女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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今回はかなり早くChapter5終わっちゃいそうですね……。

前置きも思い浮かばず、48Sz、どうぞ。

(2020/12/30)話の内容を大幅に変更。


48Sz 君は誰?

『……実験体『418』。』

 

 

 

 俺の、『なまえ』を誰かに呼ばれた。

 

 

 

『……容態はまだ安定せず、か』

 

 

 

 暗い中で誰かが『おれ』を見ていた。

 

 

 

『……これは、――――――。……一応、順調ですね』

 

『そう。……ありがとう』

 

 

 

 誰かが誰かにお礼を言う。誰と、話しているんだ?

 

 

 

 また意識が急速に深く沈んでいく。先ほどの声も、聞こえなくなっていた。

 

 

 

 

―――意識が呼び掛ける。

 

「ここは……?」

 

―――辺りを見渡す。白で塗りつぶされた空間。

 

「………なんだよここ」

 

 

 おーい

 

「……誰だ?」

 

 誰でしょうか?

 

「……ジョウト?」

 

 違う。

 

「ヒカイさん?」

 

 違う。

 

「キリノ?」

 

 違う。

 

「………リン? アオイ?」

 

 違う違う。

 

「……ナガレさん? それとも………」

 

 違う。それとも?

 

「……いや、違う、よな。じゃあ、誰だ?」

 

 私。

 

「……は?」

 

 私。

 

「誰なのか分からないのに自分でも分からないのかよ……」

 

 じゃあ質問。

 

「話聞けよ……」

 

 どっちへ行く?

 

「は?」

 

 だからどっちへ行く?

 

「………どういう意味?」

 

 言葉通りの意味。

 

「……あのさぁ。道、ないんだけど。正気か?」

 

 本気。

 

「………」

 

 君の本心を知りたい。

 

「……進みたくない」

 

 何で?

 

「だって、俺が進んだ道って全部間違ってたじゃないか」

 

 何で間違いだって言うの?

 

「間違いに決まってるだろ。全部。だから俺自身で選びたくない。全部間違ってるんだよ」

 

 どういうこと?

 

「こっちが君の正体を知りたいのに聞き返すか? ……とにかく、俺は、動きたくない」

 

 いいの?

 

「だって……もし俺がそっちを進むって言ったら、きっと……犠牲にならずに済んだのに」

 

 それは……そうだけど。

 

「じゃあこれが正しいんだよ。俺なんかいなくたって、誰かがきっとやってくれ―――」

 

―――空間が、急速に離れていく

 

「……そういうことだよ」

 

 ……そっか。

 

「……いいんだ。これで」

 

 じゃあ、助けなきゃよかった

 

「……?」

 

 ナガレさんもアオイちゃんも、キリノさんも助けなきゃよかった

 そうすれば君はそんなこと言わないですんだからね

 

「……それ、は……」

 

―――声が離れていく

 

 やり直せるならやり直すよ

 みんなが贄になってくれるように動く

 

「……」

 

 君がいなくてもいいんだ

 私がやれたはずのことだから

 おやすみ

 

 

 

 

「違うよ」

 

 何が違うの?

 

「……君は死んだ?」

 

 ………答えたくない。

 

「じゃあ死んでること前提で話を進める。……本心としては、誰も失わずに生きて帰ってきてほしかった」

 

 それは……。

 

「でも………その時の状況なら、それ自体を受け入れなくちゃいけない。だから……変な話になるけど、助けてくれてありがとう。でも……」

 

 ごめん。

 

「いや、いいんだ………本当は覚悟してたはずだから」

 

 そっか。

 

―――意識が戻っていく。

―――最後に、伝えなくちゃいけない。

 

 ……しっかり、『あなた』は前に進もうとしてくれるんだね。

 だったら、お願い。

 

「どうした?」

 

 きっと『あなた』がこの物語(はなし)を最後まで見届ける必要があるんだと思う。

 だから、必ず、最後までいてほしい。

 

「………分かった」

 

 それじゃ……ね。

 

―――言うんだ。

 

「待ってくれ!」

 

 ?

 

「………君は、誰だ?」

 

 

 

 

 

 

―――声は答えない。

 

―――声のしたあたりから、知っている面影が重なる。

 

―――委員長、キカワさん

 

―――面影か重なって、笑みとなる。

 

 

 

 バイバイ。

 

 

 

―――その声で、もう会えないことを自覚した。

 

―――その声で、今度こそ受け入れた。

 

 

 

「……ごめん、委員長(キカワさん)。二度も助けられなくて」

 

 

 

―――意識が、落ちる。空間が消える。声もなくなる。

 

―――意識が、確実に『物語』を再開しようと目覚め始めようとしていた。

 

 

 

 

 

 大丈夫。君とまた出会えたことで、私は救われたから。


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