしかして、SKYの人?」
俺は今までの状況からそう察した。
よかった……生存者はいたみたいだ。俺は内心ほっとしていた。
……でもこんな人いたっけ? 俺は警戒は一応緩めずに、いつでも弾倉を入れて撃てるように構えていた。……後ろにさっきの女の子もいるし。
「え、SKY……? ………あ、あーうん! そう、そうそうそう。SKYSKY」
「………おい。どうすんだこいつ」
「どうすんだ……って言われても、俺には分からないよ。……なんか、自信ないんだ」
………俺には「どうするか」の判断できるほど頭がさえてなかった。
本当に正しいのは何か。
今こうして構えているのは本当にとっさのことで、撃っていいのかも分からなくなっている。
でも……こうして「女の子を守る」、というのはどことなく間違ってないって思っている。……分からない。
「……そーかよ」
「……どうするのさ。ジョウト」
「んー? オレはだなぁ……」
「ジョウトォ!!?」
うわっ!? 突然何!? 俺もジョウトも、恐らく後ろの女の子も驚いて男を見る。男はこっちを見た後、一歩、二歩と下がって行く。
『おい何やってんだ!! とにかくミッションは完了した。下がれ下がれ!』
「お、おう!!」
「え、え? あ、おい! ちょ……」
待て、と言う前に男は逃走。
………なんだったんだよ一体。俺は銃をしまいながら逃げた方向を見た。
さっきのやつ……ジョウトを知ってたみたいだけど、ジョウトは驚いていた。……どういうこと……なんだ?
それに、突然の変な声もかすかながら聞こえた。
……マジでなんだったんだよさっきの……。
「……と、とにかく………この子を連れて帰ろう。ジョウト」
「……そうだな」
特に否定もせずにジョウトはうなずく。
俺はそれを見てから女の子を見る。少し怯えているように思えるけど………でも、俺はゆっくり手を差し伸べる。
「……この会場は危険だよ。……よかったら、都庁に来る? その方が安全に歌えるはずだよ」
……なーんて。
でも、この子は警戒を解いていないみたいだから、少しぐらいユーモアが必要の筈。……こうした「歌姫」にはそれぐらいしなくちゃね。
……女の子は手を伸ばして、俺の手を掴む。……不思議な感覚だ。まるで存在しないような……データの人形に触れている感じでさ。
……なんというか、初めて触れる感覚だ。
「……んじゃ、行くか」
「……そうだな。ジョウト」
ジョウトが先導して一度元の道を戻って行く。……生存者を見つけたからね。
……ちょっとジョウトには悪いことしちゃったか。でもまぁ……今まで俺は後ろ向きだったから、さっきの言葉でなんとなく前を向けるようになった気がする。……気のせいかもしれないけど。
「っと、そうだ。名前。一応名乗っとく。……俺はロナ。で、君は……」
緑髪のツインテールの子は微笑んで、俺を見る。不思議と、元気が湧いてくるようだ。
女の子は、いや、歌姫は名前を告げる。
「……初音ミクだよ」
Q で、あいつらだれ?
A 本編中には絶対に明かされません。が、今のでピンと来た方も多いでしょう。